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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第三章 連合国編
74/464

解放奴隷

 

 左近達がナッソーから戻って来た翌日、左近達は新たなペスパード王朝の研究所を作る為に、ペスパード王朝の研究者達やニーナ、そしてフレイアと話し合っていたのであった。


「ふぁ……」

 フレイアは余程眠いのか、大きなあくびをしたのであった。


「何だ、昨日は遅かったのか?」


「まぁな。

 あの後、夜中までエルマとロンデリックの四人で、盛り上がっててん。でもおかげで、殆ど完成したで。

 所で今日は、清興の奥様連中は?いつもなら、一緒におるやろ?」


「その事なんだが、アイリスはお腹の子供の関係で、あまり出歩けないのだが、後の3人は左近衛府の食堂で、兵士の食事作りで大忙しさ。

 ルタイ皇国の侍だけなら、あいつらは自分で作ってたのだが、ここまで大所帯になると、そうは言ってられんしな。

 蘭や十字軍の家族の者も臨時に連れてきたり、セレニティ帝国から料理人を借りたりで、今は何とかやっているのだが……早く何とかしないとな」

 そう言った左近は、頭に手を当てて言ったのであった。


「その事何ですが、奥様達の要望も有りまして、今日の夕方から各地に空間転移し、奴隷の購入に行く事になりました。

 この後のご予定は、マーティ・グレゴール会頭との会合、クリューガー准将との内局の打ち合わせ、三好准将との外局の打ち合わせ、その後に奴隷購入になります」

 そう言ったクロエは、大きな手帳を広げて、眼鏡をクイッと上げて言ったのであった。


「何やクロエ、秘書の風格が漂ってるやん……でもご飯はいつ食べるねん?」


「……あ…」

 クロエは、フレイアに指摘されて、思わず声が出たのであった。


 おい、忘れていたのかよ。

 まぁ最初だしな……でもスケジュールを詰め込み過ぎじゃないかこれ。

 そう思いながら左近は、フレイアに話しかけたのであった。

「なぁフレイア、蒸気機関車とかをスキルで作れないか?」


「それは無理やな、ウチがイメージ出来ひん物は作れへんねん。

 それにウチ、蒸気機関車なんて見た事無いで、見た事が無いのに再現するのは無理やな……それにウチ、電車に全く興味無かったから」


 そう言われたら、俺も蒸気機関車なんて見た事が無いから、絵を書けって言われても難しいよな。

 それならば、蒸気機関車の代わりに馬で引っ張るとかで代用するか。

 そう言えばガルド神魔国の特産品って何だろう?

「じゃあ蒸気機関車の代わりに、馬で代用するとして、前から気になっていたのだが、ガルド神魔国の特産品って何だ?」


「特産品……何やろ?」


 し、知らんのかい……それ統治者としてどうかと思うぞ。

 そう左近が呆れていたら、後ろからリーゼロッテが情けないと言った、表情で左近に言ったのであった。

「すみません魔王陛下は、あまり国の事は興味ありませんので……今後国の事は、私か八部衆の方々にご質問して下さいませ。

 ガルド神魔国の特産品は、小麦に鉄そして……金です」


 金だと?大陸では、殆ど金が取れないはずでは?もしかして……

「リーゼロッテさん、まさかとは思うのだが、メギド魔皇国の特産品の方には……」


「さすがは左近様、たった一言で全てを理解されましたか……そうです、お察しの通り、銀で御座います」


 左近は、そのリーゼロッテの言葉で全てを理解したのであった。

 今までの光魔大戦、その裏の目的は、金と銀の確保であり。

 それは、今まで金や銀が少ない為に、通貨を製造出来なかった状況を、この二人の魔王が支配する国を占領し打開しようとしていた事を意味するものであった。

「欲望とは、恐ろしい物だな……」


「ええ、本当にそう思います」


「何?何?もぉ、ウチにも分かる様に言ってぇや」


「フレイア、後でリーゼロッテさんに聞いてくれ、それよりはここではチョッとな……」

 そう言った左近の目線の先には、こちらを見ているニーナがいたのであった。



「すまんが、話が色々と聞こえて来たのでな……その前に、そんなにヤバい話は、こんな所でするな。

 せっかく魔王陛下は、知らぬふりをして、お前達に気付かせようと、しているのに」


 いやニーナさん、こいつはガチで知らんのだと思うぞ。

「すまなかった、気を付けよう」


「申し訳御座いません陛下、以後気を付けます」


「いや、分かれば良いんだ。

 私には、よく分からない話もあったが、左近衛大将はこの街に、大型の乗り合い馬車の様な物が、欲しいんだろ?

 なら馬では無く、伝説にある神魔国の魔獣を使えば良いんじゃないか?それならば大量輸送出来るだろうし」


「魔獣……おお、あのコモドドラゴンの事か!」


 コモドドラゴン?あの大きな東南アジアにいるトカゲか?

 左近がそう思っていると、リーゼロッテがフレイアの言った事を、訂正したのであった。

「ロングホーンドラゴンです、陛下いつも変な名前で呼ぶのを止めて下さい」


「ええやん、そんな変な名前より、コモドドラゴンの方が似合ってるし」


「ええっと、よく分からんのだが、その魔獣は使えるのか?」


「ええ、第二次光魔大戦の時に、敵の騎士団を散々に撃ち破った、アシュラ様直轄リザードナイツの方々が操るロングホーンドラゴンは、その力は普通の馬の百倍になります」


 そんな生き物が?それならば、都市間の大量輸送が可能になるかも。

「フレイア、その魔獣を売ってくれないか?」


「まぁコモドドラゴンはええけど、扱える者がなぁ……せやアシュラに言って、何人か調教師も付けたろ」


「すまない。だがその八部衆って何だよ?……これはリーゼロッテさんに聞いた方が良いな」


「何でやねん」


「まぁ陛下、良いでしょう。

 八部衆……ガルド神魔国の中でも、国を動かす8名の魔族です、大宰相テン、近衛長リュウ、飛行師団長ヤシャ、諜報部局長ケンダツバ、武神アシュラ、大将軍カルラ、祭司キンナラ、学士マコラガの8名で御座います。

 因みに今はマコラガ様は、現在評議会議員も勤められております」


 何だか聞いた事がある様な名前だな、これは各国の体制を勉強しないと。

 とにかく、それを馬の代用にするとして、レールと車輪はサンプルをフレイアに作ってもらって、鍛冶屋に生産してもらうか。

「フレイア、今晩お前の屋敷に行って良いか?」


「良いけど……まさか夜這いに?」


「違うし、てか堂々と行ったら夜這いにならないし。

 レールと車輪のサンプルを作ってもらいにだよ。毎回フレイアのスキルで作ってもらう訳にもいかないからな」


「何や、残念やけど、そう言う事ならしゃあないな。

 クロエ、全部終わったら屋敷に来る様に、清興のスケジュール組んでおいてんか」


「かしこまりました」


「では、話がついた所で、こっちは研究所の設計が出来ているから、魔王陛下頼むよ。

 コープス博士、お前はこっちに来て、左近衛大将の要望を聞いてくれ」

 そうニーナに言われて、左近の元にやって来たダークエルフの女性は、牛乳瓶の底の様な、ガリ勉お約束の眼鏡を、掛けていたのであった。


「左近衛大将、こいつはユリアン・コープス博士と言って、レジストカード発券魔動機を開発した天才なんだ。

 こいつに今後、必要な道具を言ってくれたら、何とかして作ってくれるだろう。

 じゃあ後は任せたよ、行こうか陛下」

 そう言ってフレイアとニーナは、図面を見に行ったのであった。


「あ、あの、ユリアン・コープスです、今日は宜しくお願いします!」

 そう言ったコープス博士は、何度も左近に頭を下げたのであった。


 よく分からんが、何だかリンと同じ属性っぽい人だな。

「佐倉 左近衛大将 清興だ。で、こいつは秘書のクロエだ。

 早速だが、コープス博士、レジストカードの内容を変更出来るか?」


「へ、変更ですか?ある程度なら……た、例えば?」


「そうだな、レジストカードは1つの職業しか表示しないので、あんまり意味は無いから……思いきって職業の表示をしないで、氏名と性別と所属先のカードで、どうだろうか?」


「うーん……ぎ、偽造とかの対策はどうします?」


「そこは、博士が考えてくれ」


「ま、まさかの丸投げですか!……分かりました何とかしましょう。他には?」


 この人、思った事がすぐに口に出るタイプだな。

「前にダンジョンに入った時に、空間転移が出来ないダンジョンがあったんだが、このレイクシティも、決まった場所以外の所に、空間転移出来ない様にする事は可能か?」


「うーん、そ、それは勇者様が、いないので研究しておりませんので、何とも言えません。

 で、出来る事なら、そのダンジョンの壁などの一部を持って帰って来て、研究すれば何とか出来るかも。

 あ、後は勇者様を一人貸して頂けたら……」


「壁?勇者は貸すのはいつでも大丈夫だが、ダンジョンの壁が必要なのか?」


「え、ええ、そ、そう言ったダンジョンの壁や石は、魔石の可能性が高いんです。

 そ、その魔石を研究し利用しているのが、レジストカード発券魔動機です。で、ですので、そのダンジョンの壁や石を採取できれば、似たような性質の物を作れるでしょう」


「それは、ダンジョンを攻略しても消えないのか?」


「な、何故かダンジョンから持ち出した物や、外に出たモンスターは消える事がありません、なので安心して採取してきてください」


 そうか、ダンジョンが消えて中にあった物が消えるなら、ダンジョンでゲットしたアイテムとかも、消えるって事だもんな、言われて見りゃ納得するわ。

 でもダンジョンを攻略してしまったから、これはまた今度だな。

「そのダンジョンは、既に俺達が攻略しているので採取は無理だから、機会があればだな。

 後は、傭兵ギルドの様に依頼内容を伝達する様な道具と、手紙を即時に伝達する通信道具だが出来るか?」


「り、両方簡単に出来ますが、出来れば何処かに情報を管理する、頭脳と呼ばれる、大きな魔動機の置き場が必要ですが、用意できますか?」


 サーバーの様な感じかな?

「分かった、左近衛府の地下に部屋が在るから、そこにしよう」


「あ、ありがとう御座います、い、言われた3つは早急に開発し、量産体制を作りますので、カードの名前はどうしますか?」


 何だか名称を考えるの、めんどくさいな。

「名称はIDカードにしよう。

 それと魔族の者は、その強力な魔力が外に漏れて、恐ろしい姿で見えるんだろ?その魔力を抑える魔導機を作れないか?」


「呪いの指輪とかで、そう言った効果が有る様ですので、研究してみましょう」


 呪いの指輪と同レベルかよ。

 左近が呆れていると、クロエが背後から、眼鏡をクイッと上げて、言ってきたのであった。

「御館様、そろそろグレゴール会頭との、打ち合わせが御座いますので」


「そうか、ではコープス博士後は頼むよ」


「わ、分かりました」

 左近は、コープス博士にそう言うと、フレイアとニーナに挨拶を言って、左近衛府に戻って行ったのであった。





 しかし、今日のスケジュールって、結構過密スケジュールだよな。

 まぁ初めてってのもあるし、その内に慣れてくれるだろう。

 だが問題は奴隷購入だ……もしかしたら、アイリスと一緒に輸送された人もいるだろうし、何よりはザルツ王国の奴隷商人のゼニトだ。

 アイツはアイリスの事も知っているし、セシルとセシリーの件もある……殺すか。

 その為には、罪人じゃない奴隷を購入してからの暗殺だな。

 そんな事を思いながら左近は、左近衛府の執務室に戻ると、中には既にマーティが待っていたのであった。


「グレゴール会頭、待たせたかな?」


「いえいえ、私もさっき来た所ですので。それで今日はどの様なご用で?」


「グレゴール会頭は、時計と言う物をご存知かな?」


「もちろんです、遥か遠くのドワルバフ王国が作っている、時を知らせる物ですな。

 確か帝都ナリヤの宮殿も多くの時計が有りましたね」


 そうか、一応時間の概念は有るんだ、これは意外と簡単に普及するかもな。

「グレゴール商会は、時計を取り扱っているか?」


「そんなに数は無いのですが、置時計と懐中時計が数点御座いますね。

 仕入れに、時間はかかりますが、御希望とあれば、空間転移で早急に、ドワルバフ王国に行って、仕入れてきますが」


 ラッキー、神魔国に空間転移で、移動してって考えていたので、結構かかると、覚悟していたのだが。

「頼む。それとドワルバフ王国に行って、時計職人を呼べるか?もちろん費用は、言い値で良い」


「時計職人を…左近衛大将様は、もしや時計塔を建てるおつもりですか?」


「そうだ、それとナッソーの、俺の知り合いの鍛冶職人が、時計作りを学びたいと行っていてな」


「なるほど…しかし、時計作りの技術は、ドワルバフは教えないでしょうが、一応は交渉してみましょう。

 出来れば、親書も書いて欲しいのですが、やはり何も国交の無い所よりは、マシでしょうから」


 確かに、そう言えばそうだな。

 他の国から見たら、ルタイ皇国って鎖国していたから、殆ど情報が無い状態だし、恐いわな。

「分かった、親書を書こう……クロエさんお願いします」


「……やっぱりですか」

 そう言いながらも、クロエは左近の言う通りに親書を書き、マーティに渡して後の事を頼んだのであった。



「この後の予定まで、時間が有りますので、昼食にしましょう。食堂に行って持ってきますね」

 クロエは、そう言うと笑顔で部屋を後にしたのであった。


 クロエの奴、けっこうノリノリでやっているな……しかし、あの眼鏡の破壊力はヤバい、二人っきりで部屋にいたら、いつかは手を出しそうだ。

 早急に秘書の人数を増やして、二人っきりになるのは避けよう。

 そう思いながら、左近が頭をかかえていると、アデルが入って来たのであった。

「失礼します……御館様、大丈夫ですか?」


「おお、アデルか。

 いや、チョッとな……今日はどうした?例の報告か?」


「そうです。御館様に言われて、領内を調べていたのですが、どうも西の端に在るイザナ村が、我等より独立する様です。

 既に武器などを行商人より購入し、武装を進めております」


「理由は分かるか?」


「どうもイザナ村は、帝国がその地より撤退したのだから、誰の下にもつきたくは無いそうですね。

 ただ、場所が帝国領とセブンス連邦領の隣ですので、これを許すと反乱を起こした者が集まるでしょう」


 アデルの懸念は分かる、それに領内の反乱は、文治派の者達に、俺の失脚の口実を与える事になる……職を失うのは別にかまわないのだが、切腹になるのはまずいしな。

 明日にでも、十字軍を率いて行くか。

 それはともかく、アデルにゼニト暗殺を頼むとしよう……まずは念のために、天眼で周囲の確認だな。


 そう思った左近が、天眼を使用すると、何やらこの部屋の反応が3つ、ついたのであった。

 これは……クロエか?……いや違う、クロエはこの部屋に向かっている反応だ、って事はこの部屋にもう一人誰かいる。


 左近は何気無い表情で、天眼をズームしていくと、その映像は建物をすり抜け、この部屋の屋根裏を映し出し、そこで左近の手が止まったのである。

 何かいる。

 そう思った左近がよく見てみると、何やら紺色の物体が踞っていたのであった。


 忍びか…誰の手の者だ?

 しかし、天眼になってから、探知能力が格段に上がっているのか、この忍が気配を断つのが下手なのか……おそらくは、前者の方だろうな。

 アデルが全く気が付いていない、捕まえるか。

 そう思った左近が、アイテムボックスから刀を出すと、扉が開いてクロエが入って来たのであった。


「お待たせ致しました、今日は白身魚のフライ……あれ、アデルさんじゃ……」

 中に入って来たクロエは、左近の表情で、何があったのか気が付いた。


 そして左近は、そのまま刀に手を当てて、静かに言ったのである。

「誰かは知らんが、敵対しないのなら、降りてこい。

 降りて来ない場合は、敵と見なして即座に殺すぞ、ネズミよ」


 左近はそう言ったが、天井裏にいる忍びは降りて来ない。

 敵であれ味方であれ、忍が姿を見せる事は、殆ど無いので、左近の命令が無茶な話なのだが、左近はその様な事は、お構い無しで言ったのであった。


 味方であったにしても、左近に無断で潜ませているのが悪いのであって、この場合は左近の方に、分があるのである。

 仕方がない殺すか。

 そう思った左近が、空間転移を開こうとした時であった、部屋の片隅の天井が開いて、一人のくノ一が音も無く降りて来て、直ぐ様肩に背負っていた刀を、目の前に差し出したのであった。


 これは、左近達に危害を加えるつもりは、無いと言った意思表示なのだが、忍びと言えば暗器と言った武器も隠し持っているはず。

 なので、いくら忍が危害を加えるつもりは無いと言った、意思表示をした所で、信用する事は、左近は無かったのであった。

「刀を置いても忍びには、何の意味も無い事は分かっているはずだ……何処の忍だ?」


「……」


「答えんか……敵か?」


「……いえ」


「文治派の手の者か?」


「……違います」


「では、何処の手の者だ?」


「……」


「別に答えなくても良いぞ、忍ならば何をされても、口を割らないのは、知っているが、こちらはお前の脳があれば、情報を全て吸い出せる。

 それに、今ここで言わなければ、俺が雇い主を殺す……では最後に聞くが、お前は何処の手の者だ?」


「……そんな事は出来ない…だって私は佐倉家の忍だから」


 チョッと待て、俺はこんな忍を雇ってはいないぞ。

「すまんが、俺はお前を雇った覚えは無いのだが」


「私も、貴方様に雇われた覚えは無い……私は冷泉家の忍だ、私の主君はラナ様にアイリス様、セシル様にセシリー様だから」


 あの四人か……何で、忍びなんか雇ったんだろうか。

「仕事の内容は?」


「左近衛大将殿の護衛と、浮気防止」

 その瞬間、アデルとクロエは、あ~成る程と言った顔をしたのであった。


 俺ってそんなに、信用が無いのか?……何だかショックだ。

 でも、こいつがいたら、クロエとそんな関係にならないかも知れないな……こちらに引き込むか。

「お前、名は何と言う?」


「……桐」


「では桐よ、お前はお前の役目を果たせば良い、俺はそんな事はしないからな。

 しかし、今日のアデルの仕事を手伝ってもらう、もちろん極秘任務だ」


「分かった、手伝おう。その代わり、こちらからも条件がある、この事は奥様達には内密にして欲しい」


「分かった。アデルも良いな?」


「……仕方がありませんね、何をしましょうか」


 アデルや桐には頼めても、クロエに知られるのはなぁ……少し濁して言うか。

「そうだな、魚を取って来て欲しい」


「魚を?……分かりました、どの様な魚でしょうか?」


 気付いたかな?

「レンヌの奴隷商人ゼニト……この後、会合が終わり次第、奴隷を買いに行くので、二人は一緒に来い。

 エルの転移の部屋で、深夜に退く」


「……分かりました」

 そう言ったアデルは、何かを察した様に言ったのであった。




 ――――――――――――





 左近は会合の予定を済ませると、そのままアデルと桐を連れて、レンヌのスラム街に、やって来たのであった。

 レンヌのスラム街は、戦闘の傷跡を残しながらも、力強く復興を初めており、ゼニトの店も戦闘の被害にあったのか、大きなバラック小屋に変貌していたのである。


 前に来た時は、趣味の悪い館だったけど、こう見たら殺すのは、何だか可哀想に思えてきた……ダメだ、アイツはアイリスに会ったら、絶対に接触してくるし、セシルとセシリーの恨みもある。

 それに二人と同じ様な事を、されている女性もいるはずだ。

 そう思いながら、左近はクロエと二人でゼニトの館に行ったのであった。



 アデルと桐の奴、ゼニトの顔を確認してくれるかな?

 そう思いながら、左近が扉をノックすると、中から声がし、出てきたのはゼニトであった。

「こ、これは、左近様……本日はどの様な御用件で?」

 そう言ったゼニトの顔には、明らかな恐れが表情に出ていたのであった。


「今日は、奴隷を買いに来た。ゼニト、中に入れてくれないか?」


「え、ああ、どうぞ」

 そう言ったゼニトの動きは何処かぎこちなく、左近達は中に入って行ったのであった。



 館の中は、思ったより広いが、おそらく目の前の大きなカーテンの向こう側には、奴隷達が待機しているのだろう。

 そんな事を考えていると、ゼニトがごますりの様なポーズをしながら、聞いて来たのであった。

「さ、左近様、今日は奴隷を買いに来たと申されましたが、どの様なのをお探しで」

 そう言ったゼニトの目線は、クロエを捕らえており、まさに下から上へと舐めるかの様に、見ていたのであった。


 こいつクロエをそんな目で見やがって。

 左近はその視線を感じながら、クロエの前に出て、その視線を遮ると、言ったのであった。

「とにかく奴隷を、全員連れて来い、もちろん支払いは、正規の値段で購入してやる」


「あ、ありがとう御座います、性奴隷もで御座いますか?」


「そうだ」

 左近がそう言うと、ゼニトはカーテンの奥へと入って行ったのであった。


 罪人の奴隷以外は全て購入しよう。

 ただ、罪人以外と言っても、ゼニトは正直に言うのか分からないし、そこはステータス閲覧で確認しなければならない。

 ただ、ゼニトが本当に、全員連れて来るのかも怪しいけどな。

 そう思っていると、クロエが左近に耳打ちしてきたのであった。

「御館様、一体あの者に、何をされたのですか?明らかに、御館様を恐れていましたが」


「あぁ、前に俺を騙そうとしたので、チョッと脅してやったんだよ。正直に言うと、ゼニトは嫌いだったので、度を過ぎた脅しになったかも知れないが」


「そうでしたか……私もあの男は、好きになれません。

 私を見る目が、やらしいので……御館様が守って下さって、本当に良かった…ありがとう御座います」


 お、クロエの俺に対する好感度がアップしたか?

 そんな事を左近が思っていると、カーテンの奥から、四人の女性と一人の屈強な男を連れてゼニトが出てきたのであった。

「お待たせ致しました、ここにいる者が、我が館の全ての奴隷になります。

 こちらの三人は、通常の奴隷で、この二人は性奴隷になります」

 そう言ってゼニトが紹介した性奴隷に、その屈強な男も含まれていたのであった。


 男の性奴隷って何かキモいぞ……いや、女性も買いに来るから、これはこれで需要があるのか。

 しかし、こいつはかなり凶悪な悪人顔だけど、需要あるのか?……確認しておくか。

 そう思いながら、左近はその男の職業を確認すると、奴隷の他に盗賊・暗殺者になっていたのであった。


 これは明らかに、罪人で刑罰で奴隷になった奴だな……放置確定だな。

 他には……盗賊や暗殺者はいないし、あの時アイリスと会った時の女性もいない。

 いないが、この男以外の女性陣は、ウサ耳や猫耳…獣人か?だがそれよりも気になるのが、全員が目が死んでいるし、痣がある……一体何があったんだろう?

 それもだが、未だ他にもいるかも知れないな。

「これで全員か?」


「も、もちろんです」


「……奥を見て良いか?まぁ嫌だと言っても見るが」

 そう言って左近が、カーテンの方向に向かって行こうとすると、男の奴隷が左近の前に出たのであった。


「おい、そこを退けや」


「御主人様の許可が無い、ダメだ」


「ゼニトどうする、ここで殺り合うか?今なら何を見ても、見逃してやるが」


 左近がそう言うと、ゼニトはしばらく考えて言ったのであった。

「実は奥に一人いますが……その…商品にならないと言いますか、その…止めといた方が宜しいかと……」


 何だ、なにかあるのか?

「良いから、見せろ」

 そう言った左近は、ゼニト二人でとカーテンの奥に行くと、ゼニトの言った意味が、すぐに分かったのであった。


 その奥には、おそらく奴隷が入っていたであろう牢が並び、何とも言えない獣の様な異臭を放っていたのであった。

 だが左近には、それよりも気になる事があった、その異臭に混ざって血の臭いがする。

 そう思いながらゼニトの後について奥に行くと、ゼニトは1つの牢の前に立ち止まって、言ったのであった。

「……この者です」


 左近は、強くなる血の臭いを感じながら、その牢の中を見てみると、中には脅えきって、血塗れの服を着たドワーフの女の子が居たのであった。


 普段なら「幼女キター!」と喜ぶところだが、これは酷い……顔が殴られて、腫れて原型を止めていない。

 このままならこの子、死んでしまうぞ。


「あ、あの~左近様、先程も言いました様に、この者は見ての通り、商品になりませんので……」

 そう言って、ごますりポーズで言ってくるゼニトに、嫌悪感を左近は感じながらも、感情を殺して言ったのであった。


「開けろ」


「は、はいただ今開けます」

 そう言って、ゼニトは急いで鍵を開けると、左近は中に入ると、倒れている奴隷に、話しかけたのであった。


「おい、生きているか?」

 左近がそう言うと、その奴隷は、ビクッと身体を震わせて、何も答えない。

 それどころか、その腫れた目から見えるのは、明らかな恐怖の目であった。


 こんなになるほど、一体何れ程痛め付けたのだろう。

 左近がそう思っていると、左近の後ろから、カチリと鍵を閉めた音が聞こえたのであった。

「おいゼニト、何の冗談だこれは?」


「今まで散々、俺を舐めやがって……貴様は、これからここでそいつと朽果てるがいい!

 あのエルフの女は、俺がお前の前で、たっぷり楽しんでから、目の前で殺してやるからよ!そのまま悔いて餓死するが良いさ!」

 そう言ったゼニトは、醜悪な顔で左近に指を指して、罵ったのであった。


「……お前、何処までも救えない奴だな」

 そう言った左近は、空間転移を開いてゼニトの隣に出たのであった。


「ゆ…勇者だと!」


「勇者だと、じゃねえよ……お前は、俺をただのルタイ皇国の侍だと、思っているのか?

 俺の本名は、佐倉 左近衛大将 清興、東部連合の連合軍最高司令官だ、貴様この様な事をして、生きていけるとでも思っているのか?」


 左近の言葉にゼニトの表情からは、みるみる内に血の気が引いていき、口をパクパクさせて、理解できずにいたのであったが、暫くして我に返ると、左近に全力で謝罪し始めたのであった。

「申し訳御座いません!ほんの出来心でございまして、何も本気でその様な事をしようとは、思っておりませんでした!

 何卒、御慈悲を……」


 何だか、小者過ぎて何とも言えんな。

「ゼニト、お前とは知らない中では無いからな……俺はお前を殺さないが、それ相応の罰を受けてもらう。

 ……そうだな、資産没収とザルツ王国追放だな」


「そ、そんなぁ……」


「お前は俺の命を狙っただけでは無く、俺の秘書の命も狙った。

 かなりの恩情を与えていると思うのだが?……しょうが無い、あの男の奴隷は置いて良いだろう、彼奴の罪状は何か分かるか?」


「え?よく罪人だと分かりましたね。

 あの者は、女性を犯したのが16件、殺人が5件、押し込み強盗が2件で御座います」


 マジかよ、よくこれで死刑にならなかったな、絶対に手元に置いておきたくは無い奴だ。

「では、そいつを残しておいてやる、そいつを売れば、いくらかの元手が出来るだろう。

 後は没収だな、まぁお前が自分の命で償うと言うのなら、止めはしないが」


「いえいえ、それで結構です」


「ならば決まりだな」

 そう言った左近は、もう一度牢の中に入ると、脅えている奴隷の前にしゃがむと、力強い声で言ったのであった。


「どうする、ここで死ぬか?生きたいか?死ぬと言うのなら、苦しまずに殺してやるし、生きたいのなら、助けてやる、お前が決めろ」


 その奴隷は、暫く左近を見つめていると、殴られたであろう、その腫れた目から大粒の涙を流して、精一杯の声で言ったのであった。

「い…き…たい……た…すけ…て…」

 左近には、その言葉で十分であった。

 例え助けたとしても、この奴隷に生きる気力が無ければ、助けた所で苦しみ、自殺でもするだろう。

 左近は彼女に、生きる気力があるかどうかを聞き、彼女はそれに、か細いながらも精一杯の声で答えたのであった。


「その言葉を聞けて良かったよ」

 そう言った左近は、笑顔で彼女を抱き抱えると、牢から出てクロエ達の元に向かったのであった。





「御館様、その子は?」

 カーテンの奥から出てきた左近を見て、思わずクロエが言ったのであった。


「チョッと訳ありでな、奴隷の契約をこの子を含めて、女性達と交わした後で、この子をルゴーニュのドクの所に連れて行く」


「かしこまりました、奴隷達の費用の方は?」


「チョッと色々あってな、無料になったよ…なぁゼニト」


「そ、そうですね」

 そう言ったゼニトは、明らかに挙動不審であった。


「……まぁ御館様の事ですから、いつものアレでしょう」


 いつものアレって何?クロエさん!

 もう良いや、クロエの中で俺の好感度が、もうどうなっているのか、分からないし。

「んじゃ、とりあえずゼニトよ契約を済ませようか」


「は、はいただ今」

 そう言ったゼニトは、すぐに準備に取り掛かり、五人の奴隷との契約を交わした左近は、そのままルゴーニュ村まで、空間転移で移動したのであった。


 そしてその様子を、一部始終天井裏から見ていた影があったのであった、そう桐である。

 桐は左近が空間転移で出ていくのを確認すると、ゼニトの店から出て、向かい側の路地にいるアデルと、合流したのであった。


「どうだった?」


「左近衛大将様は、空間転移で何処かに行かれた、奴隷の契約も終わったようだ」


「そうかご苦労」


「チョッと聞いて良いか?アデルと言ったな、お前は左近衛大将様の専属の忍びか?」


「そうだ」


「ならば、私達は同じ佐倉家の忍びになる、よろしくな」

 そう言って、手を差し出した桐にアデルは、ぶっきらぼうに言ったのであった。



「俺は、御館様の忍だ、お前はラナの忍だ、同じ佐倉家でも主が違う」


 何だよこいつは、これが大陸の忍かよ……しかもラナ様を呼び捨てにして、失礼な奴だ。

「お前、ラナ様を呼び捨てにするな。ラナ様は、左近衛大将様の奥方様だぞ」


「だがその前に、俺の実の妹でもある」


 何だよこいつは、兄貴だからっていい気になって……実の兄?

「えー!」


「うるさい、日が落ちたら始めるぞ、それまで交代で仮眠だ」

 そう言ったアデルは、その場に座り込むと、寝てしまったのであった。


 私が見張りかよ!……何だかこいつはムカつくな。

 そう思いながら、桐はゼニトの店を路地から見張っていたのであった。





 ――――――――――――





 ルゴーニュ村に行った左近達は、そのままドクの診療所に、購入した奴隷達を連れて行き、全員に検査を受けさせたのであった。


 あのゼニトの店にあった、牢の中に奴隷達がいたとなると、病気の危険もあるので、念のためにと言うことである。


 全員を診察し終えたドクは、椅子に座るやいなや、深い溜め息を吐いて言ったのであった。

「ふぅ~……この四人は異常は見られなかったが、あのドワーフの女の子は、酷いな。

 いくら奴隷でも、あそこまで殴るなんて…もう少しでレベル5だったぞ」


「レベル5?」


「あぁそうか、あんた達ルタイ人は、大陸の医術の事は、全く知らなかったんだっけ。

 大陸の医術では、症状によって5段階で表記される、軽症のレベル1から、もうすぐ死ぬ手遅れのレベル5にだ。

 治癒魔法は、このレベルを1段階下げれるだけで、後はその者の治癒力に頼るか、薬で治すしか道は無いんだよ。

 まぁレベル5は無理だがね」


 何だよ、治癒魔法って言っても万能じゃ無いのか…でも連発で、治癒魔法をかけたら、良いんじゃ無いか?

「連続で、治癒魔法をかける事は、出来ないのか?」


「それは無理だな。

 治癒魔法を使うと、身体の中に免疫が出来てしまい、次にかけると拒否反応が出て、最悪死んでしまう。

 その免疫が消えるのが、約30日だ。約30日を過ぎると、もう一度、治癒魔法をかけるって流れだな。

 まぁ一気に全快にさせる治癒魔法を使えるのは、ペスパード王朝のニーナ女王陛下だけだな、銀髪のダークエルフの女性は、生まれながらに強力な治癒魔法を使えるんだよ。

 後は不治の病だが、悪魔が乗り移って、病になるのがある。これはワシらじゃ、どうしようも無い」


 あの痴女…じゃ無かった、ニーナ陛下って優秀な治癒士(ヒーラー)だったんだな。

 ん?銀髪のダークエルフは、生まれながらに、強力な治癒魔法を使える?うちの爆乳妻は、魔法が一切使えなかったぞ。

 悪魔召喚も、豆芝しか召喚できなかったのに……何故だろう?

「ドクは、ペスパードの者だったのか?」


「ああ昔はな……でも私はセダ派だったから、セダ様が殺されて国から逃げ出したんだよ」


「セダ派……そのセダ王女に子供がいたって話は、ドクは聞いた事はあるか?」


「確か、男の子と女の子がいたはずだが、まだ子供だ……生きているはずもない、あの時の帝国に在ったペスパード屋敷は、全員がいつの間にか、ニーナ派になってたって話だからな……何だか話が湿っぽくなったな。

 まぁ左近衛大将さん、あのドワーフの女の子だけは、置いていきな、こっちで責任を持って治してやるよ。

 治療費はいつもの様に、あの子が退院してから、改めて三好さんに請求させてもらうよ」


「いつも、すまないな」


「良いって、それに私は貴方達ルタイ皇国がやろうとしている、奴隷解放を支持しているんだ、シャノンも喜んでいたしな」


 そうか、帝の考えを支持している人もいるんだ。

 そう思った左近は、ドクが自分を支持している様に思えて、嬉しくなり、ドクに頭を下げて診療所を後にして、ナッソーのロンデリックの店に空間転移し、奴隷達に好きな服と靴を選ばせて、左近衛府に空間転移したのであった。








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