将の器
パンドラ達を召喚した左近達は、蔵之介達の西部方面隊が戻ってきた事もあり、兵力も左近衛府軍の3万が集まり、レイクシティ本陣の兵力も5千になり、総大将の関白もやって来た為に左近達、左近衛府軍は前線であるルゴーニュの村まで進軍する事にしたのであった。
そしてルゴーニュ村に行く途中で、ルゴーニュの戦の報告書を読んでいた俺に、パンドラが何やら変な事を言ってきたのである。
「お父様、ご自分のステータスを見ていないでしょ?村に到着したら、一度確認してみて下さい」
「あぁ解った、見てみよう」
何だろうか?
何だか不思議な感じでそのままルゴーニュ村に到着すると、左手に包帯を巻いた左少将達の出迎えを受けたのであった。
「左大将様、今回の負け戦の責任は、全て私の責任で御座います、私は如何様な罰を受けますので、何卒配下の者には寛大な処置を……」
「そんな事より、左少将!お前に話があるチョッと来い!」
「は、はい!ではそこの家で話しましょう」
そう言うと、左少将は左近に付いて家に入ったのであった、何故か全員いるのだが……まぁ良いだろう、これを機会に意識を改革してやる。
どうもここは、村人から借り受けている一軒家らしく、俺はそのままダイニングの椅子に座ると、左少将は床に正座し、その隣には主馬首が座ったのであった。
「なぁ左少将、俺が何で怒っているか解るか?」
「自分が負けたからで御座いますか?」
「違う!主馬首、解るか?」
「確かに殿は負け戦をされました、しかしそれは我等全員の罪で御座います!殿は自ら殿をし、武功をあげられました。
なので何卒寛大な処置を、お願い致します!」
「答えになっとらん……蔵之介、解るか?」
「俺には兄貴が怒っている理由が全く解らん、だって左少将は、自ら殿をして皆を逃がしたんだぜ。
誇る事はあっても怒られる事なんかしてないと思うけど……」
「もう良い、お前に聞いた俺がバカだった」
「あ、酷え!」
まぁこのバカは放っておいて話を進めるか。
「左少将、戦とはどの様な事で勝負はつく?」
「敵を敗走させるか討ち取る事、領地や本陣を取る事、敵の大将を討ち取る……」
「どうやら気が付いた様だな?」
「え?なになに?」
「蔵之介の様なバカは解らんと思うが、お前なら俺は解ってくれると思っていたよ。
そうだ、策以外で大将が戦うと言う事は、討ち取られれば全てが終わりになり、大将の為に死んでいった者が犬死にになってしまう。
今回、もしもお前が討たれていたならば、このルゴーニュ村はもちろん、ここヴァルキア地方の東側を取り返されていた可能性がある。
俺ならば、敵の大将が殿に出た時点で、何としてでも討ち取るだろう」
この時初めて左少将は、己がやった事の重大性に気が付いたのであった。
もしも自分が討たれる様な事があれば、死んでいった上条達は、犬死にとなるばかりか、ヴァルキア地方の降伏した貴族も、反乱を起こすかも知れない。
そうなれば、ルタイ皇国のセレニティ帝国の攻略も一気に後退してしまう、自分が一時の感情に流されたばかりに、最悪の結果だがそうなる危険性があったのだ。
これは、軍を預かる身としては、最悪の結果である、左少将はその事が解り、目に涙を浮かべて左近に謝罪いたのであった。
「この度は、本当に申し訳なく……」
そこから先は、言葉が出なかった。もしも出せば涙が止まらなくなると、左少将は思ったからである。
その姿を見た左近は、左少将はまた大きくなるなと思いながら、左少将の元に行き肩に手を当てて言ったのであった。
「負け戦は、決して恥ずべき事では無い、その負け戦もこうやって次に繋げる事になるのなら、意味のある戦になる。
それに、お前は敵の侵入を許さず、この村を守ったではないか。これは真の負け戦にならんよ」
「さ、左大将様……」
「左少将よその顔の傷……良い男になったな」
そう言って左近がニッコリと微笑むと、左少将は緊張の糸が途切れたかの様にその場で泣き出し、主馬首も何故か泣き出していたのであった。
「死んでいった者達の事……忘れるなよ、己の背中に一生背負ってやれ。
さて皆、暫く二人にしてやろう」
そう言うと左近は左少将の肩を軽く叩いて、家から出ていったのであった。
「お父様……あの者、先程のお言葉でお父様に命を捧げる忠実な者になるでしょうね」
「パンドラよ、俺はそんなつもりで言ったのでは無いぞ」
「ではどの様なお考えで?」
「ただ純粋にアイツには将としての才能がある、それを伸ばしてやりたくなっただけだ」
「なるほど、これが人間の気紛れと言うものですか。覚えておきましょう」
何だか違う様な気がするが、まぁ良いだろう。
「所でパンドラ、その黒い羽根つきのマントはカッコいいな」
「これはエルマが私とお姉様に作ってくれた物です、私もこれはカッコいいと思います」
「そうだ、あの配下の7人組を連れてナッソーまで行き、同じ様なマントを作ってもらえ……いやエルマに7人の戦闘服を作ってもらえ、リンはそのままで良いだろう、嫌がるだろうからな。
黒で統一する事だけ伝えておけ、まだ二週間程はこの村に滞在するのでな」
「かしこまりました。皆、聞いたな、これよりナッソーに向かう!」
「御館様、私もナッソーに行ってよろしいでしょうか?」
「義父殿もですか?どうされました?」
「珠様が昔、剣術の有名な家に嫁いでたと聞いて、もしかすれば何か技等も知っているかと思いまして……」
この人も意外と強さを追い求める脳筋だよな、でもその気持ち解らんでも無いが。
「おいパンドラ、義父殿も連れて行ってくれ!」
「ありがとう御座います!」
そう言ってエリアスは、左近に一礼してパンドラの元に向かって行ったのであった。
「さてとバッシュ、お前はどうする?」
「少し友人を探してみようかと思っております。確か左少将様の部隊に配属されたはずなので」
「友人……おお、あの源三と跳ねっ返りの佐平次か!解った、行ってやれ」
「はい!」
「さてと俺達は、パンドラがステータスの事を言っていたので、チョッと見に宿舎に行くか」
そう言って俺達は、宿舎に戻りステータスの確認をしてみる事にしたのであった。
な、なんやねんこれ?
思わずそう思ってしまったその訳は、俺のステータスが凄い事になっていたからであった。
名前:島 左近衛大将 清興 種族:人間 レベル:374
職業:侍大将 剣客 闘士 覇王 勇者 賞金稼ぎ 設計技師 冒険者 軍師 詐欺師 能吏 槍兵 虐殺者
固有スキル:ステータス閲覧 天眼 職業変更 全自動翻訳 経験値50倍 鑑定 アイテムボックス 詠唱省略 色欲増大 空間移動 盗賊警報 空間設計 製品開発 先読み 危険察知 ソニックウエーブ 必要経験値2割減 無限魔力
装備:朱槍 鬼切り丸 長船小太刀 紅蓮の甲冑 覇王の陣羽織 マジックバック
レ、レベルが物凄い事になっているし、変な職業もある……虐殺者?消去だな。
そうか、俺とアイリスとラナとセシルとセシリーは、経験値を分け与える様に繋がっており、パンドラのスキルの接続でパンドラが獲得した経験値も俺に流れるって事だろう。
……待てよ、じゃあアイリス達にもパンドラが稼いだ経験値が流れているって事じゃないか?俺の様に大幅なレベルアップをやっていると言うなら、俺のスキルの経験値50倍等の恩恵もあるはず、確かパンドラが恩恵は有ると言っていた……これは期待できるかも知れんぞ。
しかも全ての職業が点滅しているって事は、職業によってランクアップに必要なレベルが違うって事だ……中々に奥が深いゲームだ……じゃ無かった、世界だった。
「旦那様、どうかしたのですか?」
「いや、俺のレベルが物凄い事になっていてな……お前達のも確認してみて良いか?」
そう言って俺は全員のステータスを確認してみたのであった。
名前:島 隼人佑 アイリス 種族:人間 レベル:330
職業:侍 剣客 騎士 下忍 賞金稼ぎ
名前:島 織部佑 ラナ 種族:ダークエルフ レベル329
職業:侍 悪魔召喚士 盗掘者 下忍 賞金稼ぎ 騎士
名前:セシル・島 種族:人間 レベル:322
職業:魔導士 貴族 勇者 賞金稼ぎ
名前:セシリー・島 種族:人間 レベル321
職業:魔導士 貴族 勇者 賞金稼ぎ
これは……凄いな。
しかし、パンドラ達がレベリングをやってくれるから、レベル1で戦う危険性が一気に下がる、これにはかなり助かるが所詮は養殖だ、自らの技を鍛えねば、天然には敵わない。
慢心こそ、一番の敵だからな。
「皆、驚くなよ……お前達のレベルが300を越えている」
『エー!』
「だから驚くなと言っただろうが!……アイリスは流石に驚かんか」
「旦那様の妻なら当たり前です」
また、訳の解らん事を……。
「まぁ、これは俺のスキルの経験値50倍と、必要経験値2割減が関係していると思う。
だが俺の他のスキルは、お前達は使用する事が出来なかった……これにはどう言った法則が有るのか……解るか?」
「……それは、任意で使用するアクティブスキルは、私達に影響は無いけど。常時発動するパッシブスキル…更には特殊スキルが私達に影響が有ると思う」
「セシル、何で解る?確信は有るのか?」
「……御主人様…じゃ無かった、旦那様は詠唱を必要としないパッシブスキルや、魔力の自動回復、または増量みたいな、パッシブスキルを持っていない?」
「持っているが詠唱省略と無限魔力言うスキルだが……まさか?」
「……そう、私も魔法を使った時にそれを感じた」
「私もそれは何となく感じていた」
「そうなのか……あれ?でもお前達は、魔丸を飲んだり魔法を使う時に詠唱していなかったか?」
「……それは癖」
「あ、お姉ちゃんも?私も癖で……癖って恐いよねぇ」
「癖ってお前達……」
セシルの仮説が正しければ、まさかとは思うのだが全自動翻訳も使用する事が出来るのか?でも魔族語は、俺以外の者は理解できなかったはず。
「そう言えば、ラナはフレイアの所に何度か遊びにいっているが、会話は何で話している?」
「普通にキリバ語だよ……そう言えばリーゼロッテさんに連れられて、何度か神魔国に遊びに行ったけど、魔族の皆は私と話すのが楽だと言っていたなぁ……何でだろ?」
それは、キリバ語じゃ無くて魔族語を話しているんじゃないかな?
そう言えば、ラナは最初はルタイ語を理解していなくて、俺の奴隷になってから、ルタイ語を理解していた。
いくらアイリスが教えていたからと言っても、そんなにすぐにペラペラと話せる訳がない。
もしかすると、ダウンロードする様に、時間はかかるが全自動翻訳も、いつの間にか無意識に使用しているのかも知れないな。
そうなると……あれ?色欲増大もパッシブスキルじゃ無かった?って事は、アイリス達のあの夜の強さは理解できる。
もしかしてパンドラにも?…それは確実だろうが、最悪はクロエやバッシュ、義父殿迄にもそのスキルの影響が出たら…………よし、この事は忘れよう!それよりもランクアップだ。
「セシルの仮説は、もしかすれば正しいかも知れん……いや、正しいのだろう。
それを踏まえて、これからランクアップを行うが、もちろんレベルは1になるので、レベリングと言って、あの7人か他の者に経験値を稼いでもらい、俺達のレベルを上げてもらう。
でもそれは肉体の強化のみで、実際の経験や技が伴っていない状態だ、油断や慢心は命取りになると思ってくれ」
左近がそう言うと、4人は頷き気を引き締めたのであった。
さてと、まずは俺からか。
侍大将をタッチしてみると、侍・侍大将・部将・消去と出たのであった。
あれ?侍が有るって事は、ランクダウンも出来るって事か、まぁこれは部将1択だわな。
次は、剣士・剣客・剣豪・消去かこれも剣豪1択しかないな。
その次が、戦士・闘士・剣闘士・拳闘士・消去か……剣闘士は、剣を使う職業だろうから、剣士系の職業と大差は無いだろう、となれば拳闘士で無手のスキルを手に入れて、弱い所を補うか。
そう思った左近は、拳闘士を選択したのであった。
次は覇王か、覇者・覇王・覇帝・消去か覇帝1択だろうけど、大丈夫かこの職業は?
次は勇者……勇者の上位職って何だろうか?勇者見習い・勇者・覚醒勇者・消去?覚醒勇者が上位職だったのか、ならばそれしかないだろう。
後はこうして、こうしてと……もちろん虐殺者は消去で……うん、こんな感じかな。
名前:島左 近衛大将 清興 種族:人間 レベル:1
職業:部将 剣豪 拳闘士 覇帝 覚醒勇者 追跡者 発明家 探検家 軍神 策士 宰相 上級槍兵
固有スキル:ステータス閲覧 天眼 職業変更 全自動翻訳 経験値50倍 鑑定 アイテムボックス 詠唱省略 色欲増大 空間移動 熱線暗視 時空設計 製品発明 先読み 危険察知 ソニックウエーブ 必要経験値2割減 無限魔力 引落し 統率力上昇 肉体硬化 時間停止
装備:朱槍 鬼切り丸 長船小太刀 紅蓮の甲冑 覇王の陣羽織 マジックバック
おい、何だか凄いスキルがある!時間停止って……これはもしや、あのオラオラオラ!ムダムダムダ!の漫画の様なスキルじゃないのか?
そうだとしたら最強じゃないか!……早速使って見るか…………どうやるんだ?やっぱり念じるだけかな?
そう思い俺は、念じる事にした。
時間停止
……あれ?何も起こらない?
「アイリス」
「どうしました?」
「あれ?すまん、今スキルの実験をやったのだが……もう一度やってみるよ」
時間停止!
何もない…うお!アイリスの目が半目で止まってる!あ、動いた。
これってもしかして、時間を止めれるのって何秒とかの世界なのか?そうだ、声を出し続けてもらえれば、時間が止まっている間は、聞こえなくなるんじゃないか?
「すまんアイリス、暫くアー!って言ってくれないか?」
「変な旦那様ですね、いきますよ。アー」
時間停止1、2。
「アー」
「もう良い、ありがとう」
時間停止は2秒って所か……短すぎだろ!
「どうです、スキルは発動しました?」
「フフフ…お前達に素晴らしい物を見せてやろう、時間停止」
俺はスキルを使用しすぐにアイリスの隣に移動したのであった。
『……!?』
皆、驚いて絶句しているな、そうだろう、そうだろう、使い様によってはこのスキル使えるぞ、そう例えばアイリス達の変顔を見る為とかな。
急に時間停止するから、瞬きしている途中だったり口が半開き等の面白い顔になっている……今度からこれで遊んでみるか。
方向性は間違っているとは自覚しているが、この様なスキルの無駄遣いは、俺は意外と楽しい。
「旦那様、どうやったのですか?全く見えなかった……」
「アイリスよ、俺は時間停止のスキルを手に入れたのだ。でも2秒しか止めれないけどね」
その俺の言葉に全員が信じられない、でも信じるしか説明出来ないと言った顔になっていたのであった。
「まぁ取りあえずは、皆のランクアップだ。全ての職業を上位職にするので良いか?」
「ちょっと待ってください、私とラナの持っている騎士の上位職は確か、聖騎士、悪魔騎士、黒騎士、白騎士、聖堂騎士と有ります、意外と選択肢は多いので、どうしましょう?」
「アイリスすまない、そんなに騎士の種類が有るなんて知らなかったよ。知っているなら説明してもらえるか?」
「聖騎士は文字通り、神聖なる騎士で神様の加護を得て戦いますので、アンデット等にも有効な技が有ります。
悪魔騎士はその逆で、悪魔の力を借りた暗黒の力で戦います、扱いきれればほぼ最強でしょうが、大抵は扱いきれずに、心を蝕まれ発狂し狂って死にます
黒騎士は、攻撃魔法の得意とする魔導騎士で、白騎士は回復魔法を得意とする魔導騎士ですね。
最後に聖堂騎士は、指揮官の指揮能力と、集団戦に特化した特殊な騎士なのです」
そんなにも有るのか、てか悪魔騎士って殆どトラップみたいじゃねえかよ…そう言えば義父殿の職業は何なのだろうか?
「アイリス、義父殿は普通の騎士なのか?ステータスを確認するのを忘れていてさぁ」
「自分では普通の騎士と言っていましたが、聖導騎士団の団長殿しか職業を確認した事が無いのですよ。
ただ、父上は常に帝国の大きな戦では、先陣で戦っておりました……普通の騎士がこんな事が出来るでしょうか?」
「無理だな、普通の騎士が陣形も何もない、ただの乱戦の戦で常に先陣で生き残るのは、確率がほぼ0だ……今度、義父殿にでも聞いてみるか。
それはそうと、二人は何か希望は有るのか?」
「では私は聖騎士でお願いします」
「アイリスは聖騎士か。ラナは?」
「じゃあ、私は悪魔騎士にする!」
「ダメだ」
「え~何でよぉ?」
「アイリスが言った様に、悪魔騎士にはリスクが有る、危険すぎる。お前の身に何かあったらどうする」
「…………えへへ」
ラナは、最初はキョトンとしていたが、少し顔を紅くして左近に近付き、胸に顔を埋めると、そのまま軽くボディーブローを何度も叩き込んだのであった。
何だラナは照れているのか?可愛いのだが……レバーに的確に入っているし!確実にダメージが蓄積されるし!
左近はラナの両肩を掴み、優しく引き離して言った。
「ラナ、悪魔騎士以外でならどうする?」
「聖騎士ってがらじゃないし、聖堂騎士は私のスタイルじゃ無いんだよなぁ……黒騎士で良いや」
「そうだな、俺もそう思うよ。では始めるか」
名前:島 隼人佑 アイリス 種族:人間 レベル:1
職業:侍大将 剣豪 聖騎士 中忍 追跡者
名前:島 織部佑 ラナ 種族:ダークエルフ レベル1
職業:侍大将 悪魔召喚師 考古学士 中忍 追跡者 黒騎士
名前:セシル・島 種族:人間 レベル:1
職業:魔導師 貴族 覚醒勇者 追跡者
名前:セシリー・島 種族:人間 レベル1
職業:魔導師 貴族 覚醒勇者 追跡者
さすがに貴族はランクアップしなかったが、ラナの考古学士って似合わなすぎだろ……しかしこれで5人がレベルが1になってしまった、レベリングを急がないと。
「では、ランクアップは終わったが、皆にだけ俺のパッシブスキルであろうスキルを教えておく、知っておいた方が何かと都合が良いだろうからな。
まぁ俺もその効力を完全に把握している訳じゃ無いので、解った事があるならこの5人で共有したいと思う」
「……でも、それなら旦那様のスキルを全部教えてもらった方が、何れが私達と共有しているパッシブスキルなのか解りやすいと思う」
確かにセシルの言う通りだ、何れが共有しているか解らないし、他のスキルも教えてくれるかも知れんが……大丈夫か?裏切られる可能性が……それは無いな。
この四人が俺を裏切るなんて考えられん。
「そうだな、教えるがこの四人だけだ、パンドラは知っているだろうから話しても大丈夫だが、その他の者はダメだ守れるか?」
左近の言葉に四人は静かに頷いたのであった。
「スキルは多いぞ、ステータス閲覧、天眼、職業変更、全自動翻訳、経験値50倍、鑑定、アイテムボックス、詠唱省略、空間移動、熱線暗視、時空設計、製品発明、先読み、危険察知、ソニックウエーブ、必要経験値2割減、無限魔力、引落し、統率力上昇、肉体硬化、時間停止。
以上が俺のスキルだ、この中で全自動翻訳と経験値50倍、そして詠唱省略、危険察知、必要経験値2割減、無限魔力、統率力上昇が共有しているスキルだと思う」
「……すごっ」
「うん、私もこんなにもスキルを持っている人を初めて見たよ」
「まっ、私達の夫になる人ならこれぐらいなきゃね」
「ラナもようやく解ってきましたね、そうです旦那様なら当たり前です」
「……でも、これで解った。おそらくだけど共有出来るのは旦那様のユニークスキルだけですね。
設計系もパッシブスキルだけど、私は感じる事が無かった。って事はユニークスキルのみってなります」
「なるほどな、いくらパッシブスキルでもそこまで共有できていないか……まぁ良いさユニークスキルの共有だけでも助かる」
そう言った時であった、扉がノックされてクロエが入ってきたのであった。
「失礼します、ルゴーニュ村の村長と、三好 左少将様がお越しです」
村長……大方、媚びへつらうつもりだろうが、仕方がないこれも仕事だ。
そう思いながら、左近はルゴーニュ村の村長のうんざりする様な長い挨拶を、受けていたのであった。
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「あぁー疲れた」
「そう言わないでやって下さい左大将殿、彼等も生き残る為に必死なのですよ」
村長の媚びへつらう長い、長い挨拶を受けてげっそりしている左近に、左少将が村長のフォローをやったのであった。
「そろそろアデルが物見から戻って来る筈だが……遅いな」
「アデル?あぁ左大将殿の忍ですか?」
「あぁ、ずいぶん前からこの先の帝国領に物見に出したんだ、地形や敵城の偵察にな……一応、今日ここに来る予定なのだが、何かあったのかな?
まぁ良い、クロエ!蔵之介やバッシュ達、主だった者を下の酒場に集めてくれ!後は主馬首もな、軍義を行う。
酒場は暫く貸しきりだ」
「かしこまりました」
クロエはそう言って各部隊長を呼びに行ったのであった。
「家長もですか?」
「ああ、お前の報告書を読んで、中々の者と見た。お前の副将ではなく、1軍を任せてみたいが、良いか?」
「左大将殿は、左近衛府の長でございます、好きな様にしてください、皆は喜んで従いますよ。それに家長も喜びます」
「そう言ってくれるとありがたい。それと左少将よ、お前の報告書でこの村に腕利きの医者がいるそうだな?」
「はい、ドミニクと言いまして、私も彼に助けられました」
「では、この村とこの一帯を、戦が終わったらお前に任せる、そのドミニクを優遇し、ここに医師の街を作れ。
本国からもお前の人脈で、連れてこれるだけ連れてこい」
「左大将殿、何を考えておられます?」
「衛生兵を編成したいのだ」
「衛生兵?」
「そうだ、医師の技術を持った兵士の事だ。
その者達を、各部隊に入れておけば、戦で傷付いた者も直ぐに治療し命は助かる、そして傷を治したならば、また戦で活躍出来よう」
「しかし戦で人が死ぬのは当たり前では御座いませんか?」
「確かにそうだが、その手遅れで死んでいく者の経験が惜しい。
人数が減れば、新たに補充すれば良いと思うだろうが、それでは毎回連携の訓練等が大変で、その軍の強くなる速度が遅い。
それならば、その者を生かせて身体を治し経験を積ませた方が俺は良いと考える、兵士は使い捨てでは無いのだからな」
「なるほど、そのお考え、私も賛同出来ます、必ずやこの地を世界一の学術都市にしましょう」
そう言っている間に、酒場には続々と武将が入って来たのであったが、1人バッシュだけが浮かない顔をしていたのであった。
左近達が酒場に降りて行くと、皆はこれからの軍義で左近がどの様な策を出すのか、期待に目を輝かせていたのだが、バッシュだけが今にも泣きそうな顔をしていたのである。
それに気が付かない左近では無かったのだが、その理由はすぐに予想できたのであった。
そうか、佐平次と源三は死んだのか、惜しい男を亡くしたな……
そう思いながら地図をテーブルに広げた時であった、その場にアデルが入って来たのであった。
「御館様、申し訳ございません、少し遅れました」
「あぁ大丈夫だアデル、この地図を使って皆に地形を説明してやってくれ」
「かしこまりました。
ここルゴーニュ村から伸びている街道を、真っ直ぐに行けば、ここのランダ平原にたどり着く事が出来ます。
ただこのルゴーニュ村の先にある、森の中の街道を越えた場所は、少し開けた草原になっており、その先はまた深い森になっております。
そしてその先にはかなり大きな平原になっており、その先は2つの小高い丘に挟まれた街道になり、その先には、川が流れておりその先はまた森で御座います」
「深さは?橋は在るのか?」
「深さは所々深い所が御座いますが、膝ぐらいの深さで、橋は既に破壊されておりました」
「その橋まで城は在るのか?」
「1つだけ在りました、しかし場所は最初の草原より少し脇道に入った所で御座います。
兵力は約6千でしたが、城は丘の上に在り、掘も在り高い塀も三重にございました、こちらが見取り図です」
そう言ってアデルは、ドレイヤー城の見取り図を広げたのであった。
その図面を見た左近達は思わず絶句したのである。その理由はもちろん、ドレイヤー城の縄張りにあった。
その縄張りは思わず誰もがルタイ皇国の城を彷彿させるかの様な縄張りであったのである。
「左大将殿、これは流石に6千の兵で籠られては、いくら我が軍と言えども簡単には攻め落とせませんぞ」
左少将が不安そうに左近に言ったのであった。
「確かに落とせは出来ましょうが、時間がかかるものと思います……ですが我等がランダ平原に遅れる事があれば、左近衛府の面子にも関わりますし、開戦に間に合わぬとなれば大失態ですぞ。
この家長 主馬首、ここは敢えてルゴーニュ村に如何程かの兵を置いて、この様な城は無視をして先に進むのが宜しいかと進言致します」
「兄貴、こんな城は全員で襲い掛かったら、すぐに落とせるって、俺を信じろよ」
……取り敢えずこのバカは放っておいて、確かに主馬首の言う通りだ、こんな城に時間をかけて、間に合わないのが一番の失態だ。
あの関ヶ原でも、中山道を通って真田殿に阻まれ間に合わなかった、秀忠公の二の舞になる。
ここは主馬首の言う通り、軍を二手に分けて先を急ぐか……待てよ、何で敵は橋を落とした?橋を落としたら、俺達がその城を攻めれば、援軍が来るのに時間がかかるぞ。
城を見捨てる気か?いや違う、何かが引っ掛かる何かが……何で敵は橋を落とした?まずはそっちを考えて見よう。
時間稼ぎか?違うな、それは考えにくい俺達以外にも進軍してくる軍がある以上、足止めをやっても意味がないし、揃わないタイミングで他の軍を攻撃する?これはあり得るな、各個撃破は帝国にとっても勝率は高いだろうから、やる確率は高い。
各個撃破?……そうか、敵の目標は俺達だ!この川の周辺の地形は待ち伏せには最適だ。
この城から出る軍が、ルゴーニュ村ではなく、渡河中の俺達の後方に襲い掛かり、伏兵中の敵兵にも同時に襲い掛かられたらどうなる?確実に袋の鼠の俺達は全滅するのを免れん。
敵の狙いがそうだとして、ではこちらが兵を二手に分ける事は、全てにおいて中途半端で策としては下の下だ。
ならば無視をする?それこそ、挟み撃ちで最初に懸念した事じゃないか……敵の城を落とす?ダメだ、この城だと時間がかかるし、街道から離れている地理の関係上、ルゴーニュに向かわれるか、それとも城との挟み撃ちにするか、どちらでも選択肢はある。
「……解らん」
『は?』
「いや、解らんのだよ。ここの川は待ち伏せには最適で、後方からここの城の兵が渡河中に襲い掛かられたら、まさに袋の鼠だ。
かといって兵を二手に分けては、兵力の分散を招いて勝てる戦も勝てん……さぁどうしたものか?」
「そんな城は、1日で落としてから、待ち伏せの帝国兵を叩けば良いんだよ兄貴!」
「……バカは放っておこう。左少将、何か良い案はあるか?」
「……正直に言うと解りません。ですがそもそも、帝国兵にその様な策を考える者などいるのでしょうか?左大将殿が帝国の将なら、その様な策を考えるかも知れませんが、左大将殿の様な将が他にいるとは思えません。
それに他の城の様に、使者を送ればすぐに降伏するのでは?」
「左少将、それは慢心と言うものだ、将とは常に最悪の展開も予想しておくものだよ……しかし、もっと情報が欲しいな。
アデル、ここの城や帝国の将の情報はないか?」
「ここの城はドレイヤー城と言う名前で、城主はライリーと言う名前でした」
「ライリーおじさん?」
ライリーの名前を聞いたアイリスが思わず叫んだのであった。
「何だ、アイリス知っているのか?」
「はい、父上の幼馴染で、昔からよく家に来てましたので……父上が以前に言ってましたが、ライこそ本当の名将だと」
「……どうやら俺の予想が当たりそうだな。アデルよ他には何か無いか?」
「他にですか……そう言えば、ルタイ皇国の兵士が1人捕虜になって拷問を受けていました」
「どうやら敵も情報が欲しい様だな、俺達と同じか……その捕虜は、どの様な男だ、拷問に耐えれそうであったか?」
「意外と根性だけは有りそうでしたね、名前は確か佐平次でした」
佐平次、その名前を聞いたバッシュは思わず、アデルに詰め寄ったのであった。
「アデルさん!その佐平次はどうしました?助けていないのですか?」
「バ、バッシュ殿、落ち着いて……助けたら、潜入したのがバレるじゃないですか。でも拷問が辛かったらこれを噛み砕いて飲めと、毒薬を渡しましたので」
「では佐平次に死ねと言うのですか!」
「もうそれくらいにしろ大膳!」
「左少将様……」
「アデルは良くやってくれておる、己の役目上その佐平次を助ける事は出来んが、せめて拷問の苦しみから解放してやろうと言う、アデルの優しさを理解してやらんか。
それに真に責められるべきは、この私だ……この私が無謀な戦を仕掛けねば、佐平次は捕虜にならずに済んだ、全ての責任は私にある」
「それは……」
どうやら助け船を出さねばならん様だな。
そう左近が考えていると、ラナが手を叩いて言ったのである。
「はいはぁ~い、そこまで。バッシュもそんなに熱くならない」
「すみません」
「左少将様もそんなに自分の事を責めない、旦那様も言ってたじゃない、何を聞いていたの?」
「そうでしたね奥方様」
「二人とも解れば宜しい。こんな時は私の旦那様が何とかしてくれるんだから、ね~旦那様」
「え、俺?」
「何、出来ないの?」
「出来ますとも……やってやろうじゃない」
な、なんちゅう事を……でも待てよ、これで佐平次が城から脱出に成功すれば、頭の良い奴なら城の情報は全て知られて、佐平次を救出したと思うかもしれん。
それに佐平次からも何か情報を聞き出せる可能性がある、救出するか。
「アデル、佐平次の救出は出来るか?」
「何処までその者の身体が動くか解りませんので、まずは確認してみないと何とも言えません」
「それはそうだな。アデル、まずは佐平次とコンタクトを取れ、現状を確認してから救出作戦を考える。
他の者は次の軍義召集までに、進軍の何か良い案があるか考えておいてくれ。
では本日の軍義はここまでにする、では解散!」
左近がそう言うと、各武将は立ち上がり左近に一礼し酒場から出ていったのであった。




