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extra 2

続きです。

いちゃいちゃしています。

よろしくお願いします。

 

 私たちはこの五日間をのんびりまったりと過ごすことにしていて、出掛けるにしても精々買い物ぐらいよねと話していた。夏の暑さと日差しの中を態々出歩くこともないし、夏休みということもあってどこも混んでいるからだ。

 出掛ければ混んでいる分響子さんと密着できるけれど、それならこの部屋で思う存分すればいいのだし、それに響子さんはインドア派だから基本的には汗を掻くつもりなど殆どない人なのだ。ただ、効果があると喜んでいたホットヨガは続けるわと言っていた。

 私は別に何でもいいと思っている。響子さんと一緒に居られるのなら別に何だって構わないのだから。

 そんな訳で私たちは今、涼しい部屋でのんびりと過ごしている。



「きょうちゃん。食材があまり無かったね」


「んー。後で買い物に行かないと」


「そうね。日が落ちてから行こうね」


「んー」


 私たちはそんな会話をしながらソファに転がっている。私が下になって、響子さんが背もたれ側に半身になって私に乗っかっている。

 私の買ってきたご飯を食べて、アイスコーヒーを飲みながら腕を絡めてくっついて話をしているうちにふたりとも眠くなってしまったのだ。仲良くベッドに入っても良かったけれど、寝過ぎてしまうのもなんだからと思って今はこうなっている。部屋が涼しくてお互いの身体が温かいという、私たちが微睡むには最高の状態だ。


 私がこの状態を有難く堪能していると、響子さんが寝息をたて始めた。こうして無防備な姿で私に身体を預けてすうすうと寝ている響子さんを腕に抱いていると、なんとも幸せな気持ちでいっぱいになって来る。このままずっと一緒に居ようねと、そう思いながら響子さんを優しくぽんぽんしているうちに私もいつの間にか眠ってしまった。




「麻衣子っ」


「ん…」


「ねぇ起きてよっ」


「んっ?」


 呼ばれる声にじゅるっと口を鳴らして目を開けると、響子さんの凄く不安そうな顔が私の視界一杯に広がった。私がどうしたのと聞こうとして窓に当たる激しい雨の音に気付いた瞬間、もの凄い雷の音がした。近くに落ちたような雷の音と、同時に窓ガラスのびりびりと振動する音を聞いて私は納得した。たった今ひっと小さく声を出した響子さんは雷がとても苦手なのだ。


「麻衣子怖い」


「大丈夫よきょうちゃん。家の中だし、私がいるからね」


「うん」


「それにほら、きょうちゃんはでべそじゃないから狙われたりしないのよ」


 私にしがみ付いてうるうるした瞳を向ける響子さんに、私は子供をあやすような言葉を口にしながら身体を入れ替えて、響子さんを守るようにして優しく抱き締めた。私に包まれながら雷の音がする度にびくっと身体を震わせる響子さんを可愛いなと思いつつ、平気よ、大丈夫よと響子さんの耳元で囁いて、その耳や頬、瞼や鼻に優しく唇で触れていた。響子さんは雷を怖がりながらも、私の唇が触れる度に少し安心したように微笑んでくれていた。

 そして私は震える響子さんを抱きながら、雷が鳴る度に涎を垂らしてぷるぷる小刻みに震えていた実家で飼っていた犬をこうやって抱いていたことをちらっと思い出していた。あれはあれで凄く可愛かったなぁと懐かしく思っているうちに、雨と雷鳴は徐々に遠くなって行った。



「もう大丈夫よ。ありがとう麻衣子」


「どういたしまして」


 私に抱き締められている響子さんがお礼の言葉とともに軽くキスをしてくれた。私は響子さんの頬にキスを返してその身体を離し、響子さんを見つめて大丈夫だったでしょうと微笑んだけれど、微笑んでいる私を響子さんが鋭く見つめている。何かやらかしたのかしらと思っていると、響子さんの少し低めの声が聞こえてきた。


「ねぇ麻衣子。お臍見せて」


「な、なに?いきなりどうしたの?」


「麻衣子のお臍見たい」


「いつも見てるでしょ。まぁいいけど」


 私は来ているTシャツとキャミを捲ってお腹を響子さんに見せた。するとそれを確認した響子さんが益々鋭く私を見てきた。何か凄く怒っているように見える。と言うか絶対に怒っている。私には理由がまったく分からなかったので少し困った顔をしていると、響子さんが自分のキャミを捲り上げてお臍を比べてみてと言った。


 訳もわからず私はそれを見比べてみる。けれど私はお臍と言うより響子さんのお腹を見ていた。響子さんのお腹はすべすべでちょっとぷにぷにしてて柔らかくて凄く気持ちいいのだ。響子さんに言われたことを脇に置いて、触りたいなぁとかちょっと指で突いちゃおうかなぁなんて思っていると、また低い声が聞こえて来た。


「私のお臍と麻衣子のお臍、どっちがでべそに見える?」


「えっと。私」


「じゃあ、私のお腹と麻衣子のお腹、どっちが太って見える?」


 私は分かってしまった。やらかしてしまったのだ。響子さんは、私がでべそじゃないから云々と言ったことをイコール太っていると捉えてしまったのだ。響子さんは脂肪が多ければお臍は埋もれてしまうからでべそにはなり得ないと考えている人だった。態々そんなこと考えなくてもいいと思うけれど、いつだったかテレビでお腹が出ている人を見て、ほら見て、言った通りでしょうとそんなことを言っていた気がしないでもない。

 けれど考えてみて欲しい。私は筋肉でお腹が締まっているし他の女性と比べても細い体型なのだから、なにも響子さんが太っているわけではない。響子さんが自分を太っていると思っているとしてもそれはあくまで私と比べればという話であって、響子さんは一般的には極々普通の体型なのだから、私と比べて太っていると思われても困ってしまうのだ。

 さてこの状況をどうやって収めようかなと思っている私を置いて、響子さんは無情にも先に進もうとしている。


「ねぇどっち?」


「えっとね…」


 私は考えていたことを脇に置いて、今言われたことを正直に言おうかどうか考える。響子さんは今、満面の笑みを浮かべて私を見ている。それが凄く怖い。私にはどっちと答えたところで両方とも不正解だということがもう分かっている。この二択では逃げ道など最初から存在していないことは明白なのだ。だから私はせめて言い方で誤魔化してみることにした。


「私の方が何となく細く見えなくもない…かなぁ」


「ふーん。何となくとかかなぁって、なんだか随分曖昧ね」


 一段と低くなった声にびくっとなって、見ていたお腹から顔を上げて響子さんに視線を移すと、その表情は能面のようになっていた。何も浮かんでないけれど目だけが鋭く私を射抜いていたのだ。


「い、いや。き、きょうちゃんアレだよ。あのね、私はね、きょうちゃんのそのお腹凄く好きなのよ?柔らかくてすべすべして少し冷たくて、触れるとまるで大きなマシュ…と、とにかく触れているとね、とても幸せな気持ちになるの。だから、えっと、私はその女性らしいお腹が凄く羨ましいの。私のはほら、硬いだけだから」


「ふーん」


 私が必死にフォローすると響子さんはふーんと釣れなく言いつつも、私に好きと言われて満更でもない雰囲気を醸し出していた。響子さんのお腹の柔らかさについ余計なお菓子の名を口走りそうになったけれど、私はこれなら行けると思って、このままさりげなく話題を変えることにした。


「あ、あのね。そ、それよりね。私、そんなきょうちゃんを今夜はいっぱい愛しちゃおうかなって思ってるのよ?ね、お願い。そうさせて。いいでしょ?」


 さりげなくでは無かったかも知れないけれど私は話を変えた。これは私の切り札だ。私には響子さんをいっぱい愛せる自信があった。だって私の部屋のPCの履歴は今大変なことになっているのだから。恋人をこんな風に愛してみようとか、何これこんな凄いこと出来ちゃうのと赤面してしてしまうようなモノを幾つか見つけて、私はそれをちゃんと学習して覚えて来たのだ。私はそれをこの連休中に響子さんに披露してめちゃくちゃ愛してあげちゃって、いっぱい喜んで貰うつもりでいたのだ。


 もしもこのまま響子さんの怒が収まらなくても、私はこの会話で押し通して、でべその件を有耶無耶にしてしまおうと必死になっていた。


「そう?じゃあ今夜は麻衣子がいっぱい愛してくれるのね?」


「そうよ。いいでしょ?」


「嬉しい。楽しみね」


 意外にもあっさりと、響子さんは食い付いてくれた。なので私はああよかったと思いながら響子さんを抱き締めた。それから響子さんの唇にそっと触れた。響子さんはそれを受け止めてくれて、優しく始めたキスは次第に激しくなって終わった。


「きょうちゃん好きよ」


「私も好きよ」


 私が抱き締めたままそう言うと、響子さんもそう返してくれた。

 きっと響子さんは私に誤魔化されてくれたのだろう。だって響子さんはキスのあと、微笑んでいながらも仕方ないねという顔をしていたから。


 少し理不尽な気もしているけれど、私はでべその件を不問に付してくれたお礼の意味も込めて、今夜は響子さんをいっぱい愛しちゃって凄く喜んでもらおうと固く誓った。毎晩イメージトレーニングを繰り返した、と言っても三晩程だけれど、私の学習の成果を頑張って披露すれば、響子さんは絶対に喜んでくれるに違いないのだから。

 そして私はその学習したスキルのひとつを私の儀式にこっそりと取り入れてしまうつもりでいる。

 する度に何となく仕方なく付き合ってくれているようにも見える私の儀式にひと匙のスパイスを加えることで、響子さんに心から喜んで貰えるようにして、私の儀式を毎回して欲しいと思わせるようにしちゃうのだ。

 名付けて鳴かせてみようホトトギス大作戦だ。ねぇ麻衣子、今夜も麻衣子の儀式をしてくれる?と、こんな感じで響子さんの方からおねだりしてくれたらとても嬉しいに決まっているのだから、是非とも今回の作戦を成功させて響子さんからそれをおねだりしてくるように頑張るのだ。


 私はそんな響子さんの様子を想像するだけでとても楽しくなってきて、自然と顔がにやけてしまった。


「うふふ。きょうちゃん。私に任せておいてね」


「ええ。楽しみにしてるからね」


 私がにやけた顔で力こぶを見せるように腕を曲げて見せると、響子さんは嬉しそうに微笑んで私を抱き締めてくれた。




 それから私たちは、雨も止んだし今なら外も少しは涼しくなっているだろうと、食料を買い込みに行くことにした。


「ねぇ麻衣子」


「なに?」


「私、赤毛のアンのDVDを借りたいんだけど」


「もちろんいいよ。なにきょうちゃん、急に見たくなったの?」


「そうよ。マシューを思い出したのよ。麻衣子がそう言っていたから」


「私そんなこと言ったっけ?」


「ねぇ麻衣子」


「なに?」


「大きなマシュマロも買う?私はそんなの見たことないけど」


「…いえ要らないです」


「一つ貸しね」


「…はい」





 その夜、私は響子さんをいっぱい愛した。始まりはこんな感じ。


 私は寝室に入るなり響子さんを横から抱いて、優しくキスをしながら響子さんの身体を抱いている方の指をそっとキャミの上から膨らみの先で遊ばせて、空いている手を胸やお腹を撫でながらゆっくりと下の方へと這わせていった。私は暫く両方の指を遊ばせながら私にしがみ付く響子さんの切ないけれど嬉しそうな吐息混じりの声を聞いていた。響子さんがこうして応えてくれるとやはり嬉しくなって、私は少しづつ導いてあげることにした。やがて響子さんのしがみ付いていた手により一層の力がこもり、その後直ぐに身体を大きく震わせた。響子さんは私の導きによってたどり着いたのだ。それから私はキャミとショーツを脱がせて息を荒くしている響子さんをベッドに連れていきそっとその身体を横たわらせた。


「きょうちゃん、腕を上げてそこに掴まっていてね。離しては駄目よ。足もそのままよ。閉じては駄目。わかった?」


 これから私がしようとしていることに私自身もすっかり興奮していた。私がそう耳元で囁いてそっと頬を撫でながら妖しく微笑んで響子さんを見つめると、既に昂ぶっている顔をした響子さんがうんと小さく喘ぐように返事をしてくれた。それに満足した私は脱がせたキャミで目隠しするように響子さんの視界を塞いだ。


「私が満足するまでその格好まま動いては駄目。動くと終わらないから」


 そう言って私は響子さんに覆いかぶさっていった。うふふ。まずはこのスキルからよきょうちゃん、と思いながら。




 響子さんはたっぷりと時間を掛けた私の愛に声や身体で喜びを露わにして応えてくれた。私は学習の成果を存分に披露できたことにとても満足して事を終えた。


 私は息の荒い響子さんを抱いて、撫でたりキスしたりしながら、またしても響子さんを所有している気分になっていて、響子さんは私だけのものなのねと改めてそう思って心から感動していた。暫くすると私の新しく覚えた幾つかのスキルでめろめろになっていた響子さんが復活の兆しを見せて、顔を上げて私にキスをしてくれた。それから私も抱き締めたりキスをしたりと、ふたりでくすくす笑い合って互いに満足するまでいちゃいちゃしていた。


「ありがとう麻衣子。いっぱい愛してくれて。ん」


「んっ。どういたしまして。じゃあきょうちゃん、シャワー浴びにいこうか」


「何言ってるのよ。今から私が麻衣子を愛しちゃうのよ」


「え」


「貸した分、きっちり返して貰わないと」


「えぇぇ」



 その後、やる気に満ち溢れていた響子さんが私への貸しを取り立てて、それにはとても払いきれない高い利息が付いていた。そのお陰で私が披露した学習の成果は響子さんのナニに比べればそれはまさに雲泥の差、有って無いような感じになってしまった。


 そして今、私は気怠い身体を投げ出して息を整えながら、新しい扉の向こうを殆ど体験してしまったような気がしている。私が気がしていると曖昧に言ったのは、その道に於いてまだまだ未熟な私では全然理解することの出来ない何かを響子さんがしてくれる度に、私が身体を跳ねさせて声を上げてひたすら喜んでいることしか出来なかったからだ。何をしてくれたのかなんて考える余裕もなく、たまに意識を飛ばすというおまけまで付いていた。それはもう何も言うか、今まで味わったことの無い未知なるモノとの遭遇だったということだけしか今は分からない。でもきっとアレが深淵なのだと、して貰った私には何となくそれが理解(わか)るのだ。




 こうして全ての事を終えた後、覚えてきたヤツを披露して響子さんに喜んで貰うつもりだった筈の私は、逆にもの凄いヤツを披露されて響子さん以上に声を上げて全身を跳ねさせたりして喜んでしまった私のあまりの不甲斐なさや情けなさや悔しさ、そして何よりもホトトギス作戦が脆くも失敗に終わったことがとても悲しくて、失意のうちに響子さんの胸に抱かれながら静かに涙を流していた。

 響子さんは私の泣く理由が分からずに最初は戸惑っていたけれど、私が泣きながら事情を説明すると、私を優しく胸に抱き直してくれてとても優しく慰めてくれていた。

 私は響子さんから色々として貰ったせいで疲れ切っていた上に、泣き疲れてしまってそのまま響子さんの胸で朝までぐっすりと眠ってしまった。




「しくしく」


「泣かないで。麻衣子は頑張ってくれたよね。私、とても嬉しかったのよ」


「ゔん。わだじがんばっだの」


「うんうん。凄かったね」


「ううっ。ぎょうぢゃん。あだじ、がんばっだ、んだよ」


「ありがとう麻衣子。えらかったね。大好きよ」


「うううっ。きょうぢゃぁん。あだじもだい、ずぎ」


「よしよし。えらかった、えらかった。またしてね」


「うぇっ?いい、の?わだじ、もっどがんばる、がらね」


「うんうん。いい子ね」



 響子さんは私が眠ってしまうまでこんな感じで泣いている私を慰めてくれていた。これはこれで凄く嬉しかったので、まぁよかったんだけれど。



読んでくれてありがとうございます。

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