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女帝蜂は甘いものが好き

 運び蜂たちが女帝蜂の前にと僕達を最後まで案内する。女帝蜂の姿は蜂なはずなのにまるで人のような印象を受ける体格だ。もしかしてビスタなんじゃないだろうかと思うほどで、この間出会った魔族の樹のビスタの人よりもよっぽど人っぽい印象だ。


----------

≪識別結果

エンプレスホーネット 脅:B

自身の縄張りに住むすべての蜂を統べる女帝蜂。≫

----------


 彼とは違って識別自体はできるから魔物ではあるんだろう。識別結果は細かいところが全然わからなかったけど。


『いま妾を調べようとしたか?人族はすぐ魔物と聞くと調べたがるな。』


「あ、その、すいません。」


 とても低い女性の声が響く。これは翻訳されてる感じじゃなくって向うが僕に合わせて言葉を変えてる感じだな。

 それししても、彼女の後ろの木のうろからすごい甘ったるい匂いが漂ってくる。この匂いははちみつっぽいけど、気を入れてないとちょっとくらっと来るくらいの匂いだな。


『ぬ、その犬ころが鼻を塞いでおるようだが、後ろの匂いがきついか?妾たち蜂には甘美な匂いだがな。おい、お前たち、閉じておけ。』


『わ、わかりました!』


 ベードが思わず鼻を前足で塞いでいたのを見て、僕達を案内していた蜂に塞ぐようにと命令するけど、木のうろを塞ぐことができるのか?気になったけど、のぞき込むのも失礼だろう。


『それで、妾の縄張りへと来た侵入者たちよ。目的は蜜か?』


「いえ、目的はあなたです。」


『それは求婚か?妾は聖族人種と交合うつもりはないのだが。』


「そ、そういう意味じゃないです!」


『そんないい方したらそう勘違いされてもしょうがないですよ、主・・・』


 モイザも驚いた表情した後に頭を抱えて僕に小言をささやく。確かに僕の言い方が悪かったか。でもそういえばいいんだろうか?そのままを伝えるしかないか。


「えっと、僕は来訪者です。その来訪者の目標として四魔帝を倒すんだったかな。あ、でもすぐに戦闘意思があるわけじゃないです。」


『来訪者・・・なるほど、それで聖族人種なのにやたらめったらに戦ったり、見境なく妾の縄張りの物を奪っていったりもしなかったのか。もしかして四魔帝と戦うというのはイギルガブラグ様からの話か?』


「そういえばそんな感じだったと思います。」


 現実時間ではそれほど立っているわけじゃないとはいえ、ゲーム時間ではかなり立っててイギルガブラグかイリハアーナ様かどっちから聞いたかあいまいだったけど。


『四魔帝の妾たちに力を示せばイギルガブラグ様が直々に戦う権利を与えられるあの儀式だな。妾たちも他の三体に力を示せば戦う権利が与えられるのだが、妾は自身の縄張りを整えることにしか今は興味が無くてな。貴様が戦う意思がないのであれば妾としてもありがたいところだ。』


「そう、なんですか。」


『だがそれではここまで来た甲斐もないだろう?妾としても荒らしてはいないといえここまで来たものをただで返すと下の奴らへの威厳がもたない。案内してきた蜂達に何か甘いものを渡したのだろう?それを妾にもささげよ。』


「果物茹でただけなんですけど、緑甘樹の実なんて質はかなり低いものですよ?いいんですかね?作り置きならすぐ渡せますけど・・・」


『質がなんなのかはわからぬが、作り置きよりここで作るのだ。』


「そうなると料理セットを広げることになりますけど?」


『構わぬ。』


 構わないというならしょうがない。ポーチから出した料理セットを広げて大鍋で果物を茹でていく。


『お前は本当に戦わないとなるとかなり気が強いな。あれはおのれとほぼ同格と言えるだろうな。』


「え、レイトも脅威度Bほどってこと?」


『お前らの話で言えばそうなる。一対一ならば勝機はあるが、あれと戦うということはこの縄張りに住むすべての蜂と戦うことになっていただろう。戦うために来たといったときはさすがに肝が冷えた。』


 うっ、レイトでも肝が冷えたってことはかなりきつい戦いになってたかもしれないってことか。そしてついにレイトの本当の強さのレベルを教えてもらえるとは。


「それは悪かったよ。後、僕はもっとレイトのこと知りたいんだけどね。」


『・・・そのうちな。それよりあれを怒らせないようにしっかり作れ。』


「はいはい。」


 はぐらかされたけど、ちゃんと話しながらでも作ってるんだぞ?そもそも果物茹でるだけなんてほとんど僕がすることないからね。


『うーん、いい匂いだ。まだできぬのか?』


「そろそろですかね。あ、これはちょうどいいころかもしれません。ちょっと熱いので気を付けてください。」


 もともと柔らかいのもあって桃が一番早くちょうどいい感じに茹で上がった。茹でることでより柔らかさと甘さが増すんだよね。おたまで掬い上げてそのまま女帝蜂さんに渡す。


『おぉ!どれどれ?このくらいの熱さならば妾には関係ないな。』


 そういうと桃一つ分をあっという間に平らげる。特に感想もなく次もまだかと催促されるので次に茹で上がったリンゴ、梨、そして緑甘樹と渡していく。


『!!こ、これじゃな、貴様らを案内した蜂から匂っていた甘い匂いは!』


「え?」


『これをもっと、もっとよこすのだ!』


 緑甘樹を食べると一気に豹変する。もっとと言われても緑甘樹の実は茹でるのに少し時間がかかる。


「同じくらい時間かかるので、生でも食べてみます?もっと甘いんですけど。」


『ほぅ!どれどれ!・・・確かに甘いが、茹でた後ほどのあのうまさはないな。甘ければいいというものではないのだ。仕方ない、待つぞ。』


 しょぼくれた様子で待つぞといったけど、さっきまでしなかったブーンという羽音がめっちゃし始める。待ちきれなくて羽の速度が上がってるようだ。急がせても茹でる速度は変わらないですよ?

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