同志ロンデリック
俺達は、道具屋を出て服屋を探していた。
しかしこの世界に来て2日目だが、風呂にまだ入っていない、入りたいな。
しかし、風呂ってこの世界でも在るよな?まぁ無くてもナッソーで作るけどね。
ん?ちょっと待て、あれは浴衣じゃないか!浴衣姿のアイリスと温泉……湯上がりのほのかに赤くなった、はだけた浴衣姿のアイリス。
最高じゃないか、この世界最高!
「なあアイリス、あそこの服屋に行こう」
「あそこですか、解りました」
そんなに大きくはない服屋だが、内容は充実していた。
「おやまぁ、お侍様ですか、初めて見ましたよ。私のルタイ語は通じていますか?」
そう言って店の中から出てきたのは、番頭さんの様な服装の若い男であった。
「アイリス、普段着と旅用と王宮用の3着と、靴を選んでおいてくれ、俺はコイツと話がある」
「かしこまりました」
そう言ってアイリスは、服を選びに行った。
何処の世界でも女性の買い物は長いからな、それに我が野望もあるからな。
「あの浴衣だが、お前が作ったのか?」
「はい、蘭さんから聞いて作ってみました、ちょっと私の趣向も入っておりますが」
確かにこの浴衣はミニスカートだ、なるほどこの男分かってるな。
「なるほど、あの巫女の蘭さんか。
そう言えば、オーダーメイドも出来るのか?」
「勿論、出来ますよ、ルタイの服は、独特なので大歓迎です。
それに、オーダーメイドの品を、店でも販売して良いと、許可して頂ければ、アイデア料も含めて、かなりお安く致しますよ」
素晴らしいじゃないか、この店は、これからも贔屓としよう。
「左近だ、これからも、この店を使わせて頂く」
「有難う御座います、私はロンデリックと申します、何やらお客様とは、気が合いそうですね」
「そうだな、早速だが、あの浴衣は、1着幾らだ?」
「1着300シリングでございます」
3万円か、意外と高いな。
しかし、俺の野望はこんな事では負けん、負けぬのだ!
「買った、それとメイド服って有るか?無ければ、オーダーメイドで作って欲しいのだが」
「ふっ、左近様それは愚問と言うものです、こちらに御座います」
そう言って見せられたメイド服は、胸元が強調されたミニスカートのメイド服であった。
こ、コイツ出来る!かなりの猛者だな。
「幾らだ?」
「120シリングで御座います」
「よし買った、サイズは、あのアイリスに合うようにしてくれ」
「お任せてください、サイズは見ただけで解りますので」
コイツ最強じゃねえか、素晴らしい。
おっ、男性用の和服も有るのか。
「ロンデリック、この和服も買おう」
「この和服なら180シリングですね、左近様ならサービスで紋章も刺繍しますよ」
刺繍?紋章?あぁ陣羽織に在る家紋か、まぁサービスならお願いするか。
「頼む」
「解りました、明日の朝には、出来ておりますので、受け取りに来て下さい」
「解った。所で、この辺りで、お勧めの宿屋は在るか?出来れば、風呂が在る方が良いな」
「風呂ですか?風呂なんて、貴族か王族しか、持っていないですよ、庶民はお湯で拭くぐらいですね。
でも料理の美味しい宿屋は、この先の2ブロック先に在る宿屋ですね、蘭さんが下宿しているので、皆様ルタイ語を話せますし」
やっぱりか、まぁ身体を拭くのでも……良いな、アイリスの身体は、隅々迄俺が拭いてやる。
「解った、ありがとう」
「あの、すみません御主人様、こちらとこの服は、どちらがよろしいでしょうか?」
アイリスが後ろから話し掛けてきた。
「その持っている方が良いな、俺好みだ」
「でもこれ、高いんですよ」
「気にするな、俺が良いと言っているんだ」
アイリスが、欲しそうに、最初から手にしていた服だからな。
「解りました、ではこれで」
「こちらの3点と、靴と例の物と着物で、1,630シリングになります」
予想はしていたが、16万3千円か結構な金額だな。
しかし、趣味には金がかかるものだ。俺はロンデリックに支払いアイリス言った。
「その服に着替えて、靴も履き替えろ。ロンデリック良いか?」
「勿論です、奥の試着室をお使い下さい。それと、その服と靴は、処分しておきましょう」
「ありがたい」
そう言ってアイリスは着替えに試着室に入ってから、ロンデリックが言って来た。
「左近様、例の物は、別に分けて、こちらになります」
「流石に、手際が良いな」
「左近様と私は、何やら趣味も思考も同じ様で、サービスで身体を拭くタオルを、2名分入れておきました」
そう言ってロンデリックは、ニヤリと笑みを浮かべ、俺はマジックバックの中に服を入れて、同じ様に笑みを浮かべた。
実際には、マジックバックの中にアイテムボックスを作り、その中に服を入れたのだが。
それにしても、最早このロンデリックは、同志だな、何も言わなくても解ってる。
そう言っている間に、アイリスが着替えて、出てくると俺とロンデリックは、あまりの美しさに思わず、息をするのも忘れ、みとれてしまった。
ん?やはり、ロンデリックも同じ気持ちか、でもアイリスはやらんからな。
こうして、ロンデリックの店を出ると、太陽が高く登っている、時間は既に正午になっていた。
俺達は、ロンデリックのお勧めの宿屋に、向かう事にした。
ロンデリックに教えてもらった通り、2ブロック先に行くと……あった、結構綺麗な宿屋が在り、中に入ると、カウンターの暇そうにしているオヤジに話しかけた。
「部屋は空いているか?」
「宿泊ですか?空いていますよ、ご希望の部屋は在りますか?」
「部屋の種類はどうでも良いが、防音のしっかりしている部屋が良いな」
「そう言った部屋でしたら、お一人様一泊税込200シリングになります。夕食はどうされますか?」
「勿論、頂こう」
「ではお一人様15シリングになります、他には何か在りますか?」
「部屋に飲み水と、身体を拭くお湯は在るか?」
「在りませんが、ルームサービスでお持ちしますよ、お一人様5シリングになりますので、合計で440シリングになります」
4万4千円か、少し高い気がするが、まぁ良いだろう。
俺がお金を支払うと、オヤジに先導されて3階の奥の部屋に案内された。
「こちらになります、飲み水とお湯は後程お持ちしますので」
案内された部屋は、2部屋の間取りになっていた。
奥の部屋を見ると、ダブルベッドが1つだけ在り綺麗な部屋であった。
「アイリス、装備を外して楽にしろよ」
そう言って、ベッドルームで俺も甲冑を脱ごうとすると、アイリスが慌てて手伝いに来た。
「御主人様、私がやります」
「悪いな」
確かに、日本風の甲冑は、意外と一人で脱いだりするのは大変だったので助かる。
何とか甲冑は外して、全てアイテムボックスに入れた時、部屋をノックする音が聞こえた。
「お湯が来たようですね、お持ちします」
「ありがとう、隣の部屋に置いてくれ」
「かしこまりました」
その間に、俺は刀を抜いて、刃こぼれしていないか確認してみた。
……全く刃こぼれしていない、こちらの世界は、メンテナンスは要らないのかな?解らない事が多いな。
「御主人様、ご用意出来ました」
アイリスの言葉を聞いて俺は、刀を収めて隣の部屋に行くと、そこには、お湯の入った大きなタライが置いてあったのである。
どうやってこんなのを入れた?
そんな疑問が一瞬頭を横切ったのだが、これでサッパリとするといった、喜びの方が俺には大きかった。
俺は、アイテムボックスからタオルを出すと、アイリスが顔を赤くして言った。
「ご、御主人様のお身体は、私がお拭きます」
な、何だと!この申し出を断る男は、男じゃない!
「頼む、しかしお前の服が濡れるぞ」
「そうですね、せっかく御主人様に買って頂いた、大切な服ですものね」
そう言ってアイリスは、ゆっくりと服を脱ぎ出した。
一気に服を脱がれるより、この方が何だかエロいな、ん?こら愚息よ、まだだお前が暴れるのは、今じゃないフライングするな!この後で思う存分暴れさせてやるから、今は抑えろ。
アイリスは、脱いだ服をキチンと畳み、離れた所に置くと、俺の服を脱がしにかかった。
ゆっくりと、ぎこちない手付きで、俺の上着を脱がした時アイリスの顔が、俺のすぐ目の前に来て、どちらかと言うのではなく、二人自然にキスをしたのであった。
こうなれば俺は、暴走モードに入ってしまう。いやこの状態で、暴走モードにならない男など、いないであろう。
俺は、アイリスにキスをしながら抱き締めると、アイリスも、俺の首に腕を回しそれに答えた。
暫くしてお互いの唇を離すと、アイリスが照れながら言った。
「御主人様のお身体、綺麗にしますね」
そう言って俺の服をアイリスは全て脱がして、タライへと俺を誘った。
えっ?そんな所まで?って所までアイリスに俺は、身体中を拭いてもらうと、いよいよ攻守交代だ。
「アイリス次はお前だ、俺がやってやる」
「そんな御主人様にやってもらうなど、申し訳御座いません」
「いいんだ、俺がアイリスを綺麗にしてあげたいだけなんだ」
「あ、有難う御座います」
そう言って、照れたアイリスの身体を俺は拭いた、もちろん、色々な感触を楽しみながら、拭いたのだが。
その後は勿論、ベッドに移動して二人獣のように絡み、4回戦も頑張ってしまった。
まぁ、例のスキルのせいだが……スキルのせいだ、断じて元の性欲が、強いからではないぞ。
ベッドの上で余韻を楽しみながら、アイリスを抱き締め、俺はアイリスに言った。
「なぁアイリス、その……終わってから言うのも変な話だが、もっとお互いの事を知らなきゃならないと思うんだ、これからの事も含めて話し合おう」
そうだ、アイリスには全て話しておこう、何かとサポートしてくれると思うからな。
「私は、御主人様についていくだけです、私の心も身体も、御主人様の所有物なので」
そう言ってアイリスは、俺の上に股がってきた。
クソ可愛いぞこのやろう。
「アイリスありがとう」
「そんな私こそ感謝の気持ちでいっぱいです、奴隷となった時に、酷い扱いを受けると思っていたので、こんなにも、大切にされるとは思ってもいませんでした。
こんなに幸せな気持ちは、初めてです」
「俺もだよ、所で俺はこの世界の事は殆ど何も知らない、赤子みたいな感じだ。
色々と変な質問をするかも知れないが、気にせず教えてくれ」
「……やっぱり……す、すみません変な事を言いまして。
分かりました、何でも分かる事は教えます」
やっぱり?何か隠しているのか?
「アイリス、何がやっぱりなんだ?」
「……正直に言いますと、その……奴隷運搬の馬車の荷台に居る時に、光る球体が天より落ちてきたのが見えたのです、その後で、左近様がその方向から、やって参りました。
左近様は、天からの使者では、御座いませんか?」
あの落ちてきた時の事だな、ならば話は早いな。
「そうだ、訳在って俺は、この世界にやって来た。だが自由に生きろと言われているので、俺はこの世界で好きな様に生きる、アイリスお前と共にな」
「有難う御座います!」
そう言ってアイリスは、熱いキスをしてきた。
また、やりたくなるじゃないか。
「この世界に来る際に、俺は色んなスキルや武具を神様からもらった。
なので、あまり人目につくのは、マズイと俺は思う」
「そうですね」
「だからこの事は、二人の秘密にして欲しい」
「もちろんで御座います」
「所で、アイリスの職業に剣士と在るが、奴隷になる前は、剣士だったのか?」
「そうですね、剣士と言えば剣士なのかも知れません、おそらく剣士は血統と訓練で手に入ると思います。
私の生まれはセレニティ帝国で、騎士の家系であり、母は私が産まれた時に亡くなり、父は帝国騎士団に所属しており騎士をやっておりました。
私は幼き頃より父に剣を教えてもらい、将来的に騎士団に入る予定だったのですが、父の騎士団は戦で全滅し、その原因が父の裏切りだったそうです。
裏切りは重罪で私は死罪となる筈でしたが、まだ幼いと言うことで、奴隷として売られることになりました、そして奴隷としてザルツ王国に来る途中で、御主人様にお会いした訳であります」
なるほど、だから剣士の職業か。
「そうか、父上はどうされたのだ?」
「それが父も一緒に戦死したようです」
「すまないな、辛いことを聞いて」
「いえ、御主人様の要望に私は、全て答えたいのですよ」
なんて愛くるしいんだアイリス。
「所で、覇王の職業ってなにか解るか?」
「覇王?……そう言えば昔、この世界を統一した、超帝国の初代皇帝が持っていた、伝説の職業ですね。まさか御主人様?」
「そうだ、持っている」
「さすが、私の御主人様です!でもこれは知られると、貴族や王族等から命を狙われるかも知れませんね」
「そうだな、今の話から察すると、統治者にとっては、厄介な職業みたいだからな、これも隠しておくか」
「それが懸命かと思います」
「それと明日に王宮に行ってから、ナッソーに向けて旅立つ。
俺は、あの湯気の出ていた山に、家を建てて暮らすつもりだ、この世界で金を稼ぐには何が良いと思う?」
「御主人様は、戦闘職専門の様ですので、傭兵で各地の戦場で稼ぐか、盗賊を狩る賞金稼ぎか、モンスターやダンジョンを攻略する、冒険者が宜しいかと思います」
「ダンジョン?そんなのが在るのか?」
「はい、ダンジョンは放置しておくと、魔王が誕生してしまいます、それを防ぐ為に、各地の統治者が冒険者に金を支払い攻略するのです。
自前の軍ですと、その間に他国から攻められる可能性も御座いますから。
ナッソーでしたら傭兵や賞金稼ぎ、冒険者も集まる都市ですので、仕事も多いかと思います」
なるほど、ナッソーはそんな都市なのか。
「次に、これからの生活の事だが、もちろん一緒にベッドで寝て、風呂にも入り、飯も食う」
「それは、いけません、御主人様と奴隷が一緒に寝るなど、有り得ません、私は床で寝ます、食事も一緒にとは聞いたことはございません」
「ならば、俺も床で一緒に寝よう、食事も取らない」
「御主人様!」
「アイリスどうする?」
「……御主人様は、意地悪です」
「ようやく解ったか、そろそろ夕食に行くか」
そう言って俺は服を取り着替えた。
しかしアイリス照れながら言ってたな、可愛い。
宿屋の階段を降りて食堂を見ると、食堂はもう始まっている様であった。
俺達は、食堂に入ると、他の客がアイリスに視線を集める。
そりゃそうだ、こんなに綺麗なんだからな。
「いらっしゃいませ、左近さん」
「蘭さん、またバイト?」
「そうなんですよ、どうぞこちらにお座り下さい、ご注文は何にしますか?」
「蘭さんのお勧めで、良いよ」
「私も同じ物で、お願いします」
「解りました、少々お待ち下さいね」
そう言って奥に蘭さんは入って行った。
蘭さん、巫女姿で食堂の仕事もするんだ、可愛いな。
「御主人様、可愛いとか思ってません?」
「何を言っている、そんな訳は無いだろう」
はい、思っておりました。
でもこれって嫉妬してくれているのかな?可愛いな。
「所で、傭兵の事をもう少し教えてくれ」
「傭兵ですか……私も傭兵の事は、あまり知りません。
私の知っているのは、何やらナッソーの酒場が、この辺りの戦場の口利きをやっている様ですね。
それと、傭兵部隊は傭兵の名前の知れている人が指揮を取るか、各国の将軍の部隊に配属されます。
傭兵が部隊の指揮をとる場合は、裏切りを警戒して奴隷部隊にする場合もあるそうです。
これは冒険者も同じ理由で、奴隷をパーティに入れる様ですね」
「そんなに、裏切りが多いのか?」
「多いと言うより、保身でしょう。
傭兵や冒険者は、忠誠心も在りませんし、お金さえ貰えれば、どちらにも味方しますし、負けると思ったらすぐに逃走します、命有ってのものですからね。
それならば奴隷を配下にした方が、傭兵部隊や冒険者のパーティは、安全で信用が出来ます」
「なるほど、理にかなっている。俺もゆくゆくは、増やす方向で考えないと、いけないな」
「性奴隷ですか?」
い、今アイリスの目尻がピクリと動いたぞ……怒っているのか?
「違うよ、戦で使えそうな者に限定してだ」
「良かった」
この流れは、そっち目的の奴隷を露骨に増やすと、殺られるな……慎重に行くか。
「お待たせ~、本日のお勧め、ホーンラビットの甘辛ソース煮で御座います」
ホ、ホーンラビット?それって、モンスターじゃないのか?ウサギの仲間だろうから、食べれない事は、無いのだろうけど。
ダメだ、この世界では一般的なのかも知れない、食べてみるか。
……意外といけるな。
「良かった口に合った様だね、マダマダ有るからね」
そう言って、蘭が厨房に料理を取りに行くと、アイリスが衝撃の言葉を言った。
「ご、御主人様、ホーンラビットって、モンスターですよ、本当に美味しいのですか?」
「えっ?この世界では、食べないの?」
「……はい」
「ま、マジか」
やられた、でも美味いし良いや。
その日の夕食は、アイリスもホーンラビットの料理を食べて、その後に部屋に戻ると、アイリスにスキルで増強された以上に、絞り取られた。
これは完全に、食堂の話が原因だな。