自宅でのひと時
王都南側で食材の買い足しを終えて、結構いい時間なので宿をとるか家に一度帰るかで悩む。転移自体は難しくないけど、別にお金に困ってるわけじゃないから宿をとるのもいい。
でも一日だけのために取るのも面倒かな?やっぱり一度家に戻って休むことにするか。南端の街でもこれくらい豊富に食材扱てくれれば行き来しなくていいんだけど、そうもいかないんだろうな。
家に戻った後は家から出ることもなく夕飯を終えて久しぶりに空間術の特訓をしてから寝ることに。最近は合成ばかりしてたからね。でもかなり空間術も上達したと思うし、色々使えたほうが便利だろうから、今後は合成術の練習のほうがいいかな?
翌日はすぐに王都に向かわず、ちょっと自分の土地の様子を見てから行くことに。で、そうすることを伝えたら慌てるようにモイザがレササを連れてきた。
『そういうことでしたら、私が案内します。』
「レササ、他のことは大丈夫なのか?」
『むしろ主の用事以上に大事なことなどありませんよ。』
「そ、そうか。それじゃあトレントやドライアド達の様子はどうなんだ?」
『彼女たちは意外にも私に従ってくれていて、リンゴと緑甘樹の樹の成長を助けてくれていますよ。』
じゃあ見に行ってもいいかなというと、着いてきてくださいとのことなので、着いていくことに。向かう先はリンゴと緑甘樹の樹を埋めたところのほうだ。
場所はわかるんだけど、レササが案内することが大事なんだろうか?まぁせっかくだから案内されることにしよう。
そして僕が見たのは、丁度ドライアドの3人が緑甘樹の樹に枝をかざして緑のオーラを放っているところだった。さらに近づくと僕たちの気配に気づいたのか、振り返って一礼してから、また同じ作業に戻る。
『あれが木々の実りをよくする技だそうです。トレント達も時折やりに来てくれますが、ドライアドはほぼ毎日行っているようですね。どうやらあぁやって木々を育てるのが楽しいようです。』
「そうなのか。そういえば別の苗木を買ってきたんだった。桃の苗木を10ほどなんだけど、ドライアドに渡したほうがいいかな?」
『少々お待ちください。スパハチ来なさい!・・・彼からドライアドに渡してもらいます、よろしいですか?』
「え、あ、うん。」
レッサーハウレッジのスパハチがすっと後ろから出てきて、運ぶよと言わんばかりに右足にかけたポーチを上げた。苗木10個をそのポーチに移すといそいそとドライアドのところにと向かっていった。
「え、えっと、実がなるほどに育ったら、店のほうの商業者ギルドの人に相談して値段を決めて店舗においてくれるかい?」
『かしこまりました。他にご覧になる所は?』
目的はトレントとドライアドの様子見と、桃の苗木だけだったけど、一応一回り自分の土地を見て回ることに。トレントが壁付近のところで根を張ってゆったりしてるのを見た以外は特に変わりもなく。
兎面をかぶって店の中にも顔を出したけど、小さい店内なのにこんな時間から15人くらいお客らしき人がいた。蜂蜜の売れ行きがやばいと店員をしてくれていた商業者ギルドの人が慌てるように言いに来たけど、出品量を増やすのは無理ですと断っておいた。がっくりとした様子のお客たちだったけど、そればかりはどうしよもないんだ、ごめんよ。
「それじゃあまた家を空けるけど、よろしく頼むねレササ。」
『はい、しっかりとお守りいたします。』
「ははは、襲ってくるような輩はいないと思うけど、苦労を掛けるね。よろしく。」
『いえ、このくらいはどうってことありません。お気をつけていってらっしゃいませ。』
一周して分かったのはレササが蜘蛛達だけじゃなく、いろいろと先頭に立ってやってくれてるようで、安心したと同時に負担が多いのかなとも思ったけど、ほんとにどうってことないという表情。むしろ楽しそうだったからいいのかな?
僕達に別れを告げるとそそくさと、多分料理セットのあるだろう小屋方面にと足を進めていってしまった。昼時には早いから、何かを作る続きなんだろう。
『いい従魔じゃないか。己と違いよく働いている。さすがモイザの娘というところか。』
『やめてください。確かにレササはしっかり者ですが私が何か教えたからというわけじゃないですよ。』
「いいじゃないか、レイトのお世辞を受け取っておきなよ。実際モイザだっていろいろやってくれてるし、ありがたいよ。」
『主がそういうのであれば・・・』
「さ、王都にと行こうか、そして次はドラゴンが蛇野郎とか言ってた四魔帝だな。」
ちょっと恥ずかしそうなモイザもしっかり近くに寄ってもらって、王都にと転移した。次に目指すは湿地帯があるという北北東方面だ。