第29話 初めてお目にかかる~その2~
ネヴァダによると、砂漠の旅はいよいよ終盤だと言うが。
いくら歩き続けても周囲は岩山ばかりだ。
「くそぅ、いつになったら首都につくんだ?
このまま一生岩山から出られないんじゃないか?」
不機嫌を隠そうともしないコシンジュだが、対してロヒインは少し楽しそうだ。
「そうでもないよ。ほら、空を見てごらん?」
ロヒインが上空を指差すと、ほんの少し青空がくすんでいた。
「きったねえ空だな。
こないだまではありえないくらい真っ青だったのに」
乾燥した空気のためか、砂漠は岩場からのぞく大空は北の大地よりも青の濃さが強かったはずなのだが。
それが今は陰鬱なほどにくすんで見える。
「大陸の中心は、数多くの活火山が活動してる火山帯になってるんだよ。
そこから吹き上げる火山灰が遠くまで運ばれて、この地にまでやってきてるんだよ。
ほら、周囲を見てごらん」
ロヒインの言うとおり、たしかに周囲の岩山は少しくすんだ色をしている。
「あ、ホントだ。少し前なら赤や黄色のきれいな色をしていたのに。
でも言われてみなきゃわかんねえもんだな」
「ずっと同じ光景ばかりでしたからね。
ほんの少しずつの変化に、気付かなくても当然でしょう」
苦笑するメウノの前で、なぜかネヴァダが考え込むようにしてアゴに手を触れる。
当然ロヒインが「どうしたんですか?」と問いかけた。
「ここまで順調に旅を続けてきたけれど、逆におかしい。
魔物たちはいったい何をしているんだ?」
「言われてみればそうですね。
いままでいくつもの村を通っていましたが、どこもおそわれてはいませんでした。
確かに同じ手が通用しないのは当然ですけど、ここまで我々に手を下さずに静観しているのもおかしな話ですね」
「う~ん、どうだろ。
そろそろおそいかかってきてもおかしくないんだけど」
コシンジュが岩山を見上げると、ロヒインも同じようにした。
「ここなんかは両側が岩山に挟まれ、上からおそってくるには絶好の場所……」
全員が立ち止まる。
左右の岩山の上から、一気に異様な気配がただよってきたからだ。
気配のみならずうなり声やちらりとのぞく影まで見えてきた。
そのあいだにネヴァダが「タウレットッ!」と叫ぶと、後ろに続いていた巨大ガメが頭と手足をしまって丸くなる。
「ほらぁっ!
ロヒインがそんなこと言うからさっそく出てきちゃったじゃないかぁっっ!」
「いやいやいや!
コシンジュそれってどっちかっていうといかにも出てきそうな感じの場所だから思わずつぶやいただけで、案の定そうなっただけじゃんかっ!」
「2人ともしっかりしなよっ!
コシンジュとメウノはあたしと一緒にロヒインを取り囲んでっ!
ロヒインはそのあいだにみんなの身を守れる呪文を唱えるっ!」
ネヴァダの的確な指示でその通りにすると、岩場のかげからなにかが現れた。
黒い影はいきなり何かをこちらに向かって吐きかけてきた。赤々と光る大きな火の玉だ。
矢継ぎ早にやってくるそれを、ロヒインを取り囲む3人はそれぞれの武器で弾く。
コシンジュが棍棒でまぶしい光を放ち、メウノが赤いダガーで破裂させ、ネヴァダは両手の拳を使って次から次へとパンチを繰り出す。
そうしているうちに、ガケの急斜面を数多くの影がすべり下りてくる。
地表に降り立ったそれらは、全身からちらちらと赤い炎を発する、スマートな体形をした犬の群れだった。
またたく間に取り囲まれ、コシンジュ達は周囲に目をこらす。上空には注意を払っていない。
「危ないっっっ!」
ロヒインがいきなり前に進み出て、上空に向かって木製の杖を抱えた。
中央部にはめ込まれた紫の宝玉にあわせた色の光が、突然現れた巨大な火の玉にぶち当たると、激しく爆発してよろけそうになる。
「くそっ! ボスは別の場所にいたかっ!」
ネヴァダがそちらの方に目を向け、コシンジュとメウノも同じようにする。
勇者一行が岩の上を見上げると、まわりの炎の犬より2回りも大きい巨大な犬がこちらをうかがっていた。
恐ろしいことに、たんに巨大で全身から炎を発しているだけでなく、
両肩にはするどいキバを生やした目のないトカゲのような頭がついていた。
「うわっ! なんだありゃぁっ! ビックリしたっ!」
コシンジュの叫びに呼応するかのように、巨大犬が声を発する。
「わが名は『爆炎獣サーベロス』ッッ!
そちらにいる数多くの『ヘルハウンド』を従えし、炎の上級魔族っっ!
我が妹キマーラの仇、覚悟せよっ!」
「出たなっ! 獄炎魔団の4大将の一角!
あいつの吐きかける炎の玉は爆発性があるから気をつけてっ!」
ロヒインは意気込むが、コシンジュは全く別のことに食いついた。
「おいちょっと待てよっ! あいつキマーラのことを『妹』って言わなかったっ!?
けっこう見た目がちがうのに兄妹ってちょっと違くねっ!?」
「両方突然変異だからだよ!
長い年月を経て進化した魔族はそれぞれ見た目も能力も独特になる!
だから上級魔族は数百年前の知識が役に立たないっ!」
するとサーベロスは両肩の口を大きく開き、巨大火の玉を吐きかけた。
メウノとネヴァダが前に進み出て、それぞれの武器で弾く。
しかしネヴァダのほうは爆風が起こり、コシンジュ達は思わず倒れ込みそうになる。
コシンジュは叫んだ。
「ネヴァダッ! お前はあいつとはやるなっ!
まわりの犬っころ連中に集中してくれっ!」
彼女が「わかった!」と叫ぶと、サーベロスが突然のどをあげて遠吠えをした。
「いくぞ者どもっ!
『獄炎風輪陣』の恐ろしさを見せてやれっっ!」
サーベロスの叫びとともに、周囲のヘルハウンド達が突然走り出す。
きれいに整列しながら、コシンジュ達のまわりを円形にまわりだすと、その中の数体が火の玉を吐きかけた。コシンジュ達はその対処に追われる。
「ぐわっ! これまずいぞっ!
相手の予測が不可能だから、どこから火の玉がやってくるかわからないっ!」
「ダメだコシンジュッ! ヘルハウンド自体に目を向けるなっ!
突然の火の玉に集中して、それだけに意識をこらせばいいっ!」
ネヴァダのアドバイスに、メウノがまた質問を投げかける。
「問題は上空のサーベロスですっ!
我々がヘルハウンドの攻撃に集中しているあいだ、奴も爆発攻撃を仕掛けてくるはずですっ!
そうなればどこまで避けきれるかどうか!」
「大丈夫っ!
わたしがバリアのサイズを大きくするから、それで上空からの攻撃も対処できるっ!」
ロヒインの発言のあと、サーベロスが両側の口から火の玉を吐きかけた。
魔導師が呪文を唱えると、言っていた通り紫の光が強くなり、簡単に爆弾をはじくことができた。
「やるな魔導師っ! だが俺はこれであきらめはせんぞっっ!」
サーベロスは岩場の上を走り始めた。
途中で大きく身を伏せると、大ジャンプをして上空を飛び越え、反対側の岩場に着地する。
そちら側にいたのは……
「ああクソッ! あたしの方に移動して来やがったっ!
ロヒイン、あたしと変わりばんこできるっ!?」
ネヴァダに言われる前にロヒインが動いた。
入れ替わりと同時に火の玉が飛んでくるが、2人はそれぞれの武器で即座にそれをはじいた。
「フンッ! 器用な奴らめっ! キマーラの奴が遅れを取るのもいたしかたないことかっ!
ならば俺も本気中の本気を見せるまでよっ!」
するとサーベロスは両側の口だけでなく、中央の頭部まで大きく口を開き、巨大な火の玉を吐き出した。
当然両サイドの口も玉を吐き出したので、これまで以上に敵の猛攻が激しくなる。
そうやって吐き出された3つの巨大な炎を、ロヒイン達はなんとかはじく。
しかしこうなるとロヒインの大型バリアをもってしても、衝撃に両腕がプルプル震えるようになる。
自身もヘルハウンドの対処に追われるコシンジュが思わず声をかける。
「ロヒインっ、大丈夫かよっ!」
「ぐっ! なんとか!
敵だってあれだけの魔法攻撃をするのに相当の負担がかかってるはずっ!」
「ていうかなんだいっ! さっきからあたしたち防戦一方じゃないかっ!
敵の攻撃に対処するだけなんて何とも歯がゆいねっ!」
その時だった。サーベロスの両肩の口が、ロヒインたちではなくそばにあった地面に向けられた。
吐き出された火の玉は当然そちらの方向に叩きつけられ、巻き起こった爆風にとうとう4人は叫びとともに固い地面に叩きつけられた。
4人は必死に身を起こし、立て続けにかまされた火の玉にあわてて対処する。
「くそっっ! 敵はこちらの消耗すら待ってくれないみたいだねっ!
これじゃ次まではもたないよっ!」
コシンジュが「どうすんだよっ!」と叫ぶと、ネヴァダはちらりとこちらを向いた。
「前にもやった手で行くよっ! 3人とも準備はいいっ!?」
3人がうなずく前に、ネヴァダは立ち上がって前へとかけぬけ、ヘルハウンドの群れの中に飛び込んでしまった。
「ああっ! なんだかやな予感っ!」
コシンジュの叫びにメウノは首を振る。
「大丈夫ですよっ! サーベロスが仕掛けてくるのは爆発攻撃です!
あんなのを食らったらたとえ同じ炎の眷属でも無事では済まない……」
「ちょっと待って! あれを見てっ!」
ロヒインに肩をたたかれると、メウノは敵の攻撃に対処しながらもそちらをちらりと見た。
そしてもう一度目を向ける。
メウノの視線の先には、先ほどの地表の爆撃に巻き込まれ、ぐったりとして動かなくなったヘルハウンドの姿があった。
メウノはすぐにネヴァダのほうを向いた。
「いけませんネヴァダッ!
サーベロスはたとえ味方の群れの中でも容赦なく攻撃を……」
一足遅かった。
拳や蹴りで次々とヘルハウンドを吹き飛ばすネヴァダの上空に、巨大な火の玉が迫る。
「「「ネヴァダァァァァァーーーーーーッッッ!」」」
叫ぶ3人にようやくこちらを向いたネヴァダだが、視線をあげたところで彼女の姿は爆風に消えた。
周囲にいたヘルハウンドに見向きもせず、3人はぼう然として身動きが取れなくなる。
「グハハハハハハハハハッッッ!
俺たち獄炎魔団は、勝つためならいかなる手段をも使うっ! どうだ、思い知ったかっ!」
一瞬攻撃を立ち止まってためらっていたヘルハウンド達だったが、次の瞬間チャンスとばかりにいっせいに火の球を吐きかける。
それらはすべて無防備状態のコシンジュ達の方向へと一直線に向かった。
しかし3人は一斉に動き、向かってきた火の玉を素早くはじいた。
勝利への確信を顔に浮かべていたサーベロスが思わず「なにぃぃっっ!?」と叫んだ。
代表してコシンジュが振り向き、上空の巨大犬に向かって棍棒の先を向けた。
「こちとらどんだけの魔物を片づけてきたと思ってんだよ。
素人じゃあるまいし、スキを狙ったところで何もしないわけがねえじゃねえか」
言ったところでコシンジュ、ロヒイン、メウノの3人が前方に向かって武器を構える。
「数が少なくなった今がチャンスだ。
ロヒイン、一気に敵の中に飛び込むぞ。メウノはネヴァダのもとにかけつけて治療を」
2人がうなずくと、コシンジュ達は一気に前方にかけだした。
コシンジュは一気に集まってきたヘルハウンドに向かって棍棒をふるい、飛びかかってくる頭めがけて打ち込んでいく。
上空で「食らえ!」と言う叫びが聞こえる。
コシンジュは上空にも目を向け、やってきた火の玉をはじく。
神聖なる棍棒の前では強烈な攻撃など意味を成さない。
コシンジュが一生懸命棍棒を振りまわしていると、いつの間にか目の前のヘルハウンドはいなくなっていた。
ロヒインのほうを見ると、杖から放たれる強い光に犬たちが吹っ飛ばされていた。
そこへ巨大火の玉が迫る。
コシンジュはあわてて前方にかけだし、ロヒインの身をかばって一緒に地面に倒れ込む。
目の前の斜面に当たった火の玉がはじけて強い熱を感じた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
すぐに動けずに倒れたままでいると、体の熱がいっこうに冷めない。
ロヒインを見ると、黒いローブの表面からちらちらと炎が出ている。
相手もこちらの服を見て仰天している。
「「わ、わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」」
飛び上がってお互いの服を払う。
そのあいだにヘルハウンドの飛びかかりや上空の火の玉がやってきたので、なかなか火を消すことができない。
ようやくことが収まった時には、2人はボロボロになってくたびれていた。
だがこれで終わったわけではない。
サーベロスの巨体が、ドォン、と地面を震動させ、ようやく目の前まで降りてきた。
「おのれっ! どこまでもしぶとい奴らだっ!
こうなれば正面から堂々と飛びかかってやるっ!」
同時にサーベロスの両肩の口から、炎のかたまりが現れた。
コシンジュとロヒインは顔を合わせうなずきあい、ともに前方へとかけだした。
それぞれの武器で火の玉をはじく。
そのあいだにこちらにかけだしてきたサーベロスに向かい、ななめ上空にそれぞれの武器を突き出した。
「「おりゃあぁぁぁぁぁっっ!」」
すさまじい閃光とともに、サーベロスの圧倒的な巨体がウソのように大きく吹き飛んだ。
「のうべるっっっっっっっっ!」
奇妙な叫びとともに岩山の斜面に激突した巨体はズルズルと斜面をすべると、ドシンと一気に地面にたたきつけられた。
まだ少しだけ動いている巨大犬の頭部に向かい、コシンジュは横から思い切り棍棒を振りかぶった。
相手が絶命したことを確認すると、コシンジュは両手をヒザにつけ、激しい呼吸を繰り返した。
となりでもロヒインのあらい息づかいが聞こえてくる。
ようやく落ち着くと、2人は顔をあげてメウノのほうを確かめた。
彼女はひざまずいて背を向けている。
かけつけると、そこにはぐったりとして動かなくなっているネヴァダの両足が見える。
思わずロヒインが声にならない悲鳴をあげた。
「だ、大丈夫ですっ!
ネヴァダさんがとっさに身をかばったおかげで、重症にはならずにすみました。
だけど身体じゅうにやけどを負っています。しばらくは安静にしたほうがいいみたいです」
彼女の具合を確かめると、身体じゅうにアザを負ったネヴァダがうんうんとうなされている。
命に別条はないようだが、重症と言えば重症だ。
「なんにせよ、敵を片づけられて良かった。
もしこれで他にも敵が残ってたら、正直これ以上戦えないもんな」
その時だった。
付近の岩場からドンっ、と言う音がひびき、次の瞬間には大きな音を立てて何者かが前方に現れた。
コシンジュ達はイヤな予感を振り払い、ゆっくりと顔をあげる。
「……その通りだ。
これ以上戦えない状態で、新たな敵が迫ってきたらてめえらはちっとも対処できないからな」
赤々と燃えあがる巨体。
いかつい肉体の頭部には、まるで牛のような造形の頭部がついている。
炎と同じ色の真っ赤な瞳が、こちらの方にまっすぐ向けられていた。
「どういうことじゃファルシス。
使い魔まで使ってこのわらわを呼び出すとは、いったい何の用があると言うのだ」
そう告げるローブ姿のスターロッドは上空にあった。
巨大なレッドドラゴンの上には、彼女のほかにファルシスとベアールの姿があった。
風が一直線にかけぬけるなか、赤いヘルムがこちらの方を向いた。
「勇者のもとに行くそうだぜ。
マノータスの奴が怪しい動きを取っていたと、ルキフールのジイさんから連絡があった」
「なにもファルシスが向かうことはなかろう。
大将ゆえ、あやつとまみえるのはもう少し先に延ばしておいた方がよいのではないか?」
「気をつけろよバアサン。
ファブニーズの奴、あんたが先行して勇者たちと会ってたこと、まだ根に持ってやがるぜ」
ベアールの発言にドラゴンの巨体から声がひびいた。
「まったくだぞ。
もし貴殿が口をすべらせ、我らの計画が勇者たちに知れたらどうする?」
「問題なかろう。
我らとは違い、コシンジュ達は一気に城に近づく手段を知らんのじゃ。
我らはきゃつらが城にたどり着く前に攻め落とせばよい」
「だが奴らが城へと急ぐ口実をつくることになる。
まだ魔界軍の遠征準備はできてないゆえ、もうしばらく時間を引き延ばすべきだとは考えんのか」
「ええい、細かい奴じゃのう。
お主、そんなふうにカリカリしておるから、まんまとコシンジュの奴に角をへし折られたのじゃぞ。
このドラゴンの恥さらしめ」
「言うなっ!
角の恥のことについては言うんじゃないっ!」
ファブニーズがあわてた調子で叫んでいると、それまで黙って聞いていたファルシスがクスクスと笑いつつ、前方を向いたまま声をかけてきた。
「スターロッド。
どうだった、コシンジュと言う小僧と直接会ってみた感想は」
言われて美しきダークエルフは考え込むようにしてアゴに手を触れる。
「そうじゃな。歳のわりには聡明なところもある。
だが優しさゆえの甘さも抱えておる。
それに関しては歳相応というレベルを超越して、性分としての危うさすら感じさせるの」
「そうか、余も映像を確認して、その思いにいたったが外れてはいないようだな」
それを聞いたスターロッドは腕を組んで不敵な笑みを浮かべた。
「本当のことを言えファルシス。
こうやってわざわざ助けに向かうということは、本当は少しでも早く一目会いたいと思っておるからじゃろ?」
「ふっ、お前の目はあざむけんな。
その通りだ。ひと目でも早く、かの者の姿をこの目で確認したい。
その欲求には勝てんものだ」
ベアールもつられて自分を指差した。
「あ、俺もそう思います。
もっとも個人的にはすでに会ったイサーシュって奴の方が好きですけどね」
「まったく。
勇者どもに接近することが、どれだけ我らの計画に支障が出るか考えておられぬとは。
殿下がたの申されることにはほとほと……」
ファブニーズが急に黙り込んだ。
巨大なレッドドラゴンの頭部が、しきりに左右にゆすられる。
「どうかしたかファブニーズ、奴らの位置を感知したか」
「いえ、まだ少し遠いようですが。
ですがそれより先に、折られた角のほうがうずいてきましたゆえ……」
「ふっ、ははははっ!
ファブニーズめ、コシンジュにつけられた痛みがぶり返してきおったかっ!」
「だまれ老婆、天寿を全うする前に火葬してやろうか」
「落ち着けファブニーズ。
お前の痛みが反応すると言うことは、我々は確実に奴に近づいているということだ。もっと急げ!」
ファルシスにうながされ、ファブニーズは羽ばたく翼に力を込めた。
とたんにスピードが上がり、上の3人がしっかりつかまらなくてはならないくらいの勢いになる。




