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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第二章 帝国動乱編
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魔王フレイア

 



 何故こうなった?

 俺はベッドの上で目覚めると何故か裸で、隣には赤毛の可愛い女の子が寝息を立てて気持ち良さそうに寝ている。


 ……誰だこれは?裸って事は、いたしたって事なのか?冷静になって考えてみよう。


 …………あれ?俺は確か珠とルタイ皇国に行って、確か……どうした俺は?


 そう考えていると、ドアをノックする音が聞こえてメイド服姿のリーゼロッテが入って来たのであった。

「失礼しま……何故?」


 あ、顔がひきつって固まっている。普通はそうなりますよね、この状況は。


「おはよう……なんやリーゼロッテ来てたんか?」


 俺の横で寝ていた赤毛の女の子のその一言でリーゼロッテがふと我に返り、叫びだした。

「来てたんか?じゃありません魔王様!これはどう言った事ですか!説明してくれますよね!

 左近殿も左近殿です!こんな夜這い見たいな事をやって貴方は貞操概念は無いのですか!」


「い、いやこれはだな……俺も何が何だか……」


「酷い!ウチとの事をそんな風に言うなんて!」


「い、いや違うんだ!記憶が無いと言うか……」

「あんなに愛し合ったのに、記憶が無いなんて酷い!」


 あれ?俺は何でこんな浮気が見つかった男の様になっているんだ?何か変だぞ。



「……ふぅ、もう良いでしょ魔王様、左近殿が混乱していますよ」


「……チッ、もう少しで既成事実が出来たのに」


 口惜しそうに言った少女を憐れむように見詰めながら、リーゼロッテが言った。

「魔王様ともあろう御方が情けない、左近殿は既に妻帯者。不倫になるのですよ」


「ええやん、二人で燃え上がる禁断の恋……立場や種族を超えて、全てを棄てての愛の逃避行。

 最高に盛り上がるやん、夢やん、理想的やん」


「……そんな事はどうでも良いので、この状況を説明して頂けませんか?」


「そうだ、それは俺も聞きたかったんだ」


「しゃあないなぁ、教えたろか。

 ウチがパジャマに着替えようと思って服を脱いでいたら、急に空間転移でこの人が入って来てん。

 即死の魔法のデスを一瞬で10発おみまいしたけど、効かへんから一瞬で背後に回って手刀でとりあえず気絶させて意識を奪ってん」


「魔王様!毎回いきなりデスをブッ放つその癖、止めてもらえませんか?今までそれで何人殺したと思っているんですか!」


 この子が魔王様ってのは解った、しかし毎回なのかよ……リーゼロッテさん大変だな。


「ごめんて……それでやな気絶した人を見ると、ウチの好みやん。だからこの人は神様の言ってた人やとピンときてん。

 だからこうして既成事実をやな……」

「魔王様!」


「ごめんて……でもよく見たらこの人洗脳されかけてたで」


「え?いつの間に?俺は自覚が無いんだけど……」


「そりゃそうやろ、洗脳ってそんなもんやし。

 ただ、ウチのスキルの【特技解錠(スキル キャンセラー)】が通用したって事は、その洗脳もスキルの1つって事やな」


 こいつ俺を謀って……待てよ、そう言えば俺は何でルイを殺さないって帝の言う事を大人しく聞いたのだ?結局はルタイ皇国の良い様に使われていないか?


 そうだ、俺はお気楽に暮らしたかっただけなんだ、義父殿の帝国の事は個人的に始末して、ナッソーに攻めてくる帝国の軍は仕方がないにしても……あれ?俺、今回のルイの事以外は俺の意思だぞ。


 何だか訳が解らん……俺もしかして、洗脳されていないんじゃ無いのか?

「俺……よく考えたら洗脳されていないと思う」


「……嘘やん……とりあえず話を聞かせてもらえへんか?」


「解った」


「……とりあえず服を着てからお話しを聞かせて頂きます」


 こうして俺は、ルタイ皇国での帝との御前会議の様子を二人に話したのであった。






 すると魔王は、少し考えて話し出したのであった。

「ん~その帝のスキルは【王の系譜】ってやつやな」


「王の系譜?何だそれは?」


「王の系譜、そのスキルは自分の考えや命令を、どんな事でも聞かせて、更には裏切る事が出来ない様にするスキルや。

 でもそれは条件があって、相手の目を見ながら自分の声を聞かせんとアカンねん。

 帝の顔が簾で隠してあって、大納言が代わりに言葉を伝えていたって事は、帝はそのスキルを使いたく無かったんやろうなぁ。

 あのスキルは自動的に発動するしな……しかし声だけでスキルが発動するってことは、その帝は王の系譜に取り込まれようとしているのかも知れんな」


「取り込まれる?そんな事が有るのか?」


「強いスキルはそれだけで代償を伴うんや、これはウチの理論なんやけど、この世の中のスキルと言われる特殊な能力は、主に6種類ある。

 1つ目は、職業系のスキル。これは条件を満たした職業によって使用できたりする普通のスキルや。

 2つ目は、ユニークスキル。これは職業とは関係無く使えるスキルの事で、ここまでは何の危険も無いんやけど、ここから先は危険なスキルや。

 3つ目は、神のスキル。これは文字通り神から贈られたスキルやけど、代償として、呪いの様な制約が課せられて、その代償は死ぬまでで永遠に続くんや。

 4つ目は、試練のスキル。これは通常の職業でも手に入らないスキルで威力も尋常や無い代わりに、代償として何かを犠牲にしないとあかんねん、ただこのスキルは長く持っているとスキルに自我が芽生えてその者の精神が崩壊するねん。

 因みにウチは代償としてダンジョンのボスをやらされていたけどな。

 5つ目は、伝説級のスキルや、これは試練級を崩壊する前に無事に進化させて自分の物にしたスキルで威力も最強やと思う。

 そして最後の6つ目は、暴走級のスキルでスキルに自我が芽生えて暴走しとる……正直に言うと暴走してその者の心は壊れ、戻ってはこれんやろうな」


 なるほど……帝は暴走しかけているのか、だとすると正成やルタイ皇国の民が危ないな。

 帝のスキル王の系譜だっけか、既にルタイ皇国の関係者はそのスキルの影響下に有ると考えて良いだろう、ここは魔王に来てもらい正成達のかかっているスキルを解除してもらうか。

 ……弾正だけは放っとくか、そのスキルが無ければ裏切るからな、絶対に。


 しかし俺の配下の十字軍だけでは心許ないな、少数精鋭で俺直属の部隊を作り、アイリス達も入れるとするか。

 先ずは魔王にお礼も言っておかないとな。

「魔王陛下、今回は有り難う御座いました、俺が神様から派遣された軍師の島 左近衛大将 清興で御座います」


「ウチが魔王のフレイアやこれからも末永く宜しゅうにな、それにあんたはウチの彼氏やフレイアって呼んで、それとタメ口で頼むわ」


「か、彼氏?」


「左近殿……そこは私から御説明を。

 実は魔王様は国民に既に夫を迎えると発表されておりまして……」


「最早収まりがつかない状態で、それなら結婚はまだ先と言う事にして婚約者と言った形にしてしまおうと言うことですかな?」


「お恥ずかしい事ながら、その通りで御座います」

 リーゼロッテは申し訳なさそうに言った。


 リーゼロッテさん何だか大変だな……しかしこの方が手っ取り早いか、仕方がない。

「解った……ただしその婚約者のふりをするのはここだけだ、向こうに行ったら婚約者と言う設定は無しにしてもらう」


「え~ウチの純潔を奪っておいてそれは無いわぁ。

 それにな、ウチの純潔を奪うイコール、ウチのスキルの【無限魔力】を共有した事になって、最低でも7日に1回はしないと魔力が逆流して身体を破壊する事になるで」


 マジかよ!……俺が気絶している間にそんな事まで……どうすりゃ良いんだよ。


「……左近殿、嘘ですよ。

 確かに魔王様の初めての人には、【無限魔力】の共有と言う恩恵が有りますが、定期的にしなければならないって制約は御座いません」


「……リーゼロッテのいけず」


「そんな事をやっていれば、本当に左近殿に嫌われますよ!」


「それは嫌やぁ!」


 フレイアって子供かよ!しかし魔法の使えない俺に無限魔力って……あ、空間転移があった。

 と言うことは、あのスキルが使いたい放題って事なのか?それならばかなり強くなる、これはラッキーだな。


 ただフレイアといたした記憶が無いのが残念でたまらないのだが、とにかく用件を言おうか。

「大丈夫だ嫌いにはならないよ」


「ホンマに?」


「あぁ、本当だとも。

 それに今回来させてもらったのには話があって来た……」

 こうして俺は正成と話し合った事をフレイアに話したのであったのである。



「……その話は断らせて貰うわ」

 フレイアは少し考えて言った。


 確かにガルド神魔国にはなんのメリットも無いからなぁ、さてどうする?


「ウチ等は他国からの侵略を今まで二度も味わっているし、信用しろって無理な話や。

 ただ清興の顔も立てんとあかんやろうし、ルタイ皇国は今までこちらに攻めた事が無いから、ルタイ皇国の同盟は貿易だけの同盟でどうや?」


「そりゃそうだな、とりあえずはそれで頼むよ」


「ただし、ウチの所が同盟するのは清興、あんたとや。ルタイ皇国本国とは違う、その辺を覚えておいてな。

 それと清興に対しての協力はウチ等は惜しみ無くしてやる、だからウチからの忠告や、ルタイ皇国の帝は将来ヤバイと思う、何とか手を打った方がええで」


 確かにそれは俺も考えていた……ここは腹を割って話をするか。

「確かにそれは俺も思っている、何か良い案はないかな?」


「帝と敵対した場合、ルタイ皇国の武士団は信用ならんと思った方が良いやろ……いざと言う時の少数精鋭の手駒は持っている方が良いやろな……。

 よっしゃ、ウチが何とかしたろ!」


 そう言ってフレイアが話し出した計画は、驚くべきものであった。


 まずはこの世界のお金に霊が取り付きモンスターになると言う話は、霊では無くて本当は下位の悪魔が取り付きモンスターになるらしい。

 そこでフレイアの計画は、上位の悪魔を呼び出して俺の配下とする事であったのだ。


「本当に悪魔が俺の配下となるのか?」


「アホやなぁ、悪魔ほど契約を守る者はおらへんで、それに比べて天使なんかは、何でも神様の為にとか言ってすぐに契約を反故にするろくな奴やない。

 でも悪魔は違う、悪魔は契約が絶対の生き物や、確かに気紛れで殺戮等を好み騙したりもする、しかしそれは契約をちゃんと結んでないから、みんな失敗するねん。

 そっちの商人も同じやろ?契約がしっかりしていないと、騙されたりする、それと同じや。

 それに清興は最早ウチと一心同体や、同じ神様から作られた者同士、清興の頼みは出きる限り聞いたるし、清興もウチの頼みは出きる限り聞いてや」


「それは勿論だが、悪魔の召喚って簡単に出きるのか?」


「お金さえ在れば簡単に出きるけど、でもそれやと下位の悪魔になるから、どうせなら思いっきり上位の悪魔の召喚をしよっか。

 お金も出来るだけ用意して、伝説の武器と今度戦う兵士の魂も媒体にすれば、もしかすれば魔王クラスが召喚出きるかもしれん。

 どうせなら、とことんやろうや」


「……良いなそれ」

 こうして俺達はこのまま先の計画を話し合い、俺はナッソーに戻って行ったのであった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 数週間後、パナスのメデル子爵は頭を抱えていた。

 内容は勿論、パナス近郊の盗賊被害についてであった、次々と報告される被害の多さにメデル子爵の頭は税収の落ち込みで頭がいっぱいになっていたのである。


「クソ!どいつもこいつもバカにしおって!」

 メデル子爵は机の上の書類を叩き落とし声を荒らげて、怒りを露にしていた。


 くそ、あの盗賊どもめ調子に乗りおって、どうせナッソー辺りの盗賊だろう……しかし領民が死ぬのはどうでも良いが税収の落ち込みが痛い。

 幸いザルツ王国の攻撃は今は落ち着いている、計画を早めてここらでナッソーを叩き領土を平定するか……それにしても兵力が足りない。

 どうする?……ナリヤに連絡して援軍を出してもらうか、名目はそうだな……盗賊討伐では弱い、ナッソーからザルツ王国の領内に進軍すると言う作戦を立案してみるか。


 そう思ったメデル子爵は急ぎ手紙を書いて、帝都ナリヤに向かって伝書ガラスを飛ばしたのであった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その数日後帝都ナリヤでは宰相のエミリオ・ニルセンがメデル子爵からの手紙を受け取っていた。


 ほう、ナッソーを拠点にしている盗賊共の討伐に援軍を出して欲しいと、更にはそこからザルツ王国に侵攻する作戦か……悪くないな。


 確かエリアスの奴もナッソーに入ったとの報告が暗部から報告が来ていたな、フランドからは国王直轄の近衛軍がナッソー近くに集結をしているとの情報がある。

 これは一気に叩く好機かも知れんな、問題はルイス様に知られない様に軍を動かせるかだが、これは綾那に頼んでみるか。


 しかしエリアスの暗殺に失敗して一時はどうしようかと思っていたのだが、一気に運が傾いて来たぞ。

 そう思ったエミリオはニヤリと笑みをこぼして、ナッソー攻略の為に動き出すのであった。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おや、ここにいらっしゃいましたか義父殿、アイリスが晩御飯が出来たと呼んでおりましたよ」


「婿殿……少し話さぬか?」


「良いですよ」

 そう言って俺は義父殿に促されて、縁側に腰掛けて一緒に酒を飲んだのであった。


「婿殿、本当にアイリスを助けてくれて感謝する、本当に有り難う」


「いえいえ、当然の事をしたまでですから、それにしても、どうされたのですか?最近はよく一人で飲んでいる様ですが」


「実はな、宰相のエミリオと綾那后妃は殺せても、皇太子のルイス様を殺してしまえば帝国は内戦状態になってしまうだろう。

 帝国の将来を取るか、聖導騎士団の皆の思いを取るか悩んでおってな……」


「それで答えは出ましたか?」


「宰相と后妃は皇帝陛下を裏切っており、これを誅殺する事は良いのだが、やはりルイス様にはアイリスを救ってもらった恩義もある……騎士団の皆には地獄で詫びるしか無いようだ」


「部外者の私が口に出す事では御座いませんが、それで宜しいかと思いますがこうされては如何でしょうか?

 今回の騒動で、責任を取って皇帝陛下に退位を迫り弟の公爵様に皇帝に即位していただくと言うのは?

 これならば皇太子殿の命は助かり、義父殿のお仲間の無念も晴れましょう」


「陛下に退位してもらう、そんな恐れ多い事を……」


「しかし、そこまでやって貰わねば、ルタイ皇国としても顔が立ちません、ルタイ人はメンツを大切にしますので」


「……解った、その様にしてくれ」

 そう言ってエリアスは左近に頭を下げ涙を流したのであった。


 この人は本当に帝国に忠義を尽くす武人なんだと、左近は思っていた。

「所で以前に言われておりました、証拠とはどの様な物だったのですか?」


「その事なんだが、私にはさっぱり解らんのだよ、婿殿は解るか?」

 そう言ってエリアスがマジックバックから出したのは、1冊の大きな辞典の様な本であったのである。


「これは?」


「これはセレニティ帝国の貴族等の家系を纏めた本だ、こんな本は帝国の図書館に行けば簡単に手に入る、どうして団長はこんな本が証拠だと、俺に渡したのか理解できん」


「見せてもらっても?」


「あぁ構わんよ」


 そう言ってエリアスから本を受け取った本を開いてみると、中には名前らしい物と何やら注意書きみたいな物が書かれていたのだが……読めない。

 しまった肝心な読み書きはスキルの全自動翻訳でも無理だった。

「すみません、私はキリバ語が読めないのでした」


「まぁ婿殿はルタイ人だから仕方がないさ、この本にはその家系の者の名前と身体的特徴が書かれている。

 なりすましとかを防ぐ意味合いも兼ねているからな」


 なるほど、これでなりすましを防いでいるのか、しかし何でこれが証拠になるんだろうか?

 ん?身体的特徴?もしかしてこの世界でも遺伝とかあって、例えば皇帝の家系にある特徴が無かったり、宰相の家系にある特徴があったりするんじゃないのか?

「義父殿、もしかすると皇帝陛下の家系に何か特徴があったりしますか?」


「ある事はあるのだが、ルイス様はルタイ人の特徴が出過ぎており、皇族の特徴が当てはまらんのだよ」


「ならば宰相の方はどうでしょうか?」


「なるほど……しかしそれもルタイ人の特徴が出ているので何とも言えないのだよ」


「そうですか、しかし義父殿の団長殿は何かに気付き、それを義父殿に託された、これは必ず何か有ると思います。

 例えば特殊なインクで書かれているとか、何かの印が有るとか」


「それは私も考えたのだが、何も無かった……全く解らん」


「やはりそうなりますと、考えられるのは身体的特徴の線になりますか」


 エリアスは本を開いてため息混じりに言った。

「そうだな、皇族の特徴が金髪に瞳の色が青となっておるが……ルイス様にはその様な身体的特徴が無いし、エミリオ宰相の特徴は赤毛に茶色の瞳……ん?星形のアザが歴代の男性に出ておるな、しかしルタイ人とのハーフでその様な特徴が出ると思えんのだが」


「確かに、その様な星形のアザが出ているのか解りませんね……星形のアザかぁ」


 その時であった、俺達の背後からアイリスがやって来たのであった。

「あー!こんな所にいた、晩御飯が出来ていますよ、早く来て下さいよ」


「そんなに怒るなアイリス、今婿殿と……お前そう言えばルイス様と幼なじみで昔から一緒によく遊んでいたよな?」


「ええ、川遊びや剣術ごっことかやっていましたけど……何で?」


「いや、その時にルイス様にアザがあったのを見たりしたか?」


「何で知っているんですか?ルイが恥ずかしいから内緒にしてくれって言ってたのに、うなじに星形のアザが有るんですよ、でも悪魔の印の様で虐められるから、私とクリスの三人の秘密なんですけどね」


 それだ、思わず俺と義父殿が顔を見合わせて頷いた。

「婿殿、神は我を見棄ててはいないようだな」


「そうですね、これで皆様の思い叶えられるかと思います」


 これで二人の不貞の事実を皇帝に伝える証拠になる、俺達はそう思っていると、アイリスは少し怒りながら言った。

「もう、二人ともせっかく私が作った晩御飯が冷めてしまいますよ、早く来て下さい」


 その言葉を聞いたエリアスは、驚くように目を見開いてアイリスに尋ねた。

「お、お前が作ったのか?」


「当たり前じゃないですか、今日は私の自慢の手料理を振る舞いますよ」


「婿殿……逃げた方が良さそうだぞ……」


「酷いですよ父上!」


 ここは助け船を出すか。

「アイリス、珠と一緒に作ったのか?」


「いいえ私が一人で今日は作りました」

 そう言ってアイリスは胸をはって言った。


 ……不安だ、しかしアイリスの好意だこれはキチンと受け取ってやらねば。

「義父殿、ここは覚悟を決めて行きましょう、アイリスも義父殿に食べてもらいたいのですよ」


「その口調からすると、婿殿……味わったのだな?」


「はい……お気持ちは解ります、しかしこれは父親としての義務かと思いますので」


「あえて死地に向かえと言うのか……よし婿殿、二人で死地に向かおうぞ!」


「え!い、いや私は……」

「何を言う!我等は最早戦友ぞ!」


 マジかよ!俺はまだ死にたくは無いぞ!


「そんな……酷い!そんな事を言うのなら食べなくて結構です!」

 アイリスは目に涙を浮かべて言った。


「そんな事はない!私と婿殿の二人で喜んでお前の料理を食べよう!なぁ婿殿」


「そ、そうですね……頂くとしよう」


「本当ですか?良かったぁ!」


 そう言って俺達は、死地に旅立ち案の定全員が見事討ち死にを果たしたのは言うまでも無かった。






 こうして俺達が、アイリスの食品テロの犠牲となっている頃に、セレニティ帝国の帝都ナリヤからはナッソー討伐の兵士3万が、メデル子爵に合流するために出発したのであった。


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