ダンジョン素材納品
帰ってきて宿の部屋でお昼を済ませる。何気なく帰ってきたけど、ネティスは部屋の中ですらあたりをちらちらと見まわして目を輝かせてた。
この後僕は冒険者ギルドに行くことをみんなに伝えると、レイトは僕の頭の上に、ベードもついてくるようで、ネティスもベードに乗ってついてくる気満々のようだ。
モイザは宿で合成製作をしたいようだった。確かに合成に長けてそうな種族に進化したからな。すでに進化してから作られた毒対抗薬はちょっと違うものになってるから、売るのであれば時間作って商品切り替えに家に戻らないとな。
なんて考えごとしつつ王都南側の冒険者ギルドに到着。相変わらずネティスはそこらじゅう見回してるけど、おとなしくベードの上にいてくれてるのでどっかいっちゃったりはしないようで安心。一応家を出る前にモイザの糸で作ったリングを手のひれに巻いて従魔証にはしておいたから、ギルドで従魔証登録もしないとな。
南側の冒険者ギルドも何かの施設とつながってる様だったけど、表の見た目は同じだからすぐわかった。昼過ぎだからか並んでる人はそれほどいないようだ。
僕が並ぶといつも通りベードは隅にと退散してくれたけど、僕達の後からきた大会でよく見たフクロウを連れた黒いラブラドールみたいな顔をした犬のビスタの人が入ってくる。
その人もフクロウを隅で待たせようとしてたけど、そっちの方にベード達いるんだよ。声かけようと思ったらベードのほうがうまくよけてくれたようで、特にいざこざは起きなかった。
というか王都の冒険者レベルでもベードにやっぱみんな気づいてない?いや、受付の人がちらっとベードのほうを見た気がするな。僕の番が回ってくると大回りでベードが横についてくれる。ネティスの従魔証の話してたから連れてきてくれたのか。
ネティスはネティスであたりの人たちを相変わらず見ているみたいだ。そして受付のヒュムの人はベードをガン見してたけど、僕のほうにと向きなおした。
「いらっしゃいませ。本日の要件はどういった内容でしょうか?」
「えっと、ディヴィジョンマウンテンで素材収集してきたので、その納品依頼の確認と従魔証登録ですね。」
「かしこまりました。ディヴィジョンマウンテンのほうは何層を攻略しましたか?」
「100層までですね。」
「・・・えっと、申し訳ありません。100層、と言いましたか?」
あ、なんか普通に受け答えしちゃったけど、そういえば資料で90層までしかないんだから100層まで攻略した人はいないみたいな話だったりするか?
なんかそんな感じな気がする。周りの人たちもちょっとざわついてる気がする。80層くらいに言っておけばよかっただろうか・・・
「え、えぇと、その80層、80層までです。」
「・・・わかりました。少々お待ちください。サブマスターに連絡させていただきます。」
そういって通信の魔道具に話しかけ始めてしまったけど、サブマスターってギルド長ってことではないのか?
「お待たせしました。3階のギルド長室はご存知ですか?」
「他の街と場所が違わなければわかります。」
「ではお手数ですがそちらでサブマスターがお待ちしておりますので・・・」
やっぱサブマスターって言われてるけどギルド長なんじゃないか!いやまぁ、それならそれでいいけど。ベードについてくるように声かけて3階のギルド長室にと向かう。
ノックすると気さくな感じで入ってくれと言われたので入室。迎えてくれたのは真っ黒な羽にくちばしを乗せて座るカラスのビスタだった。
「やぁいらっしゃい。ここまで呼んじゃってごめんね。でも何やら不思議な従魔も連れてたみたいだし、あの山を100層まで攻略してきたらしいじゃないか。」
「えぇっと、はい。100層まで確かに突破してきましたね。不思議な従魔っていうのは、ネティスのことですかね?」
「ぐぁう?」
じっと見られてるのがわかったのかネティスも声を出す。ただネティスよりもさらにじっと見てたのは僕の頭上の存在だったようだけど。
「おっと、自己紹介もせずじろじろとごめんね。僕はこの王都で副ギルド長を担当してるテルミクだ。よくサブマスターと呼ばれてるからめったに名前では呼ばれないけどね。」
「もしかしたらご存知かもですが、僕はリュクスです。そういえばサブマスターっていうのは?」
「あぁ、他の街では普通ギルド長と呼ばれているのだけど、王都のギルド長は自分のことギルドマスターと呼ばせたいらしくてね。そのせいで僕までサブマスターと呼ばれるようになっちゃったのさ・・・」
やれやれと肩をすくめるけど、まんざらでもないんだろうな。
「ちなみに、北の冒険者ギルドをギルドマスターが、南側は僕が担当してるってわけね。僕の役職は他の街にはあんまりない役職だね。」
「なるほど、そういうかんじなんですね。」
「そういうかんじさ。さて、まずは従魔登録から始めようか。そのヒレ足のトカゲ・・・ネティス君だったかな?その従魔の登録に来たんだろう?他の従魔たちはすんでいるようだし。」
「そうですね、他の街では名前と種族を伝えるだけだったんですけど、何か必要な書類とかありますか?」
「うん?そういうのはないよ。ここでも同じように名前と種族を教えてくれ。」
「わかりました。種族はレークロングネックアクアティックモンスターリザード、名前はネティス・アルインです。」
「おっけー。確かに登録させてもらうよ。いろいろあるから明日にはなっちゃうだろうけどね。それで、100層まで突破したということは90層から100層までの魔物情報も持っていたりするのかい?」
「え、えぇっと・・・」
おっと、そういう話になったか、どうしよう別に教えるのはいいんだけど、結構長くなりそうだよなぁ。
「おっと、教えるのがいやだったら無理には聞かないよ?」
「あ、いえ、かまわないんですけど、長くなりそうだなと思って。」
「時間が気になるのかい?僕は平気だからそちらの都合に合わせるよ?」
「うっ、わかりました、特にこの後用事があるわけじゃないので、遅くならない程度に教えますね・・・」
そうはいったものの91層から100層までにどんな魔物にあったのか、どんな場所だったのか、どう戦ったのかなんかまで聞いてきたので答えていく。ネティスを従魔にした経緯もフェニックスの話を混ぜて話したけど、普通は弱らせて自身の強さを見せることで従わせるんだけどなと返されてしまった。
そんな話を終えてようやくダンジョン素材の話へ。結果だけ言うと、なぜか僕は冒険者ランクBにあげられていた。もはや流れるようにそれだけできていれば試験も不要だという話になっていた。
ただし、問題点が一つ。それは僕のダンジョンポーチに最後に入っていた素材、不死鳥の尾羽と不死鳥の涙という素材だ。
「残念ながらこんなものが出てきてしまうと100層までの情報をやはり流すわけにはいかないな。もしかしたら君以外にも100層まで到達したものはいたかもしれないが、この素材の危険性を考えて情報を流さなかったのかもしれない。」
「そう、なんですか?」
「そうだ。君は来訪者だから実感は薄いかもしれないが、この不死鳥の尾羽を使った薬をつかえば、目の前で死したものであれば蘇らせることができるだろうからな。実際に使ってみるまではしっかりとした効能はわからないが、不死鳥の涙はそれ以上の効果を期待できるだろう・・・」
戦って一応僕たちの勝利みたいな感じだったはずなんだけど、いつの間にポーチに素材が入っていたのだろうか。帰ってきて確認してから渡すべきだったかな?
「これは悪いけど、こちらで預からせてもらっていいだろうか?無論後日になるけどこれに見合う報酬はかならず渡す。」
「はい、大丈夫ですよ。もしかしたら僕が使いたい場面が来るかもしれないですけど・・・」
「あぁ、来訪者といえど死することへの不安はあるだろうからな・・・」
「いえ、僕自身というよりは、従魔たちですね。僕は復活出来ますけど従魔たちはできないでしょう?」
「・・・なるほど、そうだな。申し訳ない。」
何が申し訳なかったのだろうと思いつつ、ちょっと惜しい気持ちがないわけじゃないけどフェニックス素材も渡してしまった。もともとはダンジョン素材は食料になりそうなもの以外は売るか納品するかするつもりだったからね。
そう話したおかげかほとんどの素材は引き取ってもらえたけど、お金に関しては明日までに用意するのでもう一度来てほしいという話になった。それはしょうがないと思いながら今日できることは済ませたのでギルド長室を後にした。