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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第二章 帝国動乱編
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血の呪い

 


 ドレイヤー城の城壁から外を見ていたジェイロは、出撃したライリー達の身を案じつつ、斥候部隊をルゴーニュ村の方向に何度も出していた。

 これはライリーも懸念していた、ルタイ皇国軍が帝都ナリヤに向かったと見せかけて、実はルゴーニュ村近くに潜み、ライリー達が出陣した後に、ドレイヤー城を攻められる事を警戒しての事であった。

 しかし、ジェイロのその考えは、杞憂に終わったのである、ライリー達が、逃げて来たからであった。


 戻って来るのが早すぎる、まさか、ライリー様が負けたと言うのか?

 そう考えながらもジェイロは、城門の兵士に指示を出したのであった。

「ライリー様達が戻って来たぞ!城門を開けろ!」


「ジェイロ様あれ!」

 ジェイロが、城壁の兵士に言われて見た光景は、ルタイ皇国の兵士達と交戦しながら逃げる味方の一団であった。


 一体何があったと言うのだ?このままなら城内に攻め込まれてしまう、それに味方も混ざっているので弓矢を射てば味方に当たる……仕方がない、少々の犠牲は覚悟して、城内にある程度、味方を収容して城門を閉めるか。

「味方が敵に追われている!城内で始末する準備だ!弓隊は確実に当てられるまで矢を放つな!」


 これはマズイ事になった、3の城門は棄てなければならんかも知れんな。

 そう思いながらジェイロは、城内での乱戦に備える兵士を見ていたのであった。





 これはマズイぞ、このままなら城内にもルタイ皇国軍が入って来てしまう。ジェイロよ、ここは非情な様だが絶対に城門を開けるんじゃねえぞ。

 俺達は、城壁を背にして戦えば、城からの攻撃に加えて、俺達が優位に立てるからな。

 そう思いながら、逃げる味方に混ざっているアデルの部隊を見詰めながら、ドレイヤー城に向かっていたライリーであったが、その考えは打ち砕かれる物となったのであった。


 森を抜けて、ドレイヤー城が見えてきたライリーの目に写るのは、城門を開けたドレイヤー城であったのである。


 バカ野郎!ジェイロの奴、ここで非情な判断が出来なくてどうする!……仕方がない、ここはいち早く城に戻って早く城門を閉めさせたら何とかなるだろう。

 そう思い、瞬時に考えを変更したライリーであったが、その考えは少々甘かったのであった。


 一緒に入ったルタイ皇国軍は城門を閉める閂を、優先的に破壊したのである。

 何!あれを壊されたら城門を閉める事が出来ないじゃないか!ルタイ皇国の城はルタイ人は熟知しているって事か。


 そう思い悔しがっていたライリーであったが、更に驚く出来事が起こったのである。

 突然の落雷が、城内の本丸付近に轟音と共に落ちて、大爆発を起こしたのであった。


 おいおい、何だよ今のは?

 そうこの落雷は、セシルとセシリーのパナス攻略戦で見せた、二人の合体魔法であった。



「弾着地点がずれている、西に30メートル、北に10メートルだ!」


「……勝手な事を言って」


「そうです、雨雲が無いので意外と難しいのですよ」

 天眼で魔法の弾着地点を指摘した左近に、セシルとセシリーの二人が文句を言ったのであった。


「泣き言は後で聞いてやる、これで注意を引かないと、突入部隊が危険だ」


「……解ってる。いくよ」


「サンダーボルト!」

「アイスランス!」

 二人の魔法は、激しい共鳴を響かせて、次は本丸の建物に落ちたのであった。





「何だあれは?……急げ、早く火の着いた場所を消火しろ!火が他の建物に燃え移るぞ!」

 城壁でそう叫んだジェイロの姿を発見したエリアスは、直ぐ様、近くにいた青龍部隊の隊長の数見 左馬助 義綱を呼び止めたのであった。


「すまない数見殿!俺達をあの城壁の上に空間転移させてくれ!」


「エリアス殿、それは危険です!」


「今は戦の最中だ!どこも危険だよ!それに城壁の指揮官を倒せば、敵は混乱する!」


「……解りました。おい!青龍隊、魔丸を用意してあの城壁の上に空間転移を広げるぞ!、その後弓隊は弓矢を掃射して、斬り込み隊に志願する者は、エリアス様に続け!」


「数見殿、感謝します」


「良いって事ですよ、それよりも御武運を、お祈りします。おら、早く空間転移を展開しやがれ!」

 そう言って数見隊長は、青龍部隊に空間転移を城壁の上に展開させたのである。





「空間転移、展開完了しました!」


「宗太、お前の所の出番だ!」


「おおよ!弓隊構え!放て!間髪入れずに放て!」

 ルタイ皇国の弓隊が空間転移を通じて、城壁の上に弓矢の雨を降らせたのであった。


 これには流石の城壁の兵士達は、その場から逃げ出すと、すかさずエリアス率いる斬り込み隊は空間転移を通り、城壁の上に飛び降りたのである。



 この時ジェイロは、何が起こっていたのか理解に苦しんでいた。

 何故だ……何故、空間転移があんなにも大量に出てくる?しかもそこから、弓矢の攻撃の後に流れるように、兵士が降りてくるなんて、コイツら慣れてやがる。

 って事は、この戦法はルタイ皇国じゃ当たり前の戦法って事だ……コイツら勇者を何人抱えているんだ?空間転移の数じゃ数百はいたぞ。

 無理だ……こんな奴等に勝てる訳がねぇ。

 ジェイロがそう思っていると、ルタイ皇国の兵士の集団から、赤い甲冑を着たエリアスが出てきたのであった。


「ジェイロ、希望通り来てやったぞ」


「ハハハ、あんた何処まで律儀なんだい……1つ頼みがある、一騎討ちを邪魔しない代わりに、コイツらを助けてやってはくれねえか?おい、皆戦いを止めねえか!」


 その言葉を聞いた城壁の兵達は、戦いを止めて二人の言動を見守っていたのである。

「……すまんが、そこまでやる義理は無い」


「解った、じゃあ一騎討ちの結果がどうであれ、ここの兵は降伏する。

 それに、ここの兵士は、訓練もよくされており、必ずやルタイ皇国の役に立つ、これでどうだ?」


 これは、うまく行けばライリーを助ける事が出来るかも知れないし、御館様もこのまま戦を続けて、兵の損耗を避けたいだろう。

「ただ、俺にはその権限が無い……だが、御館様に確認しよう。ジェイロお前は即時停戦をライリーに伝えろ、一騎討ちの場所は、最初の城門前だ。

 念のために、こちらから二人の勇者をお前に付いて行かせる、ダメだった場合は、こちらの勇者部隊を突入させる、この意味解るな?」

 エリアスは、もしもライリーが納得しなかった場合は、勇者の空間転移で本丸を一気に占拠すると言っているのであった。


「……承知した」


「おい、誰かジェイロに付いて行ってくれ」

 そう言って自身は左近の元に向かって行ったのであった。





「何?降伏すると?」

 エリアスからの報告を聞いた左近は少し内心喜んでいたのであった。


「はい、先程も言いました様に、私と副官のジェイロの一騎討ちが条件です。

 そして勝敗に関わらず、城は全て降伏すると言っております」


 これは願ってもない申し出だ、あのライリーも手に入るし、余計な兵の損害を出さなくて良い……しかし、何が狙いだ?

「義父殿、ライリー達は何が狙いだろうか?」


「他意は無いと思いますよ、おそらくこちらの勇者の数に戦意を喪失したのでしょう」


勇者の数に?そう言えば前から勇者の数での脅迫は、かなり大陸の者に通用していた、何故だろうか。

「前から疑問に思っていたのだが、大陸では勇者の数が物を言うのですか?勇者なんて、戦略や戦術でどうにかなると思うのですが」


「それはルタイ皇国、もしくは御館様の考えでしょう。

 ルタイ皇国の戦い方を見て思ったのですが、ルタイ皇国は個人の強さもそれなりに重視しますが、基本的には作戦を重視して、軍を生き物の様に動かし戦います。

 それに対して大陸では、おおまかな作戦より個人の強さが重視されます、まだ魔女騎士団(ナイトウィッチーズ)がルタイ皇国に近い動きをしますが、まだまだです。

 なので個の強さが常人より上の、勇者に対しての恐怖は計り知れないものがあります。

 それを3千人も抱えているルタイ皇国に、正直逆らうものなどいないでしょう」


 なるほどね、勇者はこの大陸では核兵器の様な物か。

 核兵器を1発持ってるかどうかの国が数千発、を保有していて、しかも量産する国に戦争を仕掛けるバカはいないからな。

 と言う事は、今後は勇者を全面に出した方が、無駄な戦を避けれる様だな。

「なるほど……今後は方針を変えて見るとしましょう。

 話は戻りますが、ドレイヤー城の兵士の降伏と一騎討ちは了承しましょう、勿論今すぐに停戦するのと。今後ドレイヤー城の兵士はルタイ皇国に入るのが条件ですが」


「解りました、その様に話を進めましょう、では!」

 そう言ってエリアスは、ドレイヤー城の城門前に向かって行ったのであった。






 ドレイヤー城、城内では既に戦闘が停止しており、左近達の見守るなかで城門前は一騎討ちの為に、自然と大きな人の輪が出来上がっていたのである。


 遅い、確かに停戦は速やかに行われたのだが、ジェイロが出てこない、まさかここで臆したのか?

 そんな事を考えていたエリアスの前に、空間転移が開かれ、中からライリー達がやって来たのであった。


 ジェイロ……何故そんなに暗い顔をしている?何かあったのか?

 そう考えていたエリアスにライリーは驚くべき事を言ったのである。

「エリスよすまないが選手交代だ、俺が相手をしてやる」


「ライ……お前何を言っている?俺はジェイロと一騎討ちの約束があったのでここに来たのだ」


「だから選手交代だって言っただろ?なぁ左近衛大将よ!これで良いよな?」


 ダメだ、これを認めるとライリーを殺す事になり、俺の配下になれない。

「ダメだ、認める訳が無いだろう!」


「左近衛大将なら、この意味が解ると思ったのだがな。

 俺はこのドレイヤー城の城主だ、この戦は全て俺に責任があり、コイツらは俺の命令で戦っただけだ。

 ここでジェイロに一騎討ちをさせて、自分は悠々自適に生きる、そんなに俺は神経が図太く無いし筋道が立たない訳よ、解る?」


 物事の筋道か……確かにライリーの言う事は解る。解るがこいつはそんなに筋道がどうとか言う奴じゃな無いだろうし、何が狙いだ?

「帝国の為か?」


「違うさ、俺には忠誠心なんて一欠片も持ってはいない……そうだな、あえて言うなら友の為かな?」


 友の為?……確か義父殿とライリーは、幼馴染で他にもいたはず。その者を助けろと言う事か?

 しかし、命を捨ててまで守りたいか……その覚悟、叶えてやるか。

「解った、認めよう。義父殿もそれで良いかな?」


「私は……私には出来ません……」


「おいおいエリスよ、出来る出来ないかじゃ無いんだよ、殺るか殺られるかだ!」

 そう言ったライリーは、エリアスに向かって不意討ちとも言うべき居合い抜きを一文字に放ったのであったが、エリアスは後方に僅かに下がり、ライリーの居合い抜きをかわしたのであった。


「ライお前……」


「エリスよお前は、せめて本気のお前と戦って散りたい、そんな俺の気持ちも叶えないつもりか?」


「本気の……」

 その言葉を聞いたエリアスが、ピクリと僅かに反応したのであった。


「あぁ、本気のお前だ。ちょうどこの近くだったな、ドレイヤー城の撤退戦……俺とアミリーがお前に助けられて、生き残ったのが俺達の3人だった戦だよ。

 あの時の様に、本気のお前で戦えよ」


「いや…それは……」


「まだ気にしてるのか?大丈夫だ、俺を信用しろ。それにお前は手加減して、幼馴染みを殺すのか?全力でなければ失礼だろ」


 一体何の話だ?義父殿の本気?何か秘密が有るのか?

 そんな事を考えていた左近の横に、アイリスがそっと寄ってきて、左近の陣羽織を掴んできたのであった。


 確かにライリーの言いたい事は解る、だがあの姿は……

 そう思っていたエリアスが、チラリと左近の方に視線を移すと、左近の隣にはアイリスもいつの間にかおり、心配そうにエリアス達を見詰めていたのであった。


「何だよ、アイリの事が心配か?大丈夫だ、あの左近衛大将はそこまで器の小さな男じゃねえよ」

 何もかも見透かしたかの様なライリーの言葉に促され、エリアスは1つの覚悟を決めたのであった。


 短時間なら大丈夫だろう、何とか暴走さえしなければ……

 エリアスはそう考えながら、甲冑の胴を外して上半身裸になると、エリアスは静かに眼を閉じて言ったのである。

「ベルセルク・モード」


 その瞬間、エリアスの全身に血管が浮き出て、更には顔まで血管がボコボコと浮き出し、ヴァンパイアと言うよりは、獣の様な牙が出て来て、背中には漆黒の天使の翼の様な物が生えたのであった。

「ライ、待たせたな」

 そう言ってゆくりと眼を開けると、エリアスの瞳は普段の青色から、美しい血の紅い色になっていたのであった。


「待ってたぜその目、あの時の目だ!」

 そう言ったライリーがエリアスに斬りかかると、エリアスは持っていた刀で、ライリーの剣撃を受け流しながら、クルリと回転してライリーの後方に移動したのであった。


 その瞬間、ライリーの身体は一文字に切断され、上半身と下半身に別れてその場に崩れ落ちたのである。

「ライ!」


 エリアスはその姿のまま、ライリーの側に行くとライリーの上半身を抱き締めて叫んだのであった。

「ライ!お前、何で?」


「全ては佐平次に聞け……皆を頼む……」

 そう言ったライリーは、満足そうに笑顔で息を引き取ったのであった。

 その瞬間、ルタイ皇国軍からは、歓喜の声とドレイヤー城の兵からは悲しみの声と恐怖の声が上がったのである。


 何で歓喜の声が出るのだ?俺のこの姿が恐くはないのか?

 そう思ったエリアスであったのだが、何処かライリーが「な、大丈夫だって言ったろ」と言った様に思えたのであった。


 歓喜の声と、悲しみと恐怖の声に包まれる中、左近はその様子を見ながら、エリアスにそっと肩に手をやり言ったのである。

「義父殿、お見事でした……ライリーの遺体は丁重に埋葬いたしましょう」


「御館様、ありがとうございます……私の姿が恐ろしくは無いのですか?」


「確かにインパクトはキツいですが、こう言ったスキルなのでしょ?義父殿は、義父殿ですよ」


「全く、貴方ってお人は……御館様、アイリス、二人に話がある、これは剣術指南役のエリアス・ノイマンとしてでは無く、ノイマン家の家長として、娘とその夫に伝えなければならいない事です。」


「解りました、埋葬は夕方に行いましょう。ジェイロ、何処か部屋は無いか?」


「は、はい、こちらになります、案内しましょう」


「左少将、お前はルゴーニュ村から500程、こちらに寄越すように手配し、部隊の再編成だ。

 損害を調べて報告し、怪我人はルゴーニュ村に搬送して、お前の言っていた医者に治療させろ、治療費はルタイ皇国が支払う」


「はっ!」


「バッシュ、お前は遺体を敵味方別け隔て無く丁重に埋葬する準備だ、葬儀は夕方に行う」


「了解しました」


「主馬首、お前はドレイヤー城の兵に、これからどうするか希望を聞け。

 このまま、ルタイ皇国の兵士になりたいのなら許可するし、傭兵になりたいなら十字軍に入れるかナッソーに連れていけ。

 帝国に戻りたいなら、戦争が終わるまで、ここで軟禁せよ」


「承知!」


「他の者は、この三人を手伝ってやれ」

 そう言った左近の指示でドレイヤー城は一気に慌ただしくなって行き、左近達はジェイロの案内で、ドレイヤー城本丸に向かって行ったのであった。




 ――――――――――――――――――――――――――





 ドレイヤー城の一室で、左近やアイリス達とエリアスが神妙な顔付きでテーブルを挟んで座っていたのであった。

「それで義父殿、話したい事とは?」


「では、ノイマン家の呪われた血と言いましょうか、その話をする前に、私の職業(ジョブ)を教えましょう。

 私の職業(ジョブ)は、悪魔騎士と剣聖でございます」


「そんな……父上は私には、普通の騎士としか言ってなかったのに……」


「まぁ聞けアイリス。

 これは、遥か昔の皇帝との約定で、ノイマン家の者は職業(ジョブ)を、他の者に教えないしきたりになっているからです、勿論我が子にも。

 悪魔騎士は、悪魔の力で戦う騎士の事ですが、本来この大陸では、悪魔の使いとして恐怖の対象であり、見付ければ、浄化……つまりは火炙りになってしまいます。

 それは何故かと言うと、本来は悪魔騎士は常人ではなれません、なれば発狂し死んでいくからです。

 では、何故ノイマン家の者だけ悪魔騎士になれるかと言うと、我等ノイマン家の血に悪魔の血が入っているからです、かなり昔の先祖に悪魔の子供を身籠った者がおりまして、我等ノイマン家はその末裔になります。

 ですから、その血のおかげで、ノイマン家の者は悪魔騎士になっても、無事でいられるのです」


 そのエリアスの言葉を聞いた左近は、瞬時にある男の顔が浮かんだのであった、そうロビンである。

 アイツかぁ、確かパンドラがヤリチンと言っていた程だしな……それの血がアイリスに…何だか複雑だよな。

 でもラナに悪魔騎士の選択をさせないで良かった、選択していたら確実に死んでいた所だよ。本当にこれはトラップのレベルを越えているだろ……今度から確認してランクアップするか。

 あれ?もしかして、俺とアイリスに子供が出来たら、その能力が出るのか?

「義父殿もしかして、俺とアイリスに子供が出来たら……」


「そうです、お察しの通り、悪魔騎士になれるでしょう」


「でも悪魔騎士がノイマン家の伝統でしたら、もっと早く言ってもらえれば、私が聖騎士では無く、悪魔騎士になる選択肢があったのに……」

 そう言ったアイリスは、少し複雑な顔をして言ったのであった。


「何?もうそこまで行ったのか?」


「そうですよ、旦那様のおかげですけどね」


「そうなのか……でもそれで良かったのかも知れん、あんな事を経験しなくても良いのだから」


「あんな事を?」


「……そうです、あのベルセルク・モードは、確かにその強さスピードが勇者を凌ぐ者になりますが、興奮状態が続くと、意識が無くなり回りの動く者全てを殺し尽くします。

 ですので、まさしくその姿は悪魔そのものになる訳です」


「しかし父上、悪魔騎士になるのは、レベルがかなり高く無いとなれないはずですが、一体どうやって?」


「それは……ノイマン家が数多の血の上に成り立っているからだ。奴隷の得た経験値はそのまま主人にも入ってくる……」

「まさか!」


「そのまさかだよアイリス。俺の父親、つまりはお前のお祖父様は、俺が幼き頃より数多の奴隷の主人にさせて、その奴隷をダンジョンや戦争に出したのだ。

 つまりは、俺の力は死んでいった奴隷達の力でもあるんだよ……それがノイマン家だ」


「まさか、父上は私にも?」


「それは、していない。お前のお祖父様にもやれと言われたのだが、どうもお前にそんな血の呪いを抱えさせたくは無かったのでな」


「父上……」


 俺は義父殿の気持ちは何だか解る気がする。愛する我が子に誰がそんな、呪いの様な行為をさせたいだろうか。

 おそらく歴代のノイマン家の当主も、悩んでいたであろうが、帝国からすれば義父殿の行為は背信行為に受け取られかねない。

 義父殿も悩んでの事であったのだろう。


「義父殿、ご安心下さい。もしも子供が生まれたとしても、今の話は無かった事にし、その悪魔騎士は義父殿の代で終わらせ、全ては闇の中に葬りましょう。

 これからはルタイ皇国の家としてノイマン家は続くのです」


「ありがとう婿殿、そう言っていただけると助かるよ」

 そう言ったエリアスは、左近の手をしかっりと握り言ったのであった。







 ―――――――――――――――――――――





 エリアスがドレイヤー城を攻めていた頃、大きく迂回して行軍している、ルタイ皇国の一団があった、そうパンドラ率いる、伏兵の背後を突く別動隊である。

「姫様!既に半数の者が付いてきておりません!もう少し速度を落とされませんと」

 そう言ったバスティアンが、懸念するのも仕方がない事ではあった。

 せっかく左近から預かっているルタイ皇国の2千もの兵が、この食事も取らない休憩も睡眠も無い強行軍で、今は1千人ほどに減っており、この調子では到着した頃に、自分達配下の7名しか残らない勢いであったからである。


「解ってる!だから後ろの者には地図を渡したでしょう!後で来れば良いのです!今は戦に間に合わせる事が先決なのです」


「しかし……」


「しかし……じゃ無い!それにこの行軍に付いてこれた者は、我等の黒騎士に取り立て、徒歩で付いて来た者は勿論、上位80名を召し抱えます」


「それは何故ですか?」


「お父様が私達に求めているのは、忠誠心は勿論の事ですが、強さと機動力です。

 この行軍に付いてこれる者なら、今後の作戦でも使える者と言う事になります」


「では御館様は、今後は姫様に兵の指揮をさせてみたいと?」


「そうです、お父様は私により高い要求をされているのです」


「……と言いますと?」


「ただ強いだけで勝つなど、強さが有れば猿でも出来ます。

 お父様が求めているのは、強さだけではなく、頭を……この私の優秀な頭脳をお求めなのです。

 それに先程、お父様の野戦をスキルで見ていましたが、あれは芸術の域に達していました、私もあの様な指揮をやってみたい、作戦を立案してみたいと思うほどにね」


「姫様、何やらここに来て楽しそうですな。姫様の笑顔を私は初めて見た気がします」


 笑顔になっている?この私が?……そうか私は笑顔になっているのか。

「楽しいぞバスティ。考えてもみろ、私が何かを作り上げると言うのは、初めての事ではないか」


「そう言われれば確かに」


「しかも、お父様の娘で有る限り、あの忌々しい神が私の邪魔をする事は無いし、お父様の記憶には素晴らしい知識が詰まっている、この世では誰も知りはしない知識がな。

 これが楽しく無くてどうする、バスティ」


「そうですな……しかし御館様は一体何者なのですか?」


「それは島の家の秘密です、家臣の分際で詮索するのも許しません……ですがバスティ、お前は古より私に尽くして参りました、その功績により少し教えましょう。

 お父様は神と同等、もしくはそれ以上の御方です、この世には神の父がお父様に謝罪して来ていただいたのですから」


「何と……そこまでの御方であったとは。では姫様、今後のご予定は?」


「先程も言った通りに、付いてこれた者を配下にし、この戦で生き残った者を配下にし、更に激しい戦を経験させていきます。

 我等はルタイ皇国…いや、この世で最強の軍になるのです、そうあのヨハネスの軍を圧倒的に叩き潰せる程にね。

 お前達は、今後は人の考えや行動をより理解する為に、何か戦い以外の事を見つけなさい。

 見下していては、人は動きません、他の者が何を考えて行動するか、それを先読み出来てこそ、私の配下にふさわしいのですから」


「かしこまりました、他の者にも、何かをさせましょう」

 そう言ったバスティアンは、既に何かを決めていたのか、笑顔で言ったのであった。


 これが後に大陸では恐怖と栄光の対象となる、黒騎士の誕生であった。



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