酒につぶれた中で
さすがに一日に二回も宴で酒を飲んだからか、落ちかけてるとはいえまだ太陽もあるというのに、リジェン以外のリザードマンたちはダウンしてしまった。
さらにはいろんな果物を出して蜂蜜酒の時にも使った瓶を使って果実酒を作っていた。リンゴ酒、桃酒、レモン酒、イチゴ酒、変わり種としてはシソの葉や緑甘樹の実までお酒にしていた。
それが集まった蜘蛛達とトレント、ドライアド、さらにはベードも気に入ったようで、そのせいで飲みすぎたようでベードもモイザも含めてつぶれてしまっていた。
いつの間にか起きてきたネティスもまたお酒を飲んで再度ダウンしちゃったし、フレウドも熱くした酒を飲んでいたからか、いつも通りなのか寝ちゃってるし。
まぁ屋根のある休憩スペースだし、リザードマンたちはともかく、もともとみんな外で寝てたわけだから放っておいてもいいだろう。
『ぬ、そうですね、それがよいとおもいます。』
「ではそういう形で、リュクス様もよろしいですか?」
「え、あ、ご、ごめんなさい。ちゃんと聞いてなかったですけど、お任せしますよ?」
つぶれていないリジェンと話しているのはトレビス商長だ。彼女もかなりの量のお酒を全種類飲んでいたはずだけど、さすがというかなんというか、商談の話になってきりっとしている。
そもそもリザードマンたちが来たので米を扱えるかもしれないと話したのが発端で、すぐに来るというので宴にも参加したわけだ。
「わかりました、こちらで対処いたします。正直これだけの商品が増えるとなるともう少し店の拡張をしたいところですが、そこはリザードマンさんたちにお客様をさばいていただき対処しましょうか。」
『ぬ、今はつぶれていますが、しっかりと教育していただければ自分たちは覚えはいいほうだと思うので。』
「そうですね、普通に会話もできますし、リュクス様の蜘蛛達のおかげで魔物への拒絶心もこの街は少し和らぎました。むしろ服を着てさえしまえばトカゲのビスタと名乗ってもいいほどですね。」
たしかに魔物だから腰布や胸の布しかつけていない彼らだけど、普通の服を着させてしまえば角もないから一見は区別がつかないかもしれないな。だいぶ慣れてるとはいえしゃべると少し魔物っぽい感じのする言葉なのとか、手の指が4本しかないこととかそういう違いがあるからだましてもばれちゃうだろうけど。
そういえばあんまり気にもとめてなかったけど、襲ってきたウォーライクリザードマンは二匹とも何も着てなかったな。片方は少し胸も膨らんでたし雌だったのかも?インテリジェンスリザードマンたちもオスもメスもそんなに胸の厚みは変わらないから、胸に布を巻いてるかで一応わかる程度だし。
おっと、女性に対して胸の話題は失礼かな。気にするかすらわからないけど、これ以上はやめておこう。それよりもほぼ僕の管轄外でこの後の僕の店のことが決まっていってく。初めはいろいろ関与しようかと思ってたけど、これはこれで楽だからいいか。
「では話もまとまりましたので、リザードマンさんたちの衣服はこちらで作らせていただきます。報酬は本日作っていただいたお酒ということで。」
『ぬ、米だけは最低でも10日はかかるので、そちらはすぐには出せませんが、リュクス様の果物を使えばリンゴ、桃、緑甘樹の実の酒ならいつでも造れます。』
「はい、それで構いません。米に関しては早稲といいましたっけ?そんな短期間でできるのであれば私たちにとってもありがたいです。リュクス様、ぜひ出品していきましょう!」
「あははは・・・では、出来上がったら店に回していただけるとありがたいです。」
「かしこまりました!今日はもう日もくれるので一度戻らせていただきます。明日より数人の役員を連れてリザードマンたちに接客や店内の設備の説明をさせていただきますね。」
「はい。僕は明日には出発しちゃっていいんですよね?」
「大丈夫です。またこの街の商行の発展ができるような品物や人材をお待ちしておりますね!」
あんまり待たれても困るけど、かなり上機嫌のようなトレビス商長はそれだけ言うとそそくさと帰還していく。ちなみにリジェンが帰る前にリンゴ酒の入った瓶を渡していたけど、さすがに今日はもう飲まないよね・・・?
『それにしてもひどいな。この程度の酒量でつぶれるとは。』
「そういってやるなレイト、ベードとモイザだって今日が初めてのお酒だったし、フレウドとネティスはなんかしょうがないって感じだし。むしろレイトがつぶれなかったのが不思議なくらい飲んでたでしょ?お酒慣れてるの?」
『・・・どうだろうな。だがそろそろ己についても話す時が来たのかもしれないな。』
「え?」
『リジェンとか言ったか、ここの奴らに布でもかけといてやれ。倉庫にモイザや蜘蛛達がつくった布がかなりあったはずだ。』
『ぬ、はい、了解しました!』
『己たちは家に戻るぞ。』
「ちょ、確かに倉庫の使い方は教えてるけど僕も手伝うよ?」
『いいから進め。』
「・・・はい。」
僕の頭上で少し怖い感じに威圧してくるのでおとなしく従うことに、リジェンはお気になさらずと倉庫にと足を進め始めてくれた。
家の寝室にまでつくと、レイトは僕から降りてベットにと乗る。少し気まずい感じの趣で僕を見上げた。
『・・・次の四魔帝が終わったら話そうかと思っていたがな、他のいないいい機会だ。今話しておこう。己は元四魔帝だったライトニングジャスティスラビット。お前が次の次に出会うであろうフラッシュデビルチーターに負けた魔物だ。』
レイトはそういうと、体中に雷を纏い自身の姿を変えた。その毛並みは白と少しの金の混ざった毛並みじゃなく、雷をほうふつとさせる青白い毛になっていた。
一切気配を隠してないからわかる。女帝蜂よりもすごい気迫を感じる。でもブラックドラゴンよりはおとるだろうか?それでも・・・
「す、すごい・・・」
『すごいものか。あれだけさんざん己はお前に、いやお前たちにいろいろ言ってきたが、所詮は敗北したものなのだ。もはやブラックドラゴンと引き分けたお前、いやリュクスよりも強いかどうかはわからないな。死を終わりとする実戦ならば負けるつもりはないが。』
「い、いや、実戦はちょっとこまるよ。どっちかが死ぬまでとかせっかくここまでずっと一緒に旅してきたのに。」
『そんなつもりはない。己は敗者の烙印となり姿を変えて逃亡したのだからな。』
・・・レイトが負けた相手か。次の次に僕が会いに行くつもりの奴、確かチーターとかいったか?あれ、でもおかしいな?
「そのときは生死をかけた戦いじゃなかったの?」
『そうなるな。とはいえ敗北は敗北さ。己に勝利しあやつは東の草原地帯を支配する四魔帝となったのだからな。』
「元四魔帝ってことはイギルガブラグのことも知ってるの?」
『己は実はそれほどかかわりがなかったから知らぬ。生まれた時から四魔帝だったが800日ほど前に敗北したがために、四魔帝を目指す来訪者の話は聞いていない。聞いていたらリュクスにも合わなかっただろうがな。』
そういうといつもの白いアタックラビットをほうふつとさせる姿にと戻り、続けた。
『そういうことだ。幻滅したか?これで己の助言などもうなくても・・・』
「僕は、今でもレイトの助言はありがたいし、これからも欲しいと思ってる。たとえそのチーターと戦った後でもね。」
『・・・そうか。ならばこれからも己はお前の頭上から助言をやるとするか。それとこれからはもう少し己も戦闘に参加しよう。』
「おぉ!それは助かるよ!」
ちょっと恥ずかしそうなレイトだったけど、どっちが強いかなんて関係ない。できるだけ元の関係のままのほうが僕はいいからね。でも戦ってくれるのは助かるので、これからはどんどん頼っちゃおうかな?