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狂邪の地に踏み入る

 昨日までにあらかたの準備は終わった。みんなで王都の一番北に堂々と建つ王城にと足を踏み入れる。正直王城の中に狂邪の地への門があるってどうなんだと思うとこはあるけど。

 狂邪の地への門はパーティーだろう五人組が僕たちの前で軽い説明を受けていた。おそらく誰かの従魔なんだろうフクロウも一緒に聞いているようだったけど、あのフクロウが五人運ぶんだろうか?それとも偵察に一人が乗るだけとかなのかな?重そうな鎧きてる人も居たしちょっと気になる所だ。

 彼らが門を越えた後にすぐさま門は締められる。それまで僕は止まってるようにと門兵の人が手を突き出してストップかけてる。


「次の方どうぞこちらへ。」


 閉まり切ったところで呼ばれたので門にと近づく。他の街でも見たような門と同じような見た目なはずなのに、ここまで近づくと何かより重々しい雰囲気を感じる。


「お手数ですが証明をお持ちでしょうか?この先には冒険者ランクCと特定の指名依頼試験をこなした方しか進めませんので、証明にて確認させていただいております。」


「証明ですね。了解しました。」


「お手数おかけします。お預かりします。」


 言われるままに証明を渡すと、門の横の水晶にと証明をかざしていろいろ読み取っているようだ。他の門の水晶とはまた違うのだろうか?


「お待たせしました。確認終了です。通れる権利をお持ちなので、こちらの狂邪の門についてご説明します。こちらの門は内側からの開門はしますが、外側からの開門は行いません。お手数ですが、必ず帰還石を所持してお進みください。所持していない場合、こちらでは対応しておりませんので一度王都までお戻りください。」


「大丈夫です、所持してますよ。」


 帰還石をもってはいるけど、空間術があるからめったには使わないけどとは言わないことにする。別に伝えるべきことでもないし。


「では門を開けさせていただきます。お気をつけてお進みください。」


 縦開きの門が上がり切るまで門兵の二人が外を見つつ槍を交差するように構えて僕が外に出ないようにと一応止める。開ききると槍先を外にと向けて僕たちを通してくれる。

 僕達が門を通り過ぎると門は再び閉まり始める。ガタンと背後で門が閉まる音がして、ふと振り向くと背後には巨大な聖域の壁が何者も侵入させまいと反り立っているように感じる。

 この後ろは王城だったはずで、王城すぐ後ろには街から壁は見えてたけど、こっちから見るとこんなにも圧迫感があるのか。

 狂邪の地はそれほど恐ろしいところということなのかもしれない。息をのんでいるとベードが自分に乗るようにと体を少し落としてくれる。

 一番負担になるのはベードかもしれないなと思いつつも、進む速さはベードが一番だ。何かあった時にかけ抜けて逃げれる可能性も一番ある。


「よろしく頼むぞベード。」


「ばぅわぅ!」


 いつものことですと元気な感じに返事してくれる。ちょっと緊張してたのは僕だけだったかな?いや、心なしかベードの身体も少し振るえてる気がする。


「きゅ・・・」


「情けないってなんだよ。そういうレイトはこっちのことをよく知ってるのか?」


「きゅきゅ。」


「え、出身地だからなって・・・」


 おかしいとは思ってたけどレイトはこっちで生まれたのか。というかそれならどうやって南端の街方面まで来てたんだ?聞いたって答えてはくれないだろうけど・・・

 いいから進めとレイトが言うとベードも意を決して進み始める。ちょっと杖をいつでも腰から出せるように握りしめてたけど、王都から出てしばらくはサーチエリアにかかる魔物どころか見える範囲で木々すら何もなかったが立ち止まる。この先からは明らかにやばそうな感じの濃い霧が立ち込めてる。まだ背後には王都の壁が見えてるけど、あの霧まで入ったらもう見えなくなりそうだ。


「ベード、行こう。みんなも一応警戒は怠るなよ。」


「ばぅ!」「――――!」「コ!」「ぐぁう!」


 霧の中にとベードは突っ込んでいく。特に冷たいとか寒いとかは感じないけど、まったく周囲が見えない。ベードは少しだけ見えてはいるようだけど、サーチエリアで周囲の状況を教えつつ進む。

 それほど霧を抜けるまでは長くはなかったけど、霧を抜けた先に広がる景色がすごい。地面の草花がすべて真っ赤な草花なんだ。識別してみるとレッドメヒシバとレッドオヒシバ、花はレッドグラムというもので、人には特に用途のない雑草という識別結果になってる。

 普通の草花なんだろうけど、赤すぎてまるで血をぶちまけられたみたいでちょっと不気味な感じがあるな。一応調べて知ってはいたけど実際見るとだいぶ違う印象を受ける。

 赤い土地を進んでいると、地面の中に魔物の気配を感知する。ベードに止まってもらってその魔物のいるほうにと近寄ってもらうことにする。

 この辺の魔物はレッドアタックラビット、脅威度Hの兎の魔物だ。どっかで聞いたことのある魔物だと思ったけど、この辺のは毛並みが真っ赤らしく、この土地の色も合わさってちょっと見つけづらいらしい。

 そして普通のアタックラビットなんかとは比べ物にならない突進力を持っている。とはいえそれにさえ気を付ければ耐久面なども大したことのない魔物だそうだ。

 地面にもぐっててこちらには気づいてないようだけど、ちょっかいかけてみるか悩み中。ちょっと頭上をちらっと見て、やめることにしておいた。別に狩りするために来たわけじゃない。

 一番初めの目標は狂邪の地の少ない資料にあった北西方面の背の高い木々の森で、ナイトフライグレートオウルが住むらしい森だ。

 別にフクロウを従魔にしようということは思ってない。ただ一番近そうで一番目星の付けやすいのがそのくらいしか資料になかったからだ。

 狂邪の地はすさまじく広い。そのなかで四魔帝と呼ばれる存在の縄張りまで進むのは普通なら結構時間がかかる。そのため大まかな四魔帝それぞれの縄張りは記載されてたけど、どの辺が境目かとかはほぼ不明のようだった。

 そのフクロウたちの森を西側に抜けていくとより深い森になっていって四魔帝が一匹の縄張りらしい場所につくそうなので目指すことにした。

 ちなみに四魔帝が何の魔物なのかとかの情報はほとんどなかった。ただいま目指してるところはおそらく虫だということだけ書いてあった。虫ならば多分だけど炎とか効きやすいよねという安易な考えだよ!

 兎のすむ真っ赤な土地をベードが走り抜けてくれて、聞いてた通り背の高い木々が生える森にと到着する。この木、リンゴの木の2倍以上は高いな。

 識別結果はロングリーフの木とでたけど、これは一応木工素材にはできそうな感じのようだ。別に僕たちは依頼があるわけでもないし取らないけど。森に近づいてからは時折バサバサという音が聞こえてくる。木の揺れる音なのか鳥の飛ぶ音なのか。じっとしててもしょうがないし進もうか。

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