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いろいろ問題がおきてるようです

サブタイトルになんてつければいいのか悩みます

息抜き小説なのでふんわりつけてみました


 本日は光の風の刻から北門の出たところで待機中。

 門から出て街道を歩き始める人や、朝の荷馬車を見つつ、朝食にと買ったウサギサンドを頬張っている。

 このついてるのはマヨネーズだろうか、兎肉とよく合うな。

 僕の昨日作ったのよりやっぱうまいなぁ、もっとも、使う兎肉の質だって違うだろうから、しょうがないんだけど。

 朝食べるとやっぱり力がわくな、ここ3日間は夕飯の1食しか食ってなかったから、やっぱり3食くらいしっかり食うべきだろうか。


「お、なんだ早いじゃねぇか」


 ちょうど食べ終わったら、ドーンが門からこっちによって来ていた。


「まぁ、この辺だとちょっとなんだな、奥まで歩くぞ。」


「了解。」


 言われるままに人の少ない街道奥から、さらに草原にと入っていく。昨日の僕と違って、やはり一切ウサギが出てくることはない。でも逆に、僕は15匹をまばらに倒すのにも結構時間がかかった。適当に歩きすぎたのが原因なんだろうなぁ。

 一昨日もドーンと別れてからは、見つけるのに時間かかってたし。こうして見つからず歩くのはもちろん、倒したい相手を見つけるのにも、ちゃんと気配を読まなきゃいけなんだろうなぁ。


「まぁこの辺でいいか、まず、どのくらい集めた?」


「兎炭のことだよね、とりあえずこれだけ。」


 ドーンに20個を手渡すと、ちょっぴり渋い顔をされる。


「そうか、ファイアボールしか使ってないのか。

 まぁそれしか教えてねぇけど、昨日のうちに考えて、他にもできると思ったんだがな、さすがに難しかったか。とりあえず報酬だ、証明出せ。」


 証明を出して、報酬を受け取る。これでまた200リラ・・・ん?


「えっなにこれ、ちょ、間違ってるよ!」


「間違ってねぇよ、吹っ掛けてきてんのは向こうだ。

 まったく、俺相手に騙そうとしやがったから、きっちり絞ってやったぜ?」


「えっ、どういうこと?」


 さっぱり意味が分からないけど、

 僕のさっきまでの残金は、サンド代を引いて457リラだったのに、

 3057リラという残額に膨れ上がっていた。


「あぁなんだ、まだ質見ることできないのか。しょうがないか、指摘してやったのはついこの間だもんな。

 俺も若いころに、嫌になるほど何日もウサギを狩って、ようやく兎の素材の質が見れるようになったもんなぁ。」


 う、ちょっと思い出に浸ってていいにくい。


「えっと、その、もう質は見れます。」


「は?」


「いえ、その、質、もう見れます。」


「俺の聞き間違いか?もう質が見れるようになったって言ったのか?速すぎねぇか?何識別したんだよ?」


「えっと、その辺の雑草を・・・」


「雑草だぁ!?はっ、この草原でか!そりゃ傑作だ!でも確かに効率は良さそうだな、というか、もしかしてお前、結構いろいろ識別できるのか。」


「え、はい、【全識別】ってスキルを持っています。」


 あれ、教えてなかったっけ。


「おいおい、マジかよ、Dランク昇格の時必須で、俺がどれだけ苦労したと・・・

 いや、お前には関係なかったな、来訪者は祝福や恩恵をもらってるんだったよな。

 どういうものをもらってるのかは、人によって違うみたいだが、お前はかなりいいものもらってるみてぇじゃねぇか。聖神様のお導きかね。」


 おどけるように言ってるけど、実際に僕のは聖神様のお導きだろうな。


「まぁそんなことはいい、質が見れるなら、ちゃんとこれの識別も改めてしておけ。

 どうせ見れるようになる前に見て、そのあと見てないんだろ?」


「うっ、おっしゃるとおりです・・・」


 ぐうの音しか出ない大正解です。


「これもいっしょに識別してみろ。」


 言われるままに、出された兎炭と兎皮を識別してみる。


----------

≪識別結果

突撃兎の皮 質:2C

死後に素早く肉体からはがされた、

アタックラビットの胴体の皮≫


≪識別結果

突撃兎の炭 質:3C

強力な火によって炭化した、アタックラビットの一部≫

----------


 んん!?質3C?これ、僕が燃やし尽くしたウサギの炭だよね。


「こっちの皮は俺が剥いだ皮だ、俺よりもうまく素材を剥げるやつはいるが、それでも突撃兎からじゃ、どんなに丁寧にやっても、2A出すのがやっとだろう。

 そういう素材なら3匹分集めて露店で売れば、合計100リラ行くかもな、いや、さすがにもう少し行くか?


 とにかくだ、突撃兎の素材で質3の台まで行くのはすごいんだ。初めての奴で、水ぶっかけちまったのも質3Gだったんでな。

 俺も受け取ってすぐの時に識別しておけば、簡単にギルドに提出なんかしなかったぜ。って、識別する癖付けろって言ってるのに、俺も人のこと言えねぇな。」


 申し訳なさそうな顔でおどけて笑っている。

 つまり、そういう自分のミスで変に騒ぎになっちゃったから、こうやって面倒ごとを受けてくれてるってことなのかな?優しいとも思ってたけど、ちょっと納得。


「まぁとにかくだ、まず質の面でも大きな発見なわけだ。とくに3Cの質までいけば、他の街に輸出してもいいほどだ。

 しかも、アイテムポーチ製作に役立つと来てる。これが量産できて、広がれば、この街の新たな名産の一つとして組み込めるはずだ。

 その先駆けとなるような、初めのうちから、10個でたった100リラしか出さないのは、俺が許せねぇ。」


 うぅん、よくわからないんだけど、そういうもんなのだろうか?

 何か比較対象がほしいとこだけど。


「参考までに、他の兎の素材って、報酬どのくらいなんです?」


「ん?多いのは質不問の肉だな、10集めて30リラってとこか。脚とか皮は、しっかりした加工素材に使われることが多いからな。

 個人依頼でも質2C以上を指定されてることが多いな。大体10で50リラってとこか。

 そうじゃないのは、ほとんどは露店でたたき売りするか、場合によっては破棄するんじゃねぇか?」


「うーん、それを聞くともらいすぎてる気がしちゃう。」


「いや、今までこの素材が出ていなかったのを、お前が見つけたんだ。俺は商業者ギルド抜けちまったが、もっと市場価値知っておけよ。新しいものはできるだけ高く見積もるもんだ、広まってからゆったりと価格が落ちてくるんだぜ。」


「うっ、なるほど、わかりました。あれ、というか商業者ギルドを抜けた?」


「あぁ、この街の生まれでな、始めは俺も露店でと依頼で稼いでたんだが、金も少し溜まって、依頼にも慣れたんで、冒険者一筋にしてな。一旦はここから出て、いろいろ回ったもんだぜ。でも結局、ここに帰ってきて、教官やってるってわけだ。

 そりゃ旅は楽しかったけどな、今はここでゆったりやってるほうがいいんだわ。」


 うーん、どこかさみし気な顔をしてるけど。

 もしかして旅で仲間を失った、とかじゃないだろうな。

 あんまり深く聞くのはやめとこう。


「えっと、その話はいったん切り上げて、兎狩りしましょう。」


「おっと、そうだな、グダグダ話してたら遅くなっちまう。

 んで、もしかしたら質は落ちるかもだが、一気に片付ける方法を考えてきた。まずはこれだ、これをこの距離で燃えるようにイメージできるか?」


 ドーンがポーチから取り出したのは、大きめの円柱型の木片だ。大体突撃兎くらいの大きさだから、いい練習台なのかな。

 この間の木片と違って、木の皮が付いてるから、加工とかはされていないみたいだし。

 それをちょっと遠く、大体ウサギがいつも穴から出てくるくらいの距離に置いた。この距離であれが燃えるイメージか、まぁやってみるか。

 近くで火を出すイメージと違って、なんか難しいな、小さな種火でもいいから、燃えろ!


「お、ついたじゃねぇか、って小さいな。

 もっと大きくいけると思ったんだが、そうだな、ファイアメモリーといってみながらもう一回だ。」


「う、うぅん?ファイアメモリー!」


 うぉ、木片丸ごと、一気に燃え上がっちゃった。

 さっきまで小さな火がついてる程度だったのに、そのまま燃え尽きた木片は炭となっていた。


「よし、いい感じそうだな、次は3ついっぺんにだ。難しかったらファイアメモリーって言っておけ。」


 炭を回収されると、離れた位置に3つ。さっきと同じほどの大きさの木片が並べられる。

 うーん、技名声に出さなくてもできるかも含めてやってみよう。ファイアメモリーっと!


 ゴウッと3つの木片が燃え始める。チリチリと音を立てて、それほど時間がたたずに燃え尽きていく。さっきよりも燃え尽きるの早くなった気がする。


「良いじゃねぇか、扱いがうまいな。うちの術法使いからこういう練習を聞いてきたんだが、どうやら行けそうだな、よし、俺が【トレイン】してくる。

 お前はそれを全部今ので燃やすんだ、行ってくる。」


「えっ、ちょ!」


 待ってという前にダッと駆け出してしまう。少し離れた位置を一気に駆け続けてるけど、速すぎて声をかけても聞こえるのかどうか。

 呆然と見ていると、こっちにと走ってくる。その後ろから、兎たちが20、いや30匹はついてきてる。

 大規模トレインじゃん!突撃兎だから何とかなりそうなのが救いか。

 もう少し近づかないと、多分ファイアメモリーの射程範囲じゃない。

 何だろう、この技の射程範囲がわかる感覚は、意識できる、もうすぐ全部を一気に燃やせる。

 そして、そんな風に一気に燃やしても、魔素の消耗は大丈夫だと思える。

 自分の感覚だけど、なんでわかるのか不思議だ。

 不思議だけど、この感覚に身を任せる。口に出したほうが安定しそうだな。


「ファイアメモリー!」


「っ!ちょっと調子に乗って、連れてきすぎたかと思ったんだがな。こりゃすげぇや。」


 追ってきていたウサギたちは、燃え上がったことで足を止めて、その場で燃え尽きて、炭にと変わってしまった。大虐殺だな、ははは・・・

 なんか疲労感を感じる。


「さすがにちょっと疲れたっぽい?」


「おいおい、ちょっと疲れたくらいだぁ?今のはぶっ倒れるところだろ、どうなってんだお前の魔素量。数値は200って言ってただろ。」


 うーん、少し上がってはいると思うけど、どうだろう。


----------

魔:50/250

---------


 なににどのくらい消耗したのかはわからないけど、どうやら200は確かに消耗したようだ。

 でも最大値がさらに40も上がって250になってる。


「どうやら250になってたみたいです、今は残り50ってとこですけど。」


「はっ、まじかよ、でもその調子なら、しっかり休んでからもう一回、俺が40匹連れてきても行けそうか?」


 う、うーん、どうだろういけるのかな。


「わかりません、自信はないですね。でも仕留め損ねたら仕留めてくれるならやってみます。」


「当たり前だろ、そういう始末はちゃんとやってやる、今だってやってやるつもりだったんだがな。

 というわけで、炭集めは任せろ。」


 ばつが悪そうな顔でいいながら、せっせと炭を集めてくれてる。

 うーん、なんかてつだったら逆にダメって感じ?しょうがない、この近くに確かノビルとレモングラスが生えてたはず。

 えーっと、あったあった、識別していって、レモングラスを20株ほど発見。とりあえず回収しちゃいましょう。

 近くにノビルの群生地も発見、いっぱい生えてる。

 うーん、あとポーチに入るのは33か、あとで兎肉入れるのも考えるとちょっと少ないか。やっぱり皮と脚が邪魔だな。

 改めてみてみるとどちらも質は2G、僕が解体してるもんな、やっぱ兎肉と同じ質か。

 それより低くないだけいいんだけど、これ買ってくれる人はいるのだろうか。


「集め終わったぞ、まだ昼前か、今までと違って早く終わったな、最近はなぜか昼飯遅くなること多かったからな。」


 なぜかの部分で僕を見るのはやめてください。視線が痛いです、迷惑かけてます。

 でも、僕なんか昼はまともに食べてなかったんだからな。

 まぁ現実では少食だけど、こっちにも影響があるのかな。食べたいという気持ちはあるが、我慢できないほどじゃない。


「まぁそれはいい、何雑草なんか集めてるんだお前。」


「あぁ、これ食ベれるんですよ、結構おいしいんです。昨日見つけたんですけど、料理に使ってみようと思って集めてるんです。」


「ふーん、そうなのか。というか、お前料理できるのか。ここでもできるのか?」


「えぇ、高い買い物しちゃったので、できちゃいますね。」


「そのポーチじゃ持っていける量が少ないだろ、その場で作れば、素材をポーチに入れる必要はない。出来上がった料理をポーチに入れることができるぜ。」


 う、うーん、それってどうなんだろう。

 確かにポーチは質の劣化が起こらないみたいだけど、取り出すときとか入れるときにこぼれそうだなぁ。

 それに、やっぱりせっかく作るなら、いくら温かさが失われないとかでも、その場での作り立てがいい。


「うーん、なんかちょっとイメージと違くて、まぁせっかくなのでこの後、兎肉でお昼作ろうかとは思います。」


「ほぅ、なら俺がさっと仕留めてきてやる。代わりに俺の分も作ってくれ。」


「えぇ!?お店みたいにはおいしくないですよ?」


「野外料理にそこまで期待しちゃいねぇよ、んじゃすぐもどるぞ。」


 すぐに駆け出して、粒ほどの大きさまで遠くに行ってしまう。

 まぁこのあたりのはさっき狩りつくしちゃったもんなぁ。

 とりあえず肉以外の準備しておくか。

 料理セットを取り出して、出てきた机にノビルをさらに摘んでいく。

 そして、ノビルとレモングラスはしっかりと洗う。

 ノビルは根と葉を切り分けて、レモングラスとノビルの葉を同じ大きさに小間切りに。


「おう、持ってきたぞ。」


「えっ、はや・・・」


 机の上に兎肉が10乗せられる、質は2C、とてつもない速さだったのに、解体で質は落としてないのか。まぁあの手際だもんな。


「よし作ってくれ、俺は椅子で待つ。とりあえず1つ焼いてくれればいいぞ。」


 ドーンがポーチから丸椅子と丸机を取り出し、丸椅子でくつろぎ始める。

 一応もう一つ丸椅子があるので、僕用なのかな。

 あの椅子と机いいな、外で食べるならあぁいうのほしい。昨日は立ったまま、この料理机の上で食ったからなぁ。まぁさっさと焼き上げちゃいましょう。先にドーンの分からだ。

 兎肉の両面に二種の葉をまんべんなくつけて、ちょっと押し付けるように焼き上げる。

 立ち込める肉と酸味の香り、たまらない。

 でもしっかりと焼き色を付ける、もちろん焼きすぎたりもしない。このくらいでいいかな、ノビルの根も切り分けて肉に乗せて、完成、どうよこれ!


----------

≪識別結果

突撃兎の挟み香草焼き 質:3D

アタックラビットの肉に薬草の葉をまぶし薫りよく焼き上げられた一品

添えられた野草の根が食感と風味にアクセントをもたらす≫

----------


 くぅ、さすがに3Cとはいかなかったか。でも昨日に比べたら全然上出来だな。


「おま、これ・・・いや、食ってみなきゃわからねぇか。それで、お前の分は?」


「この後作るよ、先食べてていいよ?」


 机に置いた後、すぐに料理机に向いたから、後ろから声かけられたけど、振り向かずに同じ要領でさっさと仕上げる。

 僕も早く食べたいからね!でも焦って葉ついてないところができたり、焼き加減を間違えたりしたら台無しだ。

 そこはきちんとやって、ちゃんと同じ質で出来上がった。

 そしてドーンの机にと振り向いたら、まだドーンは食べてなかった。


「あれ、食べててよかったのに、冷めちゃいますよ。」


「いいんだよ、お前が作ったんだ、先に食うわけにはいかねぇよ。」


「そうですか、じゃあこれどうぞ、僕こっち食べますね。それじゃあいただきます!」


 ドーンに渡してた皿を奪って、新しくできたほうを渡す。

 そして僕も席について、もう辛抱なりません。いただきます!


「あ、おい、くそっ、まぁいいか。」


 ドーンが何か言いかけたけど気にしないで一口。口の中に広がる酸味、清涼感、肉の風味。あぁ、自然の味だ、自然だけの味だ。

 ノビルとレモングラスが焼けたことにより、表面はほんのりパリッとした食感すらある。ノビルの根のしゃくしゃくとしたアクセントもいい。

 美味しい、こりゃ食い終わったらもう一つだな。


「ふぅ、あっという間になくなっちゃった、もう一個作っていいです?」


「だめだ、一つじゃお前の分だけだろ。持ってきた残りの肉全部焼け。最後に焼いたのはお前のだ!」


「そんな横暴な!」


 えっ、なんで!?急になんでそんなことを?


「ちっ!野外料理の域超えてるぜ。ヘタすりゃ店で食うよりうまいぞこれ。

 ・・・一皿40リラ出す、作ってくれ。」


「うぇ!?40リラ!?そんなもらえないんですよ!作りますけど、お金いらないんで食ってください!」


 ちょっとなにいってるのかわからないけど、肉は取ってきてもらったものだし、野草はその辺に生えてるものだ。お金を取るわけにはいかない。とりあえず作り始めちゃおう。


「それくらい出す価値はあるぞこれ。こういう食い方はないわけじゃないが、なんでこんなうまく感じるんだ?もっとうまいもの食ってる自信あったんだがな。」


 なんかべた褒めされてるけど、そんなこと言われたら恥ずかしいじゃないか!

 でも手は止めないよ、しっかり作り上げる。

 作ったその場から手渡していく、兎肉は僕が解体したものよりは大振りだけど、それだってドーンの大口で食べれば4口ほどだ。

 渡した後、次のができたころにはもう食い終わっている。

 最初のと合わせて5皿食べ終えたところから、ポーチに入れてたの見てるからな!まぁ作るけど、最後までさ。

 ドーンが8皿、うち3皿をポーチに入れたけど、僕の2枚目用の香草焼きは死守して食べれました。

 というか、お皿3枚どうしよう。


「皿ごともらうが、一度それ仕舞って出してみろ。また5枚分の皿が出てくるぞ。

 皿の量を増やしたかったら、買った店で皿の拡張を頼むといいぞ。」


「そんなこともできるのか、ありがとう。」


「いや、感謝はこっちだ、野外料理も捨てたもんじゃないな。久しぶりに外で食ったが、悪くない。」


 まぁ、満足してくれたようでなによりかな?


「うげっ!?」


「ん!?どうした?」


 何か背にぶつかってきた、あ、この感覚覚えてるぞ。

 足元を見れば、兎がこちらを見つめている。

 こいつ、昨日の奴か?あのトレインやドーンの狩りの時はいなかったのだろうか。

 まぁいい、せっかくだしノビルの根をくれてやる。今日はたくさん切ったからな、根も余ってる。

 とりあえず10はもって手の平に広げてみる。


「きゅ・・・」


 ちょっと戸惑ったようだが、今回はその場でむさぼり始める。やはり手からだとあれか、しょうがない、皿にのせてやろう。残り全部だ、気前よく食いたまえ!


「お前大丈夫か、急にさっき声を上げてたが。というか、いつの間に兎が?何を餌なんか上げてるんだお前。

 ん!?おま、そいつは、次から次にお前は・・・」


「え、何、どうしたんです?」


「お前、そいつ識別してないのか?そいつはアタックラビットじゃない。

 サチュレイトフォーチュンラビットだぞ。」


「え?」


---------

≪識別結果

サチュレイトフォーチュンラビット 危:B

希少性の高いその存在はとてつもない幸運とそれに伴う運命を運んでいるといわれている

その姿を見たものが、翌日に金鉱石の洞窟を掘り当てたと伝説とその洞窟で鉱山病にかかり死亡したという伝説がある≫

---------


 なにこの不安モンスター。あと危がBって、アタックラビットはHだぞ。どんだけだよこいつのやばさは。

 あぁ、よく見れば突撃兎は茶色一色なのに、こいつには白と黄色、いや、黄色じゃなく金の毛が混じってる。

 昨日見たときはこんな色だったか?まさか認識阻害の何かなのか?


「きゅ?」


「うっ、まぁいいか、害はないんだろうな?あったら昨日の時点で僕が死んでるんだろうし。」


 もし危険な奴なら昨日の時点でとうに俺はやられてるだろう。

 俺はこいつをアタックラビットだと思い込んでしまった。そういう力をもっていても、おかしくない強さなんだろう。


「昨日もあったのか!?」


「あぁ、おそらく同じ個体だ、昨日もノビルの根を食いに来たんだよ。」


「はぁ、よく平気だったなお前、というか俺ですらそいつに気が付くのが遅れた。

 すごい認識阻害だったが、まさか餌をもらったことで警戒が解けたのか?」


 悩みこむドーンを気にも留めず、幸運兎はノビルの根を完食。

 こいつも突撃兎とおなじようにノビルがご馳走なんだろうか。

 そうならば自分の幸運で見つけられないのか?それにしても今日は食い終わっても逃げないんだな。


「うっ、こんな間近にいていいのか?お前は知らないだろうから伝えておく、この草原にいるのはほとんどがアタックラビットだが、その上位種や変異種ももちろんいる。

 だがフォーチュンラビットは違う。同じ兎に見えても、一線を越えたまったくの別種族だ。

 だがこの見た目、ほぼ見分けがつかないな。おそらくそういう擬態をしているんだろう。本来の毛の色は白だけのはずだ。

 フォーチュンラビットは希少性の高い魔物だが、危険性もあって、術法を操ることができるそうだ。

 目撃例の少なさと、出会えて狩ろうとした奴が死亡したこともあり、情報の少ない魔物なんだが・・・

 そのさらに上位に位置するのがそいつ。サチュレイトフォーチュンラビット、別名を飽和幸運兎。

 古い伝承だが、そいつを見たやつが金鉱山を当てて、あわや一攫千金という翌日に死亡したといわれている。

 そして、その死体を占った、占い師が言ったそうだ。その身に強すぎる運を受けたものは、その運を持ち切れず、あふれた運は病となってその身を襲うってな。」


「きゅ?」


 こんなかわいい見た目して、恐ろしい子ってことなんですね!どうしよう、僕そんなのを二回も見ちゃったよ?というか、いまも足元にくっついてるよ?


----------

≪対象をテイムしました

対象:サチュレイトフォーチュンラビット

名前を付けてください≫

----------


 なんならそんなインフォメーションが脳内に・・・

 えっ、テイムできちゃったの!?


「うっ、なんか、テイムしちゃったみたいです?」


「テイム?テイムってまさか、従魔契約か!?」


「あ、それです、それ。」


 そういえば、テイマーだの、魔物使いだのいった時に、微妙な反応だったもんな。

 でもやっぱ、言葉として【テイマー】は存在しているようだ。【プレイヤー】が【来訪者】と聞こえるような。変換が起きていないもんな。


「そうか、テイマーとか言ったな、それは従魔契約者なのか、なるほどな。」


「おそらくそのような感じですね。」


「きゅー!」


 なんだ、今いろいろ話してるのにたたいてくるな。


「あぁ、もしかして早く名前がほしいのか。とはいっても、どうするか。」


 名づけは大切だ、変な名前を付けると愛着も薄れる。飽和幸運兎だっけか、和、幸、うーんちがうな。よし、普通に種族名から引っこ抜いてレイトで行こう。


「レイト、でどうだ?」


「きゅい!」


----------

≪個体名が確定しました

レイト・アルイン

種:サチュレイトフォーチュンラビット≫

----------


 なんか僕の縛り名も一緒についてるけど、まぁいいか。


「どうやら気に入ったみたいだぞ?」


「そのようですね、よかったです。」


 せっかくなのでちょっと持ち上げてみる。抵抗もされずに持ち上げられるレイト、もふりとしたいい手触りだ。


「よろしくな、レイト。」


「きゅ!」


「うぉ、なんだ?」


 顔を近づけたら急に手から飛び出て、肩に乗ってくる。

 さらに僕の上でうごめいて、どうやら頭上で落ち着いてしまったようだ。

 器用に肩に後ろ脚を乗せ、前足は頭の上という状態だ。重くはないんだが、これはたから見たらかなりメルヘンだろ。


「はっ、そこがお気に入りの位置ってか!結構お似合いだぜリュクス!」


「ドーン、やめてくださいよ、はぁ・・・」


「そうため息つくな、しかしとんでもないものを従魔にしたな。

 でもそいつについてわかってないと、ぱっと見てもアタックラビットにしか見えないな。」


 頭上で寝息が聞こえるけど、今はドーンから見ると、アタックラビットにしか見えないってことか。それなら大騒ぎにはならないか?


「あの、アタックラビットとしてなら、従魔として街に連れて行っても平気ですかね?」


「アタックラビットの従魔を持ってるってのは、かなーり目立つと思うぞ、そんな弱小魔物をどうするんだってな。

 まぁ、サチュレイトフォーチュンラビットよりは確かにましだな。アタックラビット扱いならば、門兵にもなんとか俺が言えば言い訳が立つ。」


 うーん、だますようで悪いけど、あんまりぎゃあぎゃあ騒がれたくはないからな。そういうていで行こう。


「んで、休憩はすんだか?食って魔素量は回復したか?俺は精神的にはどっと疲れたが、平気だ。お前が平気なら残り40の兎炭を集めるぞ。」


「うっ、それがあったんだった、でも行けます、こいつ激しく動いても平気か?」


 ちょっと頭上のレイトを気にしつつ、反復横跳びしてみる。さらに頭を傾けてみたりもする。まったく動く気配がない、どう固定されてるんだこいつ。

 スースーと寝息を立てたままで器用なもんだ。


「大丈夫みたいだな、よし行くぞ。」


「はい。」


 このあたりのアタックラビットはもういない。まずは場所移動からだ。

本当は次話から掲示板回とか世界観とかをやりたかった


saturate(サチュレイト)⇒飽和する

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