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女帝蜂の蜂蜜

 翌日自宅前でトレビス商長から瓶とコネクトポーチを受け取り、帰宅をお待ちしますとのことなのですぐに女帝蜂の元へと転移する。


『おぉ、待っておったぞ!それで、そちらの首尾はどうなったのだ?』


「瓶とコネクトポーチは確保しましたのでお渡しします。ポーチの中から瓶を取り出すことができるので、詰めてまたポーチに入れていただければこちらで受け取れます。緑甘樹の実がほしいときもコネクトポーチからどうぞ。」


『ほぅ、それはこちらで他の物も取れるのではないのか?』


「確かにコネクションストレージに入ってる他の物も取り出せちゃいますけど、まぁ蜜をいただけるとのことなので、ある程度ならどうぞ。」


『なかなかの好待遇じゃな。ほら、そこの奴ら、さっそく蜜を瓶に詰めよ。』


『はっ!』


 女帝の後ろで待機していた手下蜂達がポーチから瓶を取り出して木のうろにと向かっていく。そのうち一匹はさっそくポーチから茹で緑甘樹を取り出して女帝蜂にとささげていた。


『おぉ!これを待っておったぞ!』


「なんだかドライアド達が来てから緑甘樹の実の収穫量も増えたようなので部下の蜂達にもあげてください。」


 ドライアドとトレントについてはすでに昨日話したけど、ほぼ無関心という感じで、蜂以外はあくまで自分の縄張りにいるだけと教えてくれた。

 むしろもっと連れて帰りたければ手下の蜂も連れていくかなんて聞かれたくらいだった。遠慮しておいたけど。


『ふむ、確かに部下へのいたわりも大事だな。そうさせてもらおう。お前たち、一瓶入れたならば自分が食す分を取り出していいぞ。』


『おぉ!ありがとうございます!それでは早速!』


 蜜入れ作業してる蜂の隊長格がポーチからフルーツサンドを取り出す。あれを知っているってことはあいつら僕たちを案内してくれた蜂達か。


『ぬ、それは何だ?』


「あぁ、それはフルーツサンドです。白パンにいろんなフルーツを挟んだシンプルなものですけど。」


『私はこのサンドが気に入ったんです。いろいろな果物が挟んであって・・・』


『なるほど、ではそれを妾にもよこせ。』


 ちょっと間があったけど、わかりましたと自分の分にと取り出したサンドを女帝蜂にと渡す。自由に食べていいといったのは僕だけど、ほんと自由に食うんだな。それだけ気に入ったということだろうからもらえる蜜にも期待しておくか。


「では、僕は蜜の販売開始をするための相談をするために帰ります。また余裕があれば来ますね。」


『ぬ、少し待つがよい。聖族で転移が使えるならばあれに祈れば少し楽に来れるだろう。』


「え?」


 女帝蜂がさす先を見るとなぜかイリハアーナ様の木の像が立っていた。昨日はあんな位置に何もなかったはずだけど・・・


「た、たしかにイリハアーナ様の像で地点登録できるなら便利かもしれないんですけど、いつの間に?」


『昨日部下どもに作らせたのだ。』


「つ、作らせたって、さすがというかなんというか・・・というか平気なんですか?」


『平気、とは?よく意味が分からないのだが。』


「えっと、魔族の長の一人ともいえるあなたが聖族の神の像だなんて作っていいんですか?」


『四魔帝は確かにこの広範囲の土地と妾以外も多くの家来をもつが、長という立場ではないな。そもそも聖族か魔族かを重視しているのは聖族人種の限られたものだけだろう。』


 王都のギルドマスターの言う通りなのか、魔族方面は僕たち聖族も魔族も結局侵略者は敵、友好的ならだれでも味方。よっぽど人のほうが偏見で敵ばかりになってるかもしれないな・・・


「そう、なんですね。ありがとうございます。それじゃあ遠慮なく使わせてもらいます。」


『これでいつでもここに来れるだろう。また来るとよい。』


 木の像だけど、確かに触れたらここに転移できるようになったようだ。というかだれがつくってもいいのか?それとも僕の時空術のレベルが上がったからなんだろうか。なんにせよトレビス商長が待ってるからそろそろ戻らないとな。

 転移で帰宅して外に出ると、玄関前でそのまま待っていたトレビス商長が今か今かという表情をしている。


「ど、どうでした!?蜜はもらえましたか!?」


「え、えっと、すでにコネクションストレージに送ってもらっていますので、識別してみていただけますか?」


「おぉ!もしかしてリュクス様はまだどんなものか見ていないのですか?」


「そう、ですね、ちょっとおっかなびっくりという感じで、確認が恐ろしいというか・・・」


「なるほど、少しわかります。ではお言葉に甘え、私が識別させていただきます。」


 話ながら渡した瓶詰めの蜂蜜をコネクトポーチから取り出して渡すと、トレビス商長はさっそく瓶のふたを開けて、虫めがねを取り出して見つめ始める。


「あの、それは?」


「これはとある筋から入手したものです。識別の難しいものを詳しく識別するための道具ですね。・・・それにしてもすごい。少し舐めてみても?」


「あ、どうぞ。僕も一口貰ってもいいですか?」


「なにを言います!これはあなたの物ですよ!私が遠慮するべきなのです!ささっ先にどうぞ。」


 そういうと小さい木のスプーンを取り出して蜂蜜瓶にと入れて僕に渡してくる。せっかくなのでスプーンを使って掬って一口。

 ・・・美味しい。甘すぎず、ほのかに鼻に通るようなすっきりとした感覚。思わずスプーンをくわえたまま止まってしまうほどだ。


「ほんとにおいしい・・・」


「おぉ!では私も一口いただきますね。」


 トレビス商長も自分用にスプーンを取り出して一口食べると、しばらくスプーンをくわえたまま固まる。まるで時間が止まっているかのようだ。


「・・・はっ!す、すいません。これは、これはとんでもないですね。女帝蜂の蜂蜜、質は8A、こんなすごいものをこの南端の街で扱えるなんて、なんて光栄なんでしょう。」


 瓶を持つ手がほのかに震えているようにも感じた。このおいしさならどんな料理にも役立つだろうし、僕にはあんまり関係ないけど、使い方次第では美容効果も期待できるんじゃないか?


「これをいくらで売るかは、申し訳ありませんが少しお時間をいただけますか?登録などはこちらで済ませておきます。」


「そうしてくれるとありがたいです、僕は他の四魔帝とも会ってみたいので、また狂邪の地に行ってきます。」


「わかりました。くれぐれもお気をつけて。行ってらっしゃいませ。」


 さて、狂邪の地に行くとはいったもののどうするか、王都から他方向に行ってみるのもいいけど、女帝蜂のところから向かったらもしかしたら近かったりするだろうか?またいつでもきていいって言ってたし、使わせてもらっちゃおうかな。


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