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35/40

extra 7

続きです。

書いていたら微エロ回になりました。

苦手な方はご注意を。

よろしくお願いします。

 

「随分と遅かったのね」



 響子さんと正式に恋人、婚約者となってからは、お互いに何もなければ金曜日の夜から日曜日の夜まで一緒に過ごそうねということになったので、市川達との要件が片付いた後、私は彼女達を置いてその足で響子さんの部屋に帰ってきた。

 その週末のぼんやりとした決め事以外でも、来たければいつでもおいでとそう言ってくれてもいる。



 響子さんは私に合鍵を渡してくれて、更には今年中には一緒に暮らそうと言ってくれた。それに私達は婚約者だと言ってもくれたのだ。そのこと全てがとても嬉れしくて、私がくぅぅぅと両手を握っていたり、きゃっほうと飛び跳ねて大はしゃぎをしていたのはお盆休みのことだった。

 響子さんははしゃぎ過ぎて疲れきった私を見てバカねと呆れて言っていたけれど、私にとって特別なモノになった言葉を掛けて貰えたし、宝物だって手にしたのだから大喜びするに決まっているのだ。そんな私を見て響子さんはバカと言いつつも、優しい目をして微笑んでくれていた。


 響子さんはきっと、はしゃいだりくねくねうふふとやっていた私の様子を見て、張っていた肩の力を抜いてくれたのだと思う。私たちは色々と考えるべきことが多いいけれど、そればかりでは疲れてしまう。だからそれはそれとして、単純に幸せなことにも目を向けて貰って、それをふたりで分かち合えたらいいなと思う。今凄く怖い顔をして私を見ている響子さんにも、私と同じように私たちのことではしゃいだりして欲しいと思う。私はそう願っている。私たちが一緒ならきっと何とかなるのだから。ならない筈がないのだから。


 大丈夫よきょうちゃん、今の私は無敵なのよ。主にきょうちゃんのお陰でね。ふはははは。


 と、とにかく今日はその金曜日ということで響子さんの部屋に帰る夜だったから、私は喜び勇んで帰ってきたのだけれど、響子さんと過ごせるからと浮かれながら合鍵で玄関の扉を開けたご機嫌な私を、とても不機嫌な響子さんが出迎えてくれたのだ。


「ごめんきょうちゃん。会社の子達と飲んでいたら遅くなっちゃっ…た?」


 そう言いながら時計を見ると時刻はもうすぐ10時になろうかという所だった。遅いと怒られるには早い気がすると言うか遅く無い筈だ。


「えっと、きょうちゃん?あんまり遅くなって無いかなぁって思うんだけど」


「麻衣子は何を言ってるの?もう10時になるじゃない」


「うん。それは分かっているけれど、まだ10時なのよ。遅くないよね?」


「何を言ってるの?」


 私は靴を脱いで部屋に上がりながらそう言ったけれど、響子さんの目は細くすぼめられていく。更に眉間に皺が寄って、その様子から明らかにどんどん機嫌が悪くなっていくのがわかる。響子さんは私がこの時間に帰ってきたことが気に入らないのだ。

 ここで戦うべきかすぐさま謝るべきかを考えた結果、謝ることを選択することにした。だって響子さんの説教は長いから。それにこうして不機嫌になるということは、それだけ私に執着しているということだから。私はそれが嬉しいくて仕方ないのだ。


「ううん、何でもないよ。ごめんねきょうちゃん。遅くなって」


「分かればいいのよ。お帰り麻衣子」


「ただいまきょうちゃん」


 私が謝ると響子さんは険しい顔を緩めてくれた。どうやら私の選択は見事に正解だったようだ。私は許されたことで安堵の笑みを漏らしつつ響子さんを抱き締めて頬にキスをした。響子さんもお返しに、ぎゅっとしてくれて頬にキスをしてくれた。少しの間抱き合ってから私が身体を離そうとしたら、響子さんがそれをさせまいとして私を一層強く抱き締めてきた。


「きょうちゃんどうしたの?」


「ねぇ麻衣子」


「なに?きょうちゃん」


「まだ許したわけじゃないのよ?」


「ん?どういうこと?」


「ないのよ?」


「えっと…」


 響子さんが私の耳元でそんなことを囁いてきた。何かお詫びにして頂戴と私にプレッシャーを掛けているのだ。


 私たちが恋人、パートナーになってからはこういうことが増えてきた。響子さんは私に甘えることや惜しみなく愛情を示してくれることをあまり隠さなくなって、嫉妬や私に対する執着心を上手く隠せなくなった。

 どうやら響子さんは、私より二つ年上のしっかり者のお姉さんらしく振舞っていたいと思っているようだけれど、最近は少し違ってきている。少しずつガードが下がっていると言うか被っていた殻が破けてきていると言うか、何となく私に甘えているように思えるのだ。私にはそれがとても可愛らしく思えるし、そういった姿を見せてくれることが嬉しいので何も問題はないけれど。

 ただ、響子さんはその甘えや愛情、嫉妬や執着心を普段何気なく過ごしている時だけでなく、ベッドの上でも限りなく私にぶつけてくるようになった。一体どこでそんなことを仕入れてくるのだろうと思うことを毎回されていて、お陰で私は最近色んな感覚を身体に覚え込まされて、新しい扉の先には更に新しい扉があったのかとしみじみと感じている。そのせいで以前開いた新しい扉は、もはや古くなってしまっているぐらいなのだ。

 それが嫌なのかと言われれば全然嫌じゃない。だってそれらは全て響子さんが私にしてくれた、私への贈り物なのだから。

 それに、たぶん響子さんは普段はっちゃけたりしない分、そうやって私に愛情とかをぶつけてくることで普段抱えているモノを発散と言うか忘れると言うか解放と言うか、そうやって自己のバランスを取っている部分もあるのだと思う。だから私はそれを喜んで受け止めるのだ。実際、そうしてくれて凄く嬉しいし、愛する響子さんの為ならばそんなのは当然のことなのだから。


 そしてそう思っている私も、響子さんに贈り物をしたくて毎夜学習とイメージトレーニングをしているのだけれど、それはまだ上手くいっていない。どうしても響子さんの後塵を拝してしまって、上手いこと攻めきれていないのだ。

 そのことが目下私の最重要課題になっていて、一度由美さんにどこでどんなことを仕入れたらいいのかを相談してみるのもいいかも知れないと思っていたりする。



「麻衣子?」


「え、えっと。じゃ、じゃあ今夜は私をきょうちゃんの好きにしていいよ?」


「そう?それじゃあ許してあげる。ふふっ、嬉しい」


 私がそう言うと響子さんがそれはもうご機嫌な感じで私にキスをしてくれた。いきなり情熱的ではあったけれど、私はそれを喜んで受け入れた。そんなキスをされて嬉しくない訳がないからだ。そのまま夢中になってキスをしていると、響子さんが私のブラウスのボタンを器用に外して、そこから手を潜り込ませてインナーとブラの上から私の胸を優しく撫で始めた。私は激しめのキスで少し興奮していたので、愛しの響子さんがしてくれることを受け入れようとしたけれど、私はまだ今日1日の汚れを落としていないことを思い出してその手を押さえた。


「きょうちゃん待って。私まだ汚いから。ね」


「いやよ。麻衣子を私の好きにするんだから」


「で、でも、ほら、シャワーを浴びないと。私、汗もかいたし汚れているから」


「手を離してよ。好きにしていいのよね?」


「でも…」


「麻衣子」


 私を見つめる響子さんの冷たく熱い眼差しに、以前よりももっとぞくぞくしてしまう。私はこんな感じで響子さんに染められ続けている。だから、どう抗ったところで結局それを受け入れてしまうのだ。それもまた全然嫌じゃないんだけれど。


「…わかった。で、でもきょうちゃん、もしかしてここで?」


 ここはまだ玄関で、私は靴を脱いで上がったばかりなのだ。けれど、そう戸惑う私を気にすることもなく響子さんは私を見て妖しく微笑んだ。


「大丈夫。麻衣子はそこに立っているだけでいいの。それだけでいいのよ」


「う、うん」


「座ったりなんかしたら絶対に許さないからね」


「えっと、うん」


 そう言って頬を撫でてくれたあと、今度は私に優しくキスをしてくれた。暫くじゃれ合うように絡めあってお互いに優しく戯れていると、響子さんは私の服をはだけさせてインナーとブラの隙間から手を入れて直接胸の先を優しく撫で始めた。その感覚に思わず甘い声を漏らしてしまう。そして唇を離した響子さんがもう一方を少し強引に出してそれを含んだ。汗とか汚れとか匂いとか諸々気になって私は凄く恥ずかしかったけれど、なんだかそのことに変に興奮してしまった。それから響子さんは私のブラウスとインナーを優しく脱がせてくれたあとブラをゆっくりと外していった。そうしてまた優しくキスをしてくれてから私の首に顔を寄せて、すんすんと鼻を鳴らしながら唇で触れて少しずつ場所を変えていった。優しい唇の感覚に痺れ、身体の匂いを嗅がれていると思うともの凄く恥ずかしくなる。響子さんの唇はそんな私にはお構い無しで、肩を回って鎖骨を濡らして下に降りていった。そのまま胸の先まで来てくれるのかと思ったら、響子さんが私に腕を頭の後ろで組んで欲しいと囁いた。私は凄く恥ずかしかったけれど言われた通りにおずおずとそうすると、響子さんの唇が上げた腕の方へと移っていった。何をされるのかわかってしまったので、思わず腕を下しそうになったけれど響子さんはそれを許してはくれなかった。恥ずかしさでどうにかなりそうな私を見て嬉しそうに微笑んで唇を二の腕の裏から脇へと這わせていった。私はその感覚とすんすんと嗅がれる恥ずかしさに異様に興奮してしまって喘ぎ声を漏らしながらふるふると身悶えていた。暫くそうして私の羞恥心を弄んでいた響子さんは、再び優しくキスをしてくれたあと、私を見つめて妖しい笑みを浮かべてから、そのまま私の足元にしゃがみ込んで私のスカートを捲り上げた。


 それから響子さんが長い時間しゃがみ込んでいる間、私は壁に身体を預けることでどうにか立ったままでいて、響子さんの頭に両手を添えながらずっと声を上げ続けていた。






「凄くかわいかったわよ。麻衣子」


「うぅぅぅ」


 私たちはあの後シャワーを浴びて諸々を流し、今はソファでお酒を飲んでいる。

 そのお酒のせいではなくて色々と恥ずかし過ぎて真っ赤になっている私は、響子さんと腕を絡めてくっついて座っている。響子さんはそんな私を撫でたりキスしたりとご機嫌で愛情を示してくれているけれど、私にはもうそのことで何かを言う気力などこれっぽっちも残ってはいないのだ。それでも凄く恥ずかしかったことだけは伝えておこうと思って私はどうにか口を開いた。


「……きょうちゃんの意地悪。私、まだ汚れてるって言ったのに」


「私の麻衣子が汚れているわけがないでしょう?とても綺麗だったわ」


「あぅぅぅ」


「それにね、麻衣子はとてもいい匂いだったわよ?」


「うぅぅぅ」


 響子さんはそう言ってまた私に軽くキスをして頬を撫でてくれた。それは凄く嬉しいのだけれど、どうしてもさっきのことが頭から離れないし、綺麗とかいい匂いとか言われてしまった恥ずかさのせいで私はただ呻くだけしか出来なかった。


「駄目よ麻衣子。アレくらいでそんなに恥ずかしがっていたら、今夜は身が持たないかもしれないわよ」


「なっ。え、えっときょうちゃん。アレより恥ずかしいことって何かあるの?」


「うふふ。楽しみね」


「やだぁ」


 追い討ちをかけるような響子さんの言葉に私は小さく頼りない抗議の声を漏らしつつ、首を振りながら響子さんに抱きついた。それでも私の声や態度には嬉しさや期待が確かに混じっていて、響子さんはそんな事はちゃんと分かっているのよと私を優しく抱き締めてくれて、麻衣子はほんと可愛いよねと囁いて髪を撫でてくれた。その言葉に私はまた呻き声を出しただけだった。


「あうぅぅ」


「かわいい」




 その夜、事が終わって諸々を流し、夜のお手入れを終えた私たちはそのまま寝室に入った。


 私は既に眠っている響子さんを腕に抱きながら、いまだにベッドの上でさっきまでの行為のあまりの恥ずかしさに、ひとりあうあうと身悶えている。私は暫く眠れそうになかった。

 今夜あったことは絶対に誰も言わない。いや、言えない。あんなこと絶対に言える訳がない。そう思ってまた小さく呻き声を漏らした。


「あぅぅぅ」


 そうして暫く私が身悶えていたら、ふと亜里沙ちゃんとの会話を思い出した。私が響子さんだけのものと言われて、嬉し恥ずかしと思いながらも奥深い話を聞いていた時のことだ。



「麻衣子さんにいいことを教えてあげます」


「なに?」


「私のような人間って、実は心の奥底では自分もそうされたいと思っていて、その願望を相手にぶつけている人も中にはいるんだそうです。そういった説があるんですよ」


「ね、ねぇ亜里沙ちゃん、それ本当なの?」


「さぁ?私はそうされた経験もないし、されたくは無いので本当のところは私には分からないですけど」


「へ、へぇ。そっか」


「えぇ。でも、そういった説があるのは本当です。覚えておくといいかも知れませんよ?」


「わ、わかった。が、頑張る」


「うふふ。頑張ってみてください」


 亜里沙ちゃんはそんな話をして、私に向かって妖しく微笑んでいた。

 私は頑張るって何よ頑張るってと、思わず口にしたことにとても恥ずかしくなって自らそう突っ込んでいた。



 そんな会話を思い出した私は、もしかすると響子さんもそうなのかもしれないなと思って、明日の夜は今度こそ私がされたこと以上に響子さんをいっぱい愛しちゃおうと心に決めた。私だって学習は続けているのだ。イメージトレーニングも欠かしてはいない。実際にどんなものかとほんのちょっとだけ自分で試してみた………ほ、ほうがいいのかなと思ったけれど流石にそれはやめておきましたね。それはね、ええ、そうですよ。勿論やめておきましたとも。


 とにかく私はもう決して泣かない。涙に暮れる日々はもうゴメンなのだ。ふふふ。今の私にはそれくらいの自信はある。決してこの前のことや今夜のことを仕返しをしてやろうと思っているわけではない。そうすることで私以上に響子さんが喜んでくれるのなら、それは凄く嬉しいことだから。あくまで響子さんに喜んでもらう為だから。

 そう思うととても楽しくなってきて、私の羞恥心は大分薄らいでいく気がした。


「ふふっ、ふはははは」


「麻衣子?うるさいよ」


「あ、ごめんきょうちゃん」


「ん…」


 私は響子さんに仕返…喜んでもらおうと、つい楽しくなってアホな笑い声を上げて響子さんを起こしてしまったけれど、その響子さんはもぞもぞ動いてまたすぐにすうすうと寝息を立て始めた。


 響子さんの口元は少し開いていて、そこに微妙に垂れている涎が私のTシャツを濡らしている。

 ほらね。きょうちゃんだって涎を垂らしているじゃないのと、前に気合が云々と言ってむきになって否定していた響子さんを思い出して、私は何となく微笑ましく思ってにんまりと微笑んだ。


「おやすみきょうちゃん」


 私は響子さんの額にそっとキスをして、響子さんを起こさないように優しく抱き直した。こうして響子さんの温もりと重さと少しの涎にじんわり幸せを感じていれば、恥ずかしさなど何処かへ消えて私にもすぐに穏やかな眠りがやってくだろう。


「また明日ね」




読んでくれてありがとうございます。

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