水軍の将
正成達が、左近衛府にやって来た翌日、夕方に左近達一家とエリアスは、帝に呼び出されていたのだが、それまでに片付ける事があったのであった。
そう、新しく軍を編成する為の会合である。
その為に、各国から主な軍属の者が左近衛府に集まったのであった。
ザルツ王国からは、セルゲン・ギュドゥアン団長。
ガルド神魔国からは、カルラ大将軍。
ペスパード王朝からは、ケルスティン・クリューガー局長。
ルセン王国からは、ルカ・マイナルディ筆頭族長。
セレニティ帝国からは、アミリア・マクレガー団長であった。
アミリアは、セレニティ帝国が未だに混乱している為に、急遽ラニスから今回の会合に、セレニティ帝国代表として、出席する事を頼まれ、それを引き受けての出席であった。
そして、ルタイ皇国からは、左近と正成が出席していたのである。
左近は集まったメンバーを見て、先ず最初に役職がバラバラなのに気が付いたのである、これを何とかしないと、指揮系統が滅茶苦茶になり、いくら人数を集めても烏合の衆で、戦にはならないと思っていたのであった。
だが、そう思ったのは左近だけでは無かった様である。
全員が挨拶をした所で、アミリアがまず最初に口火を切ったのであった。
「大将さぁ、これ役職もバラバラで戦になるのかい?」
「ならないよなぁ」
「ルタイ皇国の官位を適用すればどうだろうか?」
そう言ったのは正成であった。
「それはダメだ。
第一に官位が重複してしまうし、第二に他の国の軍人には分かりにくい。
それならば、新しい官位……位では無くて、級……そうだ、軍属の階級を作った方が良いだろう」
「階級か……大将の意見に反対の者は?」
アミリアがそう言うと正成が手を上げたのであった。
「反対と言う事は無いのだが、もしも階級を作って、ルタイ皇国との官位との関係はどうする?」
「そこは、官位に見合った階級にして、官位もそのままにすれば良い。
普段は階級で、ルタイ皇国では官位でって形にする」
「少々ややこしいが、この場合は仕方がないか。
で、清興はこの連合軍をどう作りたいんだ?」
「よくぞ聞いて下さいました正成君」
そう言って左近は、クイッと中指で眼鏡を上げるポーズをした。
「ま、正成君?」
「誰もが入りたくなるような軍にしたいと思っている……先ずは体制を、軍を外局と内局の二種類に別ける。
外局は、警備や戦…つまりは通常の兵士だな、そこを担当する。
内局は、武具や兵糧の管理や補充、昇進等の人事、給料等を担当する。
まぁこうすりゃ、外局は戦のみに集中出来るだろ?
でまずは統括の責任者は俺になるにしても、外局の責任者は一人候補がいるのだが……ダメかな?」
「どうせ、大将の子飼いの三好だろ?」
そう言ってアミリアは、全てお見通しと言った顔をしていたのであった。
アミリアの奴め……当たっているけど。
「まぁそうだな」
「三好殿なら大丈夫でしょう」
そう言ったセルゲンは、腕を組んで頷いていたのであった。
「良いんじゃね」
カルラはダルそうに言った。
「左近衛大将殿とセルゲン殿が大丈夫と言うのなら反論はありません」
「私は左近衛大将殿の指示に従います」
「それでは、決まりだな。
次は内局の責任者だが……」
左近がそう言った時にアミリアは、左近から目線をさりげなく外したのであった。
何故、視線を外すアミリア。
心配しなくても脳筋ババアに、こんな仕事は怖くて任せん。
しかし、俺の配下の奴らって、脳筋の奴ばかりで誰もいないんだよなぁ。
今までは、ダッチの所とミラに全部丸投げしていたし……いっそうの事、ミラにしようかな?
左近がそう思っていると、ケルスティンが手を上げたのであった。
「誰もいないなら、私がやりましょうか?
ペスパードでは、戦は殆どが帝国が代わりにやっていたので、局長の仕事は殆どが、兵坦の仕事でしたので、こう言った事は得意です」
「そうか、ではケルスティン殿の就任に異論のある者は?」
左近がそう言うと、全員が何も言わなかったのであった。
「では、ケルスティン殿の内局責任者は決定だな。
次は階級なんだが、こう言うのはどうだろうか?」
そう言って左近が提案したのは、現代の軍人の階級であった。
左近が階級の説明をすると、早速ケルスティンが紙とペンを取り出して細かく記入しだしたのである。
流石に事務仕事が、得意と言うだけの事はあるよな。
しかし、この緑の髪の毛のダークエルフの女性……胸がデカイ……ダークエルフって皆、胸が大きい種族なのだろうか?
一度ペスパード王朝に行ってみたいな。
そんな、邪念を考えながら左近は、階級の説明をしだしたのであった。
「まぁそれで良いんじゃね?その一番上の階級、元帥だっけか?それは左近がなれば良いだろう」
カルラのその言葉に、説明を聞いた誰もが納得していた。
「カルラと正成も元帥で頼むよ。
二人は、それぞれの本国の防衛も担当しているんだからな」
「そいつは、ダメだ。
あくまで連合軍の最高指揮官は、お前だ左近。俺と橘殿は、その1つ下の大将にすれば良い。
そうでもしなけりゃ、トップが三人になって、指揮系統の効率も悪くなるし、デカイ派閥が出来てしまう」
まぁカルラの言い分ももっともだな。
三人のトップが出来てしまっては、兵士がこの人の言う事は聞かない等の事案が出るかもしれない。
「分かった、カルラの進言を採用して、カルラと正成の階級は大将としよう。
それで内局、外局の責任者は准将と言う事にして、他の者は大佐と言うのはどうかな?」
『異議無し』
「次は、時間や暦の統一だが。正成、ルタイ皇国の年号は使わず、連合国統一の暦を作りたいと思っているんだが、良いか?」
「……まぁルタイ皇国の国内だけで年号を使えば、大丈夫だろうが何故だ?」
「暦や時間を統一しておかないと、今後の作戦にも支障をきたす。
では、各国の暦や時間の単位を教えて欲しいんだが……えぇっとクリューガー准将、この大陸での暦や時間を教えてはくれんか?」
その左近の言葉に、全員がキョトンとしていたのであった。
まさかとは思うのだが、時間や暦の観念が無いのか?税の徴収とかはどうする……あ!そうか!前に税金の徴収は春って、言ってたって事は、暦は無いんだ。
それに皆が動き出すのは、夜明けとも言っていたので時間の概念が無いんだ……まさかの初歩からかよ。
左近がそう思った時に、ルカが思い出したかの様に言ったのであった。
「そう言えば、ドワルバフ王国には時計なる物があって、時間と言う物を基準に動いていると聞きました。
もしかしたら……ドワルバフ王国に在るかも知れませんね。
しかし、そこに行くのには、あまりにも遠すぎる、大陸のほぼ反対側ですから、到着まで数年はかかるでしょう」
ドワルバフ王国に……そうだ、カリシアがいた、一度聞いてみようか。
それにしても、そのドワルバフ王国、かなりの技術が有りそうだな、一度接触してみようかな。
左近がそう思っていると、カルラが提案してきたのであった。
「ドワルバフ王国って確か、神魔国からなら近いぞ。
何なら空間転移で、神魔国に移動してそこから勇者を連れて、向かえば良いんじゃないか?」
そうか、神魔国は大陸の反対側に在るからな……いや、止めておこう。
何も情報が無い状態で、下手に接触するのは下策だ、カリシアに聞いて調べてからでも、遅くは無いだろう。
「まずは、そのドワルバフ王国の事を調べてからだな、内情を調べて接触しよう。
正成、そう言えば今日は、何日だった?」
「今日は、慶亀五年文月八日だ」
慶亀五年?そうか年号は帝の時代では、災害や何か災いが起きれば、帝が年号を変えれたんだっけ。
旧暦で文月八日って事は、現代の八月十日って事だよな……現代の太陽暦の方が、何かと優秀そうだしそっちにしておくか。
旧暦にして、後から変更は大変だからな。
そう思った左近は、皆に現代の太陽暦の話をしだしたのであったが、これに反論したのは、正成であった。
「何故だ?ルタイ皇国の暦でも、問題は無かろう?」
「ルタイ人はそうだが、他の者は違う。少しでも多くの者に理解して貰う為に、月日の数字化は必要だし、この太陽暦だと太陽の周期を基準にしている為、閏年は1日で良いって言うのが理由だ」
まあ、この世界が地球と同じって保証は無いんだが。
「右近衛大将さんよ、私達も出来る限り分かりやすい方が、何かと問題は無いと思うぞ」
そう言ったのはアミリアであった。
「確かに、ルタイ人だけでは無いからな……分かった、了承しよう」
正成は、アミリアの意見を聞いて、渋々だが了承したのであった。
「では、次に兵士の待遇の話だが、先程も言ったように、誰でも入りたくなる様な、軍隊を目指したい。
そこで7日間を、月火水木金土日の7つの曜日と言うのに別け、その内の日曜日を休日にしたいのだが?」
「戦の時には、どうしますか?休みを入れると、戦の時には、曜日に関係無く戦いが起こりますので、全く機能しませんぞ」
まぁセルゲンの言いたい事も分かるが、俺にはその打開策がある。
「セルゲン大佐の言い分も分かるが、こう言った案はどうだろうか?
日曜日を休み返上で働かなければならない時は、出勤手当のお金を出して、戦をする時も危険手当も出すと言うのは?
それならば、兵士も戦場に行くメリットが大きくなり、喜ぶと思うぞ」
「それは、傭兵の考えで御座います。
戦とは、もっと己の誇りや信念で戦いを挑み、敵を打ち破るものでしょう」
「まぁそう言うなよ、私は大将の意見に賛成だな。
私達上の者はそうでも、下の者は生活の為に戦っている者が殆どだ。
ならば、その生活を保護する事により、裏切りを防げたりできる……今回のザルツ王国の兵士の反乱は、兵士の待遇を、帝国に突かれたのが原因ってものあるからな。
因みに、これは以前、帝国の会議でルイスが言っていたので、覚えていたんだ」
そのアミリアの言葉に、セルゲンは反論できなかったのであった。
現に王国の反乱の時には、王宮の兵士も反乱に加担しているものも多く、その事はセルゲンが一番知っていたからである。
こうして、議論は進み、左近の考えの連合軍ホワイト企業化作戦は、進んだのであった。
階級は現代の軍隊の階級となり、トップの元帥は左近が就任し、ルタイ皇国、ガルド神魔国の防衛責任者は、正成とカルラが就任し階級は大将になった。
内局と外局はケルスティンと左少将が就任し、階級は准将となり残りの者は大佐となった。
そして、連合軍に所属する城主は、城の規模により、少佐、中佐、大佐と振り分けられて、残りの者は内局が階級を振り分ける事になったのである。
待遇は、毎月末締めの10日に給料を1ヶ月分支払われ、休日出勤、夜勤手当、危険手当、退職金を設定し、毎年4月には10日の有休も与えられる事になったのである。
更に戦で戦死する事になれば、二階級特進となり、予め登録した遺族に、階級に応じた退職金と死亡手当が支払われる事になったのであった。
そして左近が無理矢理ねじ込んだのは、制服の支給である。
これは戦では、鎧や甲冑で仕方がないにしても、平時では誰が軍属なのか分からないので、階級章を付けた制服を職務中は着ると言う事にしたのであった。
もちろんこれには、左近の下心がガッツリ入っていたのであった。
そして暦は、印刷技術を持っている、ペスパード王朝に委託して、カレンダーを作ってもらい、軍属には無料で、一般人には連合軍の内局が販売する事になったのであった。
この事は、ケルスティンが全てメモを取ってまとめ、印刷して後日、キリバ語、ルタイ語、魔族語の三種類を連合軍の全兵士に配布する事になったのである。
今まで脳筋集団にいた左近は、彼女の事務能力に感動していたのであった。
初めて俺の配下にも、事務仕事に優秀な者が来るなんて。
そう左近が思っていると、その会議室にバスティがノックして入って来たのであった。
「御館様、少々宜しいでしょうか?鬼島 鶴様が来られまして、御館様に面会を望んでおられるのですが、如何致しましょう?」
鬼島 鶴?誰だっけ?
そう左近が考えていると、正成が左近に耳打ちしたのである。
「今回の戦の水軍を、病気の鬼島 左馬頭 昌頼の名代として率いた、鬼島家の姫だ」
「そうか、でもよく他の水軍から文句が出なかったな」
「ルタイ皇国、最大の水軍を持っている鬼島家に、逆らえる水軍の者はいないさ。
しかし、ここまで来たと言う事は、おそらく論功行賞についてだろうな」
論功か、その話はまだ決めていないのだが、どうやら水軍では、彼等が絶大な力を持っている様だし、機嫌を損ねるとまずいな。
「よし会おう。バスティ、ここに通してくれ」
「かしこまりました」
そう言うと、バスティはそのまま出ていき、暫くして会議室に二人の黒いセイウチと、一人のフードを深く被った女性が入って来たのであった。
このフードを被った女性が、鬼島 鶴?ルタイ人なのに、大陸のドレスを着ているが、本当にルタイ人なのか?
そう左近が思っていると、鶴が頭を下げて言ったのであった。
「御初に御目にかかります、鬼島 左馬頭 昌頼が娘の鬼島 鶴に御座います」
「俺が島 左近衛大将 清興だ。
遠い所をよく参られた、まぁ座ってくれ。今日はどうした?」
左近がそう言うと、鶴は不安そうに他のメンバーを見たのであった。
「ここに居るのは、連合軍の主要な者達だ。
秘密にしてくれと言うなら、秘密は守る……もしも気になるなら、別室で聞くが」
「いえ、ここで大丈夫です。本日は、我等の論功行賞についてです」
「論功行賞は、まだ決まってはいないのだが、希望があるのか?」
「御座います……その希望とは、我が母の鬼島 愛の……大陸での名は……エノラの助命をお願いします」
そう言うと鶴は、フードを脱いで頭を下げたのであった。
フードを脱いだ鶴は、茶髪で大きなゴールデンレトリバーの様な耳が、頭から垂れ下がっており、明らかにルタイ人の特徴である、黒い髪の毛の色では無いのだが、左近が目を惹かれたのは、顔に出来た、大きな傷を隠すかのような包帯であった。
「訳を話してくれんか?」
「……分かりました」
そう言って彼女は訳を話し出した。
彼女の母親は、大陸の獣人であったらしい。
若い頃、戦で捕らえられて、デュラン王朝に奴隷として売られる所であったが、船が難破して彼女はルタイ皇国の伯耆国の境港に流れ着き、そこを支配する鬼島家が彼女を助けて匿った。
そして当時、当主になりたての、彼女の父親は彼女に惚れて結ばれ、鶴が生まれたのだが、ルタイ皇国の掟の為に、彼女の事は極秘とされ、今までルタイ人の愛として、決して表には出ずに日陰の人生を過ごしてきたのであった。
だがこの事が、政敵にバレた事もあり、弾正府に捕らえられたが、この戦で蒲生 弾正尹が出陣となった為に、取り調べが一時中止になったのであった。
そこで鬼島家の当主の昌頼は、今回の作戦で何とか武功をあげて、助命を嘆願しようと思ったのだが、病に倒れた為に、代わりに彼女が水軍を率いて戦ったと言う事だそうだ。
その話を聞いた左近は、何とも言えない気持ちになっていたのであった。
「1つ質問して良いか、その顔の傷は?」
「ポートシティの戦で、不覚にも斬られました……お見苦しい物を御見せして、申し訳御座いません」
「いや、その様な傷を受けてまで、勝利に導いてくれた事に感謝する。
この後、俺は帝に呼ばれているので、その時に上奏するとしよう」
「で、では!」
「ああ、お前の母の命は俺が助ける。
そもそも、そのルタイ皇国の掟を守るならば、俺の妻や娘は死罪になるし、俺も死罪になるのでな」
「清興!」
「そう言うなよ正成。
掟によれば、大陸の者がルタイ皇国に来たり、ルタイ人が皇国を出るのは大丈夫だが、戻れば死罪になるのであれば、アイリスやラナ達や珠も死罪になるし、そもそも俺も、何回も戻っているだろ?俺も死罪になる。
こんな馬鹿げた法は止めさせねばならんのだよ。
鬼島 左馬頭 昌頼の娘、鶴。お前はこの先、全ての国の水軍をまとめてポートシティを拠点にせよ」
「そ、それはポートシティを我が鬼島家の領土に?」
「領土では無い。お前は、拠点をポートシティに移し、この連合軍全ての水軍を率いるのだ、水軍の論功行賞もお前に任せる」
「あ、ありがとう御座います。
でしたら、大陸の船を造る事と、その技術を本国に持ち帰る事を許可していただけますか?」
「……理由は?」
「ルタイ皇国の軍船は、接近戦は強いのですが、船脚が遅くとても外洋には不向きで御座います。
それに比べて大陸の船は、船脚が速く外洋に向いております。
なので恩賞として、技術の提供や大陸の船で恩賞を頂けましたら、水軍の者達は領地を頂くよりも喜ぶでしょう」
そうか、水軍の者は領土よりも、どちらかと言うと海に重点を置いている。
ならば外洋に出ても安心な、船脚の速い船や技術を喉から手が出るほど欲しいだろう。
鶴はそれを恩賞として与えろと言っているのか。
「分かった、許可しよう。
今後は水軍に関しては、お前が俺の代理で論功行賞を行ってくれ」
「ありがとう御座います、ではこれにて」
そう言って、鶴は左近達に一礼すると、席を立って出ていこうとした時であった、左近が鶴を呼び止めたのであった。
「鬼島、そのドレスはポートシティで買ったのか?」
「ええ、とても可愛かったので…似合ってませんか?」
「いや、とても似合っているよ」
「ありがとう御座います」
そう言った鶴は、まるで幼子の様な笑顔で言って、会議室を後に後にしたのであった。
良いな……耳がモフモフだったな……触りたいな……。
そんな邪心まみれの左近の心をよそに、会議はこの後も進んでいったのであった。
――――――――――――――――
会議が終了したその日の夕方、左近達一家とエリアスは内裏の待合室で、談笑していたのであった。
「私の服装は、変じゃ無いですかね?」
そう言ったのは、貴族の様なタキシードに身を包んだエリアスであった。
「もう父上、これで同じ質問は、8回目ですよ。
ノイマン家の当主として、ドンとかまえてください」
そう言ったのは、マタニティを着たアイリスであった。
ルタイ皇国に来てからエリアスは、帝に謁見すると聞いて左近に色々と質問したのだが、ただ「大丈夫ですよ、普段通りで良いのです」とだけ言うだけであった。
だがその言葉が、エリアスを余計に不安にさせたのである。
もちろん、左近は一人で平安装束の様な服を着ているので、エリアスが不安になるのは、間違いなかったのであった。
「……私もドレスで良いのかな?」
「それ、私も思っていた、失礼が無いかな?」
どうやらセシルとセシリーも同じ気持ちであったのか、不安な様子であったのだが、ラナと珠とパンドラは平然としてたのであった。
そんな様子を見て左近は、エリアスに言ったのであった。
「この服装は、官位が従三位以上の者の服装になるんですよ。
義父上殿やセシルやセシリーは、無官のうえに大陸の人ですので、その服装で大丈夫です。
所で、義父上殿……前宰相のエミリオ・ニルセンの処遇はどうなりましたか?」
「ああ、今日セレニティ帝国のレイクシティの館で裁判が行われ、死罪になりました……私が首を斬りましたよ。
残るは、ニルセン伯爵家の暗部の処遇ですが、死罪に決ましたが、既に殆どが逃亡しておりました。
この先は暗部狩りが始まるでしょうね」
そう言ったエリアスの目は何処か寂しそうであった。
そうか義父殿は、帝国がこの様な状態になった事に、心を痛めているのか……優し過ぎる。
そう左近が思っていると、関白が部屋に入ってきて、その表情も何処か悩ましげな表情であった。
何かあったのか?
そう左近が思いながら平伏すると、他の者も平伏したのであった。
「殿下、何かありましたか?」
頭を上げた左近は、関白に率直に聞いてみたのであった。
「ん?やはり分かるか……さて、何から話せば良いか。
まずは、ノイマン公とスターク家の二人の御息女だが、本来、官位の無い者は帝に謁見出来ないのだが、今回は帝が直々に、官位を下されるそうだ。
そして帝は左大将、御主を蔵人別当に任ぜられたいと、提案されてな……」
「蔵人別当…まさかそれは……」
左近が驚くのも無理はなかった。
蔵人別当は、通常官位が二位以上の内大臣や右大臣、左大臣の大臣職が兼任する役職であるのだが、1つ例外の役職がある。
それは征夷大将軍、帝は左近を征夷大将軍に、任命するつもりだと言うのであった。
確かに左近が征夷大将軍になり、レイクシティで幕府を開くと政治はやり易い。
だがそれは同時に、内乱が起こる可能性が非常に高い事でもあった。
左近は他の武家から見れば、所詮は新興勢力であり、いきなり従三位の左近衛大将に就任した、何処の馬の骨かわからない者である。
それが全ての武家の棟梁たる地位の、征夷大将軍に任じられれば、さすがに今まで黙っていた者達が、反乱を起こすのは間違いなかったのであった。
「そうじゃ、左大将の予想通り、帝は御主を征夷大将軍に任じようとされておる」
「ダメだ、ダメすぎる……そんな事をすれば、内乱が起こり国が乱れます」
「しかし、これは帝のお考えでもあるので致したかがない」
何故だ?何故、関白様は帝に内乱になる可能性が高いと、進言されなかったのであろうか?
そうか、帝のスキルか!あのスキルで関白様は、帝のイエスマンになっているんだ。
もしかして帝も、今まで自分に意見を言う者がいなくて、更に自分と同郷の者と言う事もあり、こんな事を言い出したのでは無いだろうか?
好意は嬉しいのだが、ここは自分が戒めねばならんか。
「それは分かりましたが、帝に自分の意見を言わせてもらいます、その上で帝が判断されれば宜しいかと」
「まぁそれもそうじゃな。
しかし、この様な早い出世は、文治派の者が黙っては、おらんじゃろう」
「文治派?……嫌な予感しかしないのですが……」
「そうか、御主は長い間、大陸におったから皇国の内部の事は、あまり知らんのじゃったな。
今の皇国には、3つの派閥が存在しておる。
1つは、皇国の最大派閥の文治派じゃ、派閥の長は大政大臣の西園寺 義政。
文治派は、役人が殆どだが大名もおる、主に先の内戦で内政や兵站を担っておった者が中心で……蒲生 弾正尹と、率いる弾正府の殆ども文治派じゃ。
もう1つは、武断派と呼ばれる者じゃ、この派閥の長は、何故だかワシになっておる。
武断派は、大名や先の内戦で、朝廷軍の中心となって戦った者が多い、右大将も武断派じゃ。
最後の1つは、大陸派と呼ばれる最近出来た派閥じゃ、その長は……御主じゃよ左大将」
「え?……いや、派閥の長になった覚えは無いですが」
「まぁ覚えが無くとも、御主のもとには、多くの者が御主を慕って集まって来ておる。
文治派の者からすれば、立派な派閥に見えるだろう……実はワシも自分の知らぬ間に、派閥の長にされておったからな。
そう言った訳で、今回の御主の功績は、はかり知れぬ……いつかは、文治派の者から足下を掬われるかもしれん。
例えば、謀反をでっち上げられる可能性もな」
そう言った関白は、嫌そうな顔をしていたのであった。
「……それは、我が島家の者を人質として、この京に住まわせろと言う事ですか?」
「ワシも本意では無いのだが、仕方がなかろう」
そう関白が行った時に、アイリス達が言ったのであった。
「そんな……人質なんて」
「そうよ!私の旦那様は、そんな事をしなくても、絶対に裏切りなんてする人じゃ無いんだから!」
「……でもこれは、ザルツ王国でもある話……納得できないけど」
「そうだよね…でも人質かぁ……」
セシルとセシリーは、王国の元貴族だけの事はあるが、帝国は確か属国のみだったな。
ラナは、こんな事は理解できないだろうが、珠とパンドラは落ち着いている……何故だ?
左近がそう思っていると、珠が口を開いたのであった。
「人質には、私が行きましょう。
この様な場合は、勇者でしたら空間転移で何処でも行けるので、人質の意味がありません。
そうなると勇者のセシル母上、セシリー母上と愚妹パンドラは除外され、ラナ母上は冷泉家当主でもあるので、人質として送ると弊害が出る。
アイリス母上は身重のうえに、帝国との関係もありますし、何より父上の首輪としての役割があります。
それならば、私が行くしかないでしょう」
「でも……」
「でもじゃありませんラナ母上……これがルタイ皇国の武家の娘の宿命です。
武家の妻となるには、時には非情な事も受け入れる覚悟が必要です……全ては御家の為に。
これが我等の……ルタイ皇国の考えです」
「そう言う事でしたら、ディアとクマをお姉様の護衛につけましょう。
この二人なら、普通の子供にしか見えませんし、ルタイ皇国は魔法の耐性がありません。
何かあれば、空間転移で何処にでも逃げれますので。
それと、通信兵一人に護衛の私の配下を10名つけます、これでディアとクマの二人には、目が向かないでしょう」
さすがはパンドラか……こんな時でも冷静に考えている。
左近はそう思っていると、関白が左近に言ったのであった。
「話は決まった様だな。ではまた呼びに来る」
そう言った関白は珠に一礼して出ていったのであった。
暫くの静寂が部屋を包むと、左近が天井を見上げて、涙を浮かべて呟いたのであった。
「また、派閥か……何であの頃と同じなんだよ……これじゃまた同じ事の繰り返しに、なってしまうじゃないか」
「……御館様、何かあったので?」
さすがに心配になったのか、エリアスが聞いてきたのであった。
「……父上の代わりに私が答えましょう。
父上はその昔、文治派の長であった武将に、仕官されていたのです。
そして、文治派と武断派の間に、大きな戦が起き、その戦の中で裏切りが起こった為に……文治派の軍は壊滅して、三人の兄上は全員が戦死し、姉上は嫁ぎ先で自ら命を絶たれました。
そして、その武将も京で斬首と言う酷い結果に……」
「それまでにしてくれ……すまない、俺が聞いてしまったばかりに、辛い事を思い出さしてしまって」
そう言った珠の目にも涙が浮かんでおり、エリアスは慌ててその話を止めたのであった。
そのまま、誰もが黙りこみ、沈黙の時が流れ、左近達の所に侍従の者がやって来て、そのまま左近達は帝達の元に行ったのであった。
薄暗い内裏の中で、関白達が並ぶ中、左近達は帝の御前に案内され、座るとそのまま平伏し、左近が挨拶をしたのであった。
「島 左近衛大将 清興、只今推参致しました。
こちらにおりますのは、娘の珠とパンドラに御座います。
そしてこちらが、我が妻の島 隼人祐 アイリス、同じく島 織部祐 ラナ、同じく島 セシル、同じく島 セシリーで御座います。
最後にこちらにおられるのが、我が妻の隼人祐の父であり、元セレニティ帝国で現在は連合軍、聖導騎士団団長のエリアス・ノイマン公に御座います」
「一同面を上げよ」
大納言のその言葉で、左近達が顔を上げると、やはり帝は簾の向こう側で顔を隠していたのであった。
やはり帝は、スキルの事もあってか顔を隠している……言葉は大納言が伝えるにしても、いつ本人が直接発言しだすか分からない。
これは、スキルの影響が出る前に話を遮り、こちらから話し出すしか方法は無いな。
そう思っていると、大納言が帝の言葉を代行して、話し出したのであった。
「本日は、島の家の者に来てもらったのは他でもない。
今回の戦は、このルタイ皇国全ての民を救った戦である、その一番の功績のある島家の者に、帝自ら恩賞を与えるためである。
まずは、島 珠。
そなたは、一度だけでは無く、二度、三度と、このルタイ皇国を窮地から救ってもらい、その恩にはどう報いて良いのか分からぬ。
そこで珠よ何か望みは無いか?」
「では、官位も要りませんので、この京に島家が、屋敷をかまえるのを許可して頂きたい、それだけで十分で御座います」
さすが珠だ、うまいな。
こう言っては、帝も断る事が出来ないし、自ら人質を送ると言っている様なものなので、文句も出ないだろう。
どうやら珠は、柳生でかなり鍛えられた様だな。
左近がそう思っていると、帝が大納言に何やらボソボソと話し、大納言が言ったのであった。
「分かった、許可しよう。
しかし、その許可だけでは、今までの恩には報いきれんので、今そなたの父親が計画している、ナッソーの邸宅も一緒に、ルタイ皇国が建てる費用も全て出そう」
「ありがたき幸せ」
そう言った珠は、平伏して感謝の意を示したのであった。
「次はパンドラだが、御主は此度の戦で、姉の珠と一緒に戦い、獅子奮迅の働きをしたそうだな。
関白曰く、その強さ姉をも超える強さであるとか。
そなたの褒美は、従六位上左衛門尉の官位を授け、そなたの騎士団には蓮の家紋を授けよう。
そして更には、右大将に聞いたのだが、そなた達の騎士団の黒い鳥の羽を付けた者は、法外の者になったそうじゃな。
その者達には、帝が後ろ楯となろう。
今後は、そなた達が行う事は朕が行う事、そなた達に反する事は帝に反することである」
「格別な計らい、誠にありがとう御座います」
そう言ったパンドラは、平伏して言ったのであった。
おいおい、これでパンドラには、ルタイ皇国の者は誰も逆らえないじゃないか……良いのかこれで?
そう思いながら、左近が大政大臣の方向にチラリと目線を移すと、顔は平静を装っていたのだが、怒りでその手に力が入っているのが見えたのであった。
……やはり大政大臣、内心怒りまくっているな。
関白様の武断派は、俺達に友好的だろう、やはり今後警戒すべきは、この文治派か。
そう左近が思っている中で、アイリスは従六位下左京進に昇進し、ラナは同じく従六位下右京進に昇進した。
更にセシルは、正七位上左馬允に、セシリーは同じく正七位上右馬允に任じられたのであった。
そして、エリアスには帝は驚くべき事を言ったのであった。
「では次は、ノイマン公だが。
そなたは、その心の中では帝国に戻りたいのではないか?」
その大納言を通じて言った帝の言葉に、エリアスは明らかに動揺したのであった。
「ど、どうしてその様な事を……すみません本音は、帝のおっしゃる通りで御座います。
今、祖国のセレニティ帝国は生まれ変わろうとしており……私は……私は、その復興の御手伝いがしたい、そう思っております。
しかし、帝国では私は裏切り者の烙印を押され、その汚名を払拭しようと思えば、前々皇帝陛下の汚名を公表しなくては、なりません……無理な話です」
「確かに、ノイマン公の様な、忠義者はその様な事ならば、自分が汚名を被ろうとするであろう。
だがここに、それを何とかする知恵者がおる……左大将、そなたの義父のエリアス・ノイマン公の汚名を、誰もが納得するように払拭せよ、これは勅命である」
「はい、分かりま……えー!申し訳御座いませんが、私にその様な事は……」
「左大将!帝は勅命であるとのおおせだ!その意味が分からぬ御主ではあるまい!」
慌てて拒否しようとした左近に、大政大臣が言い聞かせたのであった。
くそ、勅命では拒否も出来ないでは無いか……絶対に大政大臣もここぞとばかりに言ってやがる。
良い事を思い付いた、大政大臣も道連れにしてやる。
「かしこまりました。
ですが私の力のみでは限界がありますので、ここは大政大臣様に、御協力をお願いしても宜しいでしょうか?」
「左大将!何を言って……」
「良い、許す。大政大臣も分かったな?」
さすがの大政大臣も、帝直々の言葉に逆らう事も出来ずに、平伏して了承したのであった。
「かしこまりました」
その平伏した下の顔では、腸が煮え繰り返っているだろう……フッ、天罰だ。
左近がそう思っているとエリアスは、心配そうな顔で言ったのである。
「すみませんが、私は今の現状でも満足しております。
無理に何とかしていただかなくても……」
「良いのだノイマン公。
貴公の義理の息子の左大将は、我々の想像も出来ぬ力で、何とかする者なのだ。今回も何とかしてくれよう」
「そう言う事でしたら、ありがく頂戴します」
そう言ったエリアスは、帝に心から平伏したのであった。
「さて、最後に左大将であるが、そなたには……」
「帝に御願いしたき義が御座います!」
「左大将!無礼であるぞ!」
「大政大臣、良い許す」
「ありがとう御座います。
伯耆の国の鬼島家当主、鬼島 左馬頭 昌頼殿の奥方殿の愛殿…いや、大陸での名はエノラ殿の。御助命を御願いします。
もちろん我が武功のみならず、その娘の水軍を率いた鶴殿の武功と、引き換えにで御座います!」
「左大将!貴様ぁ!」
「黙ってろ弾正!御主は今回の戦で、1つも城を落とせぬ大失態をしておる、今の御主には発言権は無い!」
関白にこう言われては、さすがの蒲生 弾正尹も黙るしか無かったのであった。
「訳を話してはくれんか?」
「はい。
聞く所によると、その昔に奥方は戦で捕らえられ、デュラン王朝に奴隷として売られる為に、海路にて輸送中に船が難破してしまい、左馬頭の領地に流れ着いたそうです。
そこで奥方は、左馬頭に命を助けられ、後に二人は愛し合い、ルタイ人の愛として結婚し娘の鶴が生まれたそうです。
しかし、この事を聞き付けた弾正府は、奥方を捕らえたそうで御座います。
このままいけば、奥方は死罪に、鬼島家は取り潰しになってしまいます、どうかこの者達の御助命を御願いします」
そう言って左近は平伏したのであった。
ちょうど鶴から頼まれていたので、これならば征夷大将軍の話を潰す事が出来る。
左近がそう思っていると、蒲生 弾正尹が叫んだのであった。
「左大将!罪人を庇うとは、御主も同罪になるぞ!」
この蒲生 弾正尹の言葉は、左近の逆鱗に触れたのであった。
「黙れこのこわっぱ!左馬頭の何処が罪人か!
死にかけているものを、助けて何が悪い!人を愛して何が悪い!左馬頭は立派に人の道にそった行動をしたではないか。
それを罪と言う者は、もはや人の道から外れておる外道ではないか!」
「左大将、貴様!帝の御前ではあるが、捕らえてくれる!」
「帝にお聞きしたい!これが帝の目指す世なのですか?もしもそうだと申されるのであれば、左近衛大将の位を返上し、我等はこの場でルタイ皇国から出奔致します」
「何を言っておるか、貴様の首は私が直々に斬ってくれるわ!者共、この反逆者を引っ捕らえろ!」
蒲生 弾正尹がそう叫ぶと、警備の侍達が出て来て、左近の近くに寄ろうとした時であった。
その侍達が、空中に浮いて断末魔の悲鳴をあげながら、サッカーボール大の玉となったのである。
「本当に器の小さき者よ……お父様、この弾正尹…殺しましょうか?」
「あら、パンドラ私にも残しておいて下さいね。
帝…貴方の返答しだいでは、私達だけでルタイ皇国の生きる者全て、あの世に送って差し上げましょう。
何せあの時の約定を、反故にされると言うことですので」
そう言った珠とパンドラは、目は明らかに本気であったが左近が叫んだのであった。
「控えろ二人とも!帝の御前であるぞ!」
左近にそう言われた二人は、何も言わずに平伏したのであった。
「大変お見苦しい所をお見せ致しました、なにぶん男手で育てて来たもので、礼儀作法を教えきれませんでした、御許しくださいませ」
そう言った左近は、頭を下げて言ったのであった。
すると帝は、自らの言葉で話し出したのである。
「良い許す。
此度の左馬頭の件は、確かにその様な法を作った朕の責任でもある…許せ。
それに左大将の言う事も確かに道理……我等は道を誤る所であった。
左馬頭の件は、左大将の願いを聞きとげよう」
帝がそう言うと、大政大臣がそれに賛同したのである。
「まさに帝の言う通りで御座います。
そもそも此度の事は、左馬頭とその奥方は、何の罪も御座いません」
「そんな!」
「黙れ弾正!そもそも、皇国の法では漂着した者を死罪にする法は、無いであろう。
それに、漂着した者を何時までに送り返すと言う法も無いし、左馬頭と婚姻したのなら、最早その者はルタイ人である」
反論しようとした蒲生 弾正尹は、大政大臣に言われ、黙るしか無かったのであった。
弾正尹の愚か者めが、せっかく左大将が征夷大将軍の話を蹴ろうとしておるのに、何故そこで水を差すのだ。
今は左大将の、征夷大将軍就任を阻止するのが第一で、たかが海賊大名の奥方一人の命を助けるだけで、それが出来るのなら、こんなにもうまい話は無い、それをあの弾正尹は……。
そんな事を考えながら、大政大臣は向かい側に座る蒲生 弾正尹を睨み付けたのであった。
「では大政大臣、この場合は左大将に、どう言った褒美を与えれば良いと思う?」
「そうですね、ここは左大将の顔を立てて、左大将と左馬頭の恩賞として、左馬頭の奥方の御助命を、帝自ら下知されるのが宜しいかと」
「関白は?」
「……同じく」
「ふむ……では、左大将に恩賞を与える、左大将の願いを聞き、左馬頭の奥方の命は助命しよう。
それに先程も大政大臣が申した通り、奥方は最早ルタイ皇国の民である、自由にして良いし、朕が詫びておったと左馬頭に伝えよ。
そして、これは朕からの気持ちじゃ、今回の感謝の意を含めて左大将に新しい氏を授ける、今後は佐倉と名乗るが良い」
「ありがたき幸せ、今後は佐倉 左近衛大将 清興と名乗らせて頂きます」
そう言った左近は、平伏して胸を撫で下ろしたのであった。
一時はどうなるかと思ったが……これは大政大臣に1つ借りが出来たな。
そう思った左近は、もう一度礼を言って内裏を後にしようとした時であった、最後に帝が驚くべき事を言ったのであった。
「そうじゃ左大将よ、御主に命を下すのを忘れておった。
御主は今後、大陸の希望する奴隷達を解放せよ。
まぁ解放と言っても簡単には出来ない事は、前に聞いたので分かっておるから、御主が言っておった様に、働いたら賃金を与えたり、人並みの権利を与えるのじゃ」
「それは、大陸の奴隷商人から、奴隷を強制的に取り上げるのですか?」
「強制的にでは無い、正規の値段で買い上げ、左大将が主人となり、奴隷に自由を与えるのじゃ。
これならば、大陸の奴隷商人の反感は買わずに、自然な流れで解放された奴隷も増えるであろう。
それと、購入費用はルタイ皇国が出す事にする、異論はあるか?」
「いえ、全く御座いません、素晴らしいお考えだと思います」
そう言った左近は、平伏して内裏を後にしたのであった。
これでハーレムを合法的にタダで作れると言った邪心を胸に秘めて。




