対面
・・・ん?なんだろう?今僕は目を覚ましたはずなのに、あたり一帯が真っ暗だ。まだ起きていないんだっけ?
家の中で寝てたんだから窓から月明りか日差しかは射しこむから完全に真っ暗になることはないはずだ。
でも目を開いているはずなのに真っ暗なように見える。やっぱりこれは夢の中なのか?
「お?起きたか?いやぁ、寝てるとこ呼び出して悪かったな。でも一日待ったんだから、お前ももう準備できてるだろ?」
「え!?誰!?」
どこからともなく聞こえてきた声に、あおむけに寝ていた体を起こすけど、真っ暗で何も見えない、いったいどこから何が声をかけてきたんだ?
「おっと、いけねぇ、いつものままだった。今見えるようにする。」
何かがそういうと急に視界が開けて明るくなる。そしてほとんど離れてない目の前に、いびつで真っ黒な角と漆黒の毛並みで覆われた全身の、人のような獣のような姿である名状しがたい生物の上半身だけが存在していた。その上半身だけでも僕の2倍以上はある大きさだ。
下半身は相変わらず闇と言えるような足元の下にと隠れているのか?いびつなそんな存在を見たことはなかったはずなのに、見た瞬間になぜかある名前が浮かんでいた。
「イギルガブラグ・・・?」
「おう、初めまして、いや久しぶりって言ったほうがいいか?姿自体を何かにさらすのすらいつぶりだったか。」
彼が邪神イギルガブラグ、なんでその名前が出てきたのかはわからないけど、そうだと思った。これも彼の力なんだろうか?
「呼ばれた理由はわかってるな?俺様とイリハアーナがそっちの世界の奴に干渉して作らせたゆりかごによる来訪者で、一番に四魔帝から認められたのがお前だ。」
「そっちの世界で作らせた・・・?」
「お前も薄々気が付いてたんだろ?ここは俺様達がしっかり存在する別の世界だ。そっちの世界でいう[ゲーム]とかいう仮想空間じゃない。実際に存在する世界だぜ?」
どこかでそうなんじゃないかという気持ちはあった。でも今はっきりとイギルガブラグによってここがそういう場所なんだと言われて確信になる。
「でも、どうして・・・」
「どうして?それは俺様達がわざわざ異界に無理やり干渉して来訪者を呼ぶ理由か?それとも[ゲーム]なんてものにした理由か?それともほかの理由か?」
「え、えっと、来訪者を呼ぶ理由とゲームの理由だけでも教えてもらえれば。」
「はぁ、こういうのはイリハアーナの奴のほうがうまいんだが、ここには呼べねぇからしょうがない。俺様が説明してやるよ。今回来訪者を呼ばなきゃいけなかった理由は、俺様が作った聖族の末裔どもと魔物や魔族の関係性がまた悪い方に傾いてきたからだ。そういうのは俺様でもイリハアーナでもどうにも干渉できない。この世界の外からいろいろ呼んで干渉してもらうしかねぇんだ。」
神様でもできないことはあるということか。それにしても聖族を作った?聖族はイリハアーナ様が作ったんじゃないのか?この話が終わったら聞いてみるか・・・
「それでいろんな異界からいろいろ呼んだわけさ。あのスライムもそう、お前が保護したレークロングネックアクアティックモンスターリザードも複数呼んだうちの一匹だし、当然お前たちもだな。」
「なるほど・・・別に僕達だけというわけじゃなかったんですね。」
「あぁ、そういうことだ。」
そんなにいろいろ呼んで平気なのかと思うところもあるけど、むしろこの世界の変革を求めていたんだろうからいいんだろう。
「あの、今の話で気になったところがあるんですけど、聖族も魔族もあなたが作ったんですか?それと呼んだ魔物の種族名もあなたが付けたんですか?」
「あー、まず聖族魔族だが、大元は俺様が作った、というか生み出したということになるな。そこから勝手に変化したりふえたりした種族もいるから全部ってわけじゃないけどな。」
「なんでそんな聖族魔族なんて作ったんですか・・・?」
「そりゃきまってるだろ。俺様は基本的には戦いが好きなんだよ。やるのも好きだが見るのも好きだ。明確に分断された二族がいれば争いは必須だろ?」
そりゃ確かにそうなりそうなのはわかる。むしろ僕の世界では同じ種族でも戦争が起こったくらいなんだから・・・
「まぁそこは俺様の短絡的な考えが悪かったわけでな。いい感じの戦いじゃなく醜い争いになったわけなんだよ。そういうのはただつまらないだけでな。さっさと終わらせるべくイリハアーナにうまい具合に終演させるように頼んだわけだ。その時こっぴどく怒られたけどな。生命担当のあなたがそんなでどうするのですかってな。」
「生命担当・・・」
なるほど、イギルガブラグとイリハアーナ様、聖神と邪神なんて呼ばれてるけどなんかずっと気軽に名前を呼んでるところからも、やっぱ仲が悪いとか争っているわけじゃなくそれぞれの担当が違うだけなのか。
「まぁ要するに、俺様が原因で世界がギスギスしてたところがあったからな、中和するためにいろんな世界から来訪者を呼んでたという話なわけだ。」
「な、なるほど、わかりました。」
「よし、んじゃ次な。お前たちの世界に干渉して来訪者を呼ぼうとしたときに、そっちの世界にも神がいてな。それに七面倒くさいことを言われて俺様はやる気失せたんだがな。イリハアーナの奴がなぜか強く粘って、干渉するならまず[ゲーム]としてになったわけだ。そこ以外は神のいる世界には干渉したらだいたいすぐに引いてたんだがな。」
「あ、僕の世界にも神様っているのか・・・」
「いたぜ、うようよといるらしい。その中でも一番偉いやつだったんじゃないか?二神の世界とはなんともろいと言われたりもしたぜ。」
「あ、あははは・・・」
一神教の熱狂的な信者が聞いたら発狂しそうな話だ。あ、でもうようよいるらしいというだけで実際には会ってないってことなのか。
「後お前の世界は国がいくつもあるだろ?その中の一つの国を選べと言われていろいろイリハアーナが候補を聞いてなんだかって国になったとかあったっけな?」
「あ、それは多分日本ですね・・・」
「おう、そうそう、それだ。」
そこを詳しく聞くのは難しそうだけど、イリハアーナ様が日本を選んだからこそ僕たちがこの世界に来れたってことか。
「はぁ、話疲れたわ。もう満足したか?」
「え、えっと、多分。」
「よし、お前に話を聞かせたんだから今度はこっちに付き合ってもらうぜ?」
「う、それってやっぱり・・・」
「安心しろ、分身体で一番弱いやつとの戦いでいい。もし死んでもちょっと負担が出るかもしれねぇが、俺様が直にすぐに蘇らせてやるからよ、楽しもうぜ!」
「や、やっぱりそうなんですね!?」
うへぇ!戦闘準備しないとだめなやつなのかやっぱ!あのヘビの言う通り戦いになるのか!ここまで話してたから無しになるかななんて淡い期待だったか・・・
イギルガブラグさんの見た目についての追記