王都での戦闘訓練
懸念してた通り、図書館は従魔入館禁止みたいだった。レイトはばれないからとついてこようとしてたけど、説得して宿で待機してもらうことに。すごく不服そうだったから今から帰るのがちょっと不安。
図書館でダンジョンの情報は90階まで得られた。51階からは暗めな洞窟のようになっていて、ところどころちょっと狭い場所があることと、入った人によって構造が違うらしく、場合によっては今までみたいにまっすぐ次の階段に行くことができなくて、迷うこともあるから注意が必要らしい。
そして問題そうなのは71層からだ。そこから川が流れる環境になるらしい。水生の魔物ばかりになるということだ。水の中は正直こちらから先制しにくい上にちゃんと相手の場所を把握してないと奇襲されることもあるだろう。実際資料にも水魔法による奇襲に注意する魔物が何匹か記載されてたし。
81層からがさらに厄介で川が太くなって湖もできて陸地がかなり少ないそうだ。90層に至ってはほとんど水で埋まり点在する島を飛び移らないと進めないだろうとあった。当然ボス格もいるようで、そんな足場の状況のせいもあってそこから進めないそうだ。
なんか90層のボス格の種族がロングネックアクアティックモンスターリザードとかいうながったらしい種族名だったけど、ロングネックモンスターってことは首が長い怪獣ってことだよな?つまりネッシーみたいなやつなのかな?そこまで僕がいければ見ることもできるだろう。
僕の持ってるスキルに関するスキルアーツもかなり充実してた。火、水、風、土の基本的な技から魔素の消耗は大きいし難しそうな技までいろいろ見てきた。空間術はもちろん、時術もちょっとした応用があったし、四属術に関するスキルアーツを使ったほうがいい場合なんてのもあったし、術法合成で作った合成術なんかの資料も少し読んでみた。すぐに使えそうなものは昼を食べたら訓練所を探して試す予定だ。
資料レベルの内容だけど、それだけの量見てたせいで昼飯時はとうに過ぎてしまった。レイトたち従魔は多分モイザが何か作って食べているだろう。僕は南側にあった露店で見かけたタコスのような物を買い食いしつつ宿についた。
「ただいまみんな。」
「・・・きゅ!」
「うぉ!?な、なんだよ?」
レイトがなぜか僕の上にすっと上ってきて頭をぺしぺしとたたく。なんだなんだと思ったけど、ベード達のほうの様子を見て気が付く。
「まさか昼飯食べてないのか?わざわざ僕を待ってなくてもいいのに・・・しょうがない、なんかさっとつくるか。」
「ばぅ!」「――――!」「コ!」
「わかったわかった、希望通りのものにするよ。」
「きゅ。」
「うん、レイトもね。」
というわけでレイトにはスティック状にしたゆで野菜にバターを溶かして春巻きの皮で巻いて揚げたものを、ベードにはバターをたっぷり使った豚バターステーキを、モイザにはリンゴと牛乳で作った冷たいリンゴオレを、フレウドにはリンゴオレを熱したものをあげる。
僕の分もリンゴオレを作っておいたので、僕は冷たいまま飲んでおく。フレウドもそうだけど、モイザも最近液体を上げることが多い気がするな。でも固体的なものよりも液体で作ってほしいと頼まれるし、もともとは樹液が食事だったんだから平気なのか。
蜘蛛というと他の虫を食べる肉食のイメージだったけど、レッサースパイダーは肉食設定ではないってことだよね。進化しても肉には食べる方面では見向きもしないし、僕に作ってくれるときは普通に料理してるけど。
食事も済んで一休憩したし、訓練所に行くか。場所は宿の人に確認済みだ。訓練所は南側にあるそうだ。聞いた通りのところに大きいジムみたいな施設がみえてきた。建物もそうだけど、出入口もかなりでかい、あのワイバーンが入れるくらいだろう。
防護の腕輪や保護術式なんてのもあるし、従魔との戦闘訓練する人とかいるんだろう。いくつかすでに人が入ってるな。空いてるところに入って訓練用の操作端末水晶にふれる。
なんか、今までの訓練所と違ってかなりメニューが豊富だな。この一角を水で埋めることもできるのか?お、保護術式を1枚分だけどかけることもできるのか!・・・結構高いな。
昨日分の店の売り上げが入ってきて少し余裕はあるけど、今までの手持ちに比べたら少ないからあんまり使うのは避けたほうがいいよな。
「きゅ。」
「え?なに?これ使えってか?」
「きゅ。」
「僕と、ベード、モイザ、フレウドに?」
「きゅきゅ。」
「はぁ!?それで僕と3匹で戦えっていうの?」
えぇ、それはどうなんだ?訓練としては実戦形式のほうが絶対いいだろうけど、僕は技の特訓しに来ただけなんだよな?
「・・・きゅ?」
「あ、えっと、や、やらせていただきます。」
それとも俺とやるか?と右前足に雷をバリバリと見せつけられてまさかの僕とベード達との対決が決定してしまった。まぁ保護術式かけておけば割れるまでは安全か。
僕と3人に保護術式をかけるように水晶に入れようとしたけど、説明的に術式の文様は出てくるけど、どうやらそこからかなりの魔素が必要なので、魔素を補填してくれるスタッフを呼ぶ別料金があるらしい。
「きゅきゅ。」
「ん、レイトが魔素を入れるから大丈夫ってことか?」
「きゅ。」
それならいいかと水晶の設定を保護術式4人分にする。区切られた一角のちょうど中央の床がすこし開いて4つの魔道石が出てくる。床が閉じて魔道石が砕かれると床に術式の文様が広がった。
その文様にレイトが触れると白かった文様が一気に鮮やかな青色に光り出す。これで乗れば保護術式がかけられるそうだ。僕から順番にそのあとにベード、モイザ、フレウドが保護術式一枚分かけられた。
「ルールとしては僕の保護術式が割れるか、ベード達は割れたら下がって三人とも割れたら終わりって感じでいいか?」
「ばぅ!」「――――!」「コ!」
ルール確認が終わると同時に3人は奥側にと待機していつでも戦闘態勢という感じ、あいつらやる気満々じゃないか・・・しょうがない、僕も気合入れてやってみるだけやってみよう。