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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第二章 帝国動乱編
68/464

結成

 


 俺が気を失っていたのは、1日程であった様だ。

 その間に、スターク公と藤永 弾正は戦後処理を済ませたのだが、フランド辺境伯の領地を侵攻する事無く、王都レンヌに戻って来たらしい。

 スターク公曰く、他の貴族にも手柄をあげさせないと、自分達ばかりでは、妬みの対象になると言う事だ。

 何処の国も同じ様な物だ、手柄をあげすぎると妬みの対象になる。


 傭兵達は、そのままアミリアが率いて、その戦に参加するらしい。

 そしてゲハルト国王の方針もあり、フランド辺境伯軍に攻められ占領された都市は、降伏すれば許すが、それ以外のフランド辺境伯の領地は、傭兵達に略奪等を許可すると言うより、むしろ推奨するらしい。

 今後裏切る貴族が出たら、その領地の民も同罪だと、見せしめの為に行う様だ。


 あまり良い気はしないが、これはこれで有効な手だと俺は思う。

 この事が広まると、今後貴族が裏切ろうとしても、民の暴動が起こるかも知れないし、裏切が成功したとしても、その鎮圧に喜んで傭兵達も参加するだろう。

 やはり、ゲハルトは何だかんだ言っても、優秀な国王だと思う。


 かくして俺は、気が付くと色々な人から、ありがたい御説教を頂くはめになったのだが、その夜に意外な人物の来訪があった。

 そう正成である。


 俺の部屋には、アイリス以外の島家の者と義父上殿、そして何故かスターク公もいて、賑やかであったのだが、正成が入ってきた瞬間に、空気は一瞬で張り詰めたのである。

 その原因は、やはり右近衛府軍の暴走なのは、明らかであった。

「清興……今回の事は……」

「おい正成、お前何か勘違いしてないか?」


 左近にそう言われた正成は、思わずキョトンとしたのであった。

「勘違い?」


「そう、勘違いだ。

 俺がこんな事になったのは、俺が勝手に戦場に残った事による結果で自業自得だ。

 それに今回の右近衛府の暴走は、俺は何とも思っちゃいないさ、むしろ俺が左近衛大将になった事で、こう言う事になるのは、予想出来た事だ。

 謝罪は、こちらのスターク公にしてくれ、スターク公が右近衛府軍の分も奮闘し、途中から俺の代わりに全軍の指揮をしてくれなかったら、この戦は勝てなかった」

 そう左近から言われたビートは、少し照れ臭そうにしていたのであった。


「スターク公、私はルタイ皇国、橘 右近衛大将 正成と申します。

 この度は誠に申し訳御座いませんでした、右近衛府を統べる者として謝罪致します」

 そう言って正成が頭を下げると、ビートは暫く考えて言ったのであった。


「まぁ今回の事は、総大将の義理の息子の左近衛大将が、許すと言っている訳だし、ルタイ人では無いワシが、とやかく言う問題では無い。

 だがな右近衛大将殿、あの右近衛中将はキチンと処罰せねば、この先同じ様な事が起こるぞ」


「有難う御座います、そのお言葉、心に刻み込んでおきます」

 そう言って再びビートに頭を下げた正成は、左近に爆弾発言をしたのであった。


「そう言えば話は変わるが。清興、お前ペスパード王朝の、ニーナ女王陛下の胸を揉んだって聞いたが本当か?」


「あぁ!お前、何で今そんな事を……いやラナさん怒らないで……ほら俺は今怪我人だし……」


「解ってるよ、回復してからだね……」


 回復してからって何?そのプルプル震えて、力を込めている拳は何?

「い、いや、そうじゃ無くて……正成てめえ、何で知ってやがる!」


「ハハハ、企業秘密だ。

 これはあの時、帝の前で俺を楽しませた、仕返しだよ。じゃあ清興……」


「…あぁ、正成」

 左近がそう言うと、正成は他の者に一礼して部屋から出たのであった。

 左近には、正成の心の中が、深い悲しみに覆われているのを感じていた。

 正成には政敵が多い、この事を政敵に利用されないが為にも、厳罰をもって当たらなければならない。

 しかし、今回の事は右中将の暴走で、兵卒は命令されただけで何の罪も無い。

 だが、正成は政敵に利用されない為にも、兵卒まで罰を与える事にするだろう。

 その事で、正成の心の中が兵卒に詫びて、深い悲しみに包まれているのだと、左近はさとっていたのであった。




 正成は、左近での部屋の明るい表情とは違い、冷酷な殺し屋の様な、感情の無い表情で王宮の廊下を歩いていた、行き先はもちろん、右中将がいる牢屋である。

 だが、そんな正成に声をかける者がいた。

「正成様」


 その言葉を聞いて、立ち止まり表情を戻した正成が振り返ると、そこにはパンドラが立っていたのであった。

「パンドラか、どうした?」


「正成様、右中将の件、どうされるおつもりで?」


「…いくら清興の娘でも、それは言えん……だが皆の納得する形にする」

 そう言った正成の表情は何処か暗かったのであった。


「そうですか……それでは、仕方がありませんね。

 では、私の方からお願いがあります、あの右近衛府軍の者達を、私に頂けませんか?」


「…どう言う事だ?」


「正成様のお考えでは、おそらく右中将は、一族朗党打ち首、他の官位のある者は、官位剥奪で切腹、兵卒は謹慎……いえ正成様の事ですから、ルタイ皇国からの追放と言った所でしょうか。

 ですので、右中将は仕方がないにしても、その他の者の刑罰を少し待って、私の部隊に頂けないでしょうか?

 勿論、使い物にならなければ、その刑罰を行いますので、彼等にも名誉挽回のチャンスを頂きたいのです」


「何故だ?何故お前が、あの者達を庇う?」


「正直に言うと、庇ってはおりません、これは私事なのですよ。

 私はお父様から、二千の兵を貰いましたが、その中で篩にかけて、残ったのは今や三百あまり……

 これでは、さすがに少ないでしょう?ですので、少々人数を増やしたいのです」


 これは、俺にとってもありがたい申し出だ。

 今回の事は、右中将の暴走だと言う調べはついているが、今回の事は厳しく処罰しなければ、俺の足を引っ張りたい者の、格好の材料になってしまうが、これならば大丈夫であろう。

 だがこのパンドラの狙いは何だ?

 こいつの狙いが解らない……普通の者ならば、その思考が読めるのに、こいつには俺のスキルが全く通用しない。

 だがこの誘い乗らない手は無いな。

「……解った、その様にしよう」


「有難う御座います、正成様ならそう言って下さると思っていました」

 そう言ったパンドラは笑顔で言って、正成に一礼すると左近達の元に向かって行ったのであった。


 こうして翌日に正成はゲハルトや関白達に、今回の右近衛府軍の事を謝罪し、右中将は一族朗党打ち首に、その他の者はパンドラ率いる黒騎士団(ブラックナイツ)に編入となり、脱落した者は切腹となったのであった。


 黒騎士団(ブラックナイツ)に編入された彼等は早速、フランド辺境伯の領土を進攻しているアミリア達の所に、クリスティーナを隊長として、副長にママと佐平次、そしてリンをつけて、送られたのであった。

 何故かリンの鎧は無くなっており、フードコートで全身と隠した服装になっており、クリスティーナになついていたから、まぁ大丈夫だろう。




 そして、通信兵からのアデルの報告を受けた左近やゲハルトそして関白は、ニーナ達と一緒にレイクシティに向かったのであった。

 その報告とは、ラニス公一家とその執事やメイド達を、無事に救出する事に成功し、レイクシティに連れてきたと言った内容であったのである。

 またそれと同時に、レイクシティにルセン王国のジャメル・ルセン国王とミサ・ルセン王女がやって来たの報告があったのである。

 そこでこれを機会に、レイクシティで首脳会談をし、連合の事を話し合うのが左近の目的であった。



 レイクシティに到着した一行は、先ずはセントラル城での、各国に用意された部屋に案内され、その間に左近は、別室でアデルとジャックからの報告を聞いていたのであった。

 その報告の内容とは、帝国の経済は、流通の手段がダッチ達の手により、街道を通る事が出来ないために、どこも酷く疲弊しており、自給率の悪い都市部では既に餓死者も出ているらしい。

 帝国も手をこまねいている訳では無く、討伐隊を結成したり、輸送隊の護衛を増やしたりしているそうだが、どうも私掠免状の話が、周辺の盗賊に広まり、ダッチの奴が調子に乗って、バカスカと発行している為に、圧倒的に数が多過ぎて、対処出来ないようだ。


 合法的に盗賊行為が出来て、更には、堂々とルタイ皇国勢力下の都市に入れるとあっては、盗賊達も喜んで食い付くが、これには危険性も含まれている。

 そう、セレニティ帝国との戦が終わってからが、問題だ。

 今は餌が豊富な事で、こちらの言う事を大人しく聞いている彼等だが、戦が終われば、こちらの許可する者以外の標的しか襲えない。

 つまりは、以前より標的が少なくなると言う訳だ。

 こうなると、彼等の存在が邪魔になってしまうが、今後の戦の為にも、彼等を無下には出来ない。


 こんな時は、イギリスはどうしたのだろうか?

 俺は、こんな戦術があったのは、世界史の教科書で知っていたのだが、どうやってそれを終わらせたのか迄は、見ていなかった。

 これは早急に、考えなければならない事なのだが、今回は後回しだ。

 今はラニス公に、臨時政府を作ってもらう事に集中しなければならない。

 そう思いながら俺と関白は、アデルとジャックを引き連れて、ラニス公のいる部屋に向かったのであった。


 アデルが扉をノックし中に入ると、そこにはお腹を少し大きくした脅える若い女性と、それを慰める様に寄り添う、60歳位であろう白髪頭の男性がいたのであった。

「おお、アデルにジャック、そちらのお方達は?」

 そう言ったのは、白髪頭の男性であった。


「こちらにおられるのは、私達の主君、島 左近衛大将 清興様と、関白 冷泉 永富殿下で御座います」


 アデルがそう言った時に、二人眼には明らかに怯えと言った感情が出たのであったが、さすがはラニス公と言った所か、すぐにその感情を隠して、女性の肩を抱きながら、こちらに向かって頭を下げ、言ったのであった。

「これはルタイ皇国の御方でしたか、私はラニス・セレニティ公爵と申します、こちらにいるのは、妻のイリナ。

 この度は、賊に追われている所を救って頂き、誠に有難う御座います。

 助けて頂いて、こんな事を言うのは心苦しいのですが、私達をどうしますか?人質にしますか?」


 まぁ普通はそう考えるわな。

「その件については、私から御説明します。

 我々ルタイ皇国は、皆様を人質にする事もしませんし、身の安全は私やこちらの関白殿下が保証致します」


「……何故だ?我等は敵同士なのだぞ」


「何故だと申されましても、我々は人質なんて卑怯な真似はしませんし、今回の戦争は売られた喧嘩を買っただけの事です。

 まぁ我々にも体裁ってのが有りますので、皇帝には退位してもらいますがね」


 左近がそう言うとラニスは、全て理解したかの様に言ったのであった。

「つまりは、私に帝国の次の皇帝になれと?」


「話が早いですね、そう言う事です」


「……これは、脅迫か?断ったらどうする、殺すか?」


「まさか、そんな事はしませんよ。

 先程も言った様に、断ったとしても、皆様の身の安全は保証致しますし、戻りたいと申されるならば、元の場所にお連れ致します。

 ただ我々ルタイ皇国は、他国との友好な関係を求めており、今後はこう言った戦を防ぐ様な枠組みを、対等な関係で作ろうと考えております。

 その考えに現在、賛同し共に連合を組もうと言う、国の国家元首が、ここセントラル城に来ており、本日からその話し合いが行われます」


「…それは何処の国だ?」


「先ずはルタイ皇国からは、帝の名代として、こちらの関白 冷泉 永富殿下。

 ザルツ王国からは、ゲハルト・ホーコン国王陛下。

 ルセン王国からは、ジャメル・ルセン国王陛下。

 ペスパード王朝からは、ニーナ・ケーニヒスベルグ女王陛下。

 以上4ヵ国の国家元首が集まっておりますが、他にもセブンス連邦のマーティ・グレゴール会頭も友好な関係を求めております。

 そして、レオン・イースト・ベイルと言う者も来ているそうですが、おそらくこの者も、何処かの国の使者でしょう。

 私はまだ会った事が無いので、解らないのですが」


 解らないだと?その者は、北方連合(ノースユナイテッド)の大貴族ベイル家の者ではないか。

 しかしこの話が本当ならば、帝国は孤立してしまう……それに元の場所に戻れたとしても、ルイスからの刺客に命を狙われる毎日だ、そんな所に身重のイリナを連れて行ける訳がない。

 それならば、この左近衛大将の話に、のるしか道は無いか。

「貴公の話は解ったが、それが真実と言った確証が何も無い。

 そこでだ、私もその話し合いに参加させて頂く、そして貴公の話が真実と解れば、貴公の話に乗るとしよう」


 なるほど、まだ疑っている訳ね……まぁ良いだろう。

「解りました、それで宜しいでしょう。ではご一緒に会場に参りましょうか。

 そうだイリナ様、私の妻のアイリスも……帝国のノイマン家の娘ですが、私の子供を身籠っておりましてな。

 良かったら仲良くしていただきたい、今度紹介しましょう」

 左近はそう言ったのだが、イリナはラニス公にしがみついたままであった。


 その姿を見た関白は、髭を擦りながら言ったのであった。

「ラニス公、今すぐに、こちらにそちらの家人の者を寄越し、普段と変わらぬ生活をさせよう。

 これで少しでも奥方様の心が晴れてくれればよいのじゃが……おい左大将、その様に手配しろ」


「承知いたしました」

 そう言って左近は、関白の言う通りに手配した左近達は、そのまま会議場に向かったのであった。




 セントラル城は、外見こそ城の形だが、その内部は、各国の元首や大使が宿泊できる様に、巨大な浴室の在る宿泊施設が殆どで、謁見の間の代わりに、大きな円卓の置いてある会議場が在り、パーティー会場もある大きなホテルの様であった。


 左近達三人がその会議場に入ると、そこには各国の元首が既に着席していたのであった。


 これは……このルタイ人が言っていた事は本当であったのか……これは覚悟を決めて、皇帝になるしか無いか。

 そう思いラニス公が驚いていると、左近が話し掛けて来たのである。

「ラニス公、セレニティ帝国の席はそちらになります」


「あ、ああ」

 そう言ってラニス公は、左近に言われた席に座ると、左近は中央の席に座り、一礼してその場の者に言ったのであった。


「本日は皆様にお集まり頂き、誠に有難う御座います。

 先ず始めに、各国の元首の御方が座っておられる席が、今後は各国の席となります。

 そしてこの中央の席は、この評議会の議長の席になります」


「って事はなにかい。左近衛大将、あんたがその議長をするって事かい?」

 そう言ったニーナは、少し意地悪な顔をしていたのであった。


「私は議長はしませんよ……またルタイ皇国は、議長にはなれません」


「何?」


「ではこれより、簡単な自己紹介と、詳しい草案の御説明をします」

 そう言った左近は、予めゲハルト達と相談して作った草案を説明したのであった。


 第一条、この連合は、各国全てが平等であり、揉め事はこの評議会で話し合う。

 第二条、連合に参加する国は、国内のみならず、連合内の人や物質の移動の自由、関税の撤廃を保証する。

 第三条、内政は各国が独自に行い、外交は各国の合議、評議会によって決定する。

 第四条、ルタイ皇国以外の各国の軍は、治安維持の軍以外を、全て統合し、その連合軍は、防衛は勿論の事、評議会の命令無しでは、動く事は出来ない。

 第五条、評議会議長は、各国が5年おきに選挙で決めて、同じ国は2期連続では議長にはなれず、またルタイ皇国も議長には立候補出来ない。

 第六条、各国に股にかけての犯罪は、ルタイ皇国弾正府が摘発する。その為に各国は協力しなければならない。

 第七条、各国の元首は、ここレイクシティに屋敷を持ち、親族を住まわせるが、人質としてでは無いので、移動は自由であり、各国の屋敷の敷地内は、各国の領土とする。


 以上の七ヶ条の草案を説明したのであったが、早速質問が飛んで来たのであった。

「この軍の運営は、誰が金を出すんだい?」

 そう言ったのはニーナであった。


「勿論、連合国の各国が国の規模によって出資し、運営します」


「まぁウチとしては、今まで帝国に支払っていた、上納金が無くなるのでありがたい話だがね。

 所で今後は研究費は、どうするんだい?」


「研究費?」

 その言葉は、ゲハルトも初めて聞く様であった。


「まぁ知っているのは、ウチとそちらのラニス公だけか……良いだろう説明してやる。

 知っての通り、我がペスパードは、魔導器の研究で飯を食っている国だ。

 つまりは、レジストカードを発行する魔導器等を発明し、情報料の何割かを頂いて、それが国の収益になっている。

 しかしその魔導器の研究には、金がかかるが、今までは帝国も出資していたんだよ。

 まぁその分、情報料の殆どを帝国に取られていたんだがね」


 なるほど、その情報料ってのは現代の著作料って訳か。

「ならばこうしては、どうでしょう。

 今までの情報料は、ペスパードの収入で、これからは研究費を出資した割合で、情報料を貰えると言う事にし、ペスパードは出資しなくても、研究開発するのだから、1割は貰えると言う事で」


 左近の案に真っ先に反対したのは、ラニスであった。

「意義あり!そんな事をされれば、帝国の収入が減ってしまう!」


「何を言っているんだい!帝国が出資していたって言っても、たかが知れている金額じゃないか。

 それで利益の殆どを帝国に持っていかれて……こっちは今まで我慢してきたけど、良い機会だ!ここいらで、その不平等を無くそうじゃないか」


「……ラニス公、貴公の負けですな。

 連合の七ヶ条の第一条、この連合全ての国は平等である……これに反する事になります」

 そのゲハルトの言葉に、ラニスは何も言えなくなっていたのであった。

 それもそのはず、ここで連合の七ヶ条に入っている、平等の項目に異議を唱えると言う事は、このままルタイ皇国との戦争終了し、もしもルタイ皇国が勝利し、帝国を属国にすると言えば、受け入れるしかなくなる。


 それは、帝国が今までルセン王国や、ペスパード王朝にしてきた事を、逆に帝国がされると言う事である。

 しかも、今はルタイ皇国の好意で、ここに居る事は出来るが、彼等の機嫌を損ねたら、いつ追い出されるか解らない。

 ラニスには、最早全てを受け入れるしか道は無かったのであった。

「解った……」

 力無く言ったラニスの、その言葉が全てを物語っていたのであった。


「では、決定ですかな?」

 左近がそう言うと、何やらニーナが考え込んでいたのであった。


「女王陛下、何か御座いますか?」


「研究所の方を、ここに作っては、くれないだろうか?本国では警備の兵も足りないし、設備も古い。

 だがここなら新しい設備等も作れるし、ルタイ皇国が警備してくれる……良いだろ?」


「良いでしょう、その様に手配しましょう……他には?

 では、無い様ですので、次は私からの提案です、ここレイクシティに学校を作りませんか?」


「学校を?」

 これには、ゲハルトも疑問に思った様であった。


「そうです学校です。連合国中から、優秀な子供を集めて、人材を育成するのです。

 そうする事により、連合国は更なる発展をする事ができます」

 左近がそう言うと、この場の全員が頷いたのであった。


「有難う御座います。

 では次に、各国の主要都市に、勇者の空間転移する専用の場所を作って頂きたい。

 これは、警備の関係上、必要な事です。

 既に御存知の御方もおられますが、我が国には勇者が3千名ほどおり、その空間転移を使用して、兵士の移動や人物の移動を、このセントラル城を中心に行い、そこ以外の場所には、空間転移が出来ない様にしたいからです」

 左近の勇者が3千名という言葉に、ニーナとラニスは驚いて言葉も出ない様であったが、ジャメルが代わりに言ったのであった。


「異議は無いが、一般人の移動は、緊急時を除いて制限した方が良いであろう」


「それもそうですね、国王陛下のおっしゃる通りにしましょう。

 そして、最後ですが……我等は、ガルド神魔国と友好を結びたいと思います」


『バカな!』

 これには、さすがにゲハルトと、関白以外の全員が叫んだ。


「おい関白よ、これはルタイ皇国の帝の意思か?それとも、あの左近衛大将の小僧の独断か?」

 そう言ってニーナは、思わず立ち上がると、関白を睨み付けながら言ったのであった。


「これは帝の、御意向でもある。左大将、説明せい」


「はい、殿下。

 既に我々は、ガルド神魔国のフレイア魔王陛下とも接触し、その御意向も聞いております。

 魔王陛下は、今まで何度もこの世界を救ってやったのに、その恩を忘れて、再び攻め込んで来ようとする、この世界の国々に嫌気がさして、次に攻め込んで来た場合は、もうメギド魔皇国に攻め込み、その侵攻を抑える事はしないそうです。

 ただし、ルタイ皇国は今まで、ガルド神魔国に攻め込んで来た事は無いので、ルタイ皇国との同盟は了承し助けようとの事です。

 皆様は、二度の大戦の後に何故、魔皇国が他国を攻めなかった理由を、知っているでしょうか?それは全てフレイア魔王陛下が、この世界の事を考えて、魔皇国に攻め込んだからからなのです。

 そんなお人が、世界の敵なのでしょうか?私はそうは思えませんし、帝も同じ考えです」


「しかし、左近衛大将……相手はあの魔族ですぞ」

 そうジャメル国王が言った時であった、会議場の扉がバーンと開かれて、ワンピース姿のフレイアとカルラが入って来たのであった。


「清興、熱弁ありがとうな。とりあえず、ウチの席はここにするわ」

 そう言うとフレイアは、関白の隣に座ったのであった。



「おい、嬢ちゃん……まさか魔族か?」

 そう言ったニーナは、カタカタと恐怖で震えだしたのであった。


「せや、ウチがさっきから話題に上がっている、フレイアや」

 フレイアがそう言うと、明らかに左近と関白以外から、驚きの声が出たのであった。


 だがその時に、関白とカルラが何やら、目で合図を出しているのを左近は気が付いたのである。

 そうか、フレイアの奴は人前が苦手だったもんな。今回は無理して来てくれたんだ……だからか、殿下の隣に座ったのも、恐かったからか。

 あれ?でもフレイアって、ルタイ人には普通に馴染んでいたよな……もしかして、外見も言葉も日本人そっくりだから、安心していたのか。

 とりあえず、今はこの場を何とかするのが先決だな。

「では皆様にお聞きしたい、フレイア陛下は、まだ皆様の恐怖の対象でしょうか?」


「ちょっとその前にええか?」


「どうぞフレイア陛下」


「清興、もう普通に話して、キモいねんサブイボ立つわ。

 それとやな、ウチがここに来た理由は、清興やトミーがウチ達を皆に認めさせようと、頑張っているから、ここに来てん。

 ウチは正直に言うと、もう他の国とかは、どうでもええ、現にウチはザルツ王国の反乱も、助ける気は無かった。

 でもな、ルタイ皇国は、話は別や。

 ルタイ皇国が…清興が窮地に陥ったらすぐに救援に行ける様に、ここに将軍のカルラも連れて来て、待機しててん。

 それは何でやと思う?

 ルタイ皇国は、ここの清興やトミーはそんな偏見で見ずに、普通に接してくれた、だからや。

 それにトミーから聞いたんやけど、ルタイ皇国の帝は、魔王でも志や行動で、神にもなれるって言ったらしいわ。

 嬉しいやん、この人達は…そんな人達を助けようとするのが、人情ってもんやで。

 でどうする?あんたらは、魔族を受け入れるか?それとも、単なる言い伝えで、今まで通り怯えて敵対するか?」

 フレイアがそう言うと、会場内に静寂が包み込み、場内は静まり返ったのである。

 やはりダメか。そう左近が思った時であった、場内に響き渡る笑い声がその空気を切り裂いたのであった。

 そうゲハルトである。

「ハハハハハ、流石はルタイ皇国の帝じゃ、良い事を言われる。

 いやぁ、ワシも初めて魔王陛下にお会いしたが、この様に美しい女性とは思わなかったわい。

 私は、ザルツ王国の国王ゲハルト・ホーコンであります。フレイア陛下、是非とも我が連合の一員となってくだされ」


「う、美しいって……あんた見る目があるやん、よろしくなゲハルト陛下」


「ゲハルトで良いですぞ」


「わ、私も賛成です!先程は失礼しました、ペスパード王朝の女王ニーナ・ケーニヒスベルグです、ニーナとお呼びください」


「よろしくなニーナ」


「某はルセン王国国王のジャメル・ルセンで御座います。

 私はルタイ皇国と、共に歩むと決めており、そのルタイ皇国が陛下を信じると…仲間になると言うのです。

 歓迎致しますよ魔王陛下」


「おう、よろしくな」


「私はセレニティ帝国のラニス・セレニティ公爵で御座います、私はまだ皇帝の身では無い為に、帝国の意見では無いのですが。

 私個人的には歓迎致しますよ」


「ありがとうな、でも清興やトミーがあんたを皇帝の椅子に座らせるはずや、その時は、正式に頼むで」


「勿論ですよ」

 こうして、ゲハルトに助けられ、美味しい所を全てフレイアに持っていかれた訳だが、フレイアも入れての6ヶ国で、この連合はスタートする事になり、ガルド神魔国も領地は遠く離れている為に、兵の提供の義務は無く、ルタイ皇国同様に議長国には、なれないと言ったルールが出来たのであった。


 そして、近々に来るであろう、第三次光魔大戦では連合国の総意として、反対の立場を取ると言う事になったのである。


 そして、一番もめたのが、連合の名称問題であった。

 これは、フレイアがカッコいい名前が良いとの我が儘で始まったのだが、これにはゲハルトやニーナが拘る為に難航を極めた。

 中には【鷹の爪●】やら、【死ね死●団】等も出て来て、既に訳の解らない状態になっており、長時間の議論の末に、ジャメルがポツリと「もう東部連合でよいでは、ございませんか」の一言で決まった。

 これは、長時間の議論で、皆が疲れていた為に、すんなりと通ったのだと思う。

 現に関白は、腕を組んだまま、寝てやがったから。


 そして、東部連合の旗も決まった、これは俺の意見が採用され、6匹のドラゴンの紋章で決まったのだが、フレイアが創造主(クレアートル)で大きな旗を作った時には、他の者はかなり驚いていた。

 関白は寝ていたのだが。


 そして、可愛いとおだてられていたフレイアは、調子に乗って、他の国の屋敷も創造主(クレアートル)で作らされていた、もちろん全て風呂つきである。

 もちろん、関白は寝ていたから、起こすのも悪いので、皆がソッとそのままにして、出たのであった。


 こうして左近衛府の隣には、セレニティ帝国の屋敷が建ち、向かいにはガルド神魔国の屋敷が建ったのであった。

 レイクシティは、淡路島程の大きな島だから、まだまだ土地は余ってるとはいえ、皆の屋敷はでかすぎだろ。

 ニーナに関しては、屋敷が気に入ったらしいので、ここに住みたいと言って、自分のハーレムの男性を呼ぶそうだ。

 何やら怪しい館になりそうだが、俺も人も事は言えないので、敢えて黙っていようと思う。


 リリアナとミサは、今日から屋敷に住むらしい。

 セレニティ帝国のラニス一家は明日引っ越しで、それまでアデルとジャックに命じて、ラニスの言う者を帝国からここに救出する命令を出した。

 これは、いくら臨時政府を作ったとしても、人材が居なくては話にならない。

 そう言った訳で、暫くこの二人は、コンビになる事になったのだが……アデルの奴が、心なしか老けたような気がする。

 この仕事が終わったら、休暇をやってゆっくりとさせるか。


 そう心に誓って、2日目に入り、議題は何故か珠やパンドラ達になっていた。

 何故議題になったかと言うと、あまりにも強すぎる個々の武力の為に、取り締まる事が出来ないのだ。

 例えば、誰かを殺して捕まえようとしても、まず無理だろう、誰も捕まえる事が出来ない。

 正直に言うとフレイアでも怪しいのが現状だ。

 こうした事にカルラが打開策を提案した。

「こうしては如何でしょう、彼等は法外の者とするのです。

 取り締まろうとするより、法外の者として、法では裁けない者を裁かす事により、プライドを持たせて、己の姿勢を律するのです」


 その言葉に各国の元首は、こいつは天才かと言う様な視線を送り、こうして羽付マントの者は、法外の者とすると言う、中二病全開の連合の法律が出来たのであった。



 そして午後からは、ベイル公との評議会での面会になっていたのだが、俺や関白殿下やフレイアは、ベイル家と言うのが全く解らないので、軽く勉強会をしてから面会となった。

 講師はもちろんニーナで、出来ればスーツを着て、眼鏡をつけて欲しかったのだが、贅沢は言うまい。

 今度ロンデリックに言って作ってもらうとしよう。


 そして、肝心のベイル家の話だが、ベイル家はイースト、ウエスト、ノース、サウスの4つに分かれており、北方連合(ノース・ユナイテッド)の中でもかなり特殊な家柄らしい。

 北方連合(ノース・ユナイテッド)は、統治権は持たないが、北方教会の教皇を頂点に、その下に国王そして貴族が続くのだが、各国の王家はベイル家から、妻や夫を迎え入れ、後継ぎがいなければ、ベイル家から誰かが、国王になると言った様に、かなり特殊な家柄の様だ。


 そして、各ベイル家はいがみ合っており、その中でも、ノース・ベイル家は北方教会の中でも、原理主義の旗頭で、イースト・ベイル家は革新派の旗頭の様ある。

 北方教会とは、人間以外の文明や魔法は認めない教えで、神様の言っていた、魔女狩りの様な事をやっているのは、ノース・ベイル家の原理主義の派閥の様だ。

 その一方で、イースト・ベイル家は、簡単に言えば北方教会の教えは、時代遅れと考えており、ペスパード王朝の様な、ダークエルフの国家と、隠れてだが、付き合いのある派閥の様である。


 そして今回来たレオン・イースト・ベイルと言う男は、イースト・ベイル家の次期当主であったのだが、その座を弟に譲り、ペスパードと隣接するカッシー地方を領地とする、伯爵となった変わり者だそうだ。

 こうして俺達は、ニーナの講義を終えて、ベイル公との面会に挑んだのであった。




 各国の元首が並ぶ議場にやって来た、レオンと言う男は、貴族でありながら、冒険者の様に薄汚れた服装をしていたのだが、何処か貴族の様な顔立ちをしている、不思議な男であった。

 そして、皆の前にやって来たレオンは、貴族の様に一礼すると、臆すること無く話し出したのであった。


「お初にお目にかかります、私はレオン・イースト・ベイル伯爵と申します。

 今回は、皆様にお目にかかる事が……」

「いやベイル公よ、挨拶は抜きにして、本題に入りませんか?正直に言うと昨日から、ずっと話し合っており、疲れておりますので」

 そう言ったのはゲハルトであった。


「……それもそうですね。私も実は、貴族の無駄に長い挨拶は、苦手で御座いますので。

 今回ここに来たのは、そちらのペスパード王朝の女王陛下と、ご一緒させていただいた事もありますが、目的は、他国との貿易に御座います」


「貿易か……しかし、それは教会が許さないのでは?」

 そう言ったゲハルトは、ベイル家の者でも臆する事無く、ギロリと睨みつけたのであった。


「あの古い考えに縛られた、教会の教えなんて、私は信じちゃいませんよ。

 しかし、その古い考えの教会が、力を持っている事も、また事実です。

 ですから表だっての貿易では無く、人間の商人を間に入れた、隠れた所での貿易で御座います。

 もしも貿易を認めて下さるなら、私から北方連合(ノースユナイテッド)の情報を流しましょう」


 確かに情報は、欲しいが、その情報が真実と言う保証もない、ここはどうするか……

 そう思い考えていた左近であったが、ここでフレイアが手を上げて言ったのである。

「ウチは賛成や、ただし間に入る商人は、こちらが用意するって条件やけどな」


「なるほど、それだと情報漏洩の危険も少ないな。この話、ザルツ王国も賛成だ」


「……左大将、任せる」


「かしこまりました、ルタイ皇国も賛成です」


「ルタイ皇国が賛成ならば、我がルセン王国も賛成です」


「その商人は、我がセレニティ帝国が出しましょう。セレニティ帝国も賛成です」


「決まったな。場所と段取りは、我がペスパード王朝が請け負おう」

 これがニーナの狙いか、俺達にベイル家を紹介して、その貿易の中間マージンを手に入れる。

 この女王は、抜け目が無いな。

 そう思った左近は、今後はニーナには気を付ける事にし、その後、会議は続いたのであった。



 その後、俺はパンドラやバスティ達を引き連れて、ナッソーに飛びスターク公の奥方様、アニー様にお願い事をしに行ったのである。

 ラナやセシルやセシリーが一緒に来ないのを不安に思いながら……。


 邸宅に戻った俺に待ち受けていたのは、アニーのお説教がであった。


 これか、あの3人が予想していたのは。

 左近は、そんな事を思いながら聞いていると、アニーが話をアイリスに振ったのであった。

「アイリスさん、貴女も言っておやりなさい。

 妻が悪阻で辛い時に、戦が終わっても帰って来ない、このダメ亭主に!」


「…お帰りなさい、あなた」

 散々に言われたのに、アイリスは涙を浮かべてただ一言、言ったのである。


 これには、俺のガラスのハートが砕け散り、本当に悪い事をしたと反省し、何も言わずにアイリスに近付くと、そのまま抱き締めてアイリスの耳元で言ったのであった。

「ただいま、アイリス」


 こうなっては、俺とアイリスの二人だけの世界である。

 アイリスは、その体制のまま小声で話し掛けてきた。

「戦はどうだった?」


「俺達の勝利だ。義父上殿も、仲間の仇を討つことが出来たよ」


「良かった…もう、帰ってこれるの?」


「それは……難しい。今は連合の協議が忙しくてな……でもこれが終われば、暫くは平和な世の中になる」


「そう…寂しくなるね」


「大丈夫だ、暫くは左近衛府で一緒に暮らそう。

 この家は今の人数では狭いから、改築しようと思っている…良いか?」


「一緒に入れるなら、何処でも良い」

 その光景を見てか、アニーは何も言えなくなって、寧ろ呆れていたのであったが、パンドラが少しイラつきながら言ったのであった。


「お父様、お母様。夫婦が仲の良い事は、良い事ですけども、これでは夜中になりますよ」


「ああそうだったな。アニー様、暫くアイリスと一緒に左近衛府に行って、この二人に執事とメイドの事を教えてはくれませんか?」


 この二人を?

 そう思ったアニーは、バスティとテスタに聞いてみたのであった。

「貴方のお名前は?何が得意ですの?」


「私は、バスティアンと申します。得意な事は、どの様な攻撃にも、カウンターを当てて、破壊する事でしょうか」


「私は、テスタと申します。得意な事は、どの様な者でも首を斬り落とす、この鎌を自在に操る事でしょうか」


 うーん、安定のぶっ飛び具合だな。

 そう思った左近に、アニーは涙目で訴えて来たのであった。

「無理です、絶対に無理です!」


 うん、俺も無理だと思うが、この二人が一番まともなんだよな。

 それ以外の奴は、危険すぎる、いろんな意味で……だが、やってもらうしかない。

「大丈夫です、この二人は、パンドラが幼き頃より世話をしてきた二人です、何とかなりますよ。

 他の者は、色んな意味で危険すぎるので」


「解りましたが……あまり期待しないで下さいよ」

 こうして俺は渋々と引き受けた、アニーと身重のアイリスを連れて左近衛府に行ったのであった。




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