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Iron Executioner  作者: ごまみりん
6/14

無能

今回は短いです。すいません。


大使館は不思議な空気に包まれていた。


静寂の中の混沌。ぴりぴりした空気を纏っている者もいれば、思案をめぐらせている者もいる。


大使の執務室もおなじことで、大使は白髪の混じった髪を掻き上げて憂鬱そうにため息をついている。ぼくとメイナードと言えば、疲れきってソファに体を沈めていた。大使のように、これからのことを考えてため息をつくほど体に余裕は無い。



二時間前。ぼくとメイナードがぐったりしながら大使館に戻ってくると、すぐに本国の連中との会議が始まった。ARの向こう側には、会議室にいた面子の他に安全保証関連の官僚や議員――戦争屋たち――に、SOCOM(特殊作戦軍)の司令官まで勢揃いしてた。大佐と将軍以外の顔には焦りだったり、恐怖が滲み出ていた。自分たちの使徒に牙を向かれた戦争屋たちの気持ちを考えると、沸き上がる笑いを抑えることは容易で無かった。


一番滑稽だったのは陸軍情報保全コマンドの顔で、議員から情報漏洩を疑われて必死で否定する顔が最高にツボだった。


会議は結局、本国の連中たちが悪口を言い合うだけの幼稚園と化し、大佐と将軍から引き続き任務の続行を言い渡されて終わった。

ARに誰もいなくなると、メイナードは中指を立てて、どうしようもないやつらだ、と言った。ぼくも中指は立てなかったけれど、同じようなことを言った。そのあとひとしきり笑って、戦争屋共の表情を散々嘲ってやった。




ドアをノックする音。


NSAの分析官が日本政府からデータが送られてきたことを知らせてくれた。ARにメッセージを入れてくれればいいのに、差し入れのコークと一緒に知らせてくれた律儀な分析官を、ぼくは存外気に入っていた。


トーチャールームでは、結局大した情報は出なかった。みんな、どんぐりの背比べ。


メイナードは差し入れのコークをひったくると、一息に飲んでしまった。ぼくもコークを一気に流し込んで、期待をかけるデータを確認した。




結果として、またもや本国でふんぞり返っている情報機関共同体(インテリジェンス・コミュニティ)のお偉方が、いかに無能かということが証明されてしまった。


日本政府の中東におけるPKO活動の際のイミント情報、UAVからの空撮画像。送られてきたデータはそれだった。撮影されたのは46時間前で最新の画像。


そこには会議室で見た真っ黒なECNが写っていた。右手には特殊戦仕様のパイルバンカー。メカニカ社製のアサルトライフルを持って燃える村落に佇む死神。


中東で何年間飽きもせずにドンパチやってるんだ、と言いたくなる。この程度の情報を得られないなんて、ほんとうにうんざりする。今すぐ、ラングレーとフォートミードの連中の頭に45口径で穴を開けて、脳味噌を入れ換えてやりたい。


今ごろ本国の連中はどんな顔をしてるだろうか。大佐あたりは、腹を抱えて情報畑の連中を笑ってるかもしれない。笑われてる方は大慌てだろう。なんてったって他国に遅れを取ったんだ。何処の誰の首がすげ変わるか分かった物じゃない。さぞ、戦々恐々としてることだろう。


メイナードなんかは唸り始めてしまった。上司たちの無能さに心底うんざりしてるのは、メイナードも同じだろう。恨めしそうに、上司たちがいたARに、ファック、と言って中指を立てていた。今度は、ぼくも中指を立てた。



とりあえず、行き先が決まった。

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