捜索
「なんであんな事、言ったんだよ」
「あんなこととは?」
「助けてもらったなんて、おばちゃんの言う通り誘拐されたって騒げばよかったのに」
正直助かった、騒がれていたら終わっていた。
「いいえ。助けて頂いたのは、本当ではないですか?ここまで運んでくれて、怪我の手当てまでしてくれました。本当ありがとうございます!ですから、恩返しです!」
恩返しなんて、なんか恩着せがましいですね。と笑いながら言う少女を見てリアムは、悲しくなった。
こんなに優しく美しい少女が、なぜ自分の事を"わがまま姫"なんて言うのか。
城からここまで、ほんの数時間しか一緒にいないが、この少女が、我が儘女でないことくらいわかる。
『お前ニセモノだろ!』と言った所で『いいえ。私が"わがまま姫"で間違いありません。』
そう言われるのが目に見えてる。
まだ時間は、たっぷりある。
見極めよう!この少女を。
ホンモノかニセモノかを。
城では、王女様が誘拐された!よりもあの大きな体格の王女様をどうやって誘拐したのか?その話題でもちきりだった。
塔から出れないほど、太ってしまった王女様。
これが、城で働く者の認識だった。
皆、王女様が誘拐されたというのに楽しそうに話していた。
『あの大きな王女様を誘拐できるやつだ!きっと筋肉もりもりの大男にちがいない!』
『なんで誘拐なのかしら?あのわがまま姫に一目惚れしたとかぁ?』
『世界は、広いな!あんな我が儘な化け物好きになるなんて!』
城の兵も使用人達もみんな一緒になって笑っている。
これで、あの我が儘とおさらばできる!そんな嬉しいそうな顔だった。
「そんなんじゃないのに…」
アンナの小さな訴えは誰にも聞こえてかなった。
「アンナ!!」
男は、自分と同じ色の髪を持つ女性に声をかけた。
「イワン!マリア様は?どこへ消えてしまったの?」
双子の姉であるアンナがイワンに思いっきり掴みかかり、顔を近づけながら聞いた。
今にもオレを食い殺しそうな勢いだ。
同じ顔ながら怖い。
「それを報告に来た!だからはなしてくれ、アンナ!」
「見つかったの!?」
「いや、見つかってはいないが、どうやって誘拐犯がマリアンヌ様を連れて逃げたかは、わかった。」
「そう…」
「そう落ち込むなよ。逃げた方法がわかった!今から兵を連れて探しに行く。銀髪の青年以外に何か特徴はなかったのか?」
もう少し情報が欲しい。
この国では、銀髪は珍しくはないのだ。
そして1番問題なのがマリア様の素顔を知る者がほとんどいないことだ。
片手で数えられそうな人数。
兵をむやみに総動員しても、本物を見つけられないのだ。
兵の中から先鋭部隊をつくり、オレと一緒に全てを見に行かなくてはならない。
見つけられるのか?そもそも生きているのか?
不安そうな顔をしているイワンを見てアンナは悔しそうに喋った。
「暗くてよく見えなかったのよ、、、でも声をからして、歳は私達とそんなに変わらないはず。身長は、イワンと同じくらいね…お願いイワン、、、マリア様を助けて!」
アンナが泣きながら訴えてきた助けて!と言った。
アンナは、マリア様が生きてるって信じてるのにオレは、、、。
マリア様を無事に連れて帰ってきたら、一発アンナに殴ってもらうか。
痛そうだなぁと思いながらも、イワンは生きてるマリアンヌを全力で探そう!そう決心した。
オレと同じくらいって事は、180㎝くらいかの20歳前後の男ってことか?
情報は少ない。
だが、必ず見つけ出す!マリアンヌ様の騎士としてこの命に代えても!
イワンは、兵を連れ城を後にした。
王女様なのになぜあんまり素顔を知ってる人が居ないのか?
イワンは、マリアを見つけることができるのか?