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聖族と魔族

 翌日に再び冒険者ギルド受付に行くと、僕の顔を見ただけですぐにギルド長室に行くようにといわれたので、言われた通りすぐにギルド長室に向かう。


「おぉ来たか!さっそく入れ入れ!」


 なんか昨日のテルミクサブマスターとは違う声が聞こえてきたけど、おとなしく入ることに。中ではちょっと頭抱え気味なテルミクさんが座る隣に明るい紫髪が印象的なヒュムの人がウェルカムと言わんばかりに両手を広げていた。


「マスター、自己紹介からですよ?」


「うん?おぉ、そうだな!私はこの王都でギルドマスターを務めているギルシュだ!ただし、マスター、またはギルドマスターと呼ぶように!君のことは昨日報告で聞いたからね。ぜひ私が話したいと思って足を運んだんだよ!」


「うっ、えっと。よろしくお願いします。」


 僕が気まずそうな感じなのを察したのかテルミクさんがフォローしてくれたけど、ギルシュギルドマスターはベードとネティスをちらっと見た後に、レイトにと目を向けていた。


「やはりな、おかしいと思ったんだよ。報告よりもすごい従魔を連れているじゃないか。その兎さんは私など足元にも及ばない強さだね?」


「どうなんでしょうか?レイトは実力を隠しているようなので、無理に力を使ってもらうことはないですから。力を使うときは気まぐれという感じですね。」


「そうなのか?もったいない・・・従魔ならば命令はできないのかい?」


「レイトだけじゃなく命令というのはあんまりしたくないですね。あくまでも僕は大まかな指示を飛ばしてるだけなので、基本どう動くかは従魔たちに任せてます。」


「ふむふむ。ところで、君の従魔は後二匹いるはずだろう?今日は連れてきてないのかい?」


 付き添いに来てるのはレイトとベードとネティスだけだったから聞いてきたんだろう。


「連れてきてないですね。昨日と同じようにモイザとフレウドは宿で待機中なんです。」


「そうなのか、見てみたかったから残念だ。今からでも連れてきて・・・」


「マスター、それ以上はギルド長でも失礼な行為に当たりますよ。」


「おっと、すまない。つい気になってな・・・」


「リュクスさん申し訳ありません。悪気があるわけじゃないので、どうか寛大な心でお話しいただけるとありがたいです・・・」


 昨日と打って変わってすごい丁寧な口調で僕にお願いしてくる。多分だけど、このギルドマスターに苦労してるんだろうな・・・


「さて、私がここに来た理由はいくつかある。まずは君への報酬5500万リラを渡すこと、これは証明を出してくれればすぐにでも払おう。」


「5500万!?そ、そんなに大金なんですか?」


「いえ、あれだけの素材量ですとこれでも少し安いところかと思うのですが、ギルドの依頼報酬としてお渡しできるのはこの額くらいが限界かと思います。申し訳ありません・・・」


「い、いえ、それだけでも十分です。受け取らせていただきます。」


 おぉう、店の売り上げ金もがっつり使ってたけど、これでまたかなりのお金持ちになってしまった。しばらくは食料とかにも困らないだろうな。嬉しいことなんだけどさ。


「よし、受け渡しは完了だな。では次だ君は来訪者ということは、他の来訪者と同じように王都北の狂邪の地を目指しているんだろう?」


「一応はそうですね。」


「うむ、ならば通常は狂邪の地にはCランク以上の指名依頼、Bランク以上の指名依頼、Aランク以上の指名依頼をこなすことで、それぞれ進んでもいいと定められる範囲まで進むことを許可される。当然、この王都から離れれば離れるほど脅威度の高い魔物がいるからな。」


「なるほど、冒険者が無理をしないようにの考慮、なんですかね?」


「そういうことだ。ただ、君には特例としてその指名依頼を省いてAランクと同じ全域の許可を出すことになった。」


「えっ!?」


 な、なんか唐突にそんな許可貰っちゃっていいのか?僕はBランクに昨日とつとつに昇格したというのに。


「驚くのも無理はありませんが、とある事情もあるのです・・・」


「あぁ、何でも君は従魔にしていない魔物と会話をしたんだな?しかも向こうからの通訳ではなく、鳴き声通訳ということを聞いたぞ。」


「そうですね、僕には魔獣言語のスペシャリティがあるので。」


 いつの間にかスキルからスペシャリティにと変化していたから、多分これ以上は翻訳をオンにしないと一部わからない魔獣の言葉もあるのは変わらないだろうなと思ってたんだよな。


「なるほど、特能にまでなっているのだな。それならば狂邪の地で一部の魔物との会話による説得も可能だろう。今回はそれを見越した特例になる。」


「もしかして、従魔とは普通会話できないのですか?」


「いえ、従魔を持っている方で念話と従魔対話のスキルを所持している方はいらっしゃいますが、野良の魔物となると、向こうから対話してこようとしてこない限りは無理ですね。」


 従魔と念話で会話するのかな?それは結構遠くまで聞こえるなら地上と空で分かれて戦うとかそういう時に便利かもしれないな。僕は使うかわからないけど。


「ところで、リュクス君は聖族人種、魔族人種の違い聖獣、魔獣の違いを知っているかい?」


「ん、違いですか?なんでしょう、そもそも僕は魔族人種にも聖獣にもあったことがないと思うので・・・」


「あぁ、どうやらやはりご存知ないようですね。リュクスさんはすでに武術大会で一度魔族人種の方と戦った経験がありますよ。空間術を使っていた方です。」


「えっ!?魔族が普通に王都にいるんですか!?」


「そりゃいるともさ。別に魔族すべてが悪ではない。むしろ聖族にも危険なやつはいるからな。ただそう思ってしまうのはしょうがない。聖族主義の体制が過去に一時期あったせいでいまだに魔族すべてが悪だと思っている聖族の住人も少なくないからな。」


「こればかりは難しい問題ですね・・・ちなみに、僕も魔族人種に属することになるね。」


 そういうとテルミクさんは後頭部を羽でこする。そして僕のほうに後頭部を見せると、そこには異様な赤黒い下向きの角が二本生えていた。


「サブマスターのように魔族人種には必ず角があるんだ。色は個体差があるが聖族との違いは正直そこくらいだ。ちなみに聖族にも角のある種族だと角の数が明らかに増えてることで分かるな。」


「僕たち魔族人種には角隠蔽のスペシャリティがあって、よほどのことがない限りは魔族だとはばれません。今のところ僕もギルドマスターと王家の一部の方にしか魔族だと教えてませんからね。」


 こ、こんな近くに魔族人種がいるとは思わなったな。でもサブマスターなんて職にまで上り詰めてるんだから、信頼はしっかり勝ち取ってきてる人なんだろう。


「な?別に魔族って言っても普通だろ?従魔だって魔族だからな。で、魔族とは逆で聖獣のほうの話に移すが、聖獣っていうといい存在だと思っているやつも多いが、確かに馬車馬みたいな弱い生き物で私たちの言うことをよく聞く個体も多いが、特別なとこを守っている個体はなかなかに強力で、その護っているエリアに何かが侵入しようものなら襲う危険性のある個体もいる。そして識別しても危険度や脅威度で表記されるから、魔獣か聖獣かなんて正直わかりっこないというのが現状だ。」


「特別なところ・・・?」


 なんか要石がどうとかって緑の大狼が言ってたのを思い出す。もしかしてだけど、あいつ聖獣だった可能性があるな・・・


「ん?何か心当たりがあったか?とにかく何が言いたいのかというと、狂邪の地というが、魔物だらけというわけじゃなく、そこに住んでる魔族人種なんかに会う可能性もある。出会ったら敵対的じゃなければ友好に接してくれると助かる。逆に言葉を聞かない聖獣もいる可能性があるという話だ。」


「な、なるほど、わかりました。」


「まぁ伝えたいことは以上だ。何か聞きたいこととかはあるか?」


 うーん、そんな風に言われてもすぐには思い浮かぶわけもなく、聞きたいことがあったらどっちかに声をかけてくれと、テルミクサブマスターとギルシュギルドマスターの名前が通信魔道具に追加されたのだった。

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