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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第三章 連合国編
96/464

プレゼン

 



 東暦2年、2月3日。

 その日のセントラル城は、朝から城で働く警備隊と、各国の使用人やメイドが慌ただしく仕事をしていた。

 それもそのはず、通常評議会は、春と秋に行われるのだが、この日は、左近がスターク議長に言って、臨時の評議会を開催する事に、なったからである。

 すでに各国の元首や、評議会議員が集まり、更には各騎士団の団長も集まり、賑わいを見せていたのであった。


 その中にいる左近に、フレイアが話し掛けて来たのであった。

「清興、久し振りやな」


「フレイア、本当に久し振りだな。いつも、ラナが世話になっている様で、すまないな」


「何か他人行儀みたいで、嫌やな。そんな事より、新兵器の御披露目って何やねん?」


 やはり話題は、そこか……

「実はな、お前だけに、前以て教えてやるが、火薬の開発に成功したんだ。

 そのおかげで、鉄砲の開発もできた」


 それを聞いたフレイアは、少し不安そうになって言ったのである。

「それって、簡単に殺せる兵器になるやん」


「そうだな。

 だが、こちらの被害は少なくなり、味方の助かる命も多くなる。

 それにだ、花火も出来るかも知れんぞ」


「な、何やて……清興、4月の学校が始まるまでに、花火を開発してぇや」


「おう、任せておけ」

 そう言った左近は、胸を大きく叩いて、言ったのであった。



「皆様、お待たせ致しました、会場の準備が出来ましたので、移動して下さいませ」

 そう執事の男性が言うと、空間転移の煙が出て皆、移動したのであった。


 左近達は、空間転移でアルム砦の城壁に移動すると、そこには弾正や黒騎士団(ブラック・ナイツ)の者がおり、目の前には、座席と暖を取る為の火鉢が、用意されていたのであった。

「さぁ皆様、お好きな席にお掛け下され」


 そう言った、弾正の掛け声で皆は席に座ると、一同の前に弾正と黒い甲冑にマントを付けた、目の細い優しい顔立ちだが傷だらけの、白髪の男性が出てきたのである。


「皆様、御存知かも知れませんが、私は今回の、新兵器開発の総責任者である、藤永 久道中佐と申します。

 そして、ここに居るのは、黒騎士団(ブラック・ナイツ)の副団長である、保科 矢兵衛 政長大尉と申します」

 弾正がそう言うと、二人は一礼したのであった。


 そうかパンドラは、保科を副団長にしたのか。

 確かにあのじい様なら、人当たりも良いし適任だろう……でも、あのじい様は、あんな年齢なのに、あの地獄の入団テストを簡単に通っているんだよな。

 そう思っている左近に、フレイアが言ってきたのであった。

「清興、そう言えば、今日はパンドラはどうしたん?来てないみたいやけど」


「パンドラは、受験勉強だ。パンドラ不在の時は、あのじい様が、騎士団をまとめているんだよ」


「そうなんや……」

 そう言ったフレイアは、何かを左近に言いたそうであったが、弾正の説明に左近は、気を取られたのであった。


「本日は、新兵器の御披露目で御座いますが、まぁ百聞は一見にしかずと言う、ルタイ皇国のことわざが有る様に、先ずは御覧にいれましょう。

 皆様、場外に御注目して下され」

 弾正にそう言われ、皆が場外に注目すると、様々な鎧や甲冑を着せられた案山子が、数体立っており、その約80メートル離れた所には、10名が一列になり、火縄銃を持ち、待機していたのであった。


「では某は、現場に行って参ります」

 そう言った政長は、空間転移で鉄砲隊の所に移動したのであった。


 おい、あのじい様、勇者だったのかよ。

 そう思っている左近に、クロエが囁いたのである。

「実は、保科大尉は、勇者だった事を最近まで、忘れていたそうです。

 まぁどうせ、あのじい様のホラ話でしょう……他の者が言うには、本人は、三度の飯より戦が好きなので、前線に配属される部隊に、転属ばかりしていたそうです。

 それで、この騎士団があまりにも、居心地が良いので、居着いた様ですね」


 ……頭が痛くなってきた。

 あのじい様、好好爺だと思っていたら、とんだ戦人だったのかよ。

「何で俺の配下って、濃いキャラが揃っているのかね……内政出来る奴って、キースだけじゃねえかよ」

 そう言って左近が頭を抱えていると、政長の大きな声が聞こえて来たのであった。


「鉄砲隊、構え!……火蓋を切れ!……放て!」

 その掛け声を合図に、一斉に鉄砲が火を吹いたのであった。


 パパパンと言った音共に、案山子の鎧や甲冑に鉛の弾丸が当たり、幾つかの案山子は、その場で倒れたのである。

『おぉ~!』


 城壁の上で驚く声に、気を良くした弾正は、言ったのである。

「これが、新兵器の鉄砲の威力で御座います」


 そう言うと、空間転移が開かれ、中から政長が案山子を持って、やって来たのであった。

「ご覧下さい、この案山子の着ている鎧や甲冑、そして盾に穴が開いているでしょう。これが鉄砲の威力です。

 では、次は皆様に、鉄砲を間近でお見せ致しましょう」

 そう言った弾正が目で合図をすると、兵士が各個人に、火縄銃を渡したのであった。


 皆、不思議そうに火縄銃を見ていたが、一番食い付いていたのは、コープス博士であった。

「皆様の持っている、それが鉄砲と言う、新兵器で御座います。

 ただ、それだけでは、この様に鎧や甲冑を貫く事が出来ません。

 この火薬と言う粉と、弾丸を言う鉛の玉を、火縄を使って飛ばします。

 まぁ実際にやって、ご説明しましょうか」


 そう言うと、政長が実演し、弾正が説明し出したのであった。

「これは早合と言う物で、中には予め、1発分の弾丸と火薬が入っております。

 これを鉄砲の先から火薬、弾丸の順番で入れて、このカルカと言う棒で突いて固めます。

 そしてこの火蓋を開き、この火皿と言われる所に火薬を入れて、火蓋を再び閉じて息を吹き掛け、他の所に付いた火薬を飛ばし、ここに火の付いた火縄を取り付けます。

 これで準備完了です、撃つ時は、この火蓋を開いて、この引き金と言う小さな出っ張りを引くと……」

 弾正がそう言うと、政長は空に向かって、鉄砲を撃ったのであった。


 パン!

 そう言った音共に、一同の目は、驚きの目になっていたのであったが、ここでスターク議長がある事に気が付いたのであった。

「すまんが、確かにこの鉄砲は戦では、有効かも知れん……だが、弾丸の装填に、時間が掛かり過ぎるのでは、ないか?

 これでは、騎馬相手だと、1発撃ったその後に、近付かれてしまうぞ」


 それは、初めて見た誰もが、最初に思った事だな。

 そう思っている左近に弾正は、話を振ったのである。

「そこは、元帥閣下が、既に戦術を考えております」


 ここで振るのかよ……しょうがないな。

「確かに、議長のおっしゃった通り、この鉄砲には、装填時間と言う弱点が御座います。

 しかし、隊を3つに分けて、順番に撃つ事で、その間に装填すれば、絶え間無く鉄砲を撃てるでしょう。

 それに、万が一近付かれても、この先端に槍の穂先の様な物を付けていれば、槍の代わりとなり、即席の槍隊になります」

 左近のその言葉に、誰もがなるほどと言った様に、納得したのである。


 そう言った中で、コープス博士が手を上げて、発言して来たのであった。

「こ、これは、魔法では無いのですか?」


「博士、これは魔法ではありません。自然の摂理を利用した……科学と名付けましょう。

 簡単に言えば、錬金術の一種です」


「錬金術……科学……」

 左近に、そう言われたコープス博士は、そのまま座り込み、火縄銃を見つめていた。


 次に発言したのは、関白であった。

「では湖国よ、この鉄砲と言うのには、弱点は無いのか?」


 出たよ、ゴリマッチョの直球質問。

「弱点は、もちろん有ります。

 まず、火を使うので、水に弱い。

 全て濡れてしまっては、この火薬が爆発しません。

 そして、取り扱いが難しい。

 保管時等に、誤って火を使い火薬に引火すれば、大惨事になります……ですが、注意して取り扱う事で、十分に防げますし、今後はその辺りも、改良していく予定です。

 他には有りますか?……無い様ですので弾正、続きを」


 左近がそう言うと、弾正は、にこやかに言ったのであった。

「はっ。では皆様、再び場外を御覧ください、次はこの鉄砲を大きくした物、大砲をご覧いれましょう」


 あのクソ弾正は、大砲まで作ってたのかよ!俺は何にも、聞いていねえし。

 そう思いながら、左近が場外を見ると、リヤカーの様な物に乗った大砲が一門、既にセットされていたのであった。


 ああ大砲は、一門だけか。

 そう思っていると、政長の号令で、その大砲が、100メートル先の崖の壁に向かって、火を吹いたのであった。


 ドゴォン!

 恐ろしく大きな音で、放たれた大砲の玉は、そのまま崖にぶち当たると、めり込み崖にヒビを入れたのであった。


 その様子を見たゲハルトは、ラニスに小声で囁いたのであった。

「ラニス陛下、あれは攻城戦で、城門を破壊するのに、使えそうですな」


「ゲハルト陛下、あの崖にめり込んだ玉を、見て下され。

 熱を帯びて、赤くなっております……あれでは、建物にも引火するでしょうな」


「なるほど、確かにそうですな。これは、大発見かも知れませんぞ」

 そう言った二人に、更に驚くべき光景が目に入ったのであった。


「次は、炮烙玉と言う兵器に御座います。

 この様に、片手で持てる小さな陶器の玉ですが、この導火線に火を付けて投げると、その威力は、絶大で御座います」


 そう言った弾正の合図で政長は、兵士に命令したのであった。

「次、炮烙玉、用意!点火……放て!」


 その掛け声を合図に兵士達が、新たに立っている案山子に向かい、炮烙玉を投げると、爆音をたてて、爆発したのである。

 最早ここまでいくと、誰もが驚いていたのだが、弾正は更に驚くべき物を紹介したのであった。

「さて皆様、ここまで来れば、火薬がどれほど凄まじいか、分かって頂けたと思います。

 そして、これからお見せするのは、この火薬の原理を応用した、新兵器で御座います。

 連合国以外の他国には、聖龍騎士団の様な、飛竜(ワイバーン)を操り上空から攻撃する部隊がいると聞き及びます。

 前戦争で、連合軍の生駒大尉の発明と戦術で、聖龍騎士団を撃退する事が出来ましたが、その兵器にこの火薬を合わせた新兵器で、他国の上空からの攻撃は、防げるでしょう」

 そう言った弾正が、政長に合図をすると、上を向いたバリスタが城外に登場したのであった。


 何だあれは?

 そう思っている左近の目の前で、驚くべき事が行われたのであった。


「対空バリスタ点火……放て!」

 政長の合図で、上空に放たれたバリスタの槍が、天高くで爆発したのである。


 マジかよ……あれは、バッシュの開発したバリスタに、炮烙玉を取り付けた、単純な作りの様だが、恐ろしく効果的だぞ。

 そう思っている左近を、チラリと見た弾正は、まるで「小僧、まだまだ負けんぞ」と言わんばかりに、言ったのである。

「次は、これをご覧下さい。この新兵器は、対空攻撃にも使えますし、対地攻撃にも使える優れもので御座います」

 そう言った弾正が、政長に合図を出すと、兵士達は、筒を持って来たのである。


 まだ何か作ってるのか?

 そう思った左近は、衝撃的な光景を、目の当たりにしたのであった。


 これは、迫撃砲か?

 そう左近が思ったのは無理も無かった。

 兵士達は、迫撃砲にそっくりな筒を斜めにセットすると、中に火薬を入れて、突き固めるとロケット花火の様な物を、迫撃砲に取り付けたのであった。


 そして、その導火線に火を付けると、政長が命令したのである。

「放て!」


 その合図と共に、兵士が筒の横に開いた穴に、火縄を入れると、ボン!と言った音共に、ロケット花火の様な物が射出さて、80メートル程の所に落下し、爆発したのであった。


 完全に迫撃砲じゃねえかよ……弾正め、知識は無いのに、こんな物を作るなんて、侮れねえな。

 そう思っている左近に、弾正が言ったのであった。

「以上が、私が考え出した新兵器で御座います。

 そして、後もう1つ、元帥閣下が考案した、新兵器をお見せ致します。では閣下、ご説明を」


「蘭、佐平次を上空で、待機させてくれ」


「かしこまりました」


 そう言った左近が、前に出て説明したのであった。

「藤永中佐が考案した新兵器は、他国の飛竜(ワイバーン)からの攻撃を防ぐのに十分だと思います。

 ですが、こちらの考える事は、敵も考えると思って行動しなければ、いけません。

 そこで私が考えたのは、飛竜(ワイバーン)の安全な高度からの攻撃です。

 飛竜(ワイバーン)唯一の弱点である、攻撃する時に高度を下げなければ、地上にいる者を攻撃出来ないと言った克服する新兵器になっております。

 先ずは、実際に見てもらいましょう」

 そう言った左近が、蘭に合図を出すと、蘭は旗を振ったのである。


 それを合図に、佐平次は上空で飛竜(ワイバーン)に括り付けた、油の入った壺の側面に取り付けられた、炮烙玉の導火線に火を付けると、そのままロープをほどいて、壺を落としたのであった。


 上空から投下された壺は、地面から5メートル程で爆発し、辺りを火の海にしたのである。


「新兵器の御披露目は、以上で御座います。では次は、セントラル城の議場に戻って話をしましょうか」

 よくやった佐平次。練習期間は、ほとんど無かったのに、よくぞ成功させてくれた。

 そう思いながら左近は、言ったのであった。


 空間転移で、各自がセントラル城に戻る中で、弾正と政長の二人がハイタッチするのが見えた。


 このじい様達……もうそろそろ、引退してくれねえかな。

 そう思いながら左近は、新たに発覚した、政長と言う脳筋のじい様に頭を痛めながら、空間転移で戻って行ったのであった。



 ―――――――――



 議場に戻った一行は、円卓の各国の席に座り、左近は被告人の様に離れた場所に座ると、各騎士団の団長は、傍聴人席に座ったのであった。


 ここに座ると、裁判の被告人みたいだよな……今度改装しようかな。

 そう思っている左近に、ビートが話し掛けて来たのであった。

「佐倉元帥、今回の新兵器の御披露目は、実に面白かった。だが、ここで疑問が出たのだが……貴公は、一体何と戦うつもりだ?」


 ……はっ!よく考えたら、そうなるよな。

 何も考えずに、開発していた……あ、でもここから繋げられるか。

「では、今からお渡しする報告書を、先ずはご覧下さい」


 左近がそう言うと、クロエ達が報告書を、この場に居る者に報告書を配ったのであった。

 その報告書を読んだ者は、次々にその表情が険しくなり、フレイアに至っては、思わず報告書を怒りに任せて破り棄てたのである。


「これが、元帥の言う理由か?」

 そう言ったビートの眼光が、鋭くなっていたのであった。


 この人は、議長になってから、本当に変わったよな。

 そう思いながら左近が頷くと、ビートはラニスに言ったのであった。

「マルナード議員……いや、この場合は、皇帝陛下にお聞きした方が早いでしょう。

 ラニス陛下、陛下はこの事を、御存知だったので御座いますか?」


「実は、この事を知ったのは、つい先日の事じゃ。

 そこで、セレニティ帝国から、ルタイ皇国の弾正府に、正式に依頼する。この件の取り締まりに力を貸してほしい」


「殿下……」


「左大将、任せる」

 関白は、正成にそう言って、ふんぞりかえって、いたのであった。


「分かりました。

 この要請、ルタイ皇国は正式に受けましょう……ですが議長、この内容だと、北方教会も取り締まる事になるので、最悪は北方連合(ノース・ユナイテッド)との戦になる可能性があります。

 ここは、一度議決を取った方が、宜しいかと思います」


 正成にそう言われたビートは、暫く考えて言ったのであった。

「確かに、橘議員の言う事は、もっともである。では、発言したい者は、いるか?」


 ビートがそう言うと、ペスパードのダークエルフの女性議員が手を上げたのであった。

「では、ペスパード王朝、ポーラ議員」


「ペスパードと致しましては、今北方連合(ノース・ユナイテッド)と戦争するのは反対です。

 考えても見てください、長年の戦争が終わり、こうして東部連合が結成され、ようやく民は平和を実感して来ました。

 ここでまた、戦乱を巻き起こすのは、良くないと思います」


「何を言うか!ここで帝国が乗っ取られたら、その平和も無くなるではないか!」

 そう言って声を荒らげたのは、セレニティ帝国の議員、ジミー・マルナード議員であった。


「だからこそ、そう言う問題は、帝国内部で処理して頂きたい!」

 ポーラ議員も、負けじと、声を荒らげて言ったのであった。


 何だ?この二人は、仲が悪いのか?

 そう思った左近に、正成が天話で話し掛けて来たのであった。

(この二人は、いつもですよ、湖国大納言様)


(正成、キモいから、その話し方は止めろ。

 それより、こんな調子で纏まるのか?)


(まぁいつもスターク議長が、間に入るから、今回も大丈夫だろう。

 それよりは、今回のペスパードの発言は、ニーナ女王陛下のさしがねだな)


(あの痴女が、言っているのか!)


(まぁ、分からんでもないさ。

 このまま、北方連合(ノース・ユナイテッド)と戦争になれば、戦場はデュラン王朝と面している、ペスパードかルセンのどちらかだ。

 それに、ペスパードはデュラン王朝との闇貿易で、かなりの利益を上げている。反対するのは、当然だよ)


 左近達がそう言っていると、ビートが木槌を叩いて言ったのであった。

「二人とも静粛に!

 今の帝国の現状は、急を要するなので、これより議決に入るが、よろしいかな?」


 そう言うと、ガルド神魔国のマコラガが手を上げたのであった。

「ガルド神魔国、マコラガ議員、発言を許す」


「有難う御座います。

 今回の帝国の事件は、同じ人間の国の、ザルツ王国でもあり得る事です。

 つまり、これを放置していては、最悪はセレニティ帝国とザルツ王国が滅ぼされ、東部連合崩壊の危険性も、あると言う事です。

 ポーラ議員の言う事は、ごもっともですが、ここはせっかく出来た東部連合の障害となる物を取り除こうではありませんか」


 上手いなマコラガは。裏で操っているのはフレイアだろうが。

 しかし、こう言われては、ペスパードも表立って反対と言えない……しかし、あのマコラガって男だろうか?それとも女だろうか?

 顔が中性過ぎて分からんな。


(そう言う清興も、十分中性的だと思うぞ。

 まぁお前の場合は、話せばすぐに男だと分かるがな)


(おい正成、お前また俺の心を読んだな?)

 そう言っていると、ビートが左近に言ってきたのであった。


「では最後に、元帥の意見を聞きたい。もしも戦となった場合の戦略でも良いので、話してはくれんか?」


 戦略ね……まぁ聞いておきたいだろうな。

「私は、軍の人間です。外交に、とやかく言うつもりは、御座いません。

 ですが、策を進言させて頂きます。

 今回の件は、首謀者等を出来る限り捕らえ、グレゴール商会を通じて、大陸中に裁判の内容を広めます。

 そうすれば、他の人間の国も、同じ事があり得ると言う疑念を植え付ける事になり、信者も自ずと離れて行くでしょう。

 その受け皿となる宗教を、こちらで用意出来るなら、尚良いですね。

 それと私からも提案なのですが、火薬の材料の1つである硝石が、連合内部では無く、遠いトレソ王国でしか、産出が確認出来ておりません。

 出来ればトレソ王国に使者を出して、友好的な関係を結びたいのですが、宜しいでしょうか?」


 左近がそう言うと、ビートは暫く考えて言ったのであった。

「その件は、置いておいて、先ずは帝国の事件の議決を取ろう。

 では、今回帝国の事件の取り締まりに賛成の者は、挙手を」


 ビートがそう言うと、ポーラ以外の者が手を上げたのであった。

「では、反対は、ペスパードのみで宜しいかな?」


「失礼ですが議長、我がペスパード王朝は、今回の議決を棄権致します。

 ですが、今回の決定には、従いましょう」


「……賛成も反対もしないと言う訳か。

 分かった、ペスパードは棄権と言う事で、今回の帝国の事件は、取り締まると言う事に決定する。

 しかし、今回の事件は、取り締まる人数が多くて大変だろうから、軍にも協力してほしい」


 なるほど、議長は、全てお見通しって事か。

 そう思った左近は、静かに一礼して言ったのであった。

「その要請、承りました」


 こうして、今回の帝国の事件は、軍も介入する事が決まり、トレソ王国の使者の件も、すんなりと了承されたのである。

 そして、全てが終わり、関白や正成と一緒に帰ろうとした左近に、フレイアが話し掛けて来たのであった。

「清興、ちょい待ち」


「おおフレイア、どうした」


 フレイアは、よほど急いで来たのか、肩で息をしていたが、何とか落ち着けて、言ったのであった。

「あんた、パンドラの学校の事を聞いたか?」


「ん?受験の事か?何やら学校生活を、やってみたい様だな」


「ちゃうって、そんな事とちゃうって……砦で言おうとしたんやけど、パンドラが学校の寄宿舎に入って、身分を隠して学校に行こうとしてるのを、知ってるかって、言いたかったんや」


「え?……えええ!何でそんな話に、なっているんだよ!だいたい、家からでも、通学は出来るだろうが」


「知らんがな。こないだ、ウチの屋敷にパンドラが来て、言いよってんから」


 何故だ?この間、俺が謝って和解したと思ったのは、間違いだったのか?

 そう思っている左近の背後から、関白が言ってきたのであった。

「良いではないか、湖国よ。可愛い子には、旅をさせろと言うではないか」


 はぁ?何言ってんだよ、このゴリマッチョ。

「プッ…ゴ、ゴリ……」


 正成また読んだな……まぁ良いだろう。

「フレイア、俺は認めんからな」


「ウチは、認めったっても、ええと思うんやけどな」


「清興、もういい加減、子離れしないとダメだろう」


 フレイアも正成も、好き放題言いやがって。

 そう思っている左近に、関白が言ってきたのである。

「湖国、関白の命である、パンドラの思うようにさせよ」


「いや、殿下……そんなのダメでしょ」


「思うようにさせよ、ワシは誰ぞ?」

 そう言った関白は、何とも言えない圧力で言ったのであった。


「か、関白殿下です」


「ワシの言葉は、帝の御言葉でもある、分かったな」


「……はい」

 このゴリマッチョ、覚えてろよ。

 そう思いながら言うと、関白達は左近の肩をポンポンと叩いて、去って行ったのであった。



 ―――――――――



 翌日、左近の執務室には、セレニティ帝国のナッシュとウォーレン、そして、アシュラを除く各騎士団の団長と、ママ、そして連合軍の忍部隊隊長の、長谷川 団蔵少佐、そして清信が集まっていたのであった。


 ……遅い、弾正尹の奴、完全に遅刻だぞ。

 そう思っている左近の執務室に、蘭が入って来たのであった。

「失礼致します。蒲生 弾正尹様から、御手紙が届きましたが」


 手紙だと?

「読んでみろ」


「それがですね、達筆すぎて読めません……すみません」


「貸してみろ」

 そう言って左近は、手紙を受け取ると、中を見たのであった。


 なんじゃこれ、あの鉄仮面、達筆すぎるだろ……

 そう思いながら左近が、何とか解読していると、不安そうにウォーレンが言ったのであった。

「元帥殿、何と書いてあります?」


「まぁご丁寧に書いてありますが、要約しますと。

「まずは、この場に行けない事を、皆様に謝罪致します。

 自分が行くと、目立つ為に、計画がバレる可能性があるので、行けません。

 希望の人員を言って下されば、必要なだけ出しましょう。

 作戦は、権大納言がいるので、自分は必要ないでしょう」

 って事を、延々と遠回しに書いております……まぁ始めますか」


「そ、そうですね」

 ウォーレンがそう言うと、他の者も頷いたのであった。


「では宰相殿、帝国からの人数は、どれほど集まりましたか?」


「50名ほどだ。

 それと今回の事件を切っ掛けに、陛下は保安隊の腐敗を、一掃したい様でな、ついでに他の者も逮捕するのを、手伝って頂きたい」


「調査期間は?あまり長くは、待てませんよ」


「10日では、どうだろう?」


 10日か……短いな。

 宰相殿はもしかして、10日の調査で分かる程の、露骨に不正を働いている保安隊の者を、見せしめにする気なのでは?

 だが、パンドラの入試が10日なので、ちょうど良いかも知れんな。

「分かりました。では、作戦決行日は、2月14日に一斉に検挙する事に決定する。

 先ずは、各自の担当だが、保安隊、鉱山は、帝国が主導し、弾正府が援軍で一斉に検挙を担当する。

 そこで団蔵、忍部隊は連合国内部の北方教会の監視と、精鋭を選んで子供の救出を担当しろ。

 俺の配下の忍が、既に鉱山を監視している、その者と会い情報を聞いて、全員救出せよ」


 左近がそう言うと、団蔵は難しそうな顔をして言ったのである。

「監視は、大丈夫でしょうが、救出ですか……邪魔者は、殺しても大丈夫ですか?

 いや、殺さない様に、出来る限りの努力は、しますがね」


 団蔵がそう言うと、ウォーレンが言った。

「今回は、仕方がないでしょう。今回に限り、セレニティ帝国の司法長官の名で、認めます。

 これは、他の皆様も同様です」


「有難う御座います。では閣下、その閣下の配下の者と、会うと言うのは、どうやって会いますか?

 何か場所の指定とかが、あるのでしょうか?」


 確か小次郎が、言っていたよな。

「いや、指定などは無い。だが鉱山の在る村に行けば、向こうから接触がある。

 それと、向こうは大陸人と言う事だけ、教えておく」


 何だか、変わった指定だな

 そう変な気持ちになりながらも団蔵は、了承したのであった。


「次は、シクサ村の北方教会だが、これにはママに、黒騎士団(ブラック・ナイツ)を率いて行ってもらう。

 関係者の逮捕は勿論だが、証拠の押収等を徹底的にやってくれ」


「あいよ」


「ガストン商会の、ヘラルド・ガストンの拘束は、パンドラお前だ。

 お前も、関係者の逮捕は勿論だが、証拠の押収等を頼む」


「承知しました」


「次はヒメネスの逮捕だが……」

「閣下、待ってくれ」

 左近が言いかけると、アミリアが言ってきたのであった。


「どうした、アミリア。今更、ヒメネスを見逃せは、無しだぞ」


「そんな事は、分かっている……ヒメネスの逮捕は、我等、魔女騎士団(ナイト・ウィッチーズ)に任せてくれないか?」


 その言葉を聞いた左近は、アミリアをジッと見詰めて、言ったのである。

「逃がせば、その代償は、その命を持って償って貰うぞ」


「ああ分かっているさ……」

 そうアミリアは、拳に力を入れて言ったのであった。


 まぁ今更、ヒメネス1人逃がした所で、どうって事は無いんだが。

「……分かった、ヒメネスの逮捕は、魔女騎士団(ナイト・ウィッチーズ)に任せよう」


「感謝します」


「ではセルゲン、親衛騎士団は、ザルツ王国に駐留し、逮捕の話を聞いた北方教会が、ザルツ王国で暴徒化したら、鎮圧を頼みたい」


「承知した」


「次はジャリ……いや、もうジャリは卒業だな。

 クリスティーナ、佐平次を14日から暫く、アムル砦に24時間待機させ、要請のある所に飛ばし、昨日の新兵器を使うようにさせろ」


「分かりました。例の新兵器の名前は、どうしましょう?」


 ナパームで良いかな……焼夷弾が良いかな……ナパームにしよう。

「ナパームと名付ける」


「かしこまりました」


「准将、義父上殿、二人は帝国とヴァルキア地方の暴徒化した、北方教会の教徒の鎮圧だ。

 いつでも軍を出せるように、警戒体制で待機してくれ……出来れば、あまり出動したくは、無いんだがな」


 その左近の気持ちは、皆が共通しており、全員が頷いたのであった。

「では、14日の作戦開始迄に、各自の持ち場に兵を進めてくれ。

 他の者には、大規模演習を始める為と言えば、良いだろう。では各自解散と行きたい所だが、パンドラと、クリスティーナと准将は残ってくれ」

 左近がそう言うと、パンドラが「何で私?」と言った感じで、首を傾げていたのであった。




 他の者が出ていった中で、左近がクリスに話を切り出したのであった。

「クリスティーナ、子供の出産予定は、いつだ?」


「おそらく、5月か6月頃だろうって、キッカ先生が言っていました。

 もしかして、私はクビですか?」


 なんだ、クリスティーナも、キッカに診察してもらってたのか。

「違う、早とちりするな。

 お前は5月に入ったら、1年間の育児休暇に入れ。佐平次は子供が生まれてから、半年間は休暇だ。

 准将、その間の聖龍騎士団の団長代行を1人、聖龍騎士団に異動させ任命しろ。

 クロエ、この事は、クリューガー准将にも連絡しておけ」


「かしこまりました」

「承知しました」


 清信とクロエの二人は、そう言ったのだが、クリスは育児休暇が、何か分からずにいたのであった。

「お前、軍の規定書を読んでいないな?」


「す、すみません……」


「連合軍の規定には、女性は、妊娠が分かった時から、事務職に移動になり、子供が生まれる予定日の30日前から1年間の休暇が義務付けられている。

 男性の場合は、配偶者が出産してから半年間の休暇が、義務付けられている。もちろん戦が無い場合の話だがな。

 もちろん、その間の給料は、満額出るから安心しろ。

 でも、お前達二人は、聖龍騎士団の団長と副団長だ。最低でも半年間は、聖龍騎士団を率いる者が居なくなる。

 だから俺は、准将に代理の後任を探せと言ったんだ。

 それとだな、出産迄の経費は内局に申請しておけよ、費用は軍が出すからな」


「そうでしたか……何から何まで、有難う御座います」

 そう言ってクリスは、左近に頭を下げたのであった。


「それと、まだあるぞ。准将、クリューガー准将と話し合い、この総本部に託児所を作れ。

 今後、女性の軍人が出産した時に、安心して子供を預けて仕事が出来る様にする。これはもちろん他の駐屯地にも作る様にしろ。

 もちろんこれは、軍人なら無料で利用出来る様にな」


「分かりました」


「それとクリスティーナ、生まれて来た子供は、アミリアとの約定があるので、男でも女であっても、俺が戦術等を叩き込み、兵庫が剣術を教える。

 そして、子供を勇者にするのだが、万が一だが、子供が死ぬかも知れない……それでも、良いか?」


 その最後の言葉で、クリスの顔色が、明らかに変わったのであった。

「そ、それは、どうしてですか?」


「この話は、内密だが、勇者の条件は、初陣で職業が盗賊の者を殺し、誰かを助ける事だ。

 初陣での戦いが、どんなに危険なのか、お前には、分かるよな?」


「……はい」


「まぁこの事は、お前だけの問題じゃ無いから、帰って佐平次と話し合えば良いさ。

 勇者にしたくなければ、その日が来るまで、俺に言ってこい。それまでは、勇者になる前提で鍛えるから」


「……分かりました」


「さて、以上で話は終わりだ。次はパンドラだが、これは家族の話なので、すまんが二人は出ていってもらえんか?」


「分かりました」

 そう言って清信は、左近に一礼して、クリスと部屋から出たのであった。



 一体何だろうか?

 そう思いながら、執務室を出た清信の耳に、蘭とヴィオラの話が入って来たのであった。

「ねえねえ、伍長どう思う、姫様に新しい出会いがあるかな?」


「そりゃあるでしょう、同年代の男もいっぱい居るんだから。

 それに、姫様自身も、身分を隠して、寮に入るんでしょ?そりゃ男を連れ込み放題でしょ。

 帰って来たら、姫様のお腹が大きくなっていて、閣下が発狂するってのが、お約束の流れでしょ。

 私なら、そんな入れ食い状態を、放っておかないですよ」


 な、何だと!

 その話を聞いた清信は、思わず二人の前に言って聞いたのであった。

「大尉、伍長、その話を詳しく聞かせてくれないか?」


 その清信の、ひきつった顔を見て二人は、思わず引いた二人であったが、ヴィオラが言った。

「それがですね、今度開校する、レイクシティの学校に、姫様が受験される様でして。

 それに身分を隠して、寮に住む様ですね。

 寮に住むのは、最初閣下は、反対されていたのですが、それが関白殿下の命令で、認めてしまったんですよ」


 な、何だと!あの筋肉バカめ、余計な事をして……もしかして、今その話をやっているのか?

 聞きたい……だが、他の者の目もあるし……悔しいが、戻るしかないか。

 そう思いながら清信は、ガックリと肩を落として、出ていったのであった。



 そして、暫くすると、パンドラが部屋から出て来て、廊下に出ると、ママが待っていたのである。

「姫さん、遅かったな」


「お父様が、親バカっプリを発揮しまして……寮に住むのは認めるが、月に一回は家に帰ってこいって、言うんですよ」


「ハハハ、あの鬼の左近も、人の親だったか。

 しかし、姫さんも、とんでもない事を思い付くよな、まさか身分を隠し、平民として学校に行くなんて。

 ちなみにアルム砦じゃ、姫さんが、他の生徒にいつバレるかで、賭けが始まってるらしいぞ」


「どうせ、虎辺りが言い出したんでしょ……ちなみに、大穴は?」


「無事に、何事もバレずに卒業する事」


「……本命は?」


「3日」


 それを聞いたパンドラは、何とも言えない怒りが湧いてきたのであった。

「あ、あいつら~!さすがに3日は、無いでしょう!」


「そうかな、姫さんじゃ、3日はあり得ると思うけど」


 そう言えばソニアは、どちらに賭けたのでしょうか?

「……ソニアは、どっちに賭けたので?」


「私は手堅く行くから、3日だね。3日に100シリング」


「ならば、その賭けは、負けですね」


「勝つさ」

 すかさずママがそう言うと、何とも言えない静寂の空気が流れたのであった。


「……」

「……」


「ではソニア、高額で掛けましょうか?」


「良いね、中立を保つ為に、テスタは、姫さんの言いなりだし……バスティに、判断を下してもらおう。

 で、どれほど賭ける?」


「夏と冬のボーナス二年分……もちろん私は、バレずに卒業で」


「上等…んじゃ私は、バレる方で。

 今回のは、お互いに邪魔も隠蔽も無しだ、発覚次第、罰金で更に、1年分の夏と冬のボーナス追加でどうだ?」


「良いでしょう、そのお金で、豪華に遊びに行くとしましょう」


「私は、浴びる程の酒だな……その前に、合格してくれよ。

 姫さんが合格しなきゃ、賭けが始まらないからな」


 ……本当に、不器用な人ですね。

「ありがとう、ソニア」

 そう言ったパンドラは、笑顔でママとアルム砦に、向かったのであった。




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