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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第一章  創成編
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家族

 俺達3人は王宮に到着すると、門番に前回のように武器やマジックバッグと帽子を預けると、以前の様な玉座の間ではなく、何かテラスのような場所に案内された。

 テラスの大きなテーブルには、国王とおばば様が座っていた。おばば様……太陽の下に出て来て大丈夫なのか?


「よう、左近どうした?」


 何だ?以前とは喋り方が違うぞ。本当にあの国王か?


「本日は、陛下の御尽力で我が館が完成したので、その報告と感謝を言いに来ました」


「そんな喋り方は、しなくてよい。あの時は、玉座の間での謁見だったから仕方が無かったが、今は違う。

 それにワシは、友人になってくれと言ったのだ、友人にその喋り方は変だろう」


「解りました、では遠慮なく」


「それにしても、かなり早く完成したな。尋常じゃ無い速度だぞ」


「ナッソー近くの魔の山に、建てましたので。それと、頼んだドワーフ達が、優秀だったのでしょう」


「なるほど、その場所なら、皆が少しでも早く逃げ出したいからな。

 かと言って、ドワーフの職人気質で、手を抜く仕事はしないと……考えたな左近。所で、その後ろの美しい貴族の女性は?」


「一人は、あの時の通訳のアイリスですよ。もう一人はラナと言います」

 俺が紹介すると、二人はスカートを摘まみ上げて、貴族らしいお辞儀をした。


「おぉ!本当じゃ、あまりにも綺麗なので、解らなかったわ」


「所で陛下……」


「ゲハルトで良い」


「ではゲハルト、貴方の娘の事で忠告があります。

 聞けばこの国の後継者は、このままでは、あの王女になるそうではないですか。貴方は、この国を滅ぼすつもりですか?」


「確かに我が娘ながら、プライドだけが高く現実が見えておらん。国民にも嫌われて人望も無い。

 ……しかしな、王族はあれしかおらんのだ、ワシに出来ることは、戴冠をワシの寿命が尽きるまで、遅らせる事だけだ」


「では今回、捕らえられた、蘭と言うルタイの民の事は、ご存知で?」


「いや、またアイツは、何かやらかしたのか?」


「王家の秘蔵の宝石を盗んだとして、逮捕されたそうです。只の巫女の女性なのにね」


「おそらく、司法長官を抱き込んでおるで有ろう。

 普通なら即日死刑なのだが、ワシの所には確認の書類が来ておらん。まだ処刑は、されておらんだろうな」


「書類の、偽造の可能性は?」


「それをすると、いくら王女でも極刑になるので、いくら娘がバカでも、やらないだろう……左近よ協力してはくれんか?

 あのバカ娘に、キツイお仕置きをしないと、いかんからな」


「ならば、喜んで。で、その計画とは?」


「左近の家の魔の山に、邪龍の祠が在るのだが、その中に王家の宝剣セブン・スターズが有るのだ。

 ワシの祖父が退治しに行って、返り討ちにあった様なので、そこに在ると思われる。

 邪龍を倒さなくて良いが、宝剣を何とか取って来ては、くれないか?そして、取って来れば、ワシが玉座の間で、諸侯のいる前で左近に望みを聞く」


「なるほど。私はそこで、蘭さんの事を、ゲハルトに頼む」


「そうだ、そこでリリアナにワシが罰を与える。完璧じゃろう?」


「確かに。しかし、私が宝剣を持ってくるのを、失敗すればどうします?」


「その時は、また何か策を考えるしか、無いだろう」


「……解りました、その話に乗りましょう。所で面会は、出来るのですか?」


「それは無理だろう、もしも面会したのがバレれば、計画も失敗のおそれが有る」


「……そうですな。解りました、すぐに行きましょう」

 そう言って、俺が出て行こうとした時であった。


「そうだ左近よ、これを持って行け」

 そう言ってゲハルトは、何かバッジのような物を、俺に渡した。


「これは?」


「王国の、ワシの紋章じゃ。門番に、これを見せれば、帯剣したままで、王宮に入る事が出来る」


「助かります」

 俺達は、そう言って王宮から出て、すぐにレンヌから出て、家に戻って来たのであった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「御主人様、国王の依頼って、例の場所のことじゃ……」

 アイリスが、不安そうな顔で言った。


「そうだな、ラナの見つけた場所の事だろうな。まぁ遅かれ早かれ、行く予定だったんだ。

 ただし今回は、戦わずに戦闘は避ける方向でいく。邪龍と言うからには、ドラゴンなんだろう……人に転生しなかった訳だ」


「御主人様、一人で行こうとしないで下さいね」

 ラナが泣きそうに言った。


「あぁ解ってるよ」

 どうせ俺が死んだら二人とも死ぬので、一人で行っても意味は無いからな。


「そうだラナ、今日買った浴衣を来て見せてくれ」


「良いですけど、この浴は衣丈が短いのでパンツが……」

 そうだな、かぼちゃパンツじゃ不細工だわな、アイリスが着ていた時は、何も履いていなかったからな。

 しかし、そんな時には、これだな。


「アイリス、ラナこれを履いてみろ。これは俺の国のパンツだ、これならば見えないぞ。それとお前達に新しい服だ、家では好きなのを着ていてくれ」


「有難う御座います、これ可愛い」


「ホントだ、可愛い。御主人様さっそく着てきますね」

 そう言って二人は寝室に向かうと、賑やかな二人の声が聞こえてきた。何だかこんな雰囲気、良いな……しかし邪龍の柳生の者か、剣を使えなくても厄介なのだろうな。


 暫くして出てきた二人は、メイド服になっていた。

「あの、御主人様が浴衣を所望でしたが、アイリスと二人で、この服を着ようと話し合いまして……ダメでしたか?」


「そんなわけは無いだろ。とても似合っているよラナ、アイリスも似合っている。お前達は最高だよ」

 そう言って俺は二人を抱き寄せて、そのまま寝室に向かい、何度も何度も獣の様に肌を重ねた。


 人は死が近付くと、種の保存の為に性欲が増すと言う。戦の前にも俺は性欲が増し、女性を求めたものだ、今回も死の危険を感じているのか、性欲がスキル以上に感じる。

 それに応えるアイリスとラナも、そうなのであろうか?二人も、いつにも増して激しく、求めてきたのであった。



 そして、気が付くと朝になっていたのであった。

 俺は寝室の窓を開けると、まだ朝焼けの空を見つめて、朝風呂に入りたくなったので、寝室をソッと出て露天風呂に行こうとすると、二人が目覚めて呼び止められた。


「御主人様、どちらへ?」


「ラナ起きていたのか……アイリスもか。朝風呂に入りたくてな、来るか?」


『はい!』

 そう言って、朝から露天風呂で散々いちゃついた俺達は、装備を整えてラナの発見した祠を目指して、旅立ったのであった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ラナの先導で祠に到着した俺達は、その祭壇に刻まれていた家紋を見て、やはり柳生だと確信したのである。


「御主人様……やはり」


「そうだアイリス、やはり柳生笠だ……ゲハルトの話では邪龍と言っていた。ならば最悪話が通じなければすぐに逃げるぞ、まぁそれまでに、目的の宝剣を発見したら良いんだがな。

 ではラナ、先行して斥候を頼む、もしも邪龍と対峙した時は、他の通路から他のモンスターが来ないか警戒してくれ。邪龍は俺とアイリスが担当する」


「……かしこまりました」


「アイリスは、邪龍の所までは、後方を警戒してくれ。そして、もしも最悪戦う時は、前の様に俺が前衛で後方からの支援を頼む」


「解りましたが、御主人様もけっして無理は、されませんよう御願いします」


「あぁ解っているよ、ではそろそろ行くか!」


『はい!』

 そう言って俺達は、祠の奥にある洞窟へと、入って行ったのであった。



 洞窟内部は、壁に生えている苔が光り、視界には困らない、しかし先程から気配探知のスキルを使用しているのだが、errorと出ていて使用出来ない状態だ。

 これは、もしかして携帯電話みたいに、トンネルに入ったら使用できないとか、そんな事なのだろう。

 と言う事は、無事に帰れてもダンジョンでは、このスキルは使用できないと言うことになる。今後はダンジョンに入る時は、ラナに頼らなければならないな。


 そんな事を考えながら進んでいると、ラナが戻って来た。


「どうだった?」


「ダメです、一本道で脇道は無く、この先に水色のドラゴンが寝ており、その先に道が見えます。それ以外は、他にモンスターもいない只の洞窟です」


「そうか……寝ている所を通り抜けは、出来そうか?」


「無理ですね、ドラゴンの居場所から先の、通路の入り口の殆どを、ドラゴンが塞ぐ形で寝ています。どうします、攻撃しますか?」


「攻撃は止めておこう、それで仕留められなかった時は、話し合いもへったくれも無い。

 それに、予想通りに柳生の者なら、そんな事もお見通しで有ろう」


「そうですね、それが一番だと思います」

 アイリスが賛同して、ラナも頷いた。

 そして、俺達は各自の武器をもう一度点検し、気を引きしめてドラゴン目指して、先を警戒しながら向かって行ったのだった。



「ここを曲がると、ドラゴンが寝ている開けた場所です」

 ラナに教えられた通りに、顔だけチラリと出して確認すると、ビル3階程の天井が高く開けた場所に出て、その下には蛇の様で、東洋の龍の様な水色のドラゴンが、寝ていたのであった。


 どちらかと言うと、ドラゴンと言うより龍神様だな……あれか、ラナの言っていた通路は。

 さてどうするか、このまま行くのは、さすがに無理だな、起こして移動してもらうしか無さそうだ。

 いきなり柳生の名前を出して、同族を強調するか。先ずは、いざ戦う場合に備えて、ステータスの確認だな。





 名前:****** 種族:ドラゴン レベル92

 職業:龍神 水龍ウオータードラゴン 




 なんだあれ!完全な化け物クラスじゃねえか……あれ?職業に魔物が出ていない。

 と言う事は、倒しても金にはならないし……もしかすると、知性が有れば魔物に、ならないんじゃないかな?知性が有ればだけど。

 ここは、覚悟を決めて話し掛けるか?しかし寝起きが悪いと、めんどうだなぁ。


「先程から、チョコチョコと五月蝿いの。どうした、我の姿に怖じけずいて、逃げるか考えておるのか?今の我は、腹が満腹なので、今回は見逃してやる」


 あ、起きていたのね。ならば話は早い。

「龍神どの、今回は戦いに来たのでは無い。友人を助ける為に、セブン・スターズと言う宝剣を探しているのです、ご存じですか?」


「ふん……知っても、何故お主に言わねばならぬ?我に殺されぬうちに、早く帰れ!」


 コイツ、目を瞑ったままで言ってやがる、完全になめているな。

「相手の顔も見ずに話すのが、柳生の流儀か?柳生の名が廃るぞ!」


 そう言った時であった、ドラゴンの両目がカッと開き、俺のすぐ前まで顔が上がって来たのであった。

 あれ?失敗したかな?これ違ったら俺、確実に死ぬぞ俺。


「ん?お主その陣羽織の家紋、どこの家紋か知っていて、付けているのか?」


 今、家紋と言った。この世界じゃ紋章と言っていたのに今、家紋と言っていた。

 もしかすると、ルタイ皇国じゃ家紋と言うのかも知れないが、少なくともこの辺りでは、紋章と言う。

 それに、この三つ柏の家紋を知っていると言う事は、俺と同世代か、もしくはその先祖の可能性が高い。

 誰だ?ここは直球勝負で行くか!


「これは、我が家紋の三つ柏である。これを知っているとなると、誰だ?宗厳殿が転生したのか?」


「……三つ柏……それは、私の家の家紋でもあります……そなたは、どなたか?」


「某は、島 清興と申す」


「そんな……まさか……」


 何だか、動揺しているぞ……俺の名前で動揺するし、そして私の家の家紋?俺の親族か?それに私と言った、女性なのか?

「某の名前を聞いて、そなたは名を名のらんのか?」


「……質問がございます、貴方の息子の名前は?」


 話を聞けよ……仕方ない答えるか。

「信勝、友勝、清正だ。信勝は、杭瀬川の戦で討ち取られ、残りの二人は、おそらくは関ヶ原で討たれたのであろう」


「や……やはり、お父上様」


 ドラゴンが涙を流すとは、何だか悪い事をやっている気持ちになるな。ん?お父上様?俺の子供?

「……誰だ?」


「私です!解らないのですか?」


 いやいや、何処からどう見てもドラゴンです、はい。

「すまんが、人間の姿でないので、解らんのだが」


「そ、そうですよね暫し御待ちを」


 そう言うと、ドラゴンの身体から大量の水蒸気が出てきて、視界が全く見えなくなってしまった。

 暫くすると、水蒸気の中から一人の女性が、出てきたのであった。

 年齢は17、8で綺麗な黒髪の女性だ。


 ん?何処かで見たような……珠?いや珠は、京の呉服屋の数馬に預けた時は、確か3歳だった……しかし珠の面影がある。

「まさか……珠?」


「そうです珠です!まさか、こんな場所で父上に会えるとは……泣きそうです」


「いや、なんで龍神なんかに?」


「それが、寿命で死んだら、何やら神様と言うお爺様に、いきなり何も説明されずに土下座されまして、何に生まれ変わりたいと、問われましたので、柳生の里を護る龍神になりたいと言ったら、こんな所に、こんな姿で飛ばされたのです」


 あのジジイ、また適当な事を。どうせ土下座は俺の事を詫びているんだろう、そして俺の娘の願いを叶えた所だが、龍神しか合っていないじゃねえか。

 俺の娘にこんな仕打ちをして……殺す。


「そうなのか、辛かったで有ろう」


「いいえ、この様な所で父上に会えるとは、まさに御仏の御導きで御座います。

 所で父上の後ろの女性は?」


「あぁ、アイリスとラナだ、訳あって俺の家族のような者だ」


「アイリスです、よろしく御願いします」


「ラナです、これからも末永く御願いします」

 ん?何かラナの言葉が変だが……まあ良いか。


「父上の……島左近清興の末の娘、珠です。そう言えば父上、先程なにやら友人の為に来たとか、何とか言っておりませんでした?」


 わ、忘れていた。

「そうだ、この洞窟にセブン・スターズと言う宝剣は、有るか?」


「さぁ?私を討ちに来た者は、全て殺しましたので……もしかすると、その者の中に持っていた者がいたかも知れませんね。見てみますか?」


「そうだな、案内してくれ」


「では、こちらへ」



 そう言って案内された奥の通路の先は、行き止まりになっており。そこには、大量の白骨化した遺体が錯乱していたのであった。


「こ、これは?」


「あぁ、私を殺しに来た者達です、全部返り討ちにしましたけどね。父上が言っていた宝剣ですが、この中に有るのでは?」


「しかし、これは探すのが大変だな、どうするか……」


「それなら、全部持っていけば、宜しいのでは?」


「良いのか?」


「えぇ、私には不要の物ですし。所で父上は、今はどちらに?」


「……まさか、来るのか?」


「御主人様、珠様が来ても良いじゃないですか!」

 え?アイリス、そこでフレンドリーファイアかますの?


「そうですよ、せっかく出会えた家族ですよ」

 え?ラナも?これが四面楚歌というやつか……目の前で珠もニコニコしているし、これ俺が断れない状況って解って、俺の言葉を待ってやがる。数馬、どういう教育をしやがったんだよ。


 しかし、珠が家に来れば、俺のナイトライフが……俺の趣味が……俺の父親としての威厳が。

 それに、もしもあのコスプレが珠に見付かったら、母親にエロ本が見付かる以上の破壊力が有るぞ。

 しかし、こんな所に放置はまずいし……仕方ない、何とかするか。それに何か、情報を持ってるかもしれんしな……数馬恨むぞ。


「家は、この山に在る。珠、一緒に住むか?」


「はい!父上」

 そう言って俺達は、遺体から装備品を全部剥ぎ取り、遺体を埋葬し、我が家に空間転移で、戻って来たのであった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おぉ、囲炉裏じゃないですか!しかもかなり大きい。さすが父上、こんなに素晴らしい家を作るとは……こちらには露天風呂!こんな世界で、温泉に入れるとは、私ここに来て本当に良かった」

 家に入った珠は、感動して言っていた。


 まぁ、喜んでいるから良しとするか。こうしてみると、まだまだ子供だな。

 前世では3歳迄しか、一緒にいてやれなかったので、今回の人生は長く一緒にいてやれる……あの時の分までな。


 しかし、その為には、あの例の物を見られる訳にはいかない。絶対に隠し通さないと、父としての威厳が……。


「そう言えば、以前の御主人様は、どの様な御方だったのですか?

 あ、ハーブティーですがどうぞ」

 アイリスが珠の前にハーブティーを置いて言った。


「そうです、私も聞きたいなぁ」

 ラナよ何故にお前まで食い付く……しかし俺も後世の評価は恐くて調べていなかったな、どうなんだろう?


「私の3歳の頃に父上は戦場で亡くなられましたので、殆ど人から聞いたばかりですが……三成に過ぎたるものが二つあり、島の左近に佐和山の城」


「珠!」


「申し訳ありません!父上のかつての主君を呼び捨てなど……申し訳御座いませんでした」

 いくら珠でもあの御方を、揶揄したあの詩を言うのは、許さない。


『主君?』


「……そうです、この三成と言われる御方は、石田 治部少輔 三成と言われる御方で、父上の仕えていた御方です。

 そして父上は、その前の筒井家でも両翼と言われ、筒井の右近左近とまで言われた御方でした。

 そうそう、戦場では鬼の左近と言われて、最後に戦った黒田の者が戦が終わっても、父上の「かかれぇ!かかれぇ!」の声に脅えていたそうですよ。

 いったいどれ程の事をすれば、そんなに脅えさせる事が出来るのか……我が父上ながら恐ろしいお人です。

 でも父上は、民を第一に考える、素晴らしい領主と言った一面も有り、民の為なら主君と平気で喧嘩するお人で……まぁそれが原因で、筒井家から出るきっかけになったのですが……

 そして、困っている者には、仕官先を探してあげるなど、心優しき、しかし戦場では鬼神のごとき御方であったと、お聞きしております」


 何だか誉められなれていないから、ムズムズしてきた。

「そんなお人が、私の御主人様……とても誇らしくおもいます!」


 おぉ、何だかアイリスの俺に対する株が、上がったようだ。


「私も!……所で珠様、何で柳生の家紋を祭壇に、付けていたのですか?」


「そうだ、ラナの言う通り俺も気にはなっていた、何故なんだ?」


「それは、私の嫁ぎ先の家紋ですので……」


 な、何だと?今、嫁ぎ先と?衝撃過ぎる事が有ると人間声も出せなくなると言うが、今の俺がまさしくその常態であった。


「珠様、結婚されていたのですか?」

 ラナ、そこは聞くんじゃない。


「はい、結婚していましたよ。相手は父上のよく知っている人です」


 !!!!!!!!!!!!!!!何だと?誰だ!

「だ、だ、だ……」


「あぁ、誰かと言う事ですね。柳生 兵庫助様で御座います」


「何だと!兵庫助って利厳の事か?」


「はい」


「お前、利厳とは、何歳離れていると思っているのだ!」


「確か嫁いだ時の年齢は、私は14歳で、兵庫助様は37歳でしたね」


「あの野郎、せっかく俺が清正殿の所に、紹介してやったのに、その恩義も忘れて、人の娘に手を出すとは……」


「……あぁ、その事ですが、兵庫助様なら加藤家を退転されましたよ。

 何でも、一揆鎮圧で手間取っていた長門守様の援軍で、兵庫助様が派遣されて、総攻撃に反対した長門守様を斬り捨て、総攻撃を仕掛けて、見事に鎮圧したのですが、即日加藤家を退転したみたいです」


「あ、あの野郎……人の娘に手を出すばかりか、人が紹介した仕官先で味方を叩き斬って、総攻撃など前代未聞ではないか!」


「えぇ、よく兵庫助様は「左近殿が生きていたら、俺は殺されているな」と言っておりましたよ」


「よく分かっているじゃねえか……そう言えば数馬は?数馬は、結婚を許したのか?」


「西陣のお父様……加藤 数馬様は「こんなにも、めでたい事はない。左近様も生きておられれば、そう言って祝福して下さるだろう」って涙を流して喜び涙を流していました。

 そして私は、兵庫助様と一緒に諸国の旅に出たのです」


 利厳、数馬の二人は、俺の殺すリストに追加だな。あれ?何か変だな。

「なぁ、諸国を旅にって、利厳は仕官してなかったのか?」


「そうですね、あの時はしてませんでした。

 後に、尾張徳川の剣術指南役になり、尾張柳生と言われておりますが、結婚時は浪人でしたね」

 数馬も、浪人に人の娘を嫁がせるなよ。


「珠様は、そこまで兵庫助様と言うお人を、愛したのですね!私、珠様を尊敬します!」

 おいアイリスよ……何故そこで食い付く?


「私も、そのお話をもっと聞かせて下さい!」


「良いですよ……」

 ラナもか……まぁ仲が良いってのは良い事だ、俺はあまり聞きたくは無いが。






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