暴風姉妹
左近達が内裏で帝に謁見していた頃、珠とパンドラは、中央街道の帝国領に少し入った場所で家紋の入った軍旗を地面に突き刺し、帝国軍を待っていたのであった。
「姿が見えたけどなかなか来ないじゃない!ちょっとパンドラ、どうなっているのよ?」
「そりゃあんなに人数が多ければ、行軍速度が遅くなるのは仕方がない事です。
むしろ責められるべきは「斥候が来たから、本隊も近くのはずです、ここで待ちましょう」と斥候を皆殺しにして言ったお姉様の方では?」
「うるさいわね、馬なんか乗ったのは数百年ぶりなんだから仕方がないでしょ!……お尻が痛いのよ」
「……お姉様、キャラが変わってませんか?もしかしてこれが本性?」
「うるさい、妹なら妹らしく黙って姉に従いなさい」
「それは違うと思いますが……とりあえずもう少し近付きましょう」
「ちょっとパンドラ待ちなさい!」
そう言って二人は馬に乗り、帝国軍本隊に向かって行ったのであった。
しかしルタイ皇国の軍隊はもしかたら既に撤退したかもしれんな。
そんな事を考えながらルイスは馬を進めていたのであった時であった、エミリオがルイスに話し掛けて来たのであった。
「さすがにルタイ皇国は、この軍勢に戦いを挑むなどバカな真似はしないでしょうな」
「そうですね、もしもルタイ皇国が来たとしても、我が軍には帝国専属の勇者のブリリアント公もいらっしゃる事ですし」
そうだ、出来れば出て来て欲しい。そしてルタイ皇国軍を撃ち破り、アイリを我が手に……まさかオークションにかけられる前に、アイリを奴隷にした商人が売却してしまうとは。
あの時に出会ったのはまさに神の御導き、次こそこの手に入れてやる。
そんな事を考えていると、ルイスの元に伝令がやって来たのであった。
「報告します!前方に美しい女性が二人、こちらに向かって来ております!二人とも黒い髪ですので、ルタイ人だと思われます」
「使者か?」
「い、いえ……それが軍旗の先に我が軍の斥候で出た者の首が……」
その伝令の言葉に、その場の全員が思わず絶句したのであった。
誰もが思った、そうこの二人は使者等では無い、しかもたったの二人でこの8万もの軍勢に戦いを挑んできたのだと。
「何かの罠か?」
このルイスの考えは誰もが考える事であった。
「皇太子殿下、ここからは広大な草原の為に、伏兵の心配は無いかと思われます、罠の可能性は低いかと」
そうだ、確かに宰相の言う通りだ、罠では無い……だとすると本当にたった二人で来たのか?もしかすると、ルタイ皇国の勇者なのか?だとするとルタイ皇国は二人も勇者を召し抱えている事になる、こちらは一人しかいないどうする?
……待てよ、本当に勇者なのか?これはルタイ皇国の策で、勇者と思わせて我等を撤退させる策かもしれない。
しかし本当に勇者であった場合はどうなる?2対1だと勝てる可能性は低い、そんなギャンブルは出来ない、ブリリアント公を無くせば我等は、苦境に立たされてしまう。
たった二人の女でこの私をここまで悩ませるとは……やるな左近。
ルイスが珠とパンドラの存在に頭を悩めていると、二人の後方から男がやって来たのであった。
「殿下、何を悩んでいるんですか?まさかこの勇者である私が負けるとでも?」
そう言ってやって来たこのキザったらしい男は、名をジョゼ・ブリリアント辺境伯と言い性格は少々残虐的な所があり、帝国も頭を痛めていたのだが、勇者の中でもレベルが高く、戦闘も強かった為に全てが不問にされていた男であった。
「いや思ってはいないさ、ただ二人とも勇者の可能性がある、その場合だと、いくらブリリアント公でも2対1はさすがにキツかろう」
「確かに、しかし相手は所詮女です、私が負ける確率は低いでしょう。それにヤバくなったら空間転移で逃げますよ。
それとこれはチャンスです、その二人が勇者であった場合、捕らえれば帝国は一気に3人の勇者を抱える事になり、ウエンザー王国に匹敵する事になりますので、この大陸での発言力も増すことになりましょう」
確かにブリリアント公の言う事は一理ある……まさかルタイ皇国も二人も勇者を召し抱えているのは考えにくいし、もしも召し抱えていたとしても、相手の勇者の人数が解らない以上は、ここで二人を投入する愚行をおかす様なバカな真似はしないはずだ、あの左近なら。
「ブリリアント公、頼めるか?」
「二人の女はそんなに美しいのなら、捕らえて私の物にしてもよろしいので?」
「……嫁にでも奴隷にでも好きにするが良い」
「了解」
そう言うとブリリアント公は唇をペロリと舐めて空間転移を使って前線に向かって行ったのであった。
「しかし、何を警戒しているのか、なかなかこちらに来ませんね……やはりこの首のせいで警戒しているのでしょうか?」
「パンドラ、貴女がこうすれば敵が警戒して、強い者が出てくると言ったから、付き合ったのですよ。
やはり私があのまま突っ込めば良かった」
「じゃんけんで負けたお姉様が悪いのです、最初に戦わせてくれると約束をしたのを、お忘れたのですか?」
「覚えているわよ……しかし……あ、誰か出てきた」
馬から降りて立っている二人の前に、空間転移で出てきたブリリアント公がやって来たのであった。
「ほう、ルタイ皇国の女はこんなにも美しいとは……楽しくなりそうだ、ジョゼ・ブリリアント辺境伯だ、どっちが相手をしてくれるんだ?何なら二人同時でも良いぜ」
そう言ってブリリアント公は髪をかき上げて、キザったらしく言ったのであった。
「気持ち悪いですね……ではお姉様、約束通り私が先に戦わせて頂きます」
「どうぞご自由に、こんなにも気持ち悪い者の相手は私は嫌です」
「では我が姉の了承を得たので、島 左近衛大将 清興が娘パンドラがキモい貴方のお相手を致しましょう」
そう言ってパンドラは、腰の刀に手を乗せて優雅にポーズを決めて言ったのであった。
「貴様が勇者か……その美しい顔が苦痛に歪む姿を想像するとゾクゾクするなぁおい!」
そう言ってブリリアント公は、地面の土を蹴り上げてパンドラの顔に土をかけると同時に、剣を抜くと同時にパンドラの胴を薙ぎ払ったのであったが、ブリリアント公がかけた土もブリリアント公が放った剣も、パンドラに当たる手前で止まったのであった。
「な、なんだこれは?貴様、本当に勇者なのか?」
「勇者?まぁ確かに私の職業には勇者が有りますが、所詮は勇者……そんな職業は私には必要ありません」
「バカにしおって!乱舞!」
ブリリアント公がそう叫ぶと、パンドラに無数の剣撃が止まる事無く襲い掛かったのである。
「何故だ!何故当たらない!」
そう叫びながらブリリアント公が剣撃を放っていると、パンドラは涼しい顔でブリリアント公に言ったのであった。
「当たらないのでは無く、貴方が私に当てる力が無いだけです……ここで科学のお話をしましょう、まぁお父様と私にしか理解できると思いませんが、猿にも慈悲を与えてあげる事にします。
この世には重力と言うのが在ると言うのはご存知で?知るわけが無いでしょうね、愚問でしたね。
まぁ簡単に言うと大地に引っ張られる力の事です、その力を操る事が出来る私には、こんな芸当が出来る訳です」
そう言うとパンドラの身体が一瞬で消え、ブリリアント公の頭上に浮かんでいたのであった。
「何処だ!何処に行った!」
そう言って回りを見渡していると、ブリリアント公の背後にパンドラは音も無く静かに降り立ち、とても静かな声で言ったのであった。
「何かをお探しで?」
その言葉を聞いたブリリアント公は、振り向き様に剣撃を放ったのであったが、パンドラにその腕を掴まれてしまったのであった。
「クソ!」
「汚い言葉ですね」
パンドラがそう言った瞬間、ブリリアント公の掴まれていた腕がグシャリと潰れ、その先が地面に落ちたのであった。
「あ……あ……」
ブリリアント公は、あまりの出来事と激痛で混乱し、ちぎれた右腕を押さえてその場に踞ってしまったのであった。
「終わりですね」
冷たい眼でそう言ったパンドラが、すらりと刀を抜くと、足下に踞るブリリアント公の首に向けて振り下ろしたのであった。
「さすがに陸奥守吉行、血が一滴も着いていませんね」
そう言って刀を見るパンドラの足下には、胴体から斬り落とされたブリリアント公の頭が転がっており、その光景に帝国兵は、暫く信じられないと言ったように固まっていたのである。
「パンドラ、遊びすぎですよ。次は私の番ですね」
そう言って珠が前に出ると、兵士達は恐怖で身体を凍りつかせたのであった。
「ブラッディヘッジホッグ!」
珠がそう言うと、ブリリアント公の胴体から溢れ出ていた血液が浮かび上がり、兵士達の上空でどす黒く赤い球体になったのである。
「楽に死ねれば良いですね」
珠がそう言うと、その球体から無数の血液の刃が兵士達に降り注いだのであった。
大地は、瞬く間に地獄に変わり、少しの切り傷でもそこから全身の血液が次々と、球体に向かって飛んで集まっていき、そしてまた血液の刃が兵士達に降り注ぐ、まさに弾切れの無いマシンガンの様に次々と兵士達を殺して行くのであった。
「ば、化け物だ!」
「こんなの勝てる訳がねえ!」
そんな事を言い出して帝国兵は、我先にと逃げ出したのであった。
「退くな!たかが二人の女だぞ!戦え!」
あの馬に乗っている者が、部隊を率いる者か。
そう思ったパンドラは、逃げる兵士に混ざりその男に近付くと、飛び上がると同時に男の首を斬ったのであった。
チャンス!今なら敵兵士達と一緒にパンドラを亡き者に出来る!
そう考えた珠は血液の刃をパンドラに集中すると、その刃はパンドラから逃れる様に大きく軌道を変えたのであった。
やはり先程言っていた重力と言う物が関係しているのでしょうか?では、これならば!
「ウオーターブレイド!」
そう言って珠が刀を振ると、水の刃が兵士に襲い掛かったのである、無論その先にいたパンドラを狙っての攻撃だったのだが。
「あー!ちょっとお姉様!ドレスが濡れたじゃないの!」
そう言ったパンドラは、水に濡れた部分を珠に見せて、怒っていたのであった。
あれで水に濡れるだけ……あの超水圧の攻撃が効かないなんて、何処までデタラメな強さなんでしょう……これは殺し合えばどちらが勝てるか…いや負けるかもしれませんね。
全く父上は、何て者を召喚したのでしょうか、ここは私が強くなってから仕切り直すしかありませんか……。
そんな事を考えながら珠は、向かってくる兵士の剣をかわすと同時に刀で斬っていたのであった。
「本当に蟻の様に多くてウザイですね!グラビトンブラスター!」
パンドラがそう叫ぶと、パンドラの前に光が集まった瞬間であった、一筋の閃光が帝国兵を包み、そこにいたものは全てが蒸発してしまったのである。
そしてその光は、ルイスとエミリオのすぐ近くを通り過ぎて行ったのであった。
一体何が起こったのだ?すぐ近くの味方が消えただと?
そうルイスがそう思った瞬間であった、目の前の兵士がまるで何かに押し潰された様にグシャリと潰れたのであった。
なんだこれは?ブリリアント公は、何処へ行ったのだ?それに我等は8万もいるのだぞ、たった2人に負けるはずがない。
そんな事をルイスが考えていると、上空から女性の声が聞こえてきたのである。
「やっと見つけましたわ、ルイス・セレニティ」
その言葉に、その場にいた全員が見上げると、黒い髪のドレスを纏った女性がフワリと優雅にその場に降り立ったのであった。
「貴様は何者だ?」
思わず言ったルイスの言葉に答えるかの様に、パンドラは優雅に スカートをつまみ上げて貴族の様なお辞儀をして言ったのである。
「申し遅れました、私は島 左近衛大将 清興が娘パンドラと申します、この度は私の準備運動に付き合って頂き感謝しております」
「左近殿の娘だと?これが準備運動だと?」
「はい左様で、私に傷をつけようと思うなら数千万……いやそれでも不可能でしょうね、最低でも我が姉位でないと。
それと貴方の命は、不本意ですが帝の命で頂かない事になっております。さぁ早くお逃げなさい、それ以外はここで殺させて頂きますので」
「バカにしおって!」
そう言って逆上したルイスは、馬を走らせてパンドラに馬上から剣を振り下ろしたのだが、パンドラに当たる前にその剣は止まってしまったのだった。
「バ、バカな!」
「あまり調子に乗ると痛い目を見ますよ」
パンドラがそう言った瞬間、ルイスの乗っていた馬が倒れて、バキバキと音を立てて小さなボールになってしまったのである。
「う、うわー!」
その光景を見た兵士達が我先にと逃げ出したのであったが、それを許すパンドラではなかった。
人差し指をその兵士達に向けて、クイッっと指を下げた瞬間、兵士達はその場にグシャリと潰れたのである。
「で、デタラメだ、こんなデタラメな強さ……まるで我等が虫けらの様では無いか?」
あまりにも圧倒的な強さを見せ付けられて、ルイスは涙を流して大地を殴り付けたのであった。
「やっと自分の立場が解りましたか?そうですよ私達にとって、貴殿方は虫けら以下で御座います。
そうだ、命は取るなと帝の命でしたので逃がせば良いと思っていましたが、よくよく考えて見るとそれ以外の事は言われておりませんね、なので気が変わりました、貴方を捕虜にして、私のオモチャにしましょう、それならば命だけは無事です。
気が狂うかも知れませんが」
パンドラのその言葉で、ルイスは初めて真の恐怖と言うものを感じたのであった。その時である、この誰もが恐怖で動けない状況でエミリオが動いたのであった。
「殿下、お逃げなさい!」
そうエミリオが叫んだ瞬間、エミリオの回りにいた護衛の暗部の者達が、パンドラに向かって煙玉を投げつけたのであった。
「小賢しい!」
そう言ってパンドラは、煙玉に向かって重力を倍増したのだが気体にはあまり効かなかったのであった。
しまった!
パンドラがそう思った時にはルイスは直ぐ様、近くの森に入りその場から逃げ出したのであった。
クソ!
パンドラは再び上空に上がり見渡すと、森の木で中が殆ど見えない、仕方なしに先程叫んだ者の回りの者を重力で押し潰すと、パンドラはエミリオの馬の頭にフワリと舞い降りて、しゃがみこむとエミリオの首を掴んで言ったのであった。
「よくも私のオモチャになる者を逃がしましたね、このまま喉を潰して殺しましょうか?」
「……こ、殺せ!」
「虫けらながら、私を出し抜くとは……名前だけでも聞いてやりましょう。お前、名前は?」
「エ、エミリオ・ニルセン」
「エミリオ・ニルセン……何処かで聞いたような……あ、エリアスのお祖父様が言っていた、あのエミリオですか!これはお父様に良い手土産が出来ました」
そう言うとパンドラはエミリオの血液に、軽く重力をかけてブラックアウトの状態にして気絶させたのであった。
そしてパンドラは目につく者を全てを押し潰すと、エミリオを連れて空間転移でレイクシティに戻って行ったのであった。
そう、珠と青葉を忘れて。
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左近達はルタイ皇国から帰国するとアイリスとラナ、そしてセシルとセシリーの5人で囲炉裏の間に集まっていたのであった。
「何て言うか……今日はセシルとセシリーの二人に重要な話が有るんだ……」
左近はそう言って、黙りこんでしまったのであった。
普段左近は二人に対しては、何でも話してきたのだが、この時ばかりは事情が違ったのである。
二人がこの結婚の申し入れを断れば、残る選択肢は奴隷商人に売り飛ばすか、殺すしかないのだが、この二人は左近の傍に長くいた為にあまりにも知りすぎた為、売り飛ばすと言った選択肢は無くなる。
すると残るは殺すしかないのだが、左近はこの二人を殺したくは無かったのであった。
その空気を感じてか、妹のセシリーが口を開いたのであった。
「御主人様はあの時、奴隷商人から私達を購入して助けて頂き、こんなにも良い暮らしをさせて頂きました、普通の奴隷では有り得ない事です。
それに私達を勇者にしていただき、私達を見捨てたザルツ王国に一泡吹かせてやる事が出来ました。
本当に私達姉妹は御主人様に感謝しております。
ですから御主人様に何を命令されても受け入れますが、私達の本音は御主人様から離れたくはありません……なので私達が不要と言うならば、その手で殺して頂きたく思います」
やはり二人も何かを感じていたのか……ここは言うしかないか。
「二人共、俺から頼みたい事がある……俺と結婚してくれ」
「解りました、この命御主人様の為に……え?」
「……セシリー違う、今御主人様は結婚してくれと言った」
「え?え?不要になったから死んでくれでは?」
「……違う」
「えー!私の覚悟は何だったの!」
「で、どうなんだ、お前達の気持ちは?」
「……1つ条件が有ります」
条件?セシルがそんな事を言うなんて珍しい、とりあえず聞いてみるか。
「何だ、言ってみろ」
「……御主人様と私達に子供が出来て、第一子は島の家の跡継ぎなので仕方がないのですが、第二子はスターク家の跡継ぎにして欲しいのです。
それもザルツ王国ではなく、ルタイ皇国の所属でお願いします」
「つまりはルタイ皇国でスターク家の家を新しく作らせろと言うことだな?」
「……はい」
なるほど、自分達を見捨てたゲハルトの所には居たくないが、スターク家は残したいと言った事だろう。
「良いだろう、セシリーは何かあるか?」
「出来れば、私達の事は両親に知られたく無いです……自分達の貴族の見栄のために、私達を売り飛ばした両親です。
私達が結婚したのを知ると、必ずや御主人様にたかりに来ます、あの人達はそう言う人なんです」
何だか聞いた話では、かなりの毒親っぽいな……かかわり合いになるのは俺もごめんだが、しかし二人の両親だし……そうだ、良い事を思い付いた。
「もしも二人の両親が来られて来た場合は、金銭の援助はしないが、軍人として働く事で手を回そう、そこで武功を上げれば、スターク家の名誉も回復出来るのではないかな?」
「しかしあの人達はそれで納得するでしょうか?」
「……しないな。昔は気骨もあった武人のようでしたが、今はただの酒に溺れた没落貴族」
「ならば大丈夫だ、戦で生きてきた者は、なかなか忘れるものじゃない、実戦を味わえば直ぐに昔に戻るさ、俺に任せろ」
「……解りました」
「私も御主人様にお任せします」
「決まったな、では今日よりセシルは、セシル・スタークでは無く、セシル・島だな、セシリーはセシリー・島と名乗れ。今後もよろしくな」
「……はい」
「有難うございます!」
「どうやら全てが丸く収まった様ですね、所で誰が第一夫人ですの?」
そう言ってパンドラが爆弾発言をやって囲炉裏の間にやって来たのであった。
「パンドラ、何を言って……」
待てよ、正妻や側室と違い第一夫人や第二夫人だと全てが正妻になる……パンドラ、ナイスアシスト!
「そうだな、知り合った順番で良いんじゃないか?アイリスが第一でラナは第二、セシルとセシリーは同時なので姉妹で姉のセシルが第三夫人で妹のセシリーは第四夫人って言うのはどうだろう?」
皆は暫く悩んだ後、了承したのであった。
まさかパンドラの一言で、我が家の今まで触れてはいけない部分が無くなるとは、これこそ最高の改革だ……所でパンドラは何でここにいるんだろう?
「パンドラ、向こうは片付いたのか?」
「ええ、ルイスは逃がしましたが代わりに、エミリオ・ニルセン宰相を捕らえて来ました、今は左近衛府の地下牢でエリアスお祖父様が、本人か確認なさっている頃です」
「でかしたパンドラ!……所で珠は左近衛府か?」
「…………あ!」
あ?……もしかしてだが、いやまさかな。
「もしかして確認するのは怖いが、一応聞いておく…青葉は無事だろうな」
「だ、だ、だ、大丈夫に、き、き、決まっているじゃありませんか……たぶん」
「おいこら!今最後に、たぶんって言っただろ!しかも目が泳いでるし!」
「そ、そんな事無いですわよ……あ、そうだ、エリアスお祖父様に呼ばれていたのでした。チョッと出てきますね」
そう言ってパンドラは、空間転移で消えて行ったのであった。
「あれ…完全に戦場に忘れてきたね」
「俺もラナの言う通りだと思う……ただ、喧嘩するなら人のいない所でやって欲しいのだが」
「たぶん無理でしょうね」
『うん……』
その後、アイリスの予言通りに、リイツ城にて壮大な姉妹喧嘩が勃発しリイツ城の半分が崩壊し、そして、珠とパンドラは暴風姉妹と陰で呼ばれて恐怖の対象となっていたのであった。




