対決 空間使い
さて、次の人は、すごく深い黒色の髪とローブ、そして真っ黒な本が印象的なヒュムの人なのかな?エルフとかドワーフみたいな特徴はないけど、本当にヒュムなのかと思わせる雰囲気をしてる。
もしかしたら顔は出してるけど、なにか認識阻害系の術法をかけてたりするのかな?その可能性が高そうだけど。
そんなことより戦いがはじまる。相手はローブとか本とかで術法使い系なのはわかる。なら一度見られて対策される可能性はあるけど、しょっぱなからトランスポートで距離を詰めよう。
「それでは北東リング、試合始め!」
「スペースエリアコントロール。」
「えっ!?」
トランスポートが使えなかった!?今のなんだ!?
「ごめんなさいね。私も空間についてはちょっとかじってるの。今このリング内のエリアでは私しか空間に関する技が使えなくなったってわけ。もっとも、私のコントロール下よりも強力な空間術を使えたら、話は別だけれどね。」
「・・・丁寧に教えていただいて、ありがとうございます。」
そこまで教えるってことは、僕に破られることはないって思ってるわけか。ここまでの試合でそんなに空間術を使ってないけど、僕の空間術がどんなもんかをそれだけで見切られたわけか。すこしかじってるってレベルじゃないんだろうな。
相手は僕がどうするのか様子見っぽい感じ。僕もどう攻めてくるのか見たいんだけど、それでへたしたら一撃で吹っ飛ばされたりする可能性もあるのか。
こっちから攻めていくしかないか。その隙を狙ってくるんだろうから、それだけは避けれるように意識しておかないとな。
「フレイムストリング、そしてバインド!」
「その技は見飽きたわ。ショートテレポート。」
一度でも拘束できればと思って炎の紐を20本出して拘束しようとしたけれど、あっさりと短い転移であっさりよけられていく。
それでも切り落とされてないから、何度も何度も拘束しようと紐を襲い掛からせる。転移先を狙おうとかもするけど、的外れな場所を狙うことになるし、まったく捕まえられる気がしない。
「ん、切らないと結構しつこく使えるのね。なら行くわよ?ディメンジョンブレイク!」
なんだ!?空間が切り裂かれた!?20本の炎の紐がすべて切られた。それどころか、僕のほうにまで届いてくる!?
どうせ炎の紐はもう操れない、今はよけることに集中!横に広い攻撃だけど、空中に逃げるのは悪手かな。自分の体にヘイストかけて、思い切り範囲外まで逃げきる。
「うっそ!なにいまの動き!直撃コースだからよけても上によけると思ってたのに予定外だわ。」
「そりゃ、どうも・・・」
短い時間のヘイストなら、何とか耐えられるな。でももう一回来たらどうしよ?いや、ヘイストで横によけないと、多分空中を狙われて負けそうだな。なら使わせないように攻めて攻めて攻めまくるしかないか!
「フレイムランスレイン!」
「それも見たわ!ショートテレポート。」
フレイムランスをよけられるのは予想通り。転移したその瞬間を狙って、番えた3本のほとんど見えない風の矢を放つ!
「えっ!?うっそ!?ウィンドアロー!?見えなくてよけれなかったわ・・・でも、つぎはないわよ?」
やば、今のでもうばれたか。それにせっかく当たったけど防護の腕輪にあんまりダメージは行ってないか。風の矢をもっと番えられればもう少しダメージ与えられたんだけど。
僕はとにかくフレイムランスレインを降らせ続けてたり、フレイムウェーブをよけさせたりして少しでも隙を作ろうとする。でも素早くなんども転移して隙がある気配なんて一切ない。
「くっ、結構しつこいわね!ならもう閉じちゃうわよ!スペースエリアコントロール、フレイムクローズ!」
「はぁ!?」
思わず変な声が出た、僕のはなったフレイムランスレインもフレイムウェーブもその技を出された瞬間に消え去ってしまった。
「ふぅ・・・空間中の炎の魔素が高まってたから閉じれたわね。でもさらに魔素消耗しちゃったじゃない。さて、降参するかしら?」
「・・・ウォータウェーブ!」
「うっそ!水まで!?あぁもう!ショートテレポート!」
ちぇ、さすがにこの距離じゃ気は緩んで当たったりはしないか。にしても炎が使えなくされるとは思わなかった。そんな空間術まであるんだな。でもなんか炎の魔素が高まってたから閉じれたとか言ってたな。
今はそれはどうでもいいか。僕が不利になったことに変わりはない。床が石だけど、土術使えるかな?触れてみるけど、厳しそうだな。水と風で対処するしかないか。
ウォータウェーブで牽制をしつつ、できるだけ力を入れて透明な風の紐を空中に作り、拘束しようと試みる。よし捕まえた!
「えっなに!?風の拘束も使えるの!?あぁもううっとうしくなってきたわね!エスケープテレポート!」
「くっ!」
一瞬捕まえたけど、やっぱり空間術で逃げられちゃうか。炎でも同じ結果だったかな。でも拘束できたおかげで、少しは防護の耐久が減っただろう。
「ちょっときりなくなってきたわね!ディメンジョンブレイク!」
ついに相手から攻めてきたか!ヘイスト使って思い切り避けるしかないけど、相手も使った後は少しは隙ができるみたいだ。ウォータアローを5発を撃つと、テレポートでなく普通によけようとして、2発だけ命中。
でも僕のほうにもスペースボールのようなのが飛んできてたようで、それが思い切り当たる。そのせいですこし吹っ飛ばされたけど、何とか当たり所的に場外には落とされなかった。
「やるじゃない・・・やっぱりこっちから攻めると反撃食らっちゃうわね。」
「・・・きりが、ないですね。」
今ので分かった。こっちがじり貧だろうな。相手の防護を削ってはいるけど、場外にはじき出されたら一発で終わりだ。ここまで来たんだから、勝ちたい。
空間術を防がれてるのと、炎術を防がれてるのがすごく面倒な感じだ。特に空間掌握されてるこの感じがめんどくさい。どうにかして空間掌握し返してやりたい。
掌握し返すことを考えていたからか、頭の中のイメージが浮かぶ。何もない空間を、いやこの次元空間を撫でるように右手を動かす。
「次元空間を愛でる手、ディメンジョンハンド。」
「えっ!?」
相手に占領されてた空間が戻って来る。いや僕が掌握し返してるのがわかる。これで多分、テレポートされることはないだろう。そのまま次元空間を使って相手を拘束する。
「ディメンジョン、バインド!」
「うっそ!?このまま私の負け!?」
そして場外にと放り投げる。ちょっと叫んでた様にも聞こえたけど、外傷なしで場外にと放りだせたようだ。でもすさまじく、疲れた。おもわず片膝ついてその場に座り込む。
「防衛者勝利!」
魔素補填ポーションを飲まないと魔素がもうほとんどない。数発ファイアアローを打つか、数分フリップスペースが使えるかどうかってくらいだろう。少し休みたいとこだけど、そんな間はあるわけもなく、すぐに次の相手である虎のビスタの人がリング上へと昇ってきた。
「悪いね。でも7勝目の前に休憩はさせないよ?」
「君、続けるかい?始める前に棄権もできるよ?」
「いえ、続けます・・・」
スタッフの人に棄権を進められたけど、あと一勝なんだ。ここで終わるのはさすがにない。拘束みたいな大きい技はもう使えない。アローで数発じゃ決定打不足。立ち上がってポーチから杖を取り出して構える。
「それでは北東リング、試合始め!」
「フリップスペース!」
「悪いが一気に決めさせてもらう!」
一気に詰め寄ってきた虎の人は無手のまま僕に突っ込んできた。対応しようと杖を横に振るが、上手く姿勢を低くして杖先をよけられる。
「爪激!」
少し伸びた爪が僕の脇腹を狙い、薙ぎ払われる。思わす杖を引いて防いでしまったけど、そのせいで杖がさらに消耗した気がする。
「連爪!」
さらに杖に気を取られたせいで、もう片方の手からの三連撃をよけることができず、もろに受けてしまう。すぐに後ろに下がったから、まだ防護の腕輪は壊れてないけど、これ以上杖を使ったら杖壊れちゃうかもしれないか?でもここで負けたくない、もう少し頑張ってくれよ・・・
「しぶといな。しかし、術法使いのそなたに接近戦でビスタの我が負けるわけにはいかないのだよ!」
そこから相手の怒涛の攻めが始まる。何とか杖先で爪をいなそうとするけど、するりと抜けられて防護が消耗していく。距離を離したくても、相手が早くてもう距離を離せない。それどころかこっちはさっきの試合の疲労だって残ってる。
最後はあっけなく僕の防護が壊れて試合終了となった・・・
「挑戦者勝利!」
「術法使いとは思えぬほど粘ったと思う、君がベストコンディションなら俺が敗北していただろう。」
「はぁ、はぁ・・・ありがとう、ございました。」
ちょっと息が切れてる状態だけど、スタッフさんの手は借りずにリングを後にする。くそっ、7勝までもう少しだったのに惜しかったな・・・
修正しました
違和感ある部分があるかも