プロローグ
-少年は知っていた-
この世界には光があるように闇があるということを。
-少年は知っていた-
人間にはやっていいことと悪い事があることを。
-少年は知っていた-
いいことをすると光が、悪いことをすれば闇が待っていることを。
-少年は理解していた-
そして自分はこの闇から抜け出せないことを。
-そして少年は目の前の惨状をもう一度見る-
そこは白かった。とても白い部屋だった。そこは広かった。とても広い部屋だった。
しかし、今ではとても狭く感じる。
少し前まではこの部屋もとても白かった。
しかし、今では部屋中が赤い。
少年の足元には大量の何かが横たわっていた。
だが、少年はただ立っているだけの人形のようにその光景を見ていた。絶望していた。
少年は自分の体が思うように動かないことに気づいたのにはそう時間はかからなかった。そして何か異変が起きていると思い立ち全身をその手で触ろうとした。
その時だった。自分の体が赤いことに気づいたのは。あまりの驚きに何度も瞬きをして確認した。
_今日は確か_と記憶を辿り、今日の服装を思い出した。今日は タキシードを着ていたはずなのに上着はなく、白いシャツは赤に変わっていた。そしてても赤い。その赤い手で触った顔も赤い。全身が赤い。
ふと右手になにかを持っていることに気づいた。その瞬間、少年は全身の力が抜け、周りにある大量の何かのように地面に膝をつけた。そして全て思い出した。
自分がなぜこの白かった部屋にいるのか
自分がなぜこんなに赤いのか
自分はここでなにをしたのか
そして、自分の周りにあるのが何なのか
その答えを知り、この場を立ち去ろうと真っ先に考えた。そして少年は立ち上がり去ろうとする。しかし、その体はもう朽ち果てており、立つのが精一杯であった。だが、自分がここを去らなくてはならない理由も思い出し、限界を迎えている体に鞭打ち、少しずつ歩んだ。
そして、部屋を出てその部屋があった建物から脱出した。
その建物からも少しすこし離れたところで少年の限界に達した。
もう立ち上がることすらできない。もうここで自分もあの白かった部屋にいた大量の何かのようになるのだと悟ったころだった。
-少年の目の前に1人の少女が立っていた-
背格好からして自分とあまり年齢は変わらない少女だった。
少女は少年を見下ろすように立っていた。
「なにをしているの?どうしてそんなに赤いの?なにがあったの?大丈夫?」
少女は少年の返事を待たずに続けざまに質問を投げかけた。だが、少年は言葉を返せないほど衰退していた。
そして、少女は最後にこう言った。
-「きみ、神には興味ないかい?」-
-これは僕が10歳の頃の記憶だ。-