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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第一章  創成編
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家臣団

「旦那様、朝ですよ!こんな所で寝ていたら風邪をひきますよ」


 ラナの声で俺は目覚めた、まだ隣でアイリスが寝ている。どうやらあのまま縁側で二人寝てしまった様だな。

「旦那様?その幸せそうな顔は何ですか?旦那様の妻は私もいるのですよ」


「すまん、すまん。しかしこのアイリスの顔を見てみろ、まるで子供の様じゃないか」


「……本当にそうですね……早く旦那様との子供が欲しいな……」


「そればっかりは神様の知るところだな。さてと……おいアイリス起きろ、朝食だぞ」


「……にゃ?」


 にゃ?ってこの距離の猫語は、破壊力有りすぎだろ!いかんあまりデレている時間は今日は無いのだ。

「今日は俺とアイリスとラナの結婚式だろ、今日は朝から忙しいぞ早く起きて朝食を食べないとな」


「……へ?……そうだった!」


 アイリスはそう言うと急に起きて囲炉裏の間に行こうとしたが、何かを思い出した様に戻って来て俺に軽くキスをした。

「お早う御座います旦那様」


 そう言うと囲炉裏の間に向かって行ったのであった。


「はいはい、旦那様。そんな所で幸せそうな顔をしていないで朝食、朝食…………そうだ、今晩覚悟しておいて下さいね」

 そう言ってラナはニヤリと笑みを溢して行ってしまった……あいつドS属性も持っているのか?そんな事を考えながら俺も囲炉裏の間に向かうと、味噌汁の良い香りが俺の鼻に漂ってきた。


 やはり日本人の朝食は、和食だな。この世界のパンはどうも固すぎる……今度ナッソーに行ってパンを探すか。


『お早う御座います』


「あぁ、お早う」

 みんなのあいさつを受けて席に座ると、ラナが朝食を持って来た。

 何だか、蘭とセシルとセシリーは顔を赤くして俯いている……昨日の事かな?まぁあんなに暴走すれば、恥ずかしいわな。


 こうして、朝食を食べているとアデルがやって来た。

「お舘様、今この麓にエルフとリザードマンの集団がやって参りました」


「それは、私が呼んだ者達です、こちらに連れて来なさい」


「珠様、それが合計で約500名になりますので、とてもここには入りません」


「では各部族の主だった者を此方へ連れて来なさい」


「かしこまりました」

 そう言ってアデルはいつの間にか消えてしまった。さすがに職業が中忍だな、やはりアデルは隠密の仕事が合うようだな。


「さて父上、今日は忙しくなりますね」


「そうだな」

 そう言って、俺は縁側に座り彼等を待つことにした。

 縁側の前には庭が、と言っても只の原っぱだが、広いスペースが在るので何人来るのか解らないが、ここなら問題ないだろう。


 しかし原っぱの端に、大きな舞台が出来ているのが気になるが……あれ、結婚式で使うのか?


 そうしていると、アデルに案内された一団がこちらにやって来たのであった。

 エルフ10名、リザードマン10名といった所か、エルフには女性が混ざっているが、リザードマンは性別が解らん……が混ざっているのであろう。しかしリザードマンって俺のイメージでは、もっと肌が紺色だと思っていたのだが、このリザードマンは何だか砂漠の砂の様な色をしている。

 現実はこんな感じなのか?


 アデルに案内されているエルフは、少し嫌な顔をしている、やはりエルマにもあった事だが、エルフはダークエルフの事をあまりよく思っていない様だな。

 この意識を変えさせないと、後々にめんどくさい事になりそうなので注意しないとな。


 そう考えていると彼等は俺達の前に座り、頭を下げて言った。

「私は、向かいのピケの山に暮らしますエルフの族長をやっております、マルディと申します、こちらにいるのは娘のクロエと申します、以後お見知りおきを。

 此度は龍神様のお誘いにより、我が部族の武名を高められると聞き参上した次第でございます」


 向かいの山かぁ、もしかして彼等が珠に供物を捧げていた者達かな?それにしてもあのクロエって子……可愛い……ダメだ、結婚式当日に何を考えているんだ俺は。

 しかしみんな弓矢を持っている、弓が得意なのかな?


「私は、西の砂漠のリザードマンの族長をやっております、ボルと申します、こちらにいるのは息子のバッシュと申します、以後お見知りおきを。

 私共も龍神様のお誘いにより、戦で名が売れると聞き参上した次第でございます」


 西って砂漠だったのか、だから色が違うのかな?鱗もびっしりと在りメチャクチャ固そうだし、装備している革の鎧何て要らないだろう。

 コイツらは剣と槍と盾を装備しているな、槍隊に決定だな。


「父上、こちらのマルディ率いるエルフは、その昔に私が助けた部族でそれ以来私の世話をやってくれておりました。

 そして、このボル率いるリザードマンは私の眷属の様なのです、私を神のように崇めているので連れて来ました」


 リザードマンってドラゴンの系統だったのか?

「皆の者!こちらにおられる方は、私の父上、島左近衛大将清興様である!みな本日よりこの方を主君と仰ぐ様に!」


『ははっ!』

 おいおい、こんなので良いのかよ。しかしいくら配下になったとは言え、彼等もまだ心から納得してはいないだろう、これから徐々に信頼を勝ち得ていかねばならんな。


「みんな宜しくな、こちらに居るのは俺の妻のアイリスとラナだ、今日の夕方から結婚式をするので、できればみんな参加して欲しい。

 そしてこちらに居るのは家人のアデル、蘭、セシル、セシリー、院元和尚に兼平だ。

 そして俺の友人のロンデリックにエルマ、以上だ。

 そして最後に、皆はここの山に住むのか?ボル達は遠いから住むだろうが、マルディはどうする?向かいの山だしどちらでも良いぞ」


「勿論、こちらに移住させて貰います、その代わりにピケの山の村の跡地も拠点としてもよろしいでしょうか?私共は狩猟で食糧を獲ておりますので、ピケの山は動物が多くて良い狩り場なのです。

 こちらの山はモンスターも出ませんが、動物もおりませんので」


「それはかまわんよ。それとこの山での決まり事を申し伝える。

 一つ目、種族の差別はしない事。

 人間もエルフもダークエルフもリザードマンも皆が俺の家臣だ、家臣同士で仲が悪く差別していると、勝てる戦も勝てない。

 二つ目、私闘は禁止。

 どうしても決着を着けたいなら、果たし合いの場所を設けるので、申し出て欲しい。

 三つ目、仲間内での盗みは厳禁だ。

 自分の名ばかりか、島の家名を汚す行為には厳罰にする。

 以上の事を守れない者は、今ここから立ち去ってもらっても構わない!」


 みんなが黙って此方を見ている、どうやら誰もいない様だな。

「どうやら皆、納得した様だな。

 そして今後我等は傭兵として各地の戦場に行くのだが、我等は独自の戦術で戦う。統率の取れた戦いをする為に訓練も行わなくてはならない。

 各部族は生活に支障の無い程度の人員を出して欲しい、戦の報酬は出した人員と武功によって決める。

 まぁ当面は居住区の建築と訓練だな何処か希望は有るか?」


「リザードマンは、通常狩りをして生計を立てますが、我ら部族は元より傭兵で生計を立てて参りました。なので、訓練以外は男達はやることがあまりありません。見ればここは、警備がアデル殿だけの様ですので、我等も警備をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「おぉ!それは助かる、是非とも頼む」


「ならば、麓に近い場所を我等の居住区としてもよろしいでしょうか?」


「ではそれで頼むよ。マルディは何か有るか?」


「我等は御主君と……」

「御主君はなれていないのでアデルの様にお舘で良い」


「ではお舘様のお側に住まわせてもらいます、お舘様の警護に住み込みで娘のクロエをつけてもよろしいですか?」


 こいつもしかして娘を使って、俺に取り入ろうとしているのか?ハニートラップには弱いんだよな、しかし今断っては今後に差し支えが有るかも知れんし……しょうがない。

「良いだろう、だが部屋の空きが無いので、増築してからか空きが出たらで良いか?」


「勿論で御座います」


「おそれながら!我が息子バッシュもお舘様のお側に仕えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 おいおい、いきなりからお互いにライバル心剥き出しかよ。片方を優遇すれば片方が妬む……どこの世界も一緒だな。

 しかしめんどくさい、非常にめんどくさいぞこれは……そうだ、閃いた。

「解った、ではクロエを親衛隊隊長にバッシュを俺の副将とする事で良いか?」


「我が娘をお舘様のお側に……更にそんな重大な役職に付けて下さるとは。このマルディ感謝しきれません」


「私も息子を副将なんて重要な役職に付けて下さるとは……我等、命をかけて忠義を捧げます」


 まぁこれでお互いの部族の面目も保った訳だし、これで良いか……部族が増えたらどうしよう。

 とりあえずは、住居と部隊編制だな。特に居住区には上下水をしっかりと完備しないと後々がめんどくさいので、これはキチッとしておかないとな。


「では居住区等の詳しいことを決めるので、各族長とクロエとバッシュは囲炉裏の間に来い、後はしばらく楽にしてくれ」


 そう言って俺達は囲炉裏の間でこれからの事を話し合う事にした。

「さてと……居住区の場所は……地図が欲しいな」


「左近よここにワシが作った、この山の地図が有るぞ」

 そう言って和尚が広げたのはこの山の見取り図であった、しかもご丁寧に湧水と温泉の位置も記入されている、院元和尚……僅か1日でこんなに調べたのか、警戒するべきだな。


「すまない和尚。では予定通りにこちらの一角はボルの部族が、こちらの1角はマルディの部族がと言うことになる。

 各居住区への通路は竹を伐採して道の両端に壁のように積み上げて欲しい」


「ここに来る道の様にですか?」


「そうだボル、あれなら万が一攻められても対処出来るからな。

 それと見たところマルディの部族は弓矢が得意なようだがどうだ?」


「その通りで御座います、後は魔法と剣を少々使えます」


「そうか、ではマルディの部隊は弓隊だな、魔法部隊に回せる人員が有れば頼む隊長はマルディでも適任者が居ればその者に頼むよ。

 弓隊は弓の腕前は勿論の事だが、頭の一番使う部隊だお前達なら適任だろう、後で何名か見繕っておいてくれ」


「お舘様は見る目が御座います、そのお役目ありがたく引き受けさせて頂きます」


 まぁこうやっておだてれば、頑張るだろう。

「次はボルだが、お前達リザードマンは槍は得意か?」


「無論、得意で御座います」


「ならば、お前達は槍隊だ、この部隊を任せられるのは、本当に屈強な者しか無理だからな、お前達が敗れれば即ちこの軍の敗北になる、その覚悟は有るか?」


「お舘様、そう言われて引き下がる者は我等の中にはおりません、お任せください」


「期待しているよ。セシルとセシリーは魔法部隊を率いてくれ、魔法部隊は最初に相手に攻撃する部隊なのでお前達の合図で我々は攻撃することになる、心して当たってくれ」


 頷いた二人は良い顔になっている、これなら大丈夫だろう。

「アイリス、お前は騎馬隊だ。騎馬隊は必然的に他の傭兵を雇うことになると思う、難しいだろうがお前なら出来ると信じているよ」


「はい!」


「ラナ、お前は斥候だ。俺達の部隊を導いてくれ」


「任せて!」


「蘭は各部隊の後方で、魔法障壁等で部隊の援護を頼む、部隊の被害を少なくするのは、お前の役目だ」


 そう言うと、蘭は顔を赤くして頷いた。やはり昨日の事が原因だな。


「アデル、お前は諜報を頼む。戦の前の地均しはお前の仕事だ、俺の手足となって働いてくれ」


「お任せください!」


「では今日の所は、各自居住区迄の、道作りと伐採作業だな。皆、夕方からは結婚式と皆の歓迎会だ、楽しんでくれ」


『はっ!』

 そう言うとマルディとボルは早速、自分達の部族の元に戻り作業に取り掛かっていったのであった。

 アイリスとラナは結婚式で着るウエディングドレスの最終調整と、エルマのコーディネートの為に、ロンデリックの部屋に行っている。

「セシル、セシリーはアデルと食材と食器の購入に向かってくれ、アデルはオヤジさんに人数が増えた事を伝えてくれ」

 俺はそう言ってセシルに2万シリングを渡した。


「……こんなに?」


「多くてもかまわない、大酒飲みのヨラムが来るから酒は多めにな」


「……解りました」


「兼平は、ヨラムたちを使って、こんな家を建てて欲しい」

 俺はそう言って紙に図面を書き出した。


 あれ?あの幼稚園児の様な図面じゃ無いぞ、面白いように紙に書ける……そうかこれが新しいスキルの力か!あの最初の幼稚園児の書いたような絵は、スキルが無かったからか……決して実力だとは思いたくない。


 そう言って俺が書いたのは露天風呂付きのロッジの様な建物であった。


「……これは露天風呂で御座いますか?」


「さすが話が早い、そうだ露天風呂だ」


「これはさすがに、ここの様に岩風呂はさすがに作るのが大変なので、木材で作ってもよろしいですか?」


「勿論、ただし風景を生かしたムードのある風呂にしてくれ。排水は任せるよ、温泉と湧水は俺が担当する」


「かしこまりました場所は……この辺りでよろしいですか?」


「……そうだなそこで頼む」


「そろそろヨラム達が来ますので、そちらにも人員を回しましょう」


 そう言って兼平が出ていき、俺はクロエとバッシュとで竹の水道管を作っている時であった、もう昼過ぎになろうかと言う時刻にオヤジさん達がやって来たのであった。


「よう左近、来たぞ!アデルから聞いて覚悟していたが、しかし一気に人数が増えたもんだな」


「すみませんオヤジさん」


「良いって事よ、台所使わせてもらうぞ……うおっ、店の台所より良いじゃねえか……左近よここで店をやって良いか?」


「オヤジさん、冗談はよしてくださいよ。もうすぐ追加の食材も到着しますので」


「それは助かるよ……そういや左近よ明日からのダンジョン攻略の依頼を受けてくれねえか?場所は、この山の向かいの山の、ピケ山って所なんだが」


「何だって!ピケの山にダンジョン?そんな事は聞いていないぞ!」

 クロエが驚いて言った。


「そりゃそうだ、IDCU……国際ダンジョン攻略組合の略な。そのIDCUも今日御告げが有って解った緊急の依頼だからな……所で姉ちゃん誰だ?」


「オヤジさん、こいつはクロエと言って俺の親衛隊だ、そのピケの山に住むエルフの部族の族長の娘だ」


「ピケの山の……そいつはえらい災難だな。そのダンジョンはアンデッドのダンジョンらしいんだ、早速冒険者達が向かったはずだが……厳しいだろうな」


「そんな……お舘様……」


 そういやマルディは、狩りに向かうと言っていたな。クロエも早く知らせたいだろう。

「あぁ大丈夫だ俺が何とかする、早くマルディに知らせてやれ」


「有難う御座います!」

 そう言ってクロエは頭を下げて、マルディの元に走って行った。さてとダンジョン攻略か……どのパーティで行くかな。


「そうだ、左近よアンデッドのゾンビは弱点は頭だ、それを覚えておけ。みんな殺られるのは、それを忘れて身体を攻撃してその間に数で押されて食われちまうんだ」


「ありがとうオヤジさん、覚えておくよ」


「まぁお前は大丈夫だろうがな、それよりも今日は腕によりをかけて料理を作ってやる、期待しておけよ」


「ハハハ、期待してますよ」


 そう言ってオヤジさんは台所で怒鳴り声を上げながら、料理を作っていたのであった。


「どちら様で御座いますか?」


「あぁバッシュは知らなかったな、ウォルターと言ってナッソーの酒場で、傭兵やダンジョン攻略等の口利きをやっていて、みんなはオヤジさんと呼んでいる。ラナとアデルの親代わりでもあるんだよ」


「そうなんですか、それならば今日の結婚式は楽しみでしょうね」


「そうだな……所でバッシュには彼女はいないのか?」


「いますが……ちょっと複雑な理由がありまして……」


「そうか、まぁ深くは聞かないが、結婚する時には呼んでくれよ」


「有難う御座います!その時は是非とも御願いします」


 今更なんだが、コイツらはルタイ語を解るのだろうか?まぁ珠の眷属や崇めている奴等ならば解るのものなのか。


 そう言って夕方、いよいよ結婚式が始まった。俺は普段着の着物で良いと言っていたのだが、ロンデリックが俺の分の紋付き袴も作ってやがった、いざ着てみるとロンデリックに感謝するしかないなこれは。


 俺はヨラムの作った特設ステージで、二人の登場を一人で今か今かと待っている。辺りは俺の作った竹筒の灯籠の灯りが幻想的に周辺を照らしている。

 庭にはエルフにリザードマン、ドワーフが大量におり、もう少し広い庭にすれば良かったと後悔もあった。


 そして、マルディはまだ部族の者達に、ダンジョンの事を知らせていないのか、顔色が変なのはマルディとクロエのみであった。言えば、おそらくはみんなに余計な心配事をかけこの場にいる者が気が気ではない状態になるのでそれを危惧しての処置なんだろう。


 やがて正装したオヤジさんが出て来てスピーチを始めた。

「え~本日は晴天の天気に恵まれ……」


 おい、マジでか!かなりウザイ上司みたいなスピーチになってるじゃねえか。

「おい、爺臭い事を言うな!酒が不味くなるぞ!」


「誰だ!ヨラムか!てめぇ、早くツケを払ってから、大口を叩きやがれ!」

 ヨラム、ナイス!てかまだあいつ払ってないのかよ……あいつ最早ツケを払う気無いな。


「あ~何だぁ、せっかく考えていたのに忘れたわぁ。もういいや、では新婦の入場だ!」


 オヤジさんがそう言うと、ドレス姿のセシルとセシリーが出て来て、その後方をウエディングドレス姿のアイリスとラナが続いて姿を現したのであった。


 出てきた二人の姿に参列者全員が息を飲んだ。

 純白のドレスに胸元には、エルマが選んだあの時のアメジストとルビーのネックレス、そして二人の頭にはティアラがあったのだ。


 これはエルマが選んだな。そう思いエルマの方を見るとエルマはこちらに向かってウインクをした。

 あ、やっぱりね、エルマありがとう、そう思い俺はエルマに軽く会釈をした。


 セシルとセシリーに先導された二人はそのまま俺の両端に座ると、オヤジさんがワインの入ったグラスを持って言った。

「お前ら見たかこの美しい二人を、全くこの左近って奴は本当に幸せ者だよな!みんなグラスを持ってくれ、この若者達の未来を祝福して乾杯しようじゃねえか!……乾杯!」


『乾杯!』


 そうして始まった宴はまさにカオスと言うべきものであった。この世界の風習なのか、祝う時は全力で祝うと言った感じで、リザードマン達は何やら太鼓を叩きだしアフリカの部族の躍りのような踊りを披露するしまつであった。まぁ楽しいから良いのだが、マルディ達エルフはドン引きしていた。


 その中でひときわ目を引いたのは蘭の神楽舞であった、こちらの世界の神楽舞はどちらかと言うとダンスに近いものがあり、何処かセクシーなのである、胸は無いが。

 そんな中で、アイリスが小声で話してきた。

「旦那様、その……私、変じゃ無いですか?この場に出た時にみんな沈黙していたので」


「それはアイリスとラナが、あまりにも美しい姿だったからだよ。とても似合っているよ」


「良かった、エルマさんがこのティアラを貸してくれて着けてみたのですが……壊したらと思うと……怖いです」


「アイリスはビビりなんだよ、壊したら旦那様が買ってくれるに決まってるじゃないか」


 まて、何を恐ろしい事を言っているんだラナよ。


「それもそうですね」


 いや、アイリスも何乗ってるの?こんなティアラは、明らかに高いだろ、しかも貸してくれたって言ってたから、エルマも簡単に購入出来る金額じゃ無いと言っているのと同じ事なんだぞ。

 この先何だか怖くなってきたよ。


 こうして、大宴会は深夜まで続いて行くのであった。


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