4頭会
俺達はナッソーの自宅に戻り、各自の給料計算等の事務仕事をやっていた。
今回の大幅な人員増加の影響でこれからは給料制にする事に決まったからである、これにはセシルとセシリーの二人とリリアナの所から連れてきた二人が、かなり役に立った。
二人は元騎士と言う事もあってか、教養もあり計算には強く、リリアナの所から連れてきた二人も戦場では無くこう言った事務仕事が得意な者であったからだ。
給料は週給制で一般兵士は500シリングで、各隊長は800シリングとなり部隊の戦になれば1日50シリングの危険手当てがつく。
安いだろうって思ったのだが、それでも一般の兵士よりは給料が良いらしいし、安定してお金が手に入るのならば、傭兵達は大歓迎らしい。
部族で兵士にならない者はそのままシャンプー製造で給料を出す事にして、部族以外の人間の居住区は山の麓に決まったのであった。
リーゼロッテは「合格だ、受け入れ体制が出来るまで約2ヶ月、出来れば迎えにくる」と言い残し空間転移を使って帰っていったのであった。
どうやら魔族の中には希に職業以外のユニークスキルを使用出来る者がいる様だ、リーゼロッテはその中ででも空間転移が使用出来る魔族だと言う事らしい。
おかげで俺は新たなる軍の編成に取り掛かる事になったのであった。
そして帰って来て早々にオヤジさんからの伝言があった、明日オヤジさんの店、タックス・ヘブンの2階に護衛は二人迄で来いとの事、ラナとアデルはオヤジさんの頼みでオヤジさんの護衛に行くことになっていた。
これはおそらくは、オヤジさんからの罠じゃないとのメッセージなのであろう、仕方がないので、俺は一緒に行くメンバーはアイリスとクロエにする事にしたのであった。
次の日、俺達はナッソー迄空間転移してオヤジさんの店に行ったのであった、既にラナとアデルはオヤジさんの元に行っているはずだ、何か危険があれば排除する様に命令をしておいたのだから、大丈夫であろう。
店の扉を開けると、いつもの店の従業員がいたのだが、何やらいつもと雰囲気が違ったのである。
「お待ちしておりました左近様、皆様はもうお着きになられています、こちらへどうぞ」
皆様?他にも誰か来ているのか?それにこの雰囲気はただ事じゃないぞ。
「皆様と言ったが他にも誰かいるのか?」
「入れば解るかと思います、それと私本日より左近様達の担当となりましたイエッタと申します、あの時は失礼しいたしました」
「いや良いさ、それで何処だ?」
「失礼しましたこちらでございます」
そう言って俺達は2階にある個室に案内されたのであった。
中に入ると、丸いテーブルに椅子が4つ、そして既に座っているのは、オヤジさんにダッチ、そして……誰だあれ?年齢が30代後半位のえらくセクシーな、泣きボクロがあり貫禄のある女性が葉巻を吸って座っていたのであった。
「まぁ座ってくれ左近」
オヤジさんに促されて、俺は空いている椅子に座たのであった。
「左近、俺以外は初めての奴等だよな?」
「いや、そこのダッチは知っている……なぁダッチ」
「ヒッ!」
軽くダッチを見つめるだけで、ダッチはかなりびびっていた、前回やり過ぎたかな。
「ではこいつだけか、コイツはソニア・ヴィシュクと言って、ナッソーの売春宿やカジノそして麻薬の販売を仕切っている奴だ。
みんなは、ママと呼んでいる」
おいおい、全力でマフィアじゃないか、ダッチみたいな小者じゃ無くてガチンコのヤバイ雰囲気を出しているし。
「……よろしく」
「左近だ、よろしく……ソニア……」
「ママで良い、本名は嫌いなんだ」
「ではママ、俺も左近で頼むよ」
「解った、しかしあんた狂犬って聞いていたのに、けっこう可愛い顔をしているじゃないか、好みだよ」
その一言でアイリスとラナの気配が一瞬で戦闘モードになったのが解った、コイツら頼むから暴走するなよ。
「所でそろそろ話して良いか?」
オヤジさんが助け船を出してくれた。
「どうぞオヤジ」
そう言ってママはオヤジさんに葉巻の煙を吹き掛けた。
「……まぁ良い、では始める。
今回、左近がアルム砦を落とした事により、この辺りの領土が帝国のメデル子爵の物になった、おそらく今後奴はこのナッソーに服従しろと言ってくるだろう」
「オヤジ、それには根拠があるのか?」
ママが葉巻の煙を吹き言った。
「根拠はあるぞ、独自の情報だが再び魔族征伐が始まる様だ、魔族征伐が始まると各国の戦闘は停止して兵士を出さなくてはならん、しかし帝国は前線のメデル子爵には出陣命令は出さないだろう、終わった後の事を考えてな。
アルム砦があった時は大丈夫であったろうが、今は違う。
あの守りやすいアルム砦は既にメデル子爵の物だ、となればメデル子爵の領土で従わないのは、残るはこのナッソーになる、いくら中立と言っても、約定が無いしそしてザルツ王国には最早巻き返す力がないであろう。
戦争が禁止なのは国家間の戦争なんだからな」
なるほどな、俺が落とした事により均衡が崩れて最早傭兵の力は要らなくなり、帝国軍でやって行けると言う事か。
しかしオヤジさん俺が失敗すると思ってたんじゃ無いか?この会談も急に決まった様だし、とんだ曲者だなオヤジさんは。
「それならば、ナッソーが次に、ザルツ王国に味方すれば良いんじゃないか?」
「それはダメだ、独自に味方をすれば、中立都市じゃ無くなり、あの泥沼の戦争にナッソーが都市として巻き込まれてしまう。
そこでだ左近よ、お前さんにこのナッソーを拡張し要塞化してほしい、ルタイ皇国にはそんな城があるんだろ?その力で作って欲しいんだ」
「それは良いが資金は?俺はそこまでお人好しじゃないぞ」
「資金はここにいる4つの勢力でなんとかする」
「おい、オヤジ!私は聞いてないぞ!」
これにはママが吠えた。
「ママよ考えてもみろ、さっきの話し以外に、このままだとザルツ王国からここに移り住む奴が増えてくる、そうなると俺達の商売もやりにくくなって、衝突も起きる……ナッソー内部で戦争が始まるんだよ。
そんなのは1シリングの儲けにもならねえ、それならばこの4人でナッソーを仕切っていけば良いじゃねえか?」
「……確かにそうだな、私は儲けにもならないのは嫌いだ、オヤジの話しに乗るとしよう」
「……俺も乗ろう」
「さて左近よお前はどうする?」
まずいな、俺は2ヶ月後には神魔国に行かねばならんし、どうするか……そうだ、困った時のバッシュがいたじゃないか、バッシュに押し付けよう。
「解った、俺達も乗ろう……ただし今後の会合は俺の副官のバッシュが出る事になるが良いか?」
「左近よ何故だ?」
「本国からの仕事が有るのでな、ただ城塞の件などはちゃんとやっておくよ、メデル子爵がここに攻める前に帰ってくる。
それに、簡単には攻めれない様に手は打っておこう、それでも良いか?」
「解った、それで良いだろう、お前にはお前の事情が在るだろうしな」
「すまないな……そうそう話は変わるが、ダッチよお前ルタイ皇国と交易はしたくはないか?」
「確かに、ルタイ皇国ならば遠く離れているし、ヤバイ盗品も売れるからこんなにも有り難い話はないが……見返りは?」
「お前の所の盗賊達に、ルタイ人の商隊を襲わないようにしてくれるだけで良い、他の者はこちらが全て殺すから」
「解った」
「ハハハ!あんたやっぱり噂通りの狂犬だよ、人の命をなんとも思っちゃいない……気に入ったよ狂犬」
「ママよ、その狂犬は止めてくれないか?左近で頼むと言ったはずだが」
「……すまなかったよ、狂犬」
カチン
コイツは喧嘩を売っているのか?
「どう言うつもりだ?喧嘩を売っているのか?」
「ちょっと待てお前達!お前達が暴れると店が壊れる!ママ、今回はお前が悪い、一体どうしたんだ?」
そう言ってオヤジさんは声を荒らげたのであった。
「この際だハッキリ言おう、コイツはルタイ皇国の者だ!しかも武将だと言うじゃないか、そんな奴は本国の命令で簡単に裏切るかもしれない、そんな奴を簡単に信じるほど私は甘くは無いんだよ!
今回は仕方なくだ、仕方なく手を組むだけだ解ったかオヤジ!」
まぁママの言っている事も解る、ここの奴等と違い端から見れば俺はルタイ皇国の武将だから、命令されれば簡単に裏切ると思っているのだろう。
そんな奴と手を組むのは命がいくつあっても足りない、ママの反応は当然の反応か。
「ママよ俺を信用しなくても別にかまわない、別にあんたと馴れ合うつもりはない。
俺は今は傭兵だ、ただ自分の気に入った仕事の依頼があれば、どんな仕事でも遂行する、ただそれだけの話だ、今回のナッソー防衛の話は俺は正式に依頼として受ける、そして俺は受けたからには必ず守ってやる、ただそれだけだ。
それと、これは忠告だ、俺の家族には手を出すなよ、もしもナッソーの家族が危険になろうものなら、例え相手が何だろうと潰す」
「家族…家族ねぇ……左近よあんたとんだ甘ちゃんだね、まぁ良いや少しは信じてやる。
所で左近よ、あんたシャンプーとか言うのを作って、貴族共に販売しているんだって?その販売に私達も咬ませなよ」
出たよマフィアのお得意の恫喝からの本音の流れ……まてよザルツ王国にはエルマと言う販売の地盤が在るけど帝国にはないよな、ここは販売網を広げるチャンスかもしれんぞ。
「ママよ、帝国にはその販売の足掛かりは在るのか?ザルツ王国には俺の独自の販売網が在るので、セレニティ帝国に調度欲しかった所なんだ」
「帝国か……一応あるが帝国は密輸が難しいんだよ」
「それならば俺の密売ルートが有るぜ」
何故かここでダッチが言ってきた。
「では、輸送はダッチで販売はママで良いか?」
『異議無し』
「ではこちらからの条件がある、水で薄めたり品質の低下を招いたら、それ相応の報いは受けてもらう、これは信用の問題だからな。
次に俺の言い値でママに買い取ってもらう、その後でどれだけ利益を上乗せしようが、あんたの自由だ。
そして最後に輸送の費用等はママとダッチで決めてくれ、俺は言い値で買い取って貰えれば後は知らん。
あぁそうだ言うのを忘れていた、ママはそのシャンプーの使用法と効果を知っているのか?」
「……そういや知らないね、良い値がして貴族の女性に人気があるとしか情報がまだ無いんだよ」
やはりな、どうせそんな事だと思ったよ、そう思いながら俺はマジックバックから、シャンプーの入った小瓶と取りだして、テーブルに置いた。
「左近、これは?中には液体が入っている様だが」
ビック・ママが不思議そうに聞いた。
「コレがシャンプーと言うものだ、効果は……聞くより感じた方が早いな。
ママ、俺の妻のアイリスを抱き締めてみろ、ダッチお前はダメだ」
「なんだよケチ」
「……旦那様」
アイリスは不安そうに言った。
「良いんだアイリス、実際感じる方が理解するだろう」
ママは半信半疑のまま立ち上がり、アイリスの腰に手を回し抱き寄せた。
「……これは?」
「気が付いたか?それがシャンプーの効果だ」
「ママ、どうしたんだよ?」
ダッチは気になって聞いた。
「少し近付いただけでも解ったのだが、甘く良い香りがする、身体から?いや髪の毛からもだ、それに今気が付いたのだが髪の毛もサラサラだ。
おい左近、これがそのシャンプーと言う物の効果だってのか?」
「その通り、しかしこれには条件がある。
シャンプーは髪の毛を洗う時に使用し、身体から出る香りは、身体を洗うボディーソープと言うのを使う。
因みに使用を止めると徐々に髪の毛等も元に戻る、アイリスは戦に出ていて帰って来たのは昨日だ、僅か1日でこの効果が出ると言うわけだ」
「左近よ、ならばこれは毎日でも風呂に入らないと出来ない事だぞ、風呂に入るそんな事が出来るのは貴族か王族、皇族位のものだ。
これでは販売する先が限られてしまう」
「そうだな、だけど1度使用すれば効果を実感し、手放せなくなる……特に貴族の女性にはな、ママも解るだろ?」
そう、ママの本名はソニア・ヴィシュク。
と言うことは元貴族か王族と言った所だろう、ならばこの意味が解るはずだ。
「確かに、貴族って生き物は見栄の塊みたいな奴等だ、それが女性ならば特にだ……良いぞ、これは貴族達にとって麻薬の様な物になる。
……ちょっと待て左近、お前の嫁さんがシャンプーを使用していると言う事は、お前の所には風呂が在るのか?」
「お察しの通り在るぞ、しかもルタイ人にとっては風呂よりも貴重な温泉と言う風呂の最上級が、1日中お湯のかけ流しで在る」
「なんだと?……なぁ左近よ、ナッソーの拡張する時に売春宿の区画と私達の居住区を作ってくれ、資金を負担するんだそれくらいの見返りはあっても良いだろう」
なるほどね目的は温泉か。
「それは良いが、温泉の湯量が残り少ないので全ての建物に温泉は回せん、こちらも貴族専用旅館の計画も有るからな」
「貴族専用旅館?なんだそれ?」
「貴族専用の温泉に入れる宿だ、宿に泊まって温泉に入り美味い料理を食べる癒しの空間だ、もちろん料金は、ぼったくり価格だがね」
「まてまて、俺にもその話を乗らせてくれ」
「俺だって頼むよ!」
「私達も、もちろん乗るよ」
みんな金の話しになると食い付きかたが違うな……まぁ良いか、俺達の所は所詮は傭兵だ、苦手な事が多い。
ならば、俺達はアイデアを出してみんなに協力してもらえるならば、質も上がると言うものだ。
「では頼むとしよう、ママは服はこちらで用意するので宿で働く女性を出してくれ、もしも泊まる貴族が男だけなら、解るよな?」
「あぁ勿論だ、貴族共がすぐに食い付く女を用意してやる」
「頼むよ、もちろんその女性達には、毎日の風呂とシャンプーとボディーソープの提供は無料でさせてもらう。
次にオヤジさんには料理を作って貰いたい、貴族の喜びそうな料理だ。
もしもルタイ皇国の料理を知りたいのなら、俺の娘の珠に教えてもらうと良い、話は通しておく」
「ありがてえ!」
「ダッチは食材と調度品、そして消耗品の担当だ」
「任せろ、俺が直々に選んでやる」
直々に?こいつのセンスは何かヤバそうだな。
「いや、この宿はルタイ皇国のイメージだ、調度品から全て統一したいので、俺の配下に兼平と言うルタイ人のドワーフがいる、そいつに全て聞いてくれ」
「お、おう」
「そしてママの館には温泉を作ることが出来るが、他の者はすまんが公衆浴場で我慢してくれ」
「公衆浴場?なんだそれ?」
オヤジさんが不思議そうに聞いてきた。
「誰もが金を払えば入れる風呂の事だ、風呂を大きめに作るので、数人で入ることが出来る。
料金はそうだな、1回3シリングって所かな」
「おいおい、そんなんじゃ儲けにもならないだろう?」
ダッチよお前の頭には儲ける事しかないのかよ。
「温泉には疲労回復や病気を治したり傷にも良いので、傭兵家業には都合が良いんだよ、だから料金を高くすると本業に支障が出る。
因みに美肌効果もあるんだ、ママの所の女性にも有り難い話だろ」
「そいつは有り難い、所でもう1つ頼みがある、お前の所の兵隊を何人か用心棒で貸してくれ。
お前の所の紅い鎧はここらじゃ既に有名だ、私の店に数人居れば客も暴れる事がなく楽しく遊べる」
「それもそうだな、ナッソーの新区画には俺の配下に警備をさせよう」
「そいつは反対だ、ここは荒くれの者が集まる自由都市だ、そんな取り締まりなんて不可能だ」
確かにオヤジさんの言う事は解る、ここは普段でも死体が転がっていたりして、盗賊等が当たり前にいるヤバイ街だ。
そんな所を取り締まろうなんて、不可能な話なのは俺にも解る、だがそれでもやらなきゃならんのだ。
「まぁ完全に取り締まりなんて俺も考えてはいないさ、俺達に対しての被害だけ無くなれば良いんだ」
「それは大丈夫だろう、大将あんたの所は紅い鎧等で統一されている、このナッソーじゃ誰もあんたの所には喧嘩を売るようなバカはいないさ」
ダッチは呆れて言っていた。
「そんなに有名なのか?」
「あぁ、特に大将とそこの2人と魔導士の姉ちゃん二人には二つ名までついているんだ」
「まさか俺の二つ名って狂犬か?」
「そうだな、大将は狂犬左近だったり鬼の左近てのもある、因みに双剣のアイリスに銀狼のラナ、爆炎のセシルと氷結のセシリー、ってな」
「……もう何でも良いや。そうだ、オヤジさんに頼みがある、ザルツ王国の王女のリリアナを捕らえたんだ、身代金の交渉を頼めるか?」
「良いぞ、交渉の手数料は3割頂くが良いか?」
3割か、無難な所かな。
「それで良い」
「ではこれよりお互いのルールと決まり事を決めよう」
こうしてナッソーの決まり事等を俺達は議論して行ったのであった。
これにより決まった事は、旧ナッソー市街はダッチとオヤジさんのナワバリに、これから作る新ナッソーの市街は俺とママのナワバリに決まり、麻薬の販売は旧市街での販売になった。
そして新しい市街地が出来るまでは、ママの売春宿とカジノはそのままで、完成してからそちらに移動すると言った流れである。
費用はママ4、ダッチ3、オヤジさん2、俺が1の割合に決まり、ママには費用の4割りも出すと言う事なので、俺のシャンプー販売のザルツ王国以外と、オヤジさんの酒場組合の利権の一部譲渡で話はついたのであった。
そしてナッソーの揉め事は、この4頭目会議、通称4頭会で解決する事になり、俺達の部隊はその揉め事を解決する実行部隊にもなった、もちろんそれに伴う費用は出してもらえるが。
そして4頭会の召集等の連絡役にはオヤジさんの所の従業員が使われる事になり、俺達の担当はイエッタになったのである、最後に全員から言われたのだが、魔の山の名称変更と部隊の名前である、魔の山では客が来ないとママが言い、オヤジさんは傭兵が集まりにくいと言われ、そして全員からは部隊の名前が無いと、どう呼んで良いのか解らないので大変だからとのクレームを受けたからだ。
名前のセンスが無い俺には大変な事だが、みんなに言われては仕方がない、2、3日で決めると約束してしまったのであった。
こうして俺達は、長い会議を終えて家に戻り、皆にその事を伝えたのであった。
ナッソー拡張については、ナッソーは魔の山とピケの山の東西の谷間に在るので、この谷全体をナッソーにすればかなりでかい都市になる。
そして魔の山とピケの山に砦を築けば、かなり強固な守りになり、中央を流れる川を利用すれば水堀にもなる。
そして川を挟んで西の魔の山に住民の居住区を、東のピケ山に商業区を作ることにし、作業の総監督には兼平を置くことにした。
そしてフンメルに言って、絵を書くのが上手な者を2名選び院元和尚に付けて、ナッソー付近の地図の作成を依頼した、この2名から徐々に地図を作成する奴を増やせば良い、和尚はこのナッソーで唯一職業変更が出来る公式の者なのだから、このナッソーの住民からは大変に有り難い存在の様だし。
そして俺はと言うと新しい編成に取り掛かる一方で、空間転移のスキルの応用を色々と考えていた。
今の所は空間転移での攻撃は出来ているのだが、これを防御にも使えないか考えていたのであった、もしも防御にも使えるのならば、敵の攻撃は俺の身体を素通りして当たらないし、こちらの攻撃は当たる。
ただし、ピケ山のダンジョンの様な空間転移が使用出来ない場所では使い物にならないが、戦場では使用できて最強であろうと考えた訳だ。
そんな訳で俺はリーゼロッテが迎えにくる迄にを目標に、修行に励むのであった。
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リーゼロッテは神魔国に戻り王宮内にある魔王の部屋の前に来ていた。
「魔王陛下、リーゼロッテでございます。ただ今帰還致しました、入ります」
そう言ってリーゼロッテが部屋に入ると中には大きな人形を抱いた赤毛の女性が、パジャマ姿でベッドの上で横たわっていたのであった。
「お~お帰り、どうやった?良い男やったか?」
「はい、外見は魔王様の好みで、戦場ではまさに軍神と言うべき采配をしておりました、その強さも残虐性も人間にしておくには余りにも惜しい逸材で御座います」
「そうかそうか、さすがに神さんやなぁ、ウチにピッタリの人を選ぶなんて」
「その事ですが、当の本人は夫では無く軍師と聞いていると申しておりましたが?魔王様、これはどういった事でしょうか?」
「え、えっとな……それはやな……ほらあれや、恥ずかしがってるねんて」
魔王は、焦りながら言っていた。
まさかとは思うが、聞いてみるか。
「では、その左近と言う者に既に妻が2人いると言うのは何故でしょうか?」
「な、なんやて!……やっぱりウチの好みの男やったら他の女も放っておかへんかぁ」
「……やっぱり?」
リーゼロッテの眉毛がピクリと動いた、このキレかけの前兆でもある仕草は本人は気付いていないのだが、魔王フレイアはよく知っていたのであった。
「ご、ご免なさい!ほんまにごめん!ほら私は生まれてから今まで彼氏がいた事ないやん、1度ぐらいは魔王でも恋愛してみたいやん」
「貴女って人は……一体どうするんですか!既に私が魔王様の夫になる人間の確認に向かったって国民全員が知っているのですよ!」
「だって……」
「だってじゃありません!……とにかく左近殿にはここに来る前に口裏を合わせてもらいましょう」
「これやから、リーゼロッテ大好き!ほんま頼むで、それとデートってのもしてみたいねん、それも頼むわ」
「調子に乗らない、だいたい左近殿もそのグータラっぷりを見たらなんと思うか。
とにかく左近殿には2ヶ月の猶予を貰いました、その間に魔王としての相応しい姿になってもらいます、解りましたね!」
「……はぁい」
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「そうか、アルム砦が落ちたか」
ゲハルト国王はアルム砦落城の知らせを聞いて、落胆していた。
ゲハルトも親である、娘のリリアナを勘当したが、前線のアルム砦に配属し、暫く守らせた後で勘当を解き王族に復帰させようと考えていたからであった。
しかも報告を聞くと原因は明らかにリリアナにあったのだ、これを許すと貴族達の反発を招き、反乱を起こすであろう。
そうなれば確実にザルツ王国はその長い歴史に終止符を打つ事になる、それだけは何としてでも避けねばならない事であった。
「それとまだ報告が御座います」
「申してみよ」
まだ嫌な話があるのかとゲハルトは怠そうに言った。
「それが傭兵ギルドの方から、リリアナ王女様の身柄引き渡しの事でございまして、身代金はこちらの言い値で買い取ってくれとの事で御座います」
これは確実に左近だな、あの時の約束を守ってくれたか、しかし今となっては、討ち死にか帝国に捕らわれた方が良かったのかも知れんな。
「向こうの言い値を支払ってやれ、それと……リリアナが帰って来たら法廷を開く、その準備もだ」
「……はい」
こうしてゲハルトは戻ってきたリリアナに、全ての責任を取らせて死罪にしたのであった。
しかしこの判決により、王国内部にあった貴族達の特権意識は変わる事になり、例え貴族でも法に反したり自らの保身で持ち場を放棄すると言った行為は無くなり、帝国の王国攻略に歯止めがかかったのであったのであった。




