リザードマン集落
そこからさらに二日、夜前には途中の泥の陸地で休みつつ、ログアウトもはさみ、泥水地帯をネティスに泳いで渡ってもらった。大きさがあるからか結構な速度でてたけど、やっぱベードほどじゃなかったな。
快適さはネティスのほうが上だったけど、そんなこと言ったらベードが悲しむので声には出さないでおいた。なお今のところ最も乗り心地最悪なのはフレウドだ。もっと安定できたらベードも載せて飛んでもらえるんだけどな・・・
泥水地帯のピラニアたちはネティスが水面を進む間中ずっと襲ってきていた。ほぼ問題なく処理してたけど、一匹だけ僕たちの攻撃をかいくぐって突っ込んできたときは少し焦った。突っ込んで来たらネティスの水結界に弾かれて気絶したからすぐに処理しちゃったけど。
ちなみに死体の回収はまったくできなかった。初めからするつもりもなかったけど、ピラニアの死体にピラニアがさらに群がっていたからね。あぁなっちゃったら無理に回収する必要もないだろう。
サーチエリアでそういうのを感知しつつの移動だったけど、ピラニアを倒したことで肉ができて、またピラニアが寄ってきての負の連鎖は正直しんどかった。ようやくまともな陸地にたどり着けて良かったよ。
今までの泥っぽい地帯と打って変わり所々に木々も生える普通に緑あふれる土地だ。この場所を囲むように泥水地帯が広がっているらしいけど、それってやっぱりこの場所に四魔帝がいるってことなんだろうか。とはいえ結構な広さもあるぽいし、中心にいるのだとしてもどれくらいかかるかわからないな。
『ニが運べるのはここまでかー。』
『ここからはオレが運びますよ!』
「ネティスありがとう。明日からはまたいつも通り頼むねベード。」
ちょっと早い気もするけど何がいるかわからない土地だし、背後のピラニア以外の気配のないこの辺で休んじゃうのがいいだろう。
夕飯後の余った時間は石術の練習に時間を割く。ようやく土に触れずに土術をまともに使えるようになったというのに、次は石に触れず石術を使えるようにだ。石と何かの合成術ってあったっけな?
そんな夜を過ごした次の日、ベードに乗って進むとさっそく12の魔物反応がサーチエリアに引っかかる。引っかかるけど、その地点にあるのはどう見ても小さい集落のような場所だ。
4軒の高床式のジャングルにあるような家が建っている。魔物に占領された場所、というには綺麗にいえがのこってるからそういうわけではなさそうだけど、なんだろうか?
警戒はしつつ近寄ると、どこかで見たことのあるシルエットが見えてくる。あれはリザードマン!?やばっこれ待ち伏せだったのか!?
『ぬ?何か気配を消した存在が村にと入ってきたか?』
『そのよう、ですね。何者ですか!?気配を戻しなさい!さもなければ攻撃します!』
「えっ、しゃ、しゃべった!?ちょ、ちょっとタイム!ベード気配を出すんだ。」
『わ、わかりました!』
鳴き声が翻訳されてるんじゃないようだし、聖族の僕とも普通にしゃべれるんだ。ということはこいつら前会ったリザードマンじゃない?こういう時は識別するに限る。
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≪識別結果
インテリジェントリザードマン 脅:C
知能的なな二足型蜥蜴。個体によって多種多様な属性を操る≫
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・・・知能的というところ以外あんまり変わらない結果だけど、しゃべれるかしゃべれないかという違いはでかいよな。
『ぬ、大狼と聖族だと?他の魔物たちも見たことのない種族だなこのあたりのものではないということか。』
「あ、はい、そうですね。」
『旅のお方でしたか。てっきり何かが攻めてきたものかと思いましたよ・・・』
右手を前にと突き出していた二匹のリザードマンはほっとしたように手を下ろす。いや、ほっとしていいのか?一応来訪者とはいえ僕聖族なんだけどな・・・
「あの、聖族の僕が入っちゃうのはいいんですか?」
『ぬ?別に構わぬよ。以前も何度か聖族の人がこの集落を訪れたことがある。攻撃的なものもいたが、そういうものは其方のようにまず対話しようとはしてこなかったからな。』
『私たちの言葉でも聖族の方は理解できていたようですが、攻めてきたやつらは魔族は魔族だとよくわからないことを口走っていましたね。』
あぁ、聖族主義の連中だったのかな。というか結構住人もここまでたどり着けてるじゃないか、なんでこの辺の資料がないんだ?
あ、あれか。フェニックスの時のような感じで規制された情報なのかもしれないな。聖族と同じようにしゃべる魔族なんて資料に書いても受け入れないのも居そうだし。
『さて、せっかくこうして出会えたのだしどうだろう。旅の疲れをここで少し癒していってはどうかね?』
「え、えぇっと・・・」
昨日がっつりテントで寝ちゃったからゆっくりしなくてもいいんだけど、断るのは断るのでなんか失礼な感じするよな。
「お言葉に甘えさせていただきます。」
『やった!今日は宴会ですね!』
『ぬ!そうなるな!旅の者よ、ぜひ旅の話を肴にさせてほしい!』
「そ、それがねらいですか!」
はぁ、なんて魔物たちなんだ。いそいそと他の気配のする建物にと二人、いや二匹?どっちでもいいか。おそらく他のリザードマンたちを呼びに行ったんだろう。
そのままあれよあれよと準備が進み、まだ日も高いのに大きなたき火まで組み立てて真四角の石でその炎の周囲を囲み、あっという間に宴会会場ができ上ってしまっていた。