決意
その後も時折僕たちの進路上にいるゲルスライムを相手しつつ進む。倒すのにすごく時間がかかるわけではないけど、レイトが言うにこの調子でスライムの相手をしつつ倒しながら進んでると下手したらここから10日くらいかかるかもしれないそうだ。
『ベードの足ならばあのヘビの言う通りあそこから10日だと思っていたのだが、このスライムの足止めが多すぎる。それとこのあたりにはほかの魔物もいたはずだがいないようだな・・・』
「うーん、僕の思っている以上に遅れが出てるんだね。急ぐ旅ってわけでもないんだけどさ。他のがいないのはスライムに追い出されたのかね・・・」
『すいません主、俺がスライムに気づかれなければスムーズに進めたんですけど・・・』
『おそらくそれは無理だろう。己もあれがどうやってベードを感知しているのか不明だ。速さはないから振り切れる可能性はあるが、振り切れず捕まった場合がかなり厄介だろうな。』
ここまで全部対処してきてるのは、僕もそれを思ってのことだ。あんなゲル状生物につかまったらどうなるのかわからない。
あるやつが飛ばしてきたゲル状の攻撃はネティスの水結界が跳ね返せてたけど、一発で穴が空いて修復しないとーとネティスが騒いでたし。直接的な攻撃だと貫通される恐れもある。
あいつ本体の接近は今のところ僕が許してない。近寄られすぎたと思ったら即座に次元拘束で完全に動きを縛ってるからだ。核を止めれば体の動きもそこで止まるのは何度も戦ってきてわかったし。
「はぁ、問題は此の先にもいるかどうかだよなぁ。」
『己の予想ではチーターの奴の付近にはいないだろうが、逆にその道のりすべてにいる可能性があると言えるな。』
「うげっ・・・」
さて、どうしたものかね。急ぐたびではないんだけどスライムの相手はかなり疲れてきている。正直もう十分なほどに戦ったから、せめて別の魔物との戦闘にしてほしいところだ。
『なぁ、主。その、俺が炎の鳥状態になってそれに乗って飛んで進めれば、一気に行けるん、だよな?』
「え?」
『あぁそうだな。お前があの形態をしっかり維持できるようになれば五日とかからずつくだろう。それほど早いわけではないようだが、空ならば地上の魔物を気にせずに済むからな。』
『やっぱりそうなのか。・・・よし、レイトさん。俺に徹底的に教えてくれよ。わかるんだろ?維持のさせ方。』
『わからなくはないが、かなりきついことになるぞ。』
『・・・やるよ。』
「おぉ、やる気だね。ならこのあたりでやるしかないよね。また進んじゃうとスライムと戦闘になるし。この辺にまた湧かないとも限らないけど。」
どれくらいかかるかわからないけど、フレウドがやるきだし、何より空の旅ができるようになったら面白いし、ここはやらせてみよう。
『それじゃあこのあたりでしばらく待機ですか。私はまた薬の製作をしていても?』
「あぁ構わないよ。」
『・・・俺も修行します。あのゲルスライムとかいうやつを凍らせられるように。少し出てきます。』
「えっちょ!それは危ないんじゃ!?」
『あぁ、危険だ。それはやめておけ。行くなら、リュクスと行け。』
「え、僕?」
『そうだ、いざとなったらディメンジョンバインドで拘束して逃げれるだろう?』
「あ、そっか・・・」
次元拘束は集中力いるから駆け抜けるのには向いてないけど、向き合った状態から逃げる手としてはまぁ使えるかな。
『うっ、うぅん・・・ニはフレウド手伝うよ。ニも元に戻ったり小さくなったりできるから。』
「そうか、それは助かる。いろいろ教えてやってくれ、こっちは大丈夫だ。」
『うん!』
『主、私も・・・』
『モイザ、これはリュクスの特訓にもなる。二人で行かせるのだ。それにこの場にもしスライムがわいたときにお前の拘束力が必要となる。』
え?僕の特訓にもなってるの?まぁ確かにベードと二人きりで戦闘なんて経験はないか。
『・・・わかりました。主、お気をつけていってきてください。』
「うん、とりあえず生産道具の一式はポーチに入れて置いてくから、自由に使ってね?」
『ありがとうございます。』
『主と二人きり・・・身を挺してでもお守りします!』
「いや、身を挺さなくていいから。それにそんな気持ちじゃベードの特訓にならないでしょ?僕は来訪者で時間はかかるけど死んでも復活できるんだから、僕が盾になる。だからその間にベードが逃げること。いいね?」
『・・・』
「いいね?」
『・・・はい。』
ちょっと返事が遅いし渋っていたけど、もう大切な仲間であるみんなには死んだりされたくない。僕なら来訪者として復活できるから、ほんとにやばいときは僕が盾になればいい、それだけだ。
ゲルスライム狩りにとベードに僕だけが乗って進行方向でも来た道でもない南側にと足を進める。乗り気じゃなかったんじゃないかって?たしかにそうだけど、ベードがやる気なのに僕がやる気ないのはよくないだろ?とはいっても、僕は逃げるときに拘束する役目だけどね。