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微エロ、甘々回です。苦手な方はご注意を。

よろしくお願いします。


 リビングに戻ると、響子さんはキャミとショーツだけの姿でグラスを片手にソファで寛いでいた。私はその隣にくっ付くように座った。


 私はリビングに入ったときに私が失敗していたことに気が付いていた。あれだけ鏡ごしに響子さんのことを見ていたのに短パンを脱ぎ忘れていたのだから。響子さんはまったく気にもしていないと思うけれど私の矜持が許さない。私は次は失敗しないと誓った。


「作ってくれたの?」


「そうよ。はい、どうぞ」


 響子さんは私の飲み物を作ってグラスを渡してくれた。チンザノドライのロックだった。私はそれを一口飲んでからローテーブルに置く。


「ありがと。でもちびちび飲むよ。今夜はあまり酔いたくないの」


「ん?ああ、そういうことなのね?」


 私の言いたいことが分かった響子さんの笑みが広がっていく。私は照れてえへへとはにかんだ。


「うん。そういうことなの」


「ほんと麻衣子は可愛いよね」


 私は響子さんのすぐそばにある腕を抱えて手を握り、頭を響子さんの肩に預けた。響子さんはそっと手を握り返してくれた。

 こうして身体を寄せているとなんとも幸せな気持ちになるし、このあとのことを思うとそれだけで胸が高鳴ってしまう。もしもグラスを渡されてなければそのまま寝室に入ってしまいたくなっていただろう。今もそうしたいなと思っているけれど。

 このなんとも言えない焦れた時間もまた私たちの時間なのだ。


 そのあと私たちはあまり話さずに静々と飲んでいた。ふたりでそこに居て寄り添っていればそれだけでいいのだと思える時がまさに今だった。


「麻衣子」


 響子さんが私の方を向いて顔を寄せてくる。欲しかった唇がすぐそこにあった。んっと小さく声を漏らして私はそれに触れた。初めは軽く、それから浅く。そしてだんだん深くなっていく。お互いに求めていたものを見つけて絡んで絡ませてその行為に没頭する。そのうちにどちらともなく唇を離した。いつのまにかお互いの身体も求めていて、私たちは抱き合っていた。キスで昂って響子さんの少し汗ばんだ肌やキャミを通して固くなった胸の先を感じてしまった私が、もうこれ以上我慢することなど出来るはずがない。私はおねだりをするように名前を呼ぶ。


「きょうちゃん」


「行こ。私したくてたまらない」


 響子さんは耳元で囁いた。その声を聞いて抱き合う身体を震わせて小さく呻いた私はもはや頷くことすら出来なかった。


 寝室はリビングよりも冷えていだけれど、寒いわけではない。私たちが愛し合うには丁度いい温度になっていて、照明は最小限まで落ちていた。


 響子さんは部屋に入るとすぐに私を抱きしめてくれた。軽くキスをして見つめ合うと今度は深くキスをする。お互いのキャミを脱がせ合い、ショーツも脱ぎ去って、隠すものがなくなった私は直に触れ合う温かさにもう蕩けてしまっている。


「好きよ、麻衣子」


 私を抱いてキスをしてからそう囁いた響子さんが、あぁと声を漏らした私をベッドに押し倒し私の上にそっと跨った。響子さんが上から私を見つめている。その視線とお腹の辺りに感じる熱さにたまらなく切なくなる。私の胸は既にこれ以上ない程に高鳴っていて呼吸も荒くなっている。それに合わせて私の胸が上に下にと動いている。私の荒い息遣いは響子さんにも聞こえているだろう。もうこれ以上は待てない。


「お願い」


  早く欲しくて私は響子さんに腕を伸ばす。


「かわいい。いっぱいしてあげる」


 その声のすぐあとに私は響子さんの優しい唇を、優しい指を、何より愛しい人の身体を全身で感じはじめた。




 目を開けると私は仰向けになっていることに気がついた。直ぐに息苦しさが私を襲い、私は激しく息を切らし始めた。響子さんはうつ伏せになって私の右半身に身体を預け、私の右胸に顔を伏せて同じように荒い息をしている。この状況に一瞬戸惑ったけれど息を整えているうちに徐々に記憶が戻ってきた。最後は一緒にいこうと言われて漏れる声の合間になんとか返事をした後に何かもの凄いものが来てそれを受け入れた途端に今迄経験した事もない程に身も心も蕩けながら大きな声を出してしまったところまでは覚えている。そして気づいたらこの体勢になっていた。どうやら私は少しの間だけ意識が飛んでいたらしい。


 私は弛緩した腕をゆっくりと動かして響子さんをそっと抱いた。そして私たちが落ち着くまでこのままこうしていることにした。私は余韻に浸りながら響子さんのことを考える。

 知り合ってもう10年になった。出逢って直ぐに私の心に入り込んで来て私の心は響子さんで一杯になった。それ以来、紆余曲折はあったけれど今もこうして傍に居る。不思議な気もするけれど当然な気もする。私が必要としているときに必ず傍にいてくれる。いつも一緒に居る訳ではないけれど、それでも私の心にいつも居るとても大切な人。今日みたいにいつも私を受け入れてくれて甘く優しく愛してくれる人。

 いや、ちょと待って。今夜の響子さんは何だか少し違っていた。いつも始めから終わりまで甘く優しく抱いてくれるのに今夜は少し意地悪なところがあった。まだ駄目よあと5分我慢しなさいとか、誰が休んでいいと言ったのよあと3回よとか、目を隠されて、零しちゃ駄目よベッドが濡れるからって私もう必死であんな……あぅぅ、駄目だ。思い出したら恥ずかしくなってきた。響子さんにそうされても全然嫌じゃなかったし、寧ろ何だか凄く興奮してしまった。少しだけ。断じてほんの少しだけ私は新しい扉を開いてしまったのかもしれない。

 

 響子さんのことを考えはじめたら思考が変な方にいってしまったけれど、私は恥ずかしかろうが興奮しようが新しい扉を開こうが別にどうでもいいことだと気がついた。だって今の私は心身ともに響子さんによって満たされているのだから。 響子さんは言葉通りのことを私にしてくれた。私は響子さんに染め直されたのだ。


 



「うひゃ、んっ」


 ふいに襲ってきた温かく甘い刺激に変な声が出てしまった。響子さんが私の胸の先を口に含んだからだ。私は抗議の声を上げた。


「きょうちゃ、んっ。急に何するのっ、よ」


 響子さんは口を離して私を見た。ふふふと嬉しそうに微笑んでいる。


「だってここにあったんだもの。それに後戯は女性にとって大事なことよ」


「もう。よいしょっと」


 私は響子さんを少し強引に離して腕枕を出来る位置まで身体をずらした。


「麻衣子?邪魔しないでよ」


「後戯だけに?」


「なにそれ?」


「なにって、後戯を止めたら抗議したでしょ?でもその前に私が後戯されたから抗議したのよ」


「そんなに後戯後戯って。やっぱりして欲しいの?」


「ううん。今はきょうちゃんとこうしていたい」


「そう?じゃあこうしていよう」


 上手いこと言ったはずなのに響子さんに響かなかったようだった。響子さんなのに響かないなんて。また上手いことを思いついたけれど多分また響かないだろうなと思って言わないでおくことにした。


 響子さんが腕枕された身体を横にしながら私に密着させて頭を私の肩の辺りに乗せた。肩枕になった。私は響子さんに腕を回して髪にキスをした。響子さんもすかさず私の胸の辺りにキスを返してくれた。


「ふふ。暖かい」


「私も。少し冷えてきたね」


「でも麻衣子にくっついているから平気。麻衣子は寒い?」


「きょうちゃんがいるから私も平気」


 それでも響子さんは腕を伸ばしてサイドテーブルからリモコンを取ってエアコンを切った。それからベッドの隅で丸まっていたタオルケットを足に引っ掛けてたぐり寄せ、適当に広げて私たちに掛けた。それからまた元のように私に密着してくれた。


「あったかい」


「ね」


「きょうちゃん」


「なに?」


「私もう大丈夫よ」


「よかった」


「ありがと」


「どういたしまして」




「暑い」


 暫く温もりを堪能していた私だったけれど、エアコンを切っていたし私たちの体温とタオルケットのせいでまた暑くなってしまった。

 私はタオルケットを剥がし肩枕をしていた響子さんを仰向けにしてその左側にうつ伏せに乗った。響子さんは私がもぞもぞ動くのを好きにさせてくれてはいたものの呆れた顔で私を見ている。


「暑いなら離れたらいいのに」


「いやよ。今からきょうちゃんに私の愛を伝えるんだから」


「え。それやるの?」


「当たり前でしょ。大事なことだもの」


 私は響子さんの嫌そうな声を無視してキスをした。それからぴったり重なるように上に乗り、身体を預けて思い切り抱き締めた。うっという声が聞こえた。私の儀式の始まりだ。


「ちょっと、苦しい。麻衣子、苦しいって」


 その声を塞ぐようにまたキスをした。苦しくてもちゃんと私に応えてくれる響子さんはやはり優しい。私は凄く嬉しくなった。

 

 私は唇を触れ合わせたまま話すのが好きだったりする。だから唇を離さずに言う。


「きつく抱き締めないときょうちゃんに私の愛が伝わらないかも知れないでしょ?」


「しなくても伝わってるって」


「私はまだ伝えきれてないからね。きょうちゃん、我慢我慢だよ」


「伝わったよ。凄く伝わったからもうやめなさい」


「本当に?じゃあ確認する」


 この確認は、愛が伝わる、すると嬉しくなる、だから笑顔になる、という私の三段論法に基づいてすることだ。つまり私の愛が伝わっていれば響子さんは嬉しくて笑顔になっているというわけだ。

 私は抱いた腕を少し緩めて響子さんの顔を確かめる。でも唇は離さないでいた。そこには呆れた表情を隠して無理やり微笑む顔があったように思う。近すぎてよくわからない。そう言ったらバカじゃないのと言われてしまった。


「離れたら私の嬉しそうな顔が見れるよ」


「残念だわ、きょうちゃん。その言い草からすると私の愛はまだ伝わってないみたいね」


「いや、伝わってるってば」


「あれれ?きょうちゃん、もしかして嫌がってるの?」


「え。い、嫌がってないわよ」


「よかった。嫌なら嫌じゃ無くなるまで一晩中でもしないといけないもんね」


 私は再び抱く腕に力を込める。今は唇を離して響子さんの右の首すじに顔をうずめている。うっと呻いて苦しそうだけれど私は伝えるのに忙しいから気にしない。


「伝われ〜」


 私はきつく抱き締めたまま暫く動かないでいた。響子さんは苦しそうだけれど黙ってじっとしている。私の愛が伝わったのかもしれない。


「きょうちゃん、伝わった?」


「伝わったよ。麻衣子の愛は凄く伝わったよ」


「本当?」


「ほんとほんと。あーしあわせ」


「そっか。ならお終い」


 私は最後に軽くキスをしてから抱きしめるのをやめて響子さんの横に転がった。響子さんは少し荒い息をして暑いと呟き、疲れた顔を天井に向けていた。


 いつもの私の儀式。優しい響子さんはこの儀式にいつも付き合ってくれている。私は今回も儀式ができてとても満足している。そのせいでさらに暑くなってしまったけれど。


「ねえねえ、きょうちゃん。大変」


「何?どうしたの?」


「すっごく暑い」


「バカなの?」


 響子さんが枕で私を叩いた。






微エロですよね?

読んでくれてありがとうございます。

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