表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/40

13

続きです。短めです。

よろしくお願いします。


 自分の部屋に入ってすぐに響子さんに無事に着いたことを知らせるメッセージとおやすみスタンプを送った。すぐに既読が付いておやすみのスタンプが画面に表示された。

 アプリを閉じようとして続いて鳴った着信音に手を止めて画面を見ると、愛してると犬が言っているスタンプだった。私が終ぞ見たこともないそのスタンプを目にして、感動のあまりになぜかすぐにスクショを撮った。

 返信したくなったけれどエンドレスになりそうな気がするからやめておくことにした。

 帰宅の報告はいつものことだけれど今日のは物凄く嬉しい。私は満足して寝室に入りスマホを机に置いて充電器をさした。




「私、きょうちゃんに耐性なさ過ぎよね」


 寝間着に着替えながら送られてきたスタンプではしゃいだことや響子さんの家であった事を思い返してぶつぶつと呟いていた。


「チョロいと言うヤツね」


 これが惚れた弱みなんだろうかと思っだけれど、それはもう今更な話だ。それに響子さんが嫉妬したことで、私に好意を持っていることを確認出来た訳だし、今まで見たことのない姿を見せてくれたのだから浮かれてしまうのは当然だろう。

 私はそう納得して洗面所に向かった。

 

 結局私が帰宅したのは深夜1時前だった。

 ことが長くなった上に、終わった後も私が復活するまでかなり時間がかかり、帰るにしてもそんなに色んなものを身体に付けたまま深夜に外へ出るなんて駄目に決まってるでしょと響子さんに言われてしまい、それはそうだと思ってふたりでシャワーを浴びたのだ。

 更に帰り際の私の甘えっぷりを響子さんが受け入れてくれたことで部屋を出るのが遅くなってしまった。

 響子さんは泊まっていけばいいと言ってくれたけれど、お互い明日からまた仕事だし、私の服はカジュアルな物しか置いていないし、私は忙しい月末をあと2日を残していたから、このまま泊まったら寝ずにいちゃいちゃしてしまうと思って泣く泣くお暇したのだ。

 それなのに響子さんは不満を隠そうともしないで帰るなと文句を言い始めてしまった。初めてそんな響子さんの姿を見て、私はまたも驚きつつも、来週は必ず日曜も泊まることを約束して何とか宥めることに成功した。


 私は歯を磨きを終えて、今はお手入れをしながら鏡に映った鎖骨の下にある爪ほどの痣を見ている。響子さんは麻衣子は私のだからマーキングしたのだと言っていた。それが消えたらまた付けないとねとも言った。付けたのはそこだけよとも言っていたけれど、あんな顔して言われてもそれはまったく信じられない。私が気付かないところにも付けていそうな気がして仕方ない。

 それでもその痣と付けられた理由に嬉しさを感じているのは確かなことで、私はそれに触れて嬉しさを噛み締めた。

 


「意地悪モードのきょうちゃんなら絶対にやっているわね」


 私は今、手鏡を持って夏の服では隠し辛いギリギリところを映して探している。服によっては鎖骨の下がそうであるように、他にもあるとするならきっと同じようなところだと思うからだ。腕を反対側に回したり、首を捻ったり髪を上げて見たりと色々しているうちに私はとうとう見つけてやった。


「やっぱりあった。まったく。きょうちゃんめ」


 左の肩の後ろ、首に近いところにそれはあった。この位置も服と髪の纏め方によっては誰かに気づかれそうだった。これで明日の服装は襟を基準に選ぶこととなった。

 ぶつぶつ文句を言いながら探していたけれど痣を見つけた私のニヤついた顔がしっかりと鏡に映っていた。


 私はベッドに転がってイルカのようなフォルムの抱き枕を抱いて響子さんのことを考える。

 一緒に居た時間は本当に楽しかったし幸せだった。私が響子さんを愛していると実感させられる時間でもあった。もしかすると響子さんも私を愛しているのかも知れないと、そう思わせる出来事もあった。

 まさかパートナーを探すという言葉に、響子さんが嫉妬するとも思わなかった。響子さんは本当にあっさりしていて、私に執着する事など今まで一度も無かったし、ましてや嫉妬が態度に出る事も無かった。私に恋人ができた時でさえ祝福はしてくれても、嫉妬するなんてことはあり得なかった。まぁそのお付き合いは半年程で振られてしまい、私は響子さんの元に戻ったんだけれど。

 とにかくその間も響子さんはよく連絡をくれて、上手く行っているかとか相談があったら聞くからねと私を心配してくれていた。私が上手くいくことを心から望んでいるようだった。

 だから響子さんの口から嫉妬などという言葉を聞いた時は何の冗談かと思ったし、凄く驚いたし凄く嬉しかった。響子さんが嫉妬したということは私に執着心を持ったということなのだから。


「うふふ。嬉しい」


 会いたい時に会おうだなんて響子さんから言われるとは思わなかった。

 私が会いたいと言えば会ってくれるけれど、どうしても遠慮してしまって余り連絡できなかったのだ。週末にはまた会えるし、これからは会いたい時に会えるかもしれない。そう思うと嬉しくて堪らなくなる。

 それに映画の時の言葉もあのスタンプもそうだ。どちらも今まで一度も無かったことだ。今度はちゃんと伝えて欲しいと思うけれど焦ってはいけない。響子さんがちゃんと伝えたいと思ってくれるまで私はそれを期待して待つことにしようと思う。今日それを口にしたのだから、きっとそう遠くないうちに伝えてくれるかも知れない。


「期待しちゃうなぁ」


 麻衣子をからかったのも、意地悪く責めるように抱いたのも、それは嫉妬からの事だったと、ふたりでシャワーを浴びている時に響子さんは言った。今夜抱いたときは嫉妬を隠さずに自分の感情に任せてみたのだとも。

 私はそういう事かと納得した。嫌じゃなかったよと伝えたら、それならいつでもしてあげると妖しい笑顔で言っていた。私は期待してしまったけれど曖昧に笑って誤魔化した。でもきっと響子さんにはバレていると思う。


「きょうちゃん」


 私は響子さんの名を呟いて抱き枕をぎゅっと抱き締めた。ふと隣にいない響子さんに私の愛を伝えたくなってしまった。時間は2時になっていた。きっと響子さんはもうとっくに寝ているだろう。私も寝ないと明日に響く。


「ふふ。響くだなんて。ふふふ」


 とにかく色々とあったけれど今の私は凄く満たされている。私は響子さんに新しく染められた。だからもう藤宮さんの事は心配いらない。

 私がパートナーを欲しいと思っていることに変わりはないけれど、私のパートナーが響子さんになる可能性もあると知った。私たちの関係が私の望む方へと進んでくれるかも知れないのだ。なら私はそれを叶えるために焦らずに動いてみようと思う。

 と言うか今日の私たちは、それはもうまるで恋人でもあるかの様にいつも以上に笑って怒っていちゃいちゃして愛し合って過ごしていたのだから、また今日のように過ごしていればそのうちにきっと上手くいく筈だ。そうすれば私たちがパートナーになれる時がきっと来るだろう。私の最後の恋は響子さんとの恋だと言える時が。

 無敵な私なら何とかなる筈だ。


「そんなの余裕だわ。私は無敵なのよ。ふはははは」


 いや、待って。変なテンションになる前にもう寝ることにしよう。あと5時間ぐらいしか寝れないんだから。


 響子さんが私のパートナーになる。あくまで可能性の話ではあるけれど、そのことが何よりも嬉しくて私は幸せな気分で眠りにつくことが出来た。













読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ