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28 最終話

最後のお話です。

よろしくお願いします。

 

 ご飯が終わり片付けも済ませた私たちは、五度腕を絡めてくっついて座ってまったりと過ごしていた、筈だった。

 まぁそれはそれとして、私は何か踏み出すきっかけを探していて、お酒の力を少々借れば響子さんを私のものに出来るかなと考えていた。



「きょうちゃん、お酒でも飲もうよ」


「えー。いやよ。こうしてちゃ駄目なの?」


「ううん、全然駄目じゃないよ。ならまだこうしていようね」


「ありがとう麻衣子。大好きよ」


 響子さんはそう言って再び私の胸に顔を預けてきて、またさわさわと撫で始めた。私もまた響子さんの髪を撫で始めた。


 私たちはいつの間にか私がソファに転がって響子さんはその上に乗っているという格好になっていた。腕を絡めてくっついて座っていたところを、甘えモードの響子さんがどんどん私に寄りかかってきたので自然とこの格好に落ち着いのだ。

 響子さんを全身で感じることができて私は嬉しい。それは凄く嬉しいけれど、この格好になってから響子さんの手が私の胸をさわさわと撫で続けている。なぜだか響子さんは私の胸の先を集中的にさわさわして来るので、カップがあるとは言え、その微妙な刺激に私は少し悶々として時折艷っぽい声を漏らしていた。

 もしかすると響子さんは先程の私の行為をやり返しているのかも知れないなと思っていると、着ているキャミの隙間からそっと手が入ってきた。私の肌を優しく撫でる指先の感覚に思わず声を漏らしてしまった。


「きょうちゃん?」


「駄目?んっ」


「駄目っ、じゃ、ないっ、よっ」


「んふふ」


 響子さんがキャミをずらしていきなり私の胸の先を含んだ。直接甘い刺激を与えられて、先程からの私の悶々とした気分に火がついてしまった。このままされるがままに身を任せようとしたけれど、今夜は私が響子さんをいっぱい愛しちゃうつもりだったことを直ぐに思い出して、私は響子の両肩を掴んでその動きを止めた。


「やっぱり駄目」


「麻衣子?」


「私がいっぱいしてあげる。今からきょうちゃんを私のものにする。いいえ、違う。きょうちゃんは私だけのものだって分からせてあげる」


「本当?」


「ほんとよ。覚悟してね」


「はい」


 響子さんが妖しく微笑んでいる私にやけにしおらしく返事を返してきたので、私は少しだけ意地悪くしたくなってしまった。上に乗っていた響子さんと身体を入れ替えて、上から微笑んだまま見下ろしていると、既に蕩けた顔をしている響子さんがキスをねだってきた。私はキスをするかのように唇を寄せていき、まだ駄目よと囁いてその頬に手を当ててからゆっくりと首へと指先を這わせていった。さらに胸へと這わせていって、暫くそこで固くなっていたものと戯れていた。その動きに合わせてびくりと身体をくねらせて吐息を漏らす響子さんの艶姿に当てられた私はそっと唇に触れたあと、少し荒っぽくその中に入っていった。目を開けたままでいると、夢中になって絡んでくる響子さんが少し苦しそうな顔をして息を荒くしながらも懸命に応えてくれる様子に、私は凄く興奮してしまった。邪魔なカップ付きのキャミの隙間に手を這わせ柔らかな膨らみへと進んでいく。それを少しだけきつく掴むと響子さんの喘ぐ声が重ねた唇の隙間から漏れてきた。それを塞ぐように激しくキスをして柔らかな膨らみの先を指でそっと撫でると響子さんは再び声を漏らした。私は唇を離して響子さんを見つめた。


「優しいのと激しいの、どっちにする?」


「好きなようにして欲しい」


 そんなことを言われたら堪らなくなってしまう。私は響子さんを覆うすべてを剥ぎ取ってその綺麗な身体に覆いかぶさっていった。

 それから響子さんは私が満足するまでずっと、私のすることをすべて受け入れてくれて、今までにないくらい激しく私の愛に応えてくれた。そんな響子さんの姿を目にすることが出来て、私は凄く幸せな気分になっていた。




 私は昼間もこんな感じだったなと思いつつ、私のしたいことをし尽くされて荒く息をしている響子さんを優しく抱いて、髪や身体をそっと撫でながらそこにキスをしたりしている。荒く息をしながらも満ち足りたように私に身体を預けている姿に、なんとも言えない気持ちが胸に込み上げてきて、これが愛しさというものよねと、私はひとりうんうんと納得していた。



 今回私は攻めた。攻撃は最大の防御、と言っても別に防御する必要はないけれど、響子さんは私のものだとちゃんと分からせるためだ。勿論優しくも愛したけれど基本は攻めだった。お願い早く欲しいとせがまれてもなかなかあげなかったり休ませてと言われても駄目よやめないわよと言って続けたり恥ずかしがっている響子さんにその格好ままで動いちゃ駄目よよく見せてと言ったりもう無理と言われて仕方ないからあとたった5回で許してあげるから頑張りなさいと励ましたりしたのだ。響子さんは私の愛を健気に受け入れながらもその度に早くとかお願いとかもう許してとか切なそうに懇願していたけれど、そうやって懇願することさえも実は喜びに感じてしまうということを私は最近学習していた。事実、響子さんは私がそうやって攻める度に切なそうに懇願しながらも激しく声と身体で喜びを表してくれて、急に静かになって少ししたらまた激しく喜んでくれるということを繰り返していた。私の愛にそうやって応えてくれる響子さんが凄く愛おしくなって更に夢中で攻め続けていたら、響子さんはまた静かになってしまったけれど、それでも私が攻め続けていると、前よりももっと大きな声を上げて身体を跳ねさせたりして凄く喜んでくれていた。それを何度か繰り返していると、私はもうすぐ響子さんに今まで以上に物凄いものが来ることがわかった。私は最後は一緒にと思って着ている服を脱ぎ捨てて響子さんに私を合わせることにした。私たちが夢中になってそうしていると先ず響子さんが身体を固くさせた後ひと際大きな声を上げて身体を激しく跳ねさせてそのまま大人しくなった。それにほんの少しだけ遅れて私も跳ねた。


 私は切らした息を整えながら、ぐったりと静かに横たわっている響子さんの姿に、私のものだと分かってくれたのだと確信してとても満足した。響子さんも満足してくれたと感じた私は、そこで事を終えることにした。これ以上は過ぎたるは及ばざるがごとしだということを私はちゃんと理解しているのだ。



 響子さんは息は整ったものの、力が入らないようで今だに身体を私に預けたままでいる。そんな響子さんを抱いている私は響子さんを所有している気分になっていて、さっきから響子さんの身体を撫でたり髪にキスをしたりと私の好きなようにしている。これもまた自分のものにするということなのねと思って、私は凄く嬉しくなった。


「きょうちゃんは私だけのものなのよ。わかった?」


「うん。嬉しい。ありがとう」


「動けるようになったらシャワー浴びようね」


「…うん」


「きょうちゃん…」


 私の胸に顔を埋めている響子さんはいつの間かぽろぽろと涙を零していた。どうしたのと聞くまでもなく今の私には響子さんの気持ちがよくわかる。だって私も同じ気持ちでいるのだから。

 いくら私たちが抱えているモノと折り合いを付けて生きて行くことを受け入れて、普段は余裕のあるように振舞っていたとしても、私たちの本質は何処にでもいる女性と何も変わらない。私たちだって幸せになりたいと願い、愛する人を手にしたいと願っているただ女性を好きなだけの普通の女の子なのだから、望んだ幸せを手にしたのなら、こうして泣いてしまうのは当然のことだ。


 私は響子さんを優しく抱き締めてその背中をぽんぽんとしながら、今度こそ伝えるべきことを伝えようと静かに口を開いた。



「きょうちゃん。私はあなたを愛しています。これから先、死ぬまでずっと私の傍にいて下さい」



 響子さんは私の言葉には答えずに、声を押し殺すようにして泣き始めた。くぐもった泣き声を聞きながら、私は黙って響子さんを優しく抱いてぽんぽんしていた。そのうちに声を上げて泣き出した響子さんを、私は変わらず優しく抱き締めていて震えている華奢な背中をぽんぽんしていた。




「はい。宜しくお願いします。私も麻衣子を愛してる。ずっと私の傍にいてね」


「はい。こちらこそ宜しくお願いします」


「うん。愛してるわ、麻衣子」


「私も愛してるよ、きょうちゃん」


 暫くして落ち着いた響子さんが顔を伏せたままで私がずっと望んでいた言葉を聞かせてくれた。こんな私にこの瞬間が訪れるなんて。望んではいたけれど、実際に現実になるとなんて幸せなことなんだろうと私は胸が一杯になった。今ちょっとだけ涙が零れたけれど、泣くのは後で、響子さんの腕の中でさせて貰おうと思って我慢しておくことにした。




 少し間が空いてしまったので、文字通り間の抜けた告白と返事になった感は否めないけれど、誰に聞かせるものでもないふたりだけの誓いなのだからそんなことは別にどうでもいいことで、私たちにとって交わした言葉がとても大切な誓いの言葉になったことは確かなことだ。

 けれど、そうは言っても単なる言葉でしか無いこともまた確かなことで、所詮私たちの誓いなど、いくら私たちが特別なものだと思っていても、男女が結婚する場合と違って、私たちと私たちの同胞以外は誰が祝福してくれるものでもないし理解されるものでもない、何の力も持たないただの言葉に過ぎないのだ。だからこそ私たちはずっと一緒にと誓い合った今のこの気持ちを忘れてはいけないと思う。それを忘れなければ私たちはずっと一緒に居られる筈だから。上手くいく筈だから。


 私は愛する響子さんを、よく見て聞いてたくさん話をして、いっぱい触れていつも想って、大切に愛して過ごしていこうとそう強く思った。



「ねぇ、どうかした?」


「ううん。私はきょうちゃんを凄く愛してるんだなぁと思っていたのよ」


「嬉しい。私も麻衣子をとても愛しているのよ」


「うん」


「だからね」


「うん」


「麻衣子の胸に鼻水が付いちゃったの。でも、私を愛する麻衣子はそんなこと気にしないわよね?」


 私は分かっていた。響子さんが顔を上げない理由はそれだった。今私たちがキスを出来ない理由も同じ。あれだけ泣けば響子さんの顔は酷いことになっているだろうし、直に触れている私の胸に涙と鼻水が付かないわけがない。最初は温かかったけれど、今は胸の辺りが冷たく感じる。


「はあ?何言ってるのきょうちゃん。気にするに決まってるでしょ」


「えっ、うそ」


「ふふっ、うそよ」


「何よもう、脅かさないでよ」


「お返しよお返し。たまにはいいでしょ?私はいつも鼻水で怒られているんだから」


「そっか。お返しか。ふふふ。それなら仕方ないか」


「それよりきょうちゃん。顔を洗わないと誓いのキス出来ないよ?」


「あっ、そうよね。ちょっと行ってくる」


 動けなかったはずの響子さんは、がばっと起き上がって洗面所へと弾むように向かって行った。私は響子さんの後ろ姿を見て、あんなに慌てていつもと逆だなぁとくすくす笑いながらゆっくりと立ち上がった。私が思っていた通り胸のあたりが響子さんの涙と鼻水で中々凄いことになっていたので、このまま響子さんとシャワーを浴びてしまおうと響子さんの後を追って洗面所に向かった。



「ちょっときょうちゃん。何でひとりで浴びようとしてるわけ?」


「違うの。これから呼ぼうと思ったのよ」


「なんだそっか。ごめん。それにしても酷い顔だね」


「そうなの。だからあんまり見ないでね」


「なにそれ。きょうちゃん凄く乙女なんですけど」


 私が洗面所に入ると響子さんが浴室のシャワーを流していた。響子さんと一緒に入りたかったのにと思って文句を言ってしまった。ついでにいつもいじられる泣いた後の顔をいつものお返しとばかりにいじってみたら、何とも可愛らしい返しが来たので思わず私の胸の中に抱き寄せてしまった。


「ちょっとやめてよっ。汚いしでしょ」


「何で?私は平気よ」


「私が嫌なの。こんなことで嫌がられたくないもの」


「嫌がるわけないでしょ。いいから浴びるよ。ほら」


 嫌がっている響子さんを抱き締めたまま私は流されているシャワーを高いところへ掛け直してその下に移動した。こうやって暫く頭からお湯を浴びていれば、鼻水なんて直ぐに流れてしまうのだ。



「あ、着替え忘れてた」


「いいのよ。上がったら部屋に行けばいいんだから」


「そうね。じゃあきょうちゃん、洗ってあげる」


「あ、麻衣子」


 その声に顔を向けると、響子さんを洗うためにスポンジを手にボディソープに手を伸ばそうとしていた私を響子さんが真っ直ぐに見つめていた。


「なに?」


「綺麗になったでしょ?キスしてくれる?」


 その言葉に私はとても嬉しくなった。誓い合ってからずっと、待ちに待った時が訪れたのだから。


「うん。私もしたかったの」


 私は響子さんを抱き締めてその唇に私の唇を重ねた。私たちは甘くて優しい蕩けるようなそんなキスをした。この時のキスを私は死ぬまで絶対に忘れない。


 私たちはその後もシャワーを浴びながら、身体を洗い合いながらいっぱいキスをした。どうしていいのか分からないくらい幸せな気持ちを、お互いに伝えたくてしかたなかったから。

 なので浴び終えた後に、再びソファに座ってお酒を片手にふたりで話し合った結果、やはりシャワーを浴びながら一番最初にしたキスが誓いのキスよねということになった。




 お酒を一杯だけにして、夜のお手入れを終えた私たちはベッドに入ることにした。私はタオルを持ってベッドに入った。泣けるかどうかは今はわからないけれど、さっき思った通り響子さんの胸で泣かせて貰らうためだ。これで鼻水対策はばっちりよと言ったら響子さんは笑ってくれた。


 いつもなら私が響子さんに腕枕をして寝ているけれど、今は私が響子さんの腕に抱かれている。私がそうして欲しいとおねだりしたのだ。響子さんはそれを快く受け入れてくれて、私は今柔らかく包まれながら時折その肌に唇で触れていた。私はその柔らかさに、これこそマシュマロボディなんじゃないのかなと、口にすると絶対に怒られるようなことを思っていた。そうして暫く響子さんの温もりに包まれていると、あまりの幸せに自然と涙が浮かびそうになってきた。


「泣けないの?」


「もう泣きそう。でもちょっと」


 私は胸のあたりにキスを一つしてから上半身を起こして、響子さんを上から見つめた。カーテン越しの夜の明かりだけでも響子さんの顔がよく見えて、そこに私たちが重ねてきた月日の長さを見た私の頭に、出会った頃の若かった私たちがふと浮かんできた。その若くて幼かった私たちに、私たちはこうして一緒になれたのよと心の中で呟いた。すると私を見つめていた響子さんが不意に微笑んだ。私の顔を見てきっと同じ事を思ったのだ。もうそれだけで泣きそうになってしまう。でもまずは伝えたかったことを伝えておこうと口を開いた。


「きょうちゃん。今は無理だけれど、出来るようになったら結婚しようね」


「もちろんよ。私を麻衣子のお嫁さんにして貰うんだから」


「いいよ。きょうちゃんを私のお嫁さんにしてあげる。でも、私もきょうちゃんのお嫁さんにしてね」


「いいわよ。ふふふ」



 これもまた不確かな、と言うか今のところほぼ可能性の無い約束だ。同性婚が認められている国はあるけれど、私たちがそこに移住する予定もまた今のところはない。この国だって私たちが年をとってお婆ちゃんになるまでには、もしかすると同性婚が認められるようになるかもしれない。私は響子さんと結婚したい。ウェディングドレスだって着たいし、響子さんの着ている姿も見たい。ふたりで誓いの言葉を言って指輪の交換だってしたい。自分たちで選んだ日時に役所に行って婚姻届だって出したいのだ。なるべく早いうちにそうなることを強く望んで、あまり期待をしないで待っていることにしようと今は思っている。


 それとは別に、これからふたりで一緒に暮らしていくのであれば、パートナーシップ制度の申請も視野に入れておくべきだろう。それによるメリット、デメリットを響子さんとよく話し合わなくてはいけない。


 今日、私たちの望みが叶ったからと言って、私たちを取り巻く世界が急に優しくなってくれるわけじゃない。私たちには私たちの未来について話し合わなくてはいけないことが数多くある。親のことや友人達のこと、仕事のこと。色々だ。生きにくいことは何も変わらないけれど、それでも私は生きていく上で大切なパートナー、拠り所となる女性(ひと)をこの手に掴むことが出来た。響子さんが私を見つけてくれて、こうして一緒になれたことはとても幸運なことだと思う。だから私はこの手に掴んだ幸せを絶対に離さない。私は今凄く幸せだ。どうなることかと不安でたまらなかった人生が、そう悪いものでもないんだと今は確かにそう思える。

 


「きょうちゃん、あとね」


「なに?」


「お願いだから二度と私を離さないでね」


「当然よ。麻衣子も二度と私から離れちゃ駄目よ」


「うん。うんっ」



 響子さんの胸で泣かせて貰うその前に、もう一度キスをしたいなと思った私は、浮かんで来た涙を零さないように響子さんの唇にそっと唇を寄せていった。




「愛してる」


「私も愛してる」











  おしまい


 




如何でしたでしょうか?

何分にも初めて書いた作品ですので、読みづらくツッコミ処も多くあったと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。


完結としていますが、これから誤字脱字等を修正しつつ、暫くしたら後日談的なものをちょろちょろと上げていく予定です。興味がありましたら読んでみて下さいませ。


最後になりますが、この作品を見つけてくれて読んでくれた方、評価してくれた方、ブックマークをしてくれた方、ありがとうございました。

またそのうちに作品を投稿するつもりですので、見つけてくれたら嬉しいです。

では。


しは かた

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