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続きです。
微エロ、甘々回です。苦手な方はご注意を。
よろしくお願いします。
「お帰り」
「っ、ただいまきょうちゃん」
「驚いちゃってどうしたの?」
「いや、だってそれ」
私は響子さんを指差してなぜ驚いたのかを説明した。
私が響子さんの家を訪ねると響子さんがお帰りの言葉とともにすぐさまドアを開けてくれた。私は突如目の前に現れたキャミとショーツ姿の響子さんを見てドキッとしてしまった。いくら見慣れていると言っても、可愛いくて綺麗な響子さんはやはりいつだって可愛いくて綺麗なんだから私がときめいてしまうことは仕方のないことなのだ。更にはお帰りと言った響子さんに驚いてしまった。今までは私がただいまと言えばそれに答えてくれてはいたけれど響子さんの方からお帰りと言ってくれたのは初めてだったからだ。私がそれを嬉しくもあり驚きもしたのはこれまた仕方のないことなのだ、と。
「格好?今更でしょ?でも凄く嬉しい。ありがとね」
「うん」
「それにね、私は麻衣子にとって帰る場所なのよ。だからお帰りと言っただけよ」
「それは凄く嬉しいよ。きょうちゃん」
そう言って貰えた嬉しさと微笑んだ響子さんのあまりの可愛さに思わず抱きしめたくなってしまった私は、荷物が多くてそれが出来ないことに怨めしさを覚えつつ持って来た食べ物を響子さんに渡した。
「これ、昨日買った竜田揚げ。保冷剤と一緒に持って来たから大丈夫だと思う。それと、きょうちゃんの朝ごパンと私の昼ごパンとサラダね」
「ありがとう。竜田揚げは温め直さないとね」
「きょうちゃん。竜田揚げは冷蔵庫で冷やして食べたほうが美味しいのよ?」
「へー」
私は竜田揚げを家から持って、パンとサラダを響子さんの遅い朝ご飯と私の早めの昼ご飯用にそこの駅前で買ってきた。それを渡す際に私が竜田揚げの一番美味しい食べ方を伝えたのにもかかわらず、響子さんはまるで興味がありませんよとばかりに気の無い返事をして、渡した食べ物を持ってリビングへと戻って行く。思い切り流されてしまった私があまりのことに悲しい気分で玄関で立ち尽くしていると、くるりと振り返った響子さんが訝しげに私を見て、直ぐに私の側まで戻ってそのまま私をぎゅっと抱き締めてくれた。ごめんと言われると思っていたけれど全然違った。
「告白してくれるの?」
「えっ?なっ、なに言ってんの?」
「なんだ、違うのね。残念」
「なっ。ちょっと?」
「さ、早く上がって。ここは暑いから」
「えっ?ああ、うん」
響子さんは私の耳元でとんでもないことを言った後に私の頬にキスをしてから体を離し、私を見てどこか意地悪く微笑んでからくるりと回ってそのままリビングへと入っていった。
響子さんの言葉に驚き焦っていた私は、靴を脱いで疲れたようにのろのろとリビングへと向かった。
言われたことは何か期待させるような言葉だったとは言え、明日の朝までこんな調子で振り回されるのだとしたら私の精神は持ちそうもないなと苦笑いをして軽く溜め息を漏らしつつ、もし今私が想いを告げていたらあの時のように受け入れてくれたのかしらと玄関を一度振り返ってそんなことを思った。
「服を掛けてくる。ついでに着替えるからね」
「わかった」
私はキッチンで飲み物を用意をしている響子さんにそう声をかけて、リビングを抜けてそのまま寝室に入っていく。明日会社に着ていくために持って来たシャツとパンツをバッグから取り出してハンガーに掛けて皺をチェックした。今までは日曜日に泊まるなんてことは一度もなかったので、こうして出社するための服を用意しておくのは初めてのことだったから、私は掛けられた服を見て何だか嬉しくなってしまった。
それから汗で湿った服を脱いで、いつものTシャツと短パンに着替えて洗面所に向かった。
手を洗ってうがいをして汗を適当に拭ってから響子さんのいるリビングに戻ると、ローテーブルにはパンとサラダと竜田揚げが既に並べられていて、響子さんはソファに座って私が来るのを待っていてくれた。私は響子さんの隣にくっつくように腰を下ろして響子さんの左腕に私の右腕を絡めた。食べ辛いでしょと言われるかと思ったけれど響子さんは私を見て微笑んだだけだった。
「きょうちゃんお待たせ」
「大丈夫よ。ご飯ありがとう麻衣子。頂きます」
「あ、待ってきょうちゃん」
「何?」
「キスしたい」
腕を絡めてくっついたまま顔を寄せていくと響子さんは優しく微笑んでから目を閉じて私を待っていてくれた。そっと唇を重ねて響子さんの中に入り、少し絡んだだけで私は唇を離した。左手を伸ばして響子さんを少しだけ抱いてこれもすぐに離した。私は唇を合わせている間に愛しさが溢れてきてもっとしていたかったけれど、響子さんはお腹が空いているのだからとキスも余韻も短くしておくことにした。
「じゃあどうぞ。と言っても私も食べるよ」
「ふふ。じゃ、食べよう」
「うん。頂きます」
私たちは腕を絡めたままだ。けれど響子さんは右手で器用に食べ始めた。私も食べようとしてあることに気がついた。パンと竜田揚げとアイスコーヒーは大丈夫だけれどサラダを食べるのに左手だけではどうも食べにくい。かと言ってせっかく響子さんとくっついて腕を絡めているのにそれを解くのは嫌だったので、ここは一つ、響子さんと腕を絡めたまま右手を使ってみようと思ったその時、響子さんがくすくす笑って私の方へ顔を向けた。
「食べにくいんでしょ。私が食べさせてあげる。はい、麻衣子。あーん」
「あ、あーん」
何ということでしょう。響子さんが食べさせてくれると言うではありませんか、とナレーションが聞こえてくるくらいの驚きだ。
今日の響子さんは私にとても甘くしてくれる。そう思うと嬉しくてもっと甘えたくなって、思わず野菜をもぐもぐ噛みながら響子さんの肩に頭を預けてしまった。響子さんは何も言わずに私をそのままでいさせてくれた。
「このドレッシング美味しいね」
「そうね。また食べようね。はい、あーん」
「うん。あーん」
この甘い甘い時間はサラダが無くなるまで続いた。終わってしまった時はかなり残念だったけれど私は腕を解くことはしなかった。竜田揚げとパンは左手だけで食べられるからだ。
それからは右利きの私がしなくてもいい苦労を響子さんが笑って見ていたり、手伝ってくれたり、私が竜田揚げが温められていたことに文句を言ったりして楽しく食事を終わらせた。
ただ、そのせいで普段よりも食事に時間が掛かってしまったので食事が終わってふたりで後片付けをしているときに私は響子さんにその事を謝った。響子さんは私も麻衣子とくっついていたかったんだから気にしないでとこれまた嬉しいことを言ってくれたので、思わず抱き締めてキスをしてしまった。響子さんはそれを嬉々として受け入れてくれて、更にはお返しのキスをしてくれた。
私は今、響子さんの胸に顔を乗せ、優しく包まれながら幸せな気持ちで微睡みの中にいる。響子さんを覆っているのがカップ付きのキャミなのが残念なことではあるけれど、幸せなことには変わりがないのでそこは良しとしている。背中にはぽんぽんと優しいしリズムを感じていて、こうしていると安心できて私はすぐに眠ってしまった。その時何か凄く嬉しいことを言われた気がしたけれど返事をしたかは覚えていない。
キスの合間の片付けが終わった私たちは、再びソファにくっついて座り腕を絡めて暫くお喋りをしていた。それが響子さんに包まれて眠るほんの少し前のことだったと思う。
「眠たいの?」
「んー。昨日考え事に取り憑かれてちゃって、あんまり眠れなかったの」
お腹が満たされ涼しい部屋で右腕に響子さんの温かさを感じていた私は、昨日の物思いのせいもあって急激に眠たくなってしまったのだ。眠気と戦う私の姿を見た響子さんは絡めていた腕を解き、斜めに座わり直してソファに背中を預けた。さらに響子さんはズレて浮いてしまった背中の所にクッションを当てていた。そうして出来上がった響子さんの姿はソファに斜めにもたれ掛かっていて、リクライニングを半分くらい倒した様な格好だった。
「おいで」
私は呼ばれるままに腕を広げている響子さんにしな垂れ懸かり胸の辺りに頭を乗せた。私が身体を預けると響子さんは私の身体を包むように背中に腕を回してくれた。
「きょうちゃん辛くない?」
「平気。このまま少し眠っていいよ」
「ありがときょうちゃん。少し寝るね」
私は目の前にあったキャミからはみ出ている柔らかい膨らみにお礼のつもりで唇で触れてから目を閉じた。私はおやすみと言ったかな、なんか言い忘れたかも……………。
「おやすみ麻衣子。愛してるわ」
「ん………」
「ふふ」
ふと気づくと響子さんが私の頭を撫でていてくれた。私はすぐには起き上がらずに響子さんの柔らかさと温かさ、それと撫でられる心地よさを堪能しつつもこっそり涎の確認をしようとしたけれど、どうやら既に事態は良くない方に推移しているようだった。
目を覚ました瞬間に無意識にじゅるっと音を立てていた気がするしキャミが若干濡れているので確認も何も無かったんだけれど、もしかしたらこれはチャイナシンドローム的なことになっているかもしれないと思って、これ以上の被害の拡大はかなりマズイことになると思った私は、この前と同じ様に咄嗟に思考を巡らせて思いついたことをすぐさま実行することにした。
「んっ、う〜ん」
あたかも今起きましたという体を作りつつ、まずはキャミで隠れていない柔らかな膨らみに唇と舌で触れてそこを吸った。なぜ私がキスをしたかと言うと、涎で濡れたのではなくキスの所為なのよと言い張るためだ。名付けてキスをしていたらキャミが濡れてしまったけれど怒らないでね大作戦だ。私が作戦を開始して柔らかな膨らみにキスをしていると響子さんのくぐもった声が聞こえてきた。私はこのままいけば涎がバレずに済むと踏んで、少しずつ場所を変えながらキスを繰り返した。キャミをずらしてまだキスをしていない場所にキスをしたり、キャミをずらしたことで横からちょこっと顔を見せた少し硬い先を唇でそっと触れたりもしていた。けれどキスに合わせて漏れる響子さんの艶やかな声を聞いているうちに作戦の主旨をすっかり忘れてしまった私は夢中になって口づけたり吸ったり這わせたりを続けながらすぐそばにあった豊かで柔らかな膨らみを手で包み込んで優しく撫でたりもしていた。
「麻衣子」
吐息混じりの声に呼ばれて顔を上げると潤んだ瞳が私を見つめていて、私はその瞳に吸い込まれるように顔を寄せていった。私が唇を合わせて深く奥へと入り込んでいくと、そこには激しく応えてくれるものがあった。私は響子さんのキャミを捲ってそっと手を滑らせていきその柔らかな膨らみの先を中心に優しく触れながら唇を離して頬から首にそれから鎖骨へと這わせていき遂に柔らかな膨らみの先端を捕らえると響子さんは喘ぎながら私の頭を抱えるように抱いてくれた。一つを口にもう一つを指で優しく触れている私は空いている手を下の方へと滑らせて響子さんを隠す布の隙間へと入っていった。私の指に合わせて響子さんが声と身体で応えてくれることが嬉しくて私が暫く指を周りで遊ばせていると早く来て欲しいとお願いされた。けれど私はもう少し周りで遊んでから行くことにした。響子さんの漏らす切ない声を聞きながら暫く遊んだことに満足した私はそろそろ奥に訪ねていくことにした。私が少し入った瞬間に響子さんは私にしがみついて一際大きな声を上げて私を迎え入れてくれた。
それから私は響子さんを思いきり愛した。私の愛を伝えるための行為でもあるからだ。私は響子さんが私に応えて声を上げたり抱きついてきたりする姿を見て、私の愛が伝わっていることがとても嬉しくなって、かなりの時間を掛けて響子さんを愛し、そして私の愛を伝え続けた。響子さんは時折苦しそうな表情を見せながらも私が満足して事を終えるまでの間、絶え間なく喜びの声を上げ続けて私の愛に応えてくれていた。
私は荒い息をして私にもたれている響子さんをソファの上でそっと抱いている。響子さんは今しがた私のせいで激しく乱された息を整えているのだ。一糸纏わぬ姿で、しかも事の終わりの何とも言えない艶を纏った響子さんに私が少しどぎまぎしながらも優しく髪を撫でていると、そのうちに荒い呼吸は収まってきたようで響子さんは顔を上げて私にキスをしてくれた。私は汗で響子さんの顔に貼り付いている髪を指で優しく払ってからキスを返した。
「ありがとう麻衣子」
「どういたしまして?」
「ふふ。なんで疑問形なの?」
「だって私がきょうちゃんにしたかったんだもん」
「それが嬉しいのよ」
「そっか」
「そうよ。後でまたしてくれる?」
「いいの?」
「麻衣子にもっと愛して欲しいの」
「ならいっぱい愛しちゃう」
私たちは微笑み合ってもう一度甘くて優しいキスをした。私はもっと愛して欲しいなんて言ってくれたことが嬉しくて顔を綻ばせていたけれど、唇を離した響子さんは私を鋭く見つめていた。その顔を見て私は察した。キスは甘くて蕩けるようだったのに、やはり現実はそう甘くないらしい。
「ところで麻衣子」
「な、なに?」
「誤魔化せたと思ってるわね?」
響子さんは私が一応畳んで置いていたキャミとショーツを指差していた。私は動揺しないように気をつけたつもりだったけれど全然駄目だった。
「な、なんのこと言ってるの?き、きょうちゃん違うから、あれはね、キスしてたら濡れちゃったんだから」
「本気で誤魔化せると思ってるの?」
「うっ。いや、だからあれはキスでだってば」
「思ってるの?」
「ううっ。思ってません。その、ごめんなさい」
「そう。それとね」
「な、なに?」
「麻衣子はどうして服を着たままなの?」
響子さんが今度は私を指差している。さすがにこれは意味がよく分からなかった。私はさっきとは違う意味で動揺してしまった。
「えっ?どうしてって…」
「どうして?」
鋭く見つめる眼差しにたじろぎながら考える。なるほどこれはきっと早くあなたも脱ぎなさいということなんだろう。そう思ってTシャツに手を掛けると響子さんの鋭い目が和らいだ。正解だったようで何よりだと思いいつつ私は服を脱いでいった。そうしてブラとショーツだけの姿になったけれど、響子さんは先を続けなさいと私を目で促した。昼間の明るさの中で自らすべてを晒すことで恥ずかしさに身を染めながら一糸纏わぬ姿になった私は、じつは脱げと言われた時から響子さんがこれからしてくれるあれこれを想像していて期待で胸が苦しい程に高鳴ってもいた。そんな私の心情などお見通しだとばかりに、響子さんは満足げに微笑んでゆっくりと私に迫ってきた。
「涎の罰も兼ねていっぱいするからね」
期待していた通りの言葉を聞けた私は、ぞくりと身体を震わせてただただこくりと頷いた。けれど響子さんはそれでは満足しなかった。
「返事は?麻衣子の口から聞きたい。どうして欲しい?」
「…いっぱいして」
「いいよ。いっぱいしてあげる」
掠れた声で喘ぐように返事をした私は、響子さんの言葉を聞いて我慢できずに響子さんに抱きついていった。
このあと響子さんは言葉通りにいっぱいしてくれたけれど、事が終わるまでに言葉以上のこともいっぱいしてくれた。お陰で私は響子さんに抱かれるたびにじわじわと響子さんの色に染められていることを身をもって実感させられた。させられたなどと言ったけれど、私を自分のものだと言ってくれた響子さんに染められていくことを私はとても嬉しく思っている。これは過程のひとつであって、私はその先にある響子さんとの未来を望んでいるのだから。
それからついでに言っておくと、私は新しい扉を開いたこともちゃんと認めることにした。私は正しく己を知らなければならないからだ。自らあんな姿を晒してしまえばもはやなんの言い訳も出来ない。勿論、響子さん限定の話ではあるけれど。
読んでくれてありがとうございます。




