ゲルスライム
サーチエリアでも見分けがつくようになったのはいいけどスライムがほんとそこら中にいる。大体水たまりが10個以内で固まってて、そのうちの半分以上がスライムで・・・
『こんな水たまりすら前はなかったのだがな。』
「はぁ・・・倒せる相手だからいいけどこうもたびたび同じ相手に襲われると疲れてくるね。」
インターバルはあるとはいえ、スライムたちのせいでなかなか進めてないのも事実。さらにはこいつら消滅しちゃうから素材も一切期待できない。いや、素材のほうは取れたとしても用途不明になるだろうから別にいいか。
結局日が暮れるまでスライムの相手をすることになって、また進むとスライムと遭遇する可能性があるので倒した地点でキャンプすることに。後は寝るだけとなったけどふと一つ不安がよぎる。
「用意しちゃったのはいいけど、すぐにまた湧いたりしないかな・・・」
『どうだろうな。己も知らぬ魔物だ。そういう可能性もゼロではない。』
「えぇっ!?」
『大丈夫ですよ主!もしでたら、出たそばから俺が凍らせますから!』
『俺は全然役に立ってないけどな・・・』
『私もです・・・』
『ニもだよー・・・』
そういえばスライムとの戦いでは少し攻撃参加してくれてたけど、核の位置を教えても攻撃は空振りに終わり、結局レイトが仕留めてたりしたな。
特にネティスの水はむしろ相手の体積を増やす結果になってしまったので、それ以降僕の膝の上でしょんぼりとしてたし。
『なんだ?あぁいうものに術法が当たるよう訓練するか?』
『うっ・・・俺は遠慮・・・』
「やめとけやめとけ、もう遅いんだぞ?明日だってまた進むつもりだし。」
『それもそうだな。だがお前らが望むなら己はいつでも鍛えてやるぞ。このくらいしかもうお前らにも教えることはないからな。』
「そういえばベードとモイザとフレウドもかなり強くなったよな。でもレイトが教えることが少ないほどなのか?」
『俺はまだレイトさんにいろいろ教えてもらいたいですよ!』
『私もです。』
『己よりもリュクスに教わるほうがおそらくいいだろう。それぞれにあった基本を教えてきたが、新たな術法やスキル進化を目指すなら、四属性を持つリュクスと模擬戦をするのが一番効率がいいだろうな。』
「模擬戦って、またあれをやるの・・・?」
『ぜひやりましょう主!』
『主と言えど次やるならば私たちが勝利します。そのくらいの意気込みですよ?』
『おう、俺も主とまたやるのはいいかもしれないな。』
「なんで乗り気なんだよ・・・」
『おもしろそう!ニも参加していい?』
『四対一か。それでもおそらくリュクスのほうが少し上だろうな。』
「いやいやいや、攻められ方ではきついから!」
『では己と一対一でもいいぞ?』
「それも勘弁!というか僕は四魔帝目指すの!ほら、今日はもう寝るよ?」
『ふん、つまらん・・・』
レイトがため息をついてそのまま寝ると、みんなもお休みと横になる。みんなとの模擬戦か。やる気だったのは本気だったし、全部終わったら考えておいた方がいいのかな?
ただ、今は目先の目標に向かって走り抜けたいんだよね。そのためにも四魔帝のチーターを目指したい。
スライムについては翌日まで湧くこともなくぐっすり眠れた。僕はまた変な話題にならないうちにとベードに乗るのをせかす。
少し進むとまたスライムの感覚がサーチエリアに引っかかる。けど今度は少し違う感じ?水たまりの奴よりも感覚がつかみやすいというかなんというか・・・
近寄るとその理由もわかった。緑のぶよぶよがしっかり球体の形をとっている。まさに他ゲームで見たスライムと言える形状。水たまりに化けてるのとは違う。しかもいるのは一匹だけのようだ。
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≪識別結果
ゲルスライム 脅:C
粘性液体のスライム。その身は核と粘性液体でできている≫
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水たまりの奴と脅威度は同じようだけど、あれと違って核がしっかりと見て取れる。ただ体中を相変わらず早く動いてるので打ち出し系の術法で捕らえるのは難しそうだけど。
『うっ、俺あぁいうのを凍らせるのまだ難しいんですよね・・・この間の泥水も小さく相手の体を凍らせて動き鈍らせてただけですし・・・』
「あぁ、やっぱまだ苦手か・・・」
『いいからやってみろ。向うも気づいてるだろうが、以前の個体と似ているようだから、この距離での攻撃は仕掛けてこないようだしな。』
『うっ、わかりました。やってみます!リモートフリージング!』
ベードが凍らせる術法を使うとゲルスライムの下からゆっくり凍り始めるけど、体をプルプルと振るわせると、凍った部分とバリンと分離してそのままこっちのほうにと飛んできた。
ぜんぜん届く距離ではないけど、こっちに向かってきたってことはほんとに気付かれてるようだな。接近されると何されるかわからないし、ここは確実に倒すか。
「スペースエリアコントロール、ディメンジョンバインド!」
ぐっと核を掴んだ。このまままた握りつぶして、潰して?あれ、ダメだ、これ以上締め付けられない?何かに阻まれてる。そうか、体のゲルだ!
『おい、どうした?』
「ごめん、核を締め付けたから動けないはずだけど、体のゲルごと掴んだようで、締め付けて潰すのは難しそう。」
『核も見えますし動きが止まっているなら私が貫けます!ストーンランス!』
モイザが放つストーンランスがゲルスライムに命中。するけどその体のゲルでストーンランスの威力を完全に消されて、核につく前に石は消滅してしまった。
『そんなっ!?』
『おいおい、なんだあれは!?』
『主!拘束をあんまり長引かせないほうがいいです!何か対策をしてくるかも!仕留められませんか!?』
「ぐっ、ベードの言う通り結構振りほどこうとする力が強いよ。だから両手でしっかり拘束してるんだよね・・・」
『なら己が雷で貫いてみる。無駄かもしれないが・・・』
『俺の炎も打ってみるか!?なんか水っぽいけど水じゃねぇみたいだし!』
『合わせ技!?なら二も打つよ!あ、でも水だと炎が消えちゃうか・・・苦手だけど、光を使うよ!』
『・・・よし、己に合わせろよ?行くぞ!ライトニングレイ!』
『ライトショック!』『フレイムランス!』
レイトの雷の光線が命中した瞬間、同時に命中箇所で光が小さく弾ける。おそらくそれがネティスのライトショックだったんだろう。効果は薄かったかもだけど、ゲルをへこませたようだ。
雷の光線の中をフレウドの炎の槍が、いやいつもの炎の槍じゃない?いつもよりも大きく激しい炎となって、雷の中を突き進み、コアを貫いた。
『おふ・・・なんだいまの・・・』
「おぉ!いまのブレイズだったんじゃないか?ずっとフレイムって言ってたけどフレウドはすでに業焔魔法使えるはずだもんな。」
『お、おぉ、そうか、そうか!この威力が業焔魔法・・・なんか一気に魔素を吸われたみたいだぜ。』
『ふん、やっとつかえたか。お前がさぼっているからせっかくの力を使いこなせないのだぞ?』
『わ、わかってますよ!でもなぁ・・・はぁ・・・』
「僕はフレウドに乗って空の旅することもあきらめてないからねー。」
『主までそんなこというなよな・・・』
フレウドはため息をつきつつも自分が使った業焔魔法を感じてるのか翼を見つめていた。