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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第二章 帝国動乱編
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姉妹

 



 帝国軍が行動し始めた頃、その情報は念話にて、レイクシティの左近の元に送られていたのであった。


「帝国軍が動き出したそうだ」

 左近が左近衛府の一室で言ったのであった。


 ここはレイクシティの左近衛府、フレイアがベルサイユ宮殿をイメージして作った宮殿であった。

 レイクシティは中央の城から城門に向かい、各国の元首や貴族の家族が住む上級区画、将校や軍属の住む軍区画、一般人が住む一般区画の三区画に別れており、上下水道が完備され、温泉も湧き出ていたのであった。

 温泉はフレイアが左近の屋敷で気に入り、パンドラに穴を掘らせて作ったのであったが、その中の上級区画に左近衛府はあったのである。


 その中の一室で左近とエリアス、正成とパンドラは軍議をひらいていたのであった。

「そうですか……最初に出た部隊の紋章は解りますか?」


「ホウキに乗った女性と三日月だそうだ」


「やはり魔女騎士団(ナイトウィチーズ)ですか……」


魔女騎士団(ナイトウィチーズ)?何ですかそれは?」

 不思議そうに正成がエリアスに聞いたのであった。


「帝国には3つの騎士団が御座います、常に戦場の先陣を任される精鋭の聖導騎士団、飛竜(ワイバーン)を操り敵の懐に攻撃する突入部隊の聖龍騎士団、そして魔導剣士ばかりで編成された遊撃隊の魔女騎士団(ナイトウィチーズ)が御座います。

 その彼等が出てきたと言う事は……帝国は本腰を入れてきたと言うことですね」


「しかも御丁寧に、帝国軍本隊の兵力は8万だそうだ」


「8万……一気に決戦に持っていくつもりか、しかしこちらの兵力は未だ完全にこちらには来ていない、弾正に回せる兵力は多くて2万……しかも勇者達は回せないし敵はこちらの地形を熟知してる、楽しいな清興よ」


「全く戦にならんな……で、どうする?これ以上兵の損耗は避けたい……正成、何か良い案は無いか?」


「お手上げです、帝国の動きが早すぎました。盗賊達の輸送隊襲撃で行軍速度は遅くなりますが、所詮は焼け石に水ですね。

 ここは作戦の行程が遅れますが、こちらも覚悟を決めて、今いる全軍で戦えば我等は敗けはしないでしょう」


「口惜しいがそれしかあるまい……帝にもルタイ皇国に行っているアイリスを通じて報告させよう……いや俺が行って直に報告し詫びるとしよう……くそったれが!」

 そう言って左近は机を叩く拳に力が入り、己の未熟さに怒りがわいたのであった。


「私が1人で行きましょうか?」

 パンドラが、ソファーで横になり、ナッソーより取り寄せた紅茶を飲みながら、「今日は良い天気ですね」と言う様な口調で言ったのである。


『何?』


「ですから私が1人でその8万を倒しましょうかと言ったのです。まさかお父様、そのお歳で、もうろくされたのですか?」


「パンドラ様!」


「すみませんエリアス様、少し言い過ぎましたね。で、どうされますか?」


 最近こいつは口が悪くなってきたな……ナッソーの家で珠と何かあったのかな?まぁパンドラの力が解るから良いか、それと新しい召喚の為の魂が必要だろうからな。

「解った、許可しよう」


「清興!」


「大丈夫ですよ正成様、私を倒すなら数千万の軍が必要かと……それでも足りませんけどね。

 そうだお父様、剣を一振りと馬を1頭、それとロンデリックに衣装を作らせても宜しいでしょうか?」


 剣と馬は解るが……何でロンデリックなんだ?何だか嫌な予感しかしないが、仕方がないか。

「解った、好きなのを持って行け」


「解りました、お父様の青葉をお借りしますね」


「パンドラ、待て!青葉はだけはダメだ!」

 そう言う左近を無視してパンドラは空間転移でナッソーに行ってしまったのであった。


「行かれましたな……多分聞いてませんぞ」


「だろうね……清興、あのパンドラって子は誰なんだい?スキルで心の声も聞けない……全くの無なんだよ」


「正成、聞かぬ方が良いぞ……」

 その左近の言葉にエリアスは頷いていたのであった。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 さてと、あの姉様だけは苦手なのよね……しかし、私の部下を1人、魂レベルまで殺した唯一のドラゴンが私の姉になるとは、これは運命を感じますね。

 そう思いながらパンドラは左近の邸宅に向かって行ったのであった。


 左近がルタイ皇国から戻って来た次の日、パンドラは十字軍のメンバーや、家の者に紹介された時にお互いの正体に気が付いたのであった、珠はパンドラの正体は悪魔で、パンドラは珠の正体はドラゴンで、自分の配下の1人と戦ったドラゴンだと。


 このパンドラの配下は以前は8名であった、それが数百年前に召喚されルタイ皇国に災いを振り撒いていた所を、帝の願いを聞き届けた珠が討伐したのであった。

 もちろんパンドラは怨み等の感情は持ち合わせていない、ただパンドラにはその強さが魅力的なのだ、1度でも本気で戦ってみたいそんな欲望がパンドラを包み込んでいたのである。


 しかしそんな事を左近は許す筈も無く、パンドラはその苛立ちを8万の軍勢にぶつけようと名乗りをあげたのであった。

 左近は悪魔召喚には魂も必要だと思っていたのだが、実際にはパンドラの召喚時の魂の余剰分で十分であり、これは単なる八つ当たりであったのである。


「これはパンドラ様、今日はどうされたので?」

 そう言って邸宅から出てきたのは十字軍の100人隊隊長のフンメルであった。


「ちょっとお父様の宝物の中から剣を一振り頂きに……フンメル、お姉様は何処に行かれましたか?いつもなら近付いただけで殺気を放っておりましたので」


「先程、ミラとクレアを連れて、エルマさんの所に遊びに行かれましたが」


「それは良い事を聞きました、では遠慮なく中に入るとしましょう」


 全く、この姉妹は何処まで仲が悪いんだか……御館様が今までパンドラ様をルタイ皇国から呼び寄せなかったのも頷けるよ。

 しかし御館様って一体何歳なんだろ?あんなに大きな子供がいるのだから、結構なお歳だよな?……本当にルタイ人は若く見えるから良いよな。

 そんな事を思いながらフンメルは持ち場に戻って行ったのであった。




 しかし、お姉様の収集癖には本当に感心しますね、どうやったらこんなにも宝剣や伝説の武具を集められるのか……あぁクソ!本当に多いし少しは整理しなさいよ!

 そう思いながら、パンドラが宝物をマジックバッグから出していると、パンドラの背後から声がしたのであった。


「おやまぁ、溝の臭いがすると思ったら貴女でしたかパンドラ」


「これはお姉様、いつからトカゲから犬に進化なさったので?」


「パンドラ、ここで死にますか?」


「お父様の許可が有れば、いつでもお姉様を地獄へ招待致しますよ」


「父上はどうして貴女なんかを娘として……私の妹として貴女を連れて来たのか……で、今日は何の用件ですか?父上の命ですか?」


「そうです、お父様がお困りでしたので、少々8万人ほど殺しに行きますので、剣を取りに……ああもぉ!お姉様!少しは整理と言う事を覚えて下さりませ!」


「そんなに言うのなら、貴女がやれば良いじゃありませんか?」


「何で私が下女の様な真似をしなければならないので?」


「パンドラ、父上が言っておられた様に、島の家には下女は作りません、何でも自分でやるのです」


「あぁ、そうでしたね…これにしましょう、これならスキルに必中も付いていますし、使い勝手が良さそう、名前は……カーテナね」

 そう言ってパンドラは一振りの細いレイピアの様な剣を取り出したのであった。


「パンドラ、こちらの剣は必中は付いていますか?」

 そう言って珠が落ちていた剣を一振り手にしたのであった。


「お姉様は本当に見る目が無いのですね、そちらは速度上昇と体力吸収しか……チョッと待ってください、何でお姉様が剣を手にするのですか?」


「それは、私も行きますので」


「はぁ?お父様は私だけに行くのを許可したのですよ!しかも青葉迄、私に貸してくれたのですから」


「青葉を?それは変ですね、父上は馬にだけは変な拘りがあり、絶対に溺愛している青葉は、母上様達にもお貸しされない筈なのにねぇ?」


「そりゃお父様は最後に何か言ってましたが……とにかく貸してくれたのです!」


「ますます私も一緒に行かないと行けませんね。貴女が島の家の戦いを汚さないか見張りも必要ですし、何よりも青葉に傷でもつけたら……父上は泡を吹いて倒れるでしょう。

 この剣は必中は付いていますか?」


「名前はグラム、必中の他に力上昇大が何故か2つも付いています……解りました一緒に来るのは良いでしょう、ただし条件が有ります。

 1つはこの人間の姿で戦って貰います、お父様は私を召喚された時に、他の姿は嫌な感じがしましたので」


「良いでしょう、父上も変な詮索をされるのは困るでしょうから」


「2つ目は、殺した兵士の魂は全て私の物です、これはお父様との契約にも入っていますので」


「かまいませんよ、私は魂を食べる悪魔の様な下等生物では御座いませんので」


「本当に我が姉ながら、いちいちムカつきますね……最後にお姉様のその服装では無く、お母様達の様な服装になって頂きます」


「何を言うのですか!これは着物と言ってルタイ皇国の伝統の服なのですよ!」


「それはお姉様が、お父様の事を全然解っていないからです。よく考えて下さいませ、お母様達は戦で戦う時はいつもあの服装です、それにあの服はお父様が考え出したと言うでは御座いませんか、お母様達も嫌がってはおりませんでしたし、ラナのお母様に至っては進んで着たがっていたでしょう?」


「……確かにそうですね、父上はあの服装を島の家の女性の戦の服装にしようかと思っているのかも知れません……解りました、どこで作れるのですか?」


「ではこれからご一緒にロンデリックの店まで行きましょう、あの者はお父様の専属の服飾師ですので、在庫も在るでしょう」

 フフフお姉様、まだまだ甘いですね、所詮はトカゲの脳ミソと言った所でしょうか。

 普段、和服しか着ていないお姉様は絶対にチンチクリンな格好になるはず、そして恥ずかしくなったお姉様が爆発して、一緒に来ないか戦場でドラゴンの姿に戻るはず。

 それをお父様が聞けば、お姉様にお父様の怒りの雷が……そうだ、ついでに青葉の件もお姉様の責任にしましょう。


「それもそうですね、ではロンデリックの店に行きましょう」

 まだまだ甘い、所詮は悪魔の浅知恵と言った所か、父上の娘は私だけで良いのです、我が姉上や兄上以外の兄妹は要りません、戦場でどさくさ紛れに殺して差し上げましょう。

 もしくは私の方が戦果を上げてこの悪魔に立場と言うのを解らせて、こき使うのも良いですね。


 そう言った邪心を背景に、二人はロンデリックの店に向かって行ったのであった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 ナッソー新市街地の商業区画の一角に在り、店には娼婦の女性やナイトクラブの女性が多く詰めかけ、その賑わいはレンヌにいた頃以上の繁盛ぶりであった。

 それもそのはず、一時的にとは言え、ナッソーにはルタイ人が増えたが為に、ママが左近が考案した服なら同じルタイ人には受けが良いだろうと、安直な考えでロンデリックの店を女性達に推奨した所、ルタイ人のみならず、ナッソーの荒くれ者にも受けが良かったので、その為に女性達にはチョッとしたブームになっていたのであった。


「ここってこんなにも流行っていました?」

 パンドラの記憶には、左近の殆ど客の居なかったロンデリックの店の記憶しか無かったので、この繁盛ぶりが信じられなかったのであった。


「一週間程前からこんなにも流行りだしたのですよ……さてこんなにも人が多ければロンデリックを探すのも一苦労ですね」


「会計の所では?」


「それがマルディの所のエルフの女性達が、ここで働きたいと言い出しまして、先日口利きをしたばかりなのですよ」


「本当ですね……口惜しいですが人混みは嫌いです、諦めましょう」

 そう言ってパンドラが諦めようとした時であった、二人の後ろから気の抜けた声がしたのであった。


「あれぇ?珠ちゃんじゃない?急に飛び出したと思ったらぁ、こんな所にいたのぉ?」

 二人が振り返ると、ミラとクレアを連れたエルマが立っていたのである。


「貴女は何でこんな所に?」


「チョッとしたミラとクレアのファッションの教育にねぇ。あれぇ?そちらのきれいな女性は……どちら様?髪の毛が黒いからルタイ皇国の人かなぁ?」


「これは我が愚妹のパンドラです、実はこの愚妹と服を買いに来たのですがこの繁盛ぶりで、ロンデリックが見当たらないので、もう帰ろうかと思っていたのですよ……それと珠ちゃんでは無く、珠様と呼びなさい」


「ロンデリックさんなら裏方に引き込もっているよ、一緒に行こ!珠ちゃん、パンちゃんも」


「パ……パンちゃん……?」


「エルマ……貴女って人は……」


 そう二人の不満を背にエルマはバックヤードに勝手に入って行ったのであった。






「ロンデリックさんいるぅ?」


 何でロンデリックはさんで、私はちゃんなのですか!

 そんな事を思いながら珠がエルマの背後で憤慨していると、バックヤードの奥からやつれたロンデリックが出てきたのであった。

「ハイハイ、おやエルマさん、今日はどうしましたか?」


「珠ちゃんとパンちゃんが服が欲しいんだって、私がコーディネートして良い?」


「おやこれは珠様に、そちらのお美しい女性の方が……パンちゃん?」


「パンドラです、この愚姉の妹のパンドラです。

 今日は、お母様達が戦の時に来ている様なドレスを探しに来たのですが、有りますか?」


「あぁ御座いますよ、あのドレスの鎧は、奥様達個人の鎧ですので、下に着るドレスのみになります。

 そして左近様に言われているのは、丈夫な生地で足元が隠れる様なデザインと言われております……まぁ早い話がこちらに御座いますドレスがそうですね。

 私はこれから商品の生地を仕入れに行きますので、代金は後程にでも十字軍に回しておきますよ、ではごゆっくり!」

 そう言ってロンデリックは、足早に出掛けて行ったのであった。


「ロンデリックさん、何かに追われているようだね」

 思わず誰もが思った事をミラが言うと、誰もが頷いたのであった。



「さてと、じゃあ始めましょうか!」


「私もやりたい!」

「私も!」


「んじゃ、ミラとクレアはパンちゃんをお願い、私は珠ちゃんをコーディネートするから勝負だ!」


『オー!』


「チョッと待ってください、何でお姉様がエルマさんで、私はこの子達ですの?」


「パンドラ、こう言った事は目上の者に譲るものです、それが大人の女性と言うものですよ」


 や、やられた!お姉様のこの目は、既に勝ち誇った気でいる。エルマが向こうについた以上、私に勝ち目は無いじゃないか。

 最早パンドラの思考は、どちらがドレスを着こなすかの勝負になっており、当初の目的が頭から消え去っていたのであった。




「ちょっとこれは……胸元が空きすぎなのでは?それにこれって、ふんどしの様ですけど……」


「もう、わがまま言わないの!せっかく髪型もセットして、髪飾りも貸してあげるのだから静かにする!珠ちゃんは身長は低いけど、素材は良いんだから、もっと自信を持って」

 そう言ってエルマに着せられている珠のドレスは、胸元が大きく開き強調したドレスで、色は青地に胸とお腹、そしてスカートの真ん中が黒いかわったドレスであったのである。


 さらにそのスカートの真ん中のラインに沿って、スリットを入れたものだから珠の脚がスカートの隙間から、チラリと顔を出していたのである。

 そして髪型も長いロングの髪の毛にウエーブがかかっていたのであった。

 これはエルマが魔法で熱した金属の棒を巻き付けて、ウエーブをかけたからであったのである。


 その時であった、別室からパンドラ達が出てきたのであった。

「お待たせ~」


 そう言って出てきたパンドラは、縁に赤のラインの入った黒のドレスに、珠と同じく胸元の大きく開き強調された物であったのだが、その肩は片方だけ露になり、透かしのラインが縦に入りその下には、パンドラの美しい肌が微かにその姿を見せていたのであった。



 ふっ、このドレスはこの店で一番高い物だとか、これならばお姉様も……何ですかあれは?さてはエルマがやったのですね。

 この勝負は引き分けと言った所ですか、流石はエルマですね。




 パンドラ……あの様な妖艶な出で立ち、やはり肌を出すのがこの辺りの国の作法なでしょうか、これはパンドラの方が一枚上手でしたか。


 そんな二人の思いをよそに、エルマは苛立ちを露にしたのであった。

「あぁもう!何でロンデリックさんは、いつも後もう少しなんだかなぁ……ミラ、クレア、肉屋に行って白と黒の鳥の羽をいっっっぱい貰ってきて、それと十字軍の家族に服飾師か裁縫師の職業を持っている人を連れてきて。

 パンちゃんと珠ちゃんはそのドレスを脱いで、少し手を加えるから!久し振りに燃えてきたぁ!」


 そう言ってエルマは、他のドレスをあさりだしたのであった。


「何だかエルマって実はすごい人の様な気がしてきました」


「パンドラは知らないかも知れませんが、実はエルマはロンデリックの師匠でこの業界では神様の様な者の様です……ただ本人はあの様にやる気が無くて、気が向いた時しか仕事はやらないみたいですが」


「ほらそこ!喋ってないで、このパンツをはく!パンちゃんのそのパンツは時代遅れなの!カボチャみたいで見苦しい!

 珠ちゃんに至っては、はいていないってどう言う事?そんなんじゃ見えちゃうから!」


「は、はい……」


「着物は普通では何もはかないのに……」


「珠ちゃん!口答えしない!」


「はい!」

 最早パンドラと珠はエルマの迫力に圧倒され、最早了承するしか無かったのであった。




 その日の夜に珠とパンドラの衣装は完成した、珠は青地に白の胸を強調したドレスで、やはり前に2つ後ろに2つの大きなスリットが入り、真ん中の白の……珠曰くふんどしの様な場所には赤く大きな十字架が刺繍されていたのであった。

 そして何よりも目を引くのは、純白のマントでありその肩の部分には、白い鳥の羽が大量に備え付けられていたのである。

 まさに何処かのアニメで出てくる戦に向かう女王の様な格好でなっていたのである。


 一方パンドラは黒の先程のドレスに、スカートを後ろから前に斜めにカットされ、その中には白いミニスカートが顔を見せおり、更には黒い革のブーツをはいていたのであった。

 更にこちらは、黒いマントで珠の様に黒い鳥の羽が大量に備え付けられていたのである、その出で立ちは偶然なのか、悪魔の女王に相応しかったのであった。


 その二人の出で立ちは携わった者全てが息をするのも忘れた程であった、まさにエルマの最高傑作であったのである。

「これでよし……所であんた達はこんな格好で何処に行くの?」


「忘れていました……エルマ、暫くの間ミラの事をお願い致します。私はこの愚妹と一緒に戦に向かいますので」


「何だぁ、やっぱり馬に乗ることを考えたデザインで良かったんだぁ。それは良いけど勝てるのぉ?」


「パンドラ、相手の兵力は如何程ですか?」


「敵はセレニティ帝国の本隊の8万ですね、私とお姉様の二人なら準備運動にもならないでしょう」


『え?』

 その場いた珠とパンドラ以外が驚いたのであった。

 それもその筈である、8万人の帝国兵をたった二人の女性で立ち向かおうと言うのである、あまりにも常識はずれで、他の者以外は理解できなかったのである。


「そう言う事なので後は頼みましたよ。では行きましょうか、パンドラ」


「はい」

 そう言うとパンドラは空間転移発動させ、レイクシティに向かって行ったのであった。





 レイクシティにやって来た二人は、左近の愛馬がいる厩舎にやって来た。もちろん青葉を借り受ける為である。

 だが厩舎の入り口には、十字軍のボル配下のリザードマンが二人見張りとして張り付いていたのであった。

 この二人は、左近が青葉を警護するだけの為に連れてきた者達である。


「すみません珠様、御館様の許可が無ければ、こちらには誰も入れません、愛馬の青葉がおられますので」


「お役目ご苦労、私達はその青葉とアイリス母上の絶影を、借り受けに来ましたの」


「しかし、先程も申しました様に、御館様の許可が無ければ入る事は出来ません。どうしてもと言われるのでしたら、許可書もしくは御館様か両奥様が来られませんと」


「私達は父上の、島 左近衛大将 清興の娘ですよ」


「ええ存じ上げております、しかし規則は規則です」


「ええい、本当にボルの所のリザードマンは頭が堅い!」


「ですから、御館様も安心して大切な愛馬を、私達に預けられておられるのです」

 そう言って警備のリザードマンは、珠の要求をはね除けたのであった。


 めんどくさい、殺してしまおうか?珠の後ろでパンドラがそう思っていると、後ろから声が聞こえたのであった。


「珠様、パンドラ様、その辺りで勘弁してやってくれませんか?」

 そう言って彼等に助け船を出したのは、エリアスであった。


「これはエリアス、貴方からも言って下さい」


「二人共、珠様の言っている事は本当だ……少しゴタゴタしていたが……ってパンドラ様、何をされているので?」

 そう言ったエリアスの腰に在る刀を、パンドラはジッと見つめていたのであった。


「これは陸奥守吉行……必中が付いている……エリアス、この刀を私にくれませんか?」


「だ、ダメですよ!これは弾正殿から頂いた大切な刀で、私はこの刀しか持っていないのですから」


「確かにそれは悪いですね……そうだ、このカーテナを代わりに差し上げましょう」


 カ、カーテナだって!?……本物だ……いやしかし、これは弾正殿との……すまぬ弾正殿、これはパンドラ様の命令なのだ、決してカーテナが欲しい訳じゃ無い。

 そうだこれは、御館様への忠義なのだ。


「どうやら交渉成立の様ですね」

 そう言ったパンドラは、悪人の取引の時に悪人が笑みをこぼす様に、ニヤリと笑いカーテナをエリアスに渡したのであった。


「そういえば、お二人はそのまま戦場に行かれるので?」


「ええ」


「そのつもりですが」


「そのままでは何処の軍か解りませんので、軍旗を持っていかれては?その方が味方との余計な争いも避けれますし」


「……それもそうですね。お姉様、面倒な争いは時間のムダですし、そうしましょうか」


「ではこれを使いましょう。確かここにアルムガルド風の軍旗が……あった、これです」

 そう言って珠が、腰の小さなポシェットから2つの軍旗を取り出したのであった。


 この家紋は確か…そうだ、お姉様の嫁ぎ先の柳生の家紋。まったく未練がましいですね、まぁそこがお姉様らしい所なんですが。

 そんな事を考えながら、入り口の護衛に向かって言ったのであった。

「そこの者、槍を私達に渡しなさい」


 そう言ってパンドラは警備のリザードマンから槍を貰うと、島家、柳生家の家紋をくくりつけて、青葉と絶影を強奪し、弾正のいる中央街道の要であるリイツ城目指し馬を駆け出したのであった。








 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 パンドラ達がナッソーで、エルマの着せ替え人形の様になっていた頃、アミリア率いる魔女騎士団(ナイトウィチーズ)の3千人は帝国領とヴァルキア地方を結ぶ東の街道を進みヴァルキア地方に入ろうとしていたのであった。


 数日前に帝都ナリヤを出発して既にヴァルキア地方の入り口まで来たのである、魔女騎士団(ナイトウィチーズ)の恐ろしい所は、魔導剣士ばかりの集団でその高い攻撃力もそうだが、真の恐ろしい所は聖導騎士団に次ぐ行軍速度と汎用性であったのである。

 自ら狩りをして進み、敵の武器を奪って戦うので輸送隊を引き連れていない、すなわち隠密性が高く、更には狩りをやったりするので、道無き道を進む事もできる集団なので、高い遊撃部隊の能力を持っていたのである。


「全軍停止!ペスパード王朝のグルシュク殿をこちらへ!」

 余程統制のとれている軍なのか、アミリアの号令で3千人が一斉に行軍を停止し、その中から1人の男性のダークエルフがやって来たのであった。


「グルシュク殿、ヴァルキア地方に到着したら兵器の実験をやりたいと言っていたな?ここから先がヴァルキア地方だ」


「ありがとう御座います」

 そう言うとグルシュクは馬を降りて、マジックバッグから宝石箱の様な物を取り出したのであった。


「それが兵器なのか?」


「正確に言うと、兵器ではございません、簡単に言うと偵察用の魔導兵器で御座います」

 そう言ったグルシュクが宝石箱を開けると、中には5つの羽の生えた卵の様な物が入っていたのであった。


「アミリア団長は、念動師と言う職業はご存知で?」


「いや、初めて聞くが……」


「そうですか、念動師と言うのは物を手を使わずに動かせるスキルを持つ者です。

 今の所はダークエルフにしか念動師になった者は、確認されておりません……おそらくはダークエルフがその職業の条件に入っているのでしょうね。

 これは我が国、ペスパード王朝が開発した魔導兵器、【ビヨンド・ザ・シーカー】と言う物です、今からこの卵の様なビヨンド・ザ・シーカーを私が操り、遠くに離れた場所を索敵致します」


「何?5つ同時にか?どうやって索敵をする?攻撃は出来るのか?距離は?」


「……アミリア団長、質問はゆっくりお願い致します。

 最初に5つ同時かと言う質問ですが、その通りです。ただし動かせるのはその者の能力によって変わります。

 多すぎますと脳への負担が大きすぎて、術者が死んでしまいますので。

 どうやって索敵をと言う質問ですが……」

 そう言ってグルシュクは箱から卵を取り出し魔力を込めると、卵に目が出たのであった。


「このビヨンド・ザ・シーカーの目で見た映像が、私の脳裏に届きます。

 そして、飛ばせて見るだけですので、攻撃は出来ませんが、飛ばせる半径は50キロとなっております。

 これならば、偵察の人員を減らせますし、何よりも敵軍の先手を打てます……ただし弱点が御座いまして、ビヨンド・ザ・シーカーを起動させている間は、念動師は言葉を話せても、自分で動く事が出来ません。

 なので誰かに担いでもらい、移動するしか手段は無いのです」


「それでは使えん……いや使えるな、敵の陣地に潜入も簡単であろうし、敵軍の詳しい情報や動きが解る。これは素晴らしい発明かも知れんぞ、グルシュク殿、早速やってくれ」


「解りました」

 そう言うとグルシュクは卵を取り出し、次々と空に放ち瞑想をする修行僧の様に座ったのであった。



 暫くするとグルシュクは、瞑想の体勢のまま話し出したのであった。

「居ました、ルタイ皇国の甲冑を着た兵士達が、この街道を真っ直ぐこちらに向かってきます」


「人数と場所は?」


「騎馬の兵士のみの10名で、場所はこの森を入ったばかりです」


「この森を入ったばかりの街道……ここまで1日半と言った所か、その人数ならばおそらくは敵の斥候だな。

 グルシュク殿、その斥候を追跡しながら、敵の本隊を探れるか?」


「やってみましょう」


「よし、誰か地図を持ってきてくれ!」

 アミリアはそう言うと、騎士から渡された地図を広げたのであった。


 やはり敵の斥候は、この一帯の森の中の街道をこちらに向かってきている、おそらくは敵の本隊は街道の先のルゴーニュの村に駐屯しているだろう。

 敵の兵力などが解ればありがたいのだが、それにこちらはルタイ皇国の情報が全くと言って無い状態だ、クリスも戦い方を見た様だが、ルタイ人が戦っているのは見ていない、情報が欲しいな。

 ここはまず、敵の斥候を待ち伏せし捕虜を数名捕まえて、斥候を本隊に戻らせないのが定石か。


 ただ正面からぶつかっては取り逃がす可能性も有る……ここは不名誉だが、待ち伏せをし斥候を全て刈り取るのが良いだろう。

 斥候が帰って来なければ、敵はこの方向に我等がいると思い向かってくるに違いない、そうすれば例え敵兵力がどれ程多くても、ここの街道は深い森のど真ん中を通る街道だ行軍は縦長になり、そして縦長になった所に敵の将軍だけを狙えば、こちらにも勝機は十分にある。


 そう思ったアミリアは、部隊を2つに分けて森に潜ませたのであった。



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[一言] パンちゃん、、、パンチャン、、、パンヂャン、、、パンジャン!! パンジャンドラム!!
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