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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第三章 連合国編
82/464

とある二人の関係2

 





 翌日、左近の広い執務室には、佐倉家のメンバーとラニス、イリナ夫妻と元々左近に呼ばれていた、鶴が執務室に、集められていたのであった。


「第一回、アミリア・マクレガー大佐攻略会議ぃ~!はい、拍手」

 そう笑顔でアイリスが言うと、左近とラニス以外の者は、言われた通りに拍手したのであった。


「すまんが、アイリス。俺には、仕事があるのだが……」


 左近がそう言うと、アイリスは明らかに不機嫌そうに左近に言ったのである。

「……拍手は?」


 や、ヤバい、殺される。

 そう思った左近は、気合いで笑顔を作り、拍手したのであった。


「ふむ、良い心がけです。

 さて、今日皆様にお集まりいただいたのは、他でもありません。

 クリスティーナ・マクレガー中佐と浅田 佐平次 長宗大尉の、結婚の最大の障壁でもある、帝国の雷帝アミリア・マクレガー大佐に二人の結婚を、認めさせる事を考える会議で、御座います。

 なお、本日の議長は私、佐倉 左京進 アイリスが、副議長は、イリナ・セレニティ后妃が、勤めさせて頂きます。

 はい、拍手」


 これは、拍手しなければ、殺される流れだ。

 ん?結婚?ジャリと佐平次が?マジかよ、初耳だぞおい。

 そう思っていた左近であったが、アイリスには、とても逆らえる空気では、無かったのである。

 そして同じ境遇のラニスが、左近に小声で言って来たのであった。

「元帥よ、お互いに妻には、頭が上がらん様だな」


「陛下、何だかすみません」

 そう言ってラニスに謝った、左近であったが、アイリスとイリナに睨まれて、二人は下を向いたのであった。


 そんな重い空気の中で、鶴が手を上げて質問してきたのであった。

「あの~宜しいでしょうか?」


「鬼島大佐、発言を許します」


「私は今日は、閣下に呼ばれて来たのですが、この為に、呼ばれたのでしょうか?」


「それについては俺が説明しよう。

 実はな、俺も今日この事は、何も聞かされておらず、本当に仕事の話があって、お前を呼んだのだが……すまない道連れだ。

 後で仕事の話をしよう」

 そう左近が言うと、鶴は諦めたかの様に言ったのであった。


「では、早くこの会議を終わらせましょう、奥様…いえ議長、お願いします」


 結構ノリが良いな、鶴の奴は。

「では、簡単に事情を話します。

 ここだけの話ですが、クリスが妊娠をし、佐平次は順番が逆になりましたが、クリスと結婚したいそうです。

 しかし、ここで最大の障壁となるのが、クリスの母親のアミリアおばさんの存在です。

 そこで皆様に、知恵を出して頂き、何とかして二人の結婚を認めさせて欲しいのです。

 大まかな流は、二人が結婚をする、その後に子供が出来たと、おばさんに報告する流れです」


 いや、これは無理だろう。

 佐平次がアミリアに殺されるのが目に見えているぞ。

 そう思っていると、エリアスが発言してきたのであった。

「アミリー……いや、マクレガー大佐は、昨日話していた時に、佐平次にはルタイ皇国の官位が、無いのでダメだと言っていたなぁ」


「そう言う事なら大丈夫、あなた佐平次に官位をあげなさい」


「アイリス、それは無理だろう。そもそも……」

「議長です!」


 う、目が恐い。だが俺はここで退く訳には、いかんのだよ。

「では、議長。言わせてもらうが、そもそもルタイ皇国の官位は、それ相応の働きや、家の格によって、与えられる物だ。

 簡単にやれる物では無い」


「……あなた、ちょっとこっちへ。

 ラナ、セシル、セシリーも一緒に来て」


 あれ?何この校舎裏へ連行される、いじめられっ子の様な感覚は?

 そんな事を考えながら左近は、セシルとセシリーに両脇を抱えられて、隣の秘書室の方に連行されて行ったのであった。



 蘭とヴィオラの秘書達が、生暖かい目で見る中、左近はラナに壁に押し付けられ、まさに逆壁ドンの様な状態で、ラナに言われたのであった。

「ねえ、あなた……私の夫なら、官位ぐらいポンとあげなさいよ。出来るんでしょ?」


「だ、ダメだ。そんなに簡単にやっては、意味がない」


「チッ、真面目か」

 そう言うとラナは、怒りを我慢して左近から離れたのであった。


 最近ラナが、不良化している……まさかの思春期か?

 そう思っている左近に、次はセシルとセシリーが、すり寄り言っていたのであっる。


「……旦那様、ここは佐平次と、クリスティーナ様を助けてあげて」


「そうだよ、ここは旦那様が、何とかしてあげないとね。

 もしもここで、頑張ってくれたら、今晩は私達が旦那様に、頑張ってあげるんだけどなぁ。

 それにね、今晩はあなたが言っていた、私の事をボクって、言ってしてあげるから」


 次は色仕掛けっすか?確かにこれは、非常に有効だ……ボクッ娘かぁ。

 だがしかし、俺はルタイ皇国の左近衛大将で、連合軍最高司令官の元帥でもあるのだ、認めはせん!認めはせんぞ!

「だ…ダメ……」

「……それは、言っちゃダメ」


「そうそう、旦那様は、ただ頷くだけで良いの」


 お、俺の理性が崩壊しそうだ。

 いや、しかしここで認める訳には……


 ガブ


 ……ガブ?

「痛ぇ!こらアイリス、噛むんじゃありません!こら、腕が……マジで血が出てるだろ!分かったから離れなさい」

 そう言って、左近は腕に噛みついたアイリスを、何とかして引き離そうとして、思わず了承してしまったのであった。


「よっしゃ、言質を取ったから、もう嫌とは言わせないよ。ほら、アイリスもう良いよ」

 ラナに言われたアイリスは、左近の腕から離れると、笑顔で言ったのであった。


「ふぅ……じゃあ戻りましょうか」

 そう言って項垂れた左近と、笑顔の四人組は再び執務室に戻ったのであったが、その一部始終を見ていた、蘭とヴィオラは、言葉を失っていたのであった。



「ねえ、少尉……」

「伍長、言っちゃダメ。この事は、忘れなさい」


「ですよね……」

 そう言ってヴィオラは、左近の奥様達にだけは、逆らわないでおこうと、心に誓ったのであった。




 執務室に戻ってきた、五人の顔を見て、その場の者は、何があったのか推測出来ていたのだが、誰もあえてその事に触れなかったのであった。

 だかここで、鶴が左近達に提案をしたのである。

「先程、閣下達が隣の部屋に行ってから、マクレガー大佐の事を聞いていたのですが、どうも権威等に弱く、命令などには大人しく従う様ですね。

 そこでですが、ラニス皇帝陛下と閣下が、大佐に命令されるのはどうでしょうか?」


「命令?」


「そうです。

 私が預かっている、ポートシティでは、いくら同じ連合になったとは言え、やはり未だセレニティ帝国とルタイ皇国の民に蟠りの様な物があります。

 そこで、この二人の結婚を大々的に宣伝する事により、もう戦は終わり、同じ連合なのだと、民に分からせるのです」


「そんなにも上手く、行くかの?」

 思わず、ラニスが呟くと、鶴は更に言ったのであった。


「いくでしょうね、ただし、何かしらの見返りは、求めて来るでしょうが。

 それが爵位なら、陛下が動けば良いし、官位なら閣下が動けば良い話でしょう。

 それに話は、私も同席して、私がしますので」


 これは、もしかすれば、鶴の力を見れるかも知れんな。

「俺は、この話に乗ろうと思うのだが?」

 左近がそう言うと、その場全員が頷いたのであった。


「じゃあ、クロエは、このまま、おばさんを呼んできて。

 私達は、いない方が、何かと都合が良いだろうし、では解散」

 お前が言うなよ。

 左近はそう思いながらも、アイリスの掛け声で、ラニスと鶴と左近を残して、出ていったのであった。



「……行きましたね?」


「ああ、行ったな」


「そうじゃの」


「では、本来の話をしましょうか?こう見えても私は忙しいので」


 そうか、あの事だな……陛下がいるがまぁ良いだろう。

「では陛下、ここからは他言無用で御願いします」


「分かった」


「この間の言っていた仕掛けに、魚が引っ掛かった」

 もちろん左近の言うこの事は、風間一族の村に、放火しに甲賀者が、やってくると言う話であった。


「それは、本命ですか?」


「それは、分からんが、違うと思う。

 魚の目標は、俺では無く、レイクシティ近郊の三角州の村だからな。

 その村は、表向きは俺の親類が集まる、俺の農園となっているが、本当の所は、例の一族だ」


「……なるほど敵は、川から逃げる恐れがある者達なので、私に何とかせよと?」


「話が早いな、そう言う事だ。魚の名は甲賀」


 その名を聞いた鶴は、フッっと笑みを浮かべて、言ったのであった。

「ならば、本命では無く、小魚でしょうな。

 理由は2つ、最初に親類の村と、言われている所を放火すれば、閣下の警護が厳しくなり、閣下を暗殺する事が出来ません。

 もう1つは、甲賀者は、集団での任務は得意ですが、個の任務は不得手です。確実に暗殺するなら、暗殺に得意な伊賀者を使うでしょう。

 以上の事から、今回は全く別の者ですね」


「なるほどな、やはり別口か。だが鶴よ、この案件は頼めるか?川を塞ぐだけで良い」


「かしこまりました、我等水軍の力をご覧に入れましょう。

 どうでしょうか?屋形船を造って、そこで陛下と御一緒に、観覧されるというのは?」


 何だ、鶴の奴は?そんなにも圧倒的な、自信があるのか?

「分かった一緒に行こう。陛下はどうされますか?」


「良いのであれば、一度見てみたい物ですな」


「かしこまりました、では素晴らしき見世物を、ご覧に入れましょう」

 そう言って、鶴は優雅に頭を下げ、左近とラニスは、まるで何処かのショーに、招待された様な気がしたのであった。




 その頃、アミリアは、左近の執務室の前に、クロエとやって来ていたのであった。


 一体何だ?大将が私を呼び出すなんて?

 アミリアがそう思っていると、クロエが中に入り、暫くして出てきたのであった。

「マクレガー大佐、お入り下さい」


「ああ」

 そう言って中に入ったアミリアは、内心驚いていたのである。

 執務室に入るとそこには、左近だけでなく、ラニス皇帝と鶴がいたからであった。


 何だ?何かがあったのか?まさか戦か?

 佐平次の事より、アミリアの頭に浮かんだのは、戦の文字である。

 そう思い、気を引き締めたアミリアに、鶴が話し掛けたのであった。

「マクレガー大佐、本日は、貴公にやってもらいたい事があり、本日は呼び出した」


「なんだよ、何処を攻めれば良いんだ?」


「攻めるのでは無い、今回は……そうだな、予防策だな」


「予防策?」


「そうだ、予防策だ。

 知っているかも知れんが、今ヴァルキア地方や、私の預かるポートシティの民達は、ルタイ皇国の民と蟠りがある。

 これでは、攻められた時や、反乱軍に利用されるのがおちだ。

 そこで、貴公の娘のクリスティーナ中佐と、浅田大尉が付き合っているとの情報を得てな。

 この貴公が、何とかして二人を結婚させて、もう二カ国の戦争は終わったと知らしめるのだよ」


「はぁ?何で私が?そもそもこれは、何の冗談だい?」


「冗談?何を言っている?

 そもそも、反乱軍がこの先、戦況を変えるには、民の蜂起が考えられる。

 だがこれは、人の心が変えられないのと同じで、完全に無くす事は難しい。

 しかし、ここにそれを防ぐ手立てがある。

 貴公の娘と浅田大尉の結婚を、大々的に宣伝する事で、この状況を打開できる切っ掛けになるのだ」


 こいつ、何を言っている?佐平次に頼まれたのか?

 いや違う、鬼島は、貴公が何とかして結婚させてと言った。

 もしも、佐平次に頼まれれば、結婚を認めろと言うはずだ。では本当にその宣伝が目的か?

 確かに、大将と陛下もいる。そして、鬼島も……何だか、話が出来すぎている気がするが、鬼島の言っている意味も分かる。

 ここで民を、力で押さえ付ければ、その鬱憤はたまり、いつかは爆発するだろう。

 そこを他国に突かれれば、マズイのは分かるが……そうか、だから手っ取り早いクリスと佐平次を、使おうって事か。

 暫く考えたアミリアは、静かに答えたのであった。

「不本意だが、分かったよ。

 しかし、問題は、あの佐平次で無く、他の誰かにして欲しいって事だ。あの佐平次は……」

「無理だ」

 アミリアが、佐平次以外の者でと、言おうとした時に、鶴は即答で断ったのであった。


「何でだよ!」


「はっきり言おう、ここはルタイ皇国以外の者と結婚するのでは、意味がないし、時間は無いのだよ。

 何で、今付き合っている者を、選んだのか分かるだろう?

 それにだ、別れさせて、後々に遺恨が残るのは、まさに本末転倒だ、戦場でいらん気を使わなくてはならないし、そんなのは使い物にならん」


 何となく鬼島の本性が見えたぞ。こいつは、大将と同じタイプだ。

 人や配下の者は、物と見ているが、その本性は決して見せない。

 そのくせ、他の者の感情や性格を利用する奴だ。

 パンドラの姫様が近いと思っていたが、こいつも近い……だからか、女なのに大将が、水軍を全て任せる理由は。

 あの感情を抑えきれない、バカな三好を表に出して、裏ではこう言った者を重宝し、着々と自らの家臣団を作る。

 大将、あんたはとんだ策士だよ。自分に野心は無いと言っておきながら、裏ではこう言った者を集めるなんてさ。

 だがこれでハッキリした。大将はこの先、何かと戦おうとしている。

 ならば私が、マクレガー家が進む道は1つしか無い。

「分かった、引き受けよう……ただし条件がある。

 二人に子供が出来た時は、その子に英才教育を施し、勇者にすると誓って欲しい」


「閣下、陛下、どうされますか?」


「アミリア、勇者になるのには、死ぬ可能性も有るが良いか?」

 左近のその真剣な眼差しに、アミリアはただ頷くだけであった。


「……分かった。その子供は、俺の全てを叩き込もう」


 そう左近が言うと、ラニスが申し訳無さそうに、言ってきたのである。

「すまんが元帥よ、ワシの子供も良いかの?」


 あ、あんたもかい……もう良いか、今更一人二人増えた所で。

「分かりました、面倒を見ましょう。ただし、あまりにも多いのは、勘弁して欲しい、託児所じゃ無いんでね」


 左近がそう言うと、アミリアは、笑いだしたのである。

「ハハハ、そりゃそうだ……じゃあ私はそろそろ、行きますよ」

 そう言ったアミリアは、一礼して、自分の騎士団の部屋に、戻って行ったのであった。




 ―――――――――




 どうしたのだろうか、今日の佐平次は?

 そう思いながら、騎士団の詰所で書類仕事をやっているクリスは、同じ部屋で仕事をする佐平次を、チラチラと見ていたのであった。


「中佐、この書類にサインを下さい」


「おお、分かった」

 そう言って、書類にサインをするクリスであったが、もう完全にその頭から仕事の事が消えていたのであった。


「そうだ、ガルド神魔国のマコラガ評議員から、飛竜(ワイバーン)の引き渡しは、来年になるそうです。

 その代わり、飛竜(ワイバーン)の数を30頭から50頭に増やして頂き、卵も10個つけてもらえるそうです。

 後は調教師ですが、調教師の方は、帝国の以前の聖龍騎士団の調教師が、レイクシティに来てくれるそうです。

 その調教師も来るのが、来年ですね」


「そうか……なぁ佐平次、昨日は本当に図書館に行ってきたのか?」


「ええ、行きましたよ」


 じゃあ、意味は分かっているはずなのに、何でこいつは普通に仕事をしていられるんだ?

 何だかムカついてきた。

「じゃあ、何でそんなにも平気そうに仕事をしていられるんだ?」


「いや、それは、ここで言う話じゃ無いでしょ」


「ここは、私達しかいない、聖龍騎士団の詰所だ。むしろ、ここでしか言えないだろ。

 私のお腹には、お前と私の子供がいる……お前は、どうしたいんだ?」


 クリスがそう言うと、佐平次は暫く悩んだ後で、頭をかきむしり言ったのであった。

「あーもう!せっかく思い出になる様な所で、結婚を申し込む予定だったのに、何でそう追い詰めるかなぁ。

 もう良いいや、せっかくの予定を崩したのは、クリスティーナ様ですからね。

 クリスティーナ、愛しています、俺が一生貴女を守ります。だから俺と結婚してください」


「はい、分かりました」

 そう言うとクリスは、大粒の涙を流し、佐平次に抱きついたのであった。


「せっかく、思い出になる様に、考えていたのに、まさか、こんな風になるとは」

 そう言った佐平次が、クリスの頭を撫でていると、背後からアミリアの声が、聞こえたのであった。


「本当に、私もこんな風になっているとは、思ってもみなかったよ」


「母上!」


「大佐!……いつからここに?」


「佐平次が、頭をかきむしっている所からだ」

 そう言ったアミリアは、部屋に入ると、団長の席にドカッと座ったのであった。


「あの……母上……」

「クリスティーナ様、ここは私から。

 アミリア・マクレガー大佐殿、どうか私達の結婚を認めては、もらえないでしょうか?」


「……認める。認めるが条件が有る」


『条件?』


「鬼島大佐の案で、お前達の結婚を大々的に宣伝するんだと。

 これは、セレニティ帝国とルタイ皇国の、民の確執を無くすのに利用するそうだ。

 それともう1つ、これは私からの提案だが、お前達に子供が出来たなら、大将に教育してもらい、英才教育をし、勇者にしてもらう。

 それと最後に佐平次、お前がマクレガー家の婿養子になれ。

 クリスは、私の一人娘だ、マクレガー家を潰す訳にはいかん。これは、お前の方から申し出たと言う形に、するんだ。

 この条件をのむか?」


「もちろんです!」


「私も異存ありません」


「分かった、では話は以上!」

 そう言ったアミリアは、そのまま部屋から出ると、中からは二人の歓喜の声が聞こえて来たのであった。




「団長、お疲れ様です!」

 そう言って、出てきたアミリアを出迎えたのは、ガブリエラであった。


「全く、本当にこれで良かったのかね?」


「自分は、これで良かったと思いますよ」

 そう言ってガブリエラは、アミリアに微笑んだのであった。


「……ガブリエラ、今日は、飲みに行くぞ。エリスも拉致して三人でだ」


「朝まででも、お供しますよ」

 良かったな、大尉。クリスティーナ様を頼むぞ。

 そう言ってガブリエラは、聖龍騎士団の詰所を見て、思っていたのであった。




 ―――――――――




 後日、佐平次とクリスの結婚の報は、レイクシティのみならず、ヴァルキア地方に知れ渡る事になり、民の心は徐々にではあるが、ルタイ皇国の事を受け入れて来たのであった。


 そして、東暦元年10月28日、全ての反乱軍は鎮圧され、反乱軍の敗残兵は、左近の予想していた様に、唯一通行可能な、セブンス連邦に続く街道から、イザナ村に再び集結していたのである。


 そして翌日の29日、来月の10日から、5日間に渡って帝の結婚祝いの品を、各国の国家元首や大名、貴族や官位の持っている侍が、持って行く事になっているのだが、あまりにも数が多過ぎて、ルタイ皇国の京は、お祭り騒ぎになっていたので、藤永 弾正が説明に左近衛府の会議室にやって来たのであった。


「え~今回、大陸の皆様は、この様に最終日になり、各国、大名家は、護衛は50名迄とさせて頂きます。

 で、道順はこの地図の様に、七条烏丸から出発し、そのまま北上して蛤御門から入って頂きます。

 出発の順番は、そちらに書かれている通りで、何か不測の事態が起こっても、我等、弾正府が対処しますので、皆様は手を出さないで頂きたい。

 以上、ここまででご質問は?」


 そう言って藤永 弾正が言うと、クリューガー准将が手を上げて、言ったのであった。

「このパレードは、良いのだが、各国の宿泊所は、寺になっているのだが、宿は無いのか?」


「宿は警備上の問題で難しい。その点、ルタイ皇国の寺は堀や壁があって、小さな砦の様になっておるので、警備もしやすいのでな」


 確かに弾正の言う通りだ。

 宿屋で宿泊よりも、寺で宿泊の方が、都合が良いだろう。

 左近がそう思っていると、藤永 弾正は再び紙を見て、話を進めたのであった。

「では、次に帝に謁見後の宴だが、場所は御所敷地内に新たに建てられた、迎賓館と言う建物で行う事になります。

 形式は、大陸と同じく立食パーティーの様な物となり、各国の国家元首本人と大名、貴族に官位の持っている侍と、その親族。

 そして、護衛は二人までで、各騎士団は団長と、もう一人の2名まで参加可能です。

 それ以外の方は、別の場所に宴の用意をしておりますので、そちらで御願いします。

 まぁこれは、人数が多いからで御座いますが、何卒、御理解頂きたい」

 藤林 弾正がそう言うと、全員が仕方がないと頷いていたのであった。



 まぁ、みんな初めてのルタイ皇国だし、もめ事は避けたいだろうから、要求はすんなり通るか。

 ここで、佐平次とジャリに、言わなきゃならない事が、あるんだが……怒るだろうな。

「では、ここで連合軍の、留守居役を発表する……まぁ簡単に言えば、ここでお留守番するって事だ。

 クリスティーナ・マクレガー中佐、貴公の留守居役を命じる。

 あ、佐平次はその補佐な」


「え~!」


「そんな大任は、私には無理ですよ!」


 佐平次は、仕事の事で言っているが、ジャリは絶対に違うだろ。

「まぁそう言うな、数日間だけだから。

 だがな、数日間とは言え、左近衛府の佐官以上は、皆がルタイ皇国に行ってしまう。

 つまりジャリ、お前がこの左近衛府の責任者だ。まぁ責任者って言っても、何かあれば、連絡すれば良いし、書類関係もそのままで、良いから。

 とは言え、そう言っても、責任者は責任者だ。頑張れよ」

 左近のその言葉で、クリスは漸くその責任の重さに気が付き、頷いたのであった。



「まぁ、最後にこれは忠告なんじゃが、最近の京には、辻斬りが出ておるので、気を付けてくだされ。

 だが姫様達とエリアスは、心配してはおらんがの」

 そう言った藤永 弾正は、笑顔で言ったのである。


「すみません、辻斬りと言いますのは、何でしょうか?」


「そうじゃの、エリアスの言う通り大陸の者は、辻斬りと言うのは、分からんわなぁ。

 辻斬りと言うのは、夕暮れや夜に、刀の試し斬りをする行為じゃな……まぁ簡単に言えば、通り魔殺人じゃ。

 だがな、今回の京の辻斬りは、少々違ってな……この辻斬りは、腕に覚えのある者しか襲わん。

 それも、不意討ちでは無く、正面からやってきて、本当に強い者や見込みのある者は、生かしておくのじゃよ」


 何だそれ?変な奴がいるもんだな。

「弾正府は、その辻斬りを捕まえないのか?」


「もちろん、何度か捕まえようとはしたのじゃが、恐ろしく強くて、全部返り討ちじゃよ。

 特徴は、大きく長い太刀、大太刀を持っている侍と言う事だけじゃ。

 要人狙いでは、無いと思うので、大丈夫と思うが、護衛には気を抜かないで頂きたい。

 もしも、発見し倒したら、弾正府に一報をお願いしたい。

 ワシからは、それぐらいじゃな」


 まぁ弾正さん適当ですこと。

 でも、弾正の気持ちは分かる、義父上とパンドラと珠の3人には、心配するだけ無駄だ。

 辻斬りが来ても、この3人より上って事は、無いだろう。

「では皆、さっき弾正が言っていた、辻斬りだけは気を付ける様に。

 で、パンドラは、辻斬りに会っても、街だけは破壊しない様にな」


「ちょっと待って下さい、何で私だけなんですか?」


「お前と珠は、京の都を全て破壊する恐れがある、それだけが恐いんだよ」

 左近がそう言うと、その場全員が笑い、会議室は明るい空気に、包まれていたのであった。



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