ベードとフレウドの第二部戦
次の日の大会が始まる。僕は今日はべードとフレウドの試合の観戦を優先する。昨日終わった後に2戦目の組み合わせが発表されて、第一組からいきなりベードとフレウドが同じ組で出場することになってたからだ。
それぞれ4匹ずつで3組残ってるから、ここで勝ち上がったほうが最終の組み合い戦に出場できることになる。ベード対フレウドはちょっと楽しみと思う気持ちと不安に思う気持ちが混ざるな・・・でもどっちにも頑張ってほしいところだ。
同じ組になる勝ち残ってきた他の二匹はシャドウマニピュレイトビックオウルとフォーレッグミノタウロス?オウルはフクロウだろうけど、名前からして影を操るフクロウなんだろうか。
そしてミノタウロスってあのミノタウロスだよな?さっそくミノタウロスとフクロウの対決のようで、リングに上がってきた。予想通りの二本の角を携えた牛顔に筋肉隆々の胴体部分の上半身。そして下半身の足は茶色いけど牛のような四足だ。なるほどあれなら背中に人乗せれそうだな。腰に携えた二本の大きめの斧を構えてフクロウを見つめる。
そしてそのフクロウも真っ白なナイトフライグレートオウルとは真逆の漆黒の羽毛だ。大きさ的には同じくらいだけど、勝ち上がってきたってことは実力は上だろうな。
「それでは中央従魔戦、試合開始!」
開戦の合図とともにフクロウの周りに影がまとわりついて、姿が完全に見えなくなる。あれはベードと同じ技か!でもミノタウロスは慌てる様子もなく目をつぶりその場でじっと動かない。
少しの間の沈黙が、すごく長く感じたけど、ミノタウロスがある一点に向かい斧を投げ放った。ガンッっと空中の何かに当たるとそこから影がはがれて体勢を崩したフクロウが落下してくる。すかさずミノタウロスが駆け寄って、もう一方の斧で振りぬくように追撃する。
保護術式で守られてはいても衝撃は逃がせない。振りぬかれた斧をもろに受けて吹っ飛んだフクロウはそのまま場外にと飛ばされてしまった。
「勝者フォーレッグミノタウロス!」
片手の斧を少し掲げてポーズをとると、投げ放った斧へと向かい回収してからリングを後にした。相手の気配を読むのがうまいんだろうな、ベードはあの相手からも気配を消したまま戦えるんだろうか?
少しするとベードとフレウドがリングへと上がってくる。あいつとの戦いは後でだ、ベード対フレウドどういう戦いになるかな?
「それでは中央従魔戦、試合開始!」
開戦の合図と同時にフレウドは一戦目で見せた炎の渦を自身の周りに展開する。ベードはそれを見て、二本の影を伸ばして渦の下に潜り込ませた。
そしてフレウドはかわしたのか、そのまま渦の外に出てくる。渦のあったところに二本の影の槍先が生え、その根元には大量の油だまりができ上がっていた。あれを引火させたらとてつもない火力になりそうだな。そうやって一気に相手の保護結界を壊したのか。というか炎の渦では引火しなかったのか?
フレウドはその場を離れながらもすかさずベードに向けて風の矢の雨を降らせ始める。ベードは影を操ってそれを打ち払おうとしたけど、その体格からか何本かは当たってしまう。防ぐのに一本の影しか操ってなかったから、もっと影を伸ばせば防げたんだろうけど、すでに伸ばしてた二本の影の槍先が仇になったんだろう。
フレウドはベードに反撃の暇を与えないように既に次の技を放つ。翼を横に広げたまま横回転すると、緑の風が刃のような形となってベードに飛んでいく。
ベード自身に引き寄せていた一本の影槍分の影を使ってその刃を防ぐ。そしてもう一本はフレウドを捕らえるために伸ばしていた。その影からフレウドは転がって逃げていく。そして逃げながらも再度やんでしまった矢の雨を展開、今度は炎の矢の雨だ。
ただ、何度もその場で受けるベードじゃない。いくら範囲が広いとはいえリング全体に降らせられるほどフレウドの矢の雨は広くない。降り注ぐ炎の矢をかわし、影で受けつつ、一気にフレウドとの距離を詰める。
速さでは圧倒的にベードが有利だ。すぐにフレウドを捕らえて影爪を放った。フレウドは転がり続けて少し受け流したけど、その勢いが止まらない。だいぶ端っこにいたのも仇となって、そのまま場外に飛び出してしまった。
「勝者グレートディープナイトウルフ!」
ちょっぴり飛んで地面につく前にリングにと戻ったけど、審判役のスタッフの人はベードの勝利を言い渡す。だけれどベードもどこかがっくりといった感じだ。そういえば昨日聞いた感じ、保護結界を壊しての勝利を狙っていくって言ってたな。場外勝利だったからがっかりしてるのかな?
フレウドもガッカリとしていたけどベードに近寄って羽を差し出す、そしてベードが何か気づいたようで前足と羽で軽くタッチしあってリングを後にしていた。
インターバル終了後に次の試合が始まる。今度はフレウドとフクロウの鳥対決か。とは言っても大きさが全然違うけど・・・
開戦の合図と同時にフレウドは炎の矢の雨を展開したけど、フクロウの影が伸びてフレウドにと襲い掛かる。炎の矢の雨を慌てて降らせて影から逃げようとするも、捕まって拘束されてしまう。
ありゃどうしようもないんじゃないか?じたばたしてるだけか。拘束を解く手段とか持ってないか。フレウドを拘束するために伸びた三本の影だけでなく、自身を守るための影の壁を自分の上にも展開してる。影に関しての扱いはあのフクロウのほうが上なのかもしれない。
フレウドはそのまま影に連れられて場外へ、ほとんど何もさせてもらえなかったな。ちゃんと拘束対策はしてなかったのだろうか?その試合を見て、レイトがため息をついた気がする。そのあとの鳴き声はだからあれほど言ったのにと言ったんだと思う。
そしてベードとミノタウロスの試合が始まる。ベードはどこか緊張した表情だ。フレウド戦では使う暇がなかったのか使ってなかったけど、隠れるあの影の技は使うんだろうか?
「それでは中央従魔戦、試合開始!」
ベードは自身を影で覆い、身を隠す。どうやらフクロウ戦を見てもなお使うことを決めたようだな。ミノタウロスはフクロウ戦と同じように目をつぶった。
でも今度はベードから攻め始める。二本の影の槍先がミノタウロスを襲う。カッッとミノタウロスが目を見開くと、その二本の槍先を斧で引き裂いてしまった。
そして槍先が来た方向とは逆方向を向き斧を構えて走っていく。片方の斧が振りぬかれるが、当たったような音は響いてない。しかしミノタウロスはベードが見えているのか、しっかりと顔で追ってるように見えた。
ベードは姿を現す。隠れてるのにも魔素は使うだろうから、ばれてるなら使わないに越したことはないよね。
お互い少しの間見つめ合うが、ミノタウロスが動き始める。ベードに向かっていき斧を振り上げる。ベードは素早くかわし振り上げた側の腕方面に回り込み、影爪を繰り出すが、ミノタウロスも体を回転させてその影爪後とベードにまで斧を振りぬいた。
避けるために体が浮いていたからかもろにその斧を受けてしまう。何とかリング内で踏みとどまったけど、保護結界にはかなりのダメージが入っただろう・・・
ベードは反撃と言わんばかりに影を二本伸ばしながらミノタウロスに迫る。ミノタウロスの下を通り過ぎ、逆側から影の槍先となってミノタウロスを襲い、ベード本体は影爪をミノタウロスに振りかざす。
しかしその攻めもミノタウロスは片方の斧で槍先を、片方の斧でベードを対処する。ガキンッとベードの爪とミノタウロスの斧が組み合う音がしたが、力負けしてベードは吹っ飛ぶ。
しかしミノタウロスの下半身部分の牛の足の部分を影で拘束されていた。槍先は一本しかなかったみたいだ。もう一本は拘束のために滑り込ませたのか。
でも拘束する場所が悪いな、腕まで拘束できなかったのは痛い。ベードも苦い顔をしてる。ミノタウロスは斧でその影の拘束を切り裂いてしまう。
もう同じ手は効かないだろう。ベードもわかっているのか三本の影の槍先をミノタウロスにと伸ばす。ミノタウロスはその三本の影を斧で切り裂きながらベードに駆け寄る。そして横なぎに振りかざされた斧をよけるベード。しかし避けた先を狙うようにもう一本の斧が振り下ろされる。
ベードがリングにたたきつけられた瞬間、保護術式の破れる音が響いた。
「勝者フォーレッグミノタウロス!」
斧を掲げて勝利を見せつけるミノタウロス。悔しそうな表情でへたり込むベード。体自体に外傷はなかったようで、スタッフが駆け寄るとすぐに立ち上がってリング外に出て行った。
インターバル中に次はミノタウロスとフレウドの試合なことが発表される。ここでミノタウロスが勝利すればそのままミノタウロスが決勝に進むそうだ。フレウド勝利の場合は次のベードとフクロウ戦が始まり、ベードが勝った場合は2勝同士の再試合だそうだ。フレウドには踏ん張ってほしいところだけど、どうなるだろうか?
「それでは中央従魔戦、試合開始!」
インターバルが終了して、フレウドとミノタウロスがリングにのぼり、開戦の合図がされた。開幕と同時にフレウドは炎の渦を展開するが、ミノタウロスがすさまじい勢いで斧を振りかざすと炎の渦がかき消されてしまった。
びっくりした表情で一瞬動きが止まるフレウド、その隙を逃さないミノタウロスが一気に近寄りフレウドに向けて斧を振り上げた。
保護術式で守られたけど、吹っ飛ばされたフレウド。軽いせいか結構な勢いで飛んだけど、何とかリング内で着地。安堵しつつ気を改めたのか、フレウドは油弾をミノタウロスの足元めがけて放つ。
しかしミノタウロスは華麗なステップで避けながら再びフレウドに迫る。慌てて転がって逃げようとするが、あっけなく斧の攻撃にとらえられて、今度は場外にまで吹っ飛ばされてしまった。もうちょっとしっかりしてほしかったな・・・
「勝者フォーレッグミノタウロス!」
これでこの組の勝ち上がりはミノタウロスに決定か。頭上のレイトがなんか不穏な雰囲気なんだけど、帰ってきたら僕は健闘をたたえてあげよう・・・
リュクスの従魔同士で戦わせたかった話