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I have a legendaly weapon~アイハブ・ア・レジェンダリィ・ウェポン~  作者: 駿名 陀九摩
第3章 勇者、本格的登山にチャレンジ
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第14話 ロヒインの強化訓練~その1~

 魔王城。

 老人の姿をした魔物、ルキフールの視線は目の前にある円形の泉に移る光景にまっすぐ注がれている。


「おしいかなメーヴァー。

 新手の戦士にしてやられねば、ファブニーズのいうとおりうまくいったかもしれんものを」

「そうたやすくいくものか。

 いままでの戦いを見てきただろう、そう簡単にしてやられるほど奴らは(もろ)くない」


 玉座に座り足を組む魔王ファルシスはいかにもご機嫌ななめ、といったところだった。

 グラスの中の緑の液体を飲み干し、ルキフールのほうを見ずに言い続ける。


「その新手の戦士、というものがいなくても棍棒を無事回収できたかどうか怪しいものだ。

 奴らを本気で打ち倒そうというのなら、慎重に慎重を重ねねばならん。

 メーヴァーにそれをのりこなせたか、いささか微妙なものだ」


 そしてギロリと上空をにらみつけた。


「そう思うだろう? コカコーライス。

 なぜあのような半端(はんぱ)ものを地上によこした?」


 見上げるとそこには、怪しい光に照らされややシルエットがかった巨大な鳥が浮かび上がっている。

 鳥は少し頭を下げる。


「これは失礼を。殿下にはきちんと事前説明をしておくべきでした」

「何か思惑(おもわく)がある、とでも?」

「メーヴァーを送りこんだのは単なる様子見です。

 ワタクシは単に返り討ちにされても痛手のない手だれを送りこんだのでございます」


 ルキフールも同じ場所に視線を送り、苦虫をかみつぶしたような顔つきになる。


「今さらかませ犬だと?

 我らは奴らの力を熟知している。なぜそのようなものをわざわざ送りつけたのだ?」

「この目で見ておかなければ、奴らの真価を理解できません。

 メーヴァーとのやり取りを見て、ファブニーズ様がおっしゃっていた言葉の意味がよくわかりました」


 若き魔王はそれを聞いて視線を外した。


「そこまで言うのなら、次は勝機ある作戦となるのだろうな?」

「もちろんです殿下。

 次に送りこむ刺客は、我が軍勢の中でも相当の手だれ。

 しかも勇者の弱点を理解したうえでの、必勝確実の作戦にございます」

「ならば行くがいい。決してしくじりは許さんぞ!」


 ファルシスに言われ、巨大な鳥は羽根を大きく広げた。

 そして優雅(ゆうが)に羽ばたくと、大広間のあいだを飛びまわって、上にあるアーチのすき間へと消えていった。





 襲撃(しゅうげき)の後始末がすんだあと、一行は遅めの夕食をとっていた。


「うんめーっ!

 マスター、さすがこの酒場をしきっているだけあって料理の味も格別っすねっ!」


 おいしそうに大きな鳥肉をほおばるコシンジュに、つくった本人も満足そうだ。


「今朝とれたばかりの野鳥だ。

 スタミナ勝負の長旅だから遠慮(えんりょ)せずにどんどん食えよ」


 ロヒインもニッコリとして頭を下げる。


「ありがとうございます。

 ところで本当によろしいのですか? このままこの村に滞在(たいざい)してしまっても」


「その心配はないだろう。

 連中は人質を取っての作戦に失敗した。同じ手は通用しない以上、次は当初の予定通り山の中での襲撃(しゅうげき)になるはずだ」

「そんなことはわかってるよイサーシュ。それより問題なのは、村人たちのこと」


 コシンジュの発言にメウノがうつむいてあごに手を触れる。


「我々の素早い撃退(げきたい)ぶりに感激(かんげき)した方もいらっしゃいますが、魔物たちにおそわれたことで、傷ついた人たちも少なくありません。

 我々がこのままここにとどまり続けることになれば、その方々の心証にひびくことにもなりかねませんが」


 それを聞いたマスターは真剣な顔で深くうなずく。


「そのことについては俺の方からしっかり言っておく。

 じっくり説明すればあいつらもわかってくれるはずだ」

「村人たちの信頼が厚いんですね」


 メウノがほほえみを向けると、マスターは照れ臭そうに後ろ頭をなでた。


「よせよ。他に村のまとめ役がいないだけだ」

「ええと、そういえばあのおじさんは?」


 コシンジュが問いかけると、マスターはあっけらかん


「リーダーにおそわれてたあいつか? 実は俺の弟なんだ」

「なんだ、どおりでしっかりしてると思った」

「あんまり期待するな。

 あいつはああ見えてそそっかしいところがある。今日だってうっかりとっつかまってたし。

 それに友達が、ああだしな」


 するとマスターはテーブルの一番端に座る人物に目を向けた。


「お前もそう思うだろムッツェリ」


 しかし当の本人はちらりと目を向けただけで、黙々と料理を食べ続ける。

 それを見たマスターは苦笑いを浮かべた。


「まあそういうやつなんだ。許してやってくれ」


 ここで突然イサーシュが顔をあげた。


「そういえばムッツェリ、お前魔物たちの死体を小屋に持っていったが、あれをどうするんだ?」

「食事中にNGワードをサラっと言うんじゃねえよっ!」


 怒るコシンジュを無視し、ムッツェリがとなりに座るイサーシュに顔を向ける。


「あれか。わからないのか?

 お前も魔物に対する矢の威力を見ただろう。今日は合計20匹ぐらいの収穫があった。あれほどの個体があれば相当数の矢じりが作れる。今後の戦いに大きく重宝するだろう」

「げ、ていうことは……」


 コシンジュがげんなりした顔で言うと、ムッツェリが何度もうなずいた。


「奴らの羽根も矢じりに使える。

 あれを使えば風属性も相まって飛距離が伸びるだろう。使わない手はない」

「ねえ、ちょっと気になったんですけど……」


 向かい側のロヒインが、おもむろにムッツェリの手元を指差した。


「なんでムッツェリだけ、違う料理を食べてるんですか?」

「おいやめとけ、そいつを聞くのはちょっと……」


 それを聞いてなぜかマスターがあせった表情になる。

 すると突然ムッツェリが肉を離してドンと机をたたいた。


「そのことだ!

 なぜ今日は大量の食材が手に入ったのに、一切使わんと言うのだ!?」


 それを聞いた全員が顔を見合わせる。

 そしてゆっくりとムッツェリの料理へと向かう。


「え、それってつまり……」


 メウノの不安げな声にイサーシュがあっさりと答えを出してしまった。


「魔物の肉だな」

「……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」


 とたんにコシンジュが顔を押さえて叫び声をあげる。

 ロヒインとメウノがそれを聞いてビクリとした。


「うるさい奴だな。魔物の肉と聞いてそんなにびっくりすることか?」

「得体の知れない肉を堂々と食っちゃうあなたにびっくりですよムッツェリさんっっ!」

「毒がないかどうかは確認している。

 別に人間の肉を食っているわけでもないし、遠慮することもないだろう」

「確かに人じゃないけどある程度人にそっくりな姿してたでしょ!

 想像しただけで食欲が失せるよ!」

「お前も食ってみろ。なかなかうまいぞ」

「ムリッ! ムリムリムリッッ!」


 コシンジュにあわせ、ロヒインとメウノも両手でバツをつくる。なぜかマスターも参加した。

 ところがなぜかイサーシュだけがそちらの方を向いた。


「マスター、俺も1つもらおうか」

「「「「えぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!?」」」」


 ムッツェリ以外の全員がびっくりするなかで、彼女はまんざらでもない笑みを浮かべた。


「気前がいいな。お前とはますます気が合いそうだ」

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