王都到着
予想通り次の日の闇の刻の少し前くらいにディヴィジョンマウンテンを抜けきった。でも街が目の前ってわけじゃなく、ずっと明るかったダンジョン内と違って、きちんとした夜の暗さを感じながら一応遠目に見えてる大きな壁を目指す。
そこからさらに1刻以上はかかっただろう。何とか王都の門に到着したけど、今まで以上の壁の大きさだし、門もやたらめったらでかい。馬車どころかもっとでかい何かが通るためなんだろうか?
門兵の人に従魔についていろいろ言われると思ってたんだけど、特に確認作業もなく普通に通してもらえた。いることに気づいていないのかと思ったけど、どうやらそういうわけじゃなく、従魔持ちの人が通ることもあるからいちいち確認しないと言われた。
とはいえそのまま入っても王都について何も知らないし、門や壁の大きさからもでかいのはわかる。というかそう、壁だ。街の壁からさらに東西方面にその高さのまま伸びていってるようだ。そこまで伸びていってるのかわからないな・・・
まぁそれはさておき、門兵の人に従魔も泊まれそうな宿について聞くと、ダンジョン宿と普通の宿どちらに泊まるつもりなのかを聞かれた。
悩んだけれどダンジョン宿で生産もできるところがいいというと、それなら南側中央の分岐から少し東にある山と攻撃魔道石の看板の宿がお勧めだと教えてもらえた。
夜も深いので宿で冒険者ギルドや商業者ギルドの場所は聞くことにしようと思って向かうことにした。というか本当に広いんだな。さっきの聞いた感じだと北側と南側に大通の中央分岐部分があるってことだよね?あ、武術大会はどこで行われるのかも聞かないとな。
なんて考えつつ街の大通りを歩くけど、闇の刻を過ぎたというのに結構な人通りだ。露店もまだ出してるところがある。おぉ!僕の求めてたその場で串に刺した鶏肉を炭火焼きして売ってる露店がある!プレイヤーなのかな、それとも住人なのかな?まぁそこは気にすることじゃないだろうけど、つい買い食いしてしまった・・・
ついでにベードも欲しがっていたのでベードの分も買ってあげることに、おいしかったようだけどどうやら僕からご飯をしっかり食べたいようで、一本分で満足したようだ。なかなかかわいいこと言ってくれるじゃないか。
そのあとは夕飯食べてないことをそれで思い出して早めに宿を目指した。あったあったここだな。あの門を見たから結構期待してたけど、街並みの家や店もそんな大きくないし、宿も思ってたより大きくなかったな。
中に入ると真っ黒な牛顔のビスタの男性が受付をしていて、こちらに気づいてすぐに声をかけてきてくれた。
「いらっしゃいませ!従魔と共にダンジョンに行く人のための宿へようこそ!お泊りでよろしいですかね?」
「あ、はい。」
「この宿は10日分で3万リラいただきますよ!ただし祭壇の利用は自由ですし、部屋内での生産もタイルの上で行っていただければ構いません!また利用していただけるのであれば素材の買取も行っていますので、お気軽にお申し付けください!」
おぉ、いいお値段だけど結構至れり尽くせりな宿だな。僕の持ち金なら払うのは苦ではないし、ここでいいだろう。でも少し気になったことがある。
「ここに決めるんですけど、一つ訪ねたいことが、そんなに従魔を連れているお客さんっているんですか?」
「そうですね・・・あまり多いとは言えませんが、当宿はこの店に4つの部屋、ほかの場所に6つの貸家宿があるのです。大きすぎる従魔をお連れの場合は貸家でも難しいですけれど、亜竜くらいならば入れる大きな獣舎つきなんですよ!」
「えっと、もしかしてこの宿内でも従魔は獣舎に入れないとまずいですかね?」
「おや?珍しいですね、普通獣舎はあるのかと聞かれるのですが、この宿にも裏手に獣舎もございますが、貸家ともどもお部屋の中に従魔を入れていただくのは問題ありませんよ。」
「それなら安心しました。では3万リラお支払いします。」
「はい、確かに承りました。従魔は後程お連れになるのですかね?お部屋は左手手前の3番になりますごゆっくりどうぞ。ご用件の際に自分がいなければこちらの水晶でお呼びください。」
おっと、深々とお辞儀してもらったけど、どうやらベード達に気がついてない?ちゃんと教えておいた方がいいかな?
「えっと、すでに連れてきてるのですけど、気配を消してもらっていて・・・」
「おっと、これは失礼しました!ですがお気になさらず、どのような従魔でも構いませんので。」
「そうですか、ならこのまま部屋に行かせてもらいますね。」
生産宿なのにビスタの人なんだなとは思ったけど、そこは僕の聞くべき話じゃない。街をめぐるのは明日にするから何がどこにあるか聞くのは明日にするとして、部屋に入ってのんびりしましょうかね。
おぉ!今までの宿よりも明らかにでかい!タイルも広々と3か所あるし、ベッドはダブルを通り越してキングサイズかなこれ?そのまま横になれそうな柔らかソファーも2つも置かれてるし、机だけはシンプルな感じだけど豪華だな。
というかさらに備え付けのキッチンがあるようだ。なんかIHみたいな見た目だけど、これも魔道コンロかな?ありゃ、見た目通り火が出ない熱で温めるタイプなのかこりゃ残念。自分の料理セットを用意して、みんなの分夕飯を作り上げた。
レイトにはさっと茹でたキャベツとニンジンを白パンに挟んだ野菜オンリーサンド。最近のお気に入りらしくだいたいこれをねだられる。
ベードには豚肉の塊を分厚く切って焼いた豚ステーキ、味付けにはほんのり醤油を使ってるだけだけど、かなり好評のようだ。
モイザはリンゴや桃を茹でて柔らかくしただけのをあげる。自分で茹でるより僕が茹でたほうがおいしいそうだ。質としては同じのができ上るんだけどな・・・
フレウドには今回のリクエストでウィンドボールを食べさせてあげる。大体炎が主食だけどたまに風を食べたくなるらしい。一番は油だそうだけど今日はウィンドボールの気分だったらしい。僕の風術練習にも一応なると思うから全然いいけどね。
そして僕はジャガイモを薄くスライスしてパリパリになるように焼き上げる。これがまたたまらない。チーズとかかけて食べたいけどなぁ。王都にならさすがに乳製品あるだろうか?ちょっと楽しみ。
食事を済ませて腹ごなしついでに空間術の特訓も少しして、かなり遅い時間になってるので就寝。でもちょっとお試ししたいことが。
「ベード、一緒に寝てみるか?この大きさのベッドなら一緒に寝れるだろ?」
「ば、ばぅ。」
ダブルでもさすがにベードが乗るとちょっと狭かった。寝れないことはないけどベードは遠慮して床で寝てたんだよな、乗りたそうにしてたのに。それに僕もちょっともふりながら寝たいんだよ。
僕がそう言うならみたいな感じに声を出したけど、ちょっと喜び気味に尻尾を振りながら乗り上がってきた。
ついでにいつも一緒に寝てるレイトだけでなく、モイザとフレウドまでベッドに乗ってきた。みんな僕にくっついてなかなか気持ちよかったのでそのまま眠ってしまっていた。
祝?100話