家族
俺達3人は王宮に到着すると、門番に前回のように武器やマジックバッグと帽子を預けると、以前の様な玉座の間ではなく、何かテラスのような場所に案内された。
テラスの大きなテーブルには、国王とおばば様が座っていた。おばば様……太陽の下に出て来て大丈夫なのか?
「よう、左近どうした?」
何だ?以前とは喋り方が違うぞ。本当にあの国王か?
「本日は、陛下の御尽力で我が館が完成したので、その報告と感謝を言いに来ました」
「そんな喋り方は、しなくてよい。あの時は、玉座の間での謁見だったから仕方が無かったが、今は違う。
それにワシは、友人になってくれと言ったのだ、友人にその喋り方は変だろう」
「解りました、では遠慮なく」
「それにしても、かなり早く完成したな。尋常じゃ無い速度だぞ」
「ナッソー近くの魔の山に、建てましたので。それと、頼んだドワーフ達が、優秀だったのでしょう」
「なるほど、その場所なら、皆が少しでも早く逃げ出したいからな。
かと言って、ドワーフの職人気質で、手を抜く仕事はしないと……考えたな左近。所で、その後ろの美しい貴族の女性は?」
「一人は、あの時の通訳のアイリスですよ。もう一人はラナと言います」
俺が紹介すると、二人はスカートを摘まみ上げて、貴族らしいお辞儀をした。
「おぉ!本当じゃ、あまりにも綺麗なので、解らなかったわ」
「所で陛下……」
「ゲハルトで良い」
「ではゲハルト、貴方の娘の事で忠告があります。
聞けばこの国の後継者は、このままでは、あの王女になるそうではないですか。貴方は、この国を滅ぼすつもりですか?」
「確かに我が娘ながら、プライドだけが高く現実が見えておらん。国民にも嫌われて人望も無い。
……しかしな、王族はあれしかおらんのだ、ワシに出来ることは、戴冠をワシの寿命が尽きるまで、遅らせる事だけだ」
「では今回、捕らえられた、蘭と言うルタイの民の事は、ご存知で?」
「いや、またアイツは、何かやらかしたのか?」
「王家の秘蔵の宝石を盗んだとして、逮捕されたそうです。只の巫女の女性なのにね」
「おそらく、司法長官を抱き込んでおるで有ろう。
普通なら即日死刑なのだが、ワシの所には確認の書類が来ておらん。まだ処刑は、されておらんだろうな」
「書類の、偽造の可能性は?」
「それをすると、いくら王女でも極刑になるので、いくら娘がバカでも、やらないだろう……左近よ協力してはくれんか?
あのバカ娘に、キツイお仕置きをしないと、いかんからな」
「ならば、喜んで。で、その計画とは?」
「左近の家の魔の山に、邪龍の祠が在るのだが、その中に王家の宝剣セブン・スターズが有るのだ。
ワシの祖父が退治しに行って、返り討ちにあった様なので、そこに在ると思われる。
邪龍を倒さなくて良いが、宝剣を何とか取って来ては、くれないか?そして、取って来れば、ワシが玉座の間で、諸侯のいる前で左近に望みを聞く」
「なるほど。私はそこで、蘭さんの事を、ゲハルトに頼む」
「そうだ、そこでリリアナにワシが罰を与える。完璧じゃろう?」
「確かに。しかし、私が宝剣を持ってくるのを、失敗すればどうします?」
「その時は、また何か策を考えるしか、無いだろう」
「……解りました、その話に乗りましょう。所で面会は、出来るのですか?」
「それは無理だろう、もしも面会したのがバレれば、計画も失敗のおそれが有る」
「……そうですな。解りました、すぐに行きましょう」
そう言って、俺が出て行こうとした時であった。
「そうだ左近よ、これを持って行け」
そう言ってゲハルトは、何かバッジのような物を、俺に渡した。
「これは?」
「王国の、ワシの紋章じゃ。門番に、これを見せれば、帯剣したままで、王宮に入る事が出来る」
「助かります」
俺達は、そう言って王宮から出て、すぐにレンヌから出て、家に戻って来たのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「御主人様、国王の依頼って、例の場所のことじゃ……」
アイリスが、不安そうな顔で言った。
「そうだな、ラナの見つけた場所の事だろうな。まぁ遅かれ早かれ、行く予定だったんだ。
ただし今回は、戦わずに戦闘は避ける方向でいく。邪龍と言うからには、ドラゴンなんだろう……人に転生しなかった訳だ」
「御主人様、一人で行こうとしないで下さいね」
ラナが泣きそうに言った。
「あぁ解ってるよ」
どうせ俺が死んだら二人とも死ぬので、一人で行っても意味は無いからな。
「そうだラナ、今日買った浴衣を来て見せてくれ」
「良いですけど、この浴は衣丈が短いのでパンツが……」
そうだな、かぼちゃパンツじゃ不細工だわな、アイリスが着ていた時は、何も履いていなかったからな。
しかし、そんな時には、これだな。
「アイリス、ラナこれを履いてみろ。これは俺の国のパンツだ、これならば見えないぞ。それとお前達に新しい服だ、家では好きなのを着ていてくれ」
「有難う御座います、これ可愛い」
「ホントだ、可愛い。御主人様さっそく着てきますね」
そう言って二人は寝室に向かうと、賑やかな二人の声が聞こえてきた。何だかこんな雰囲気、良いな……しかし邪龍の柳生の者か、剣を使えなくても厄介なのだろうな。
暫くして出てきた二人は、メイド服になっていた。
「あの、御主人様が浴衣を所望でしたが、アイリスと二人で、この服を着ようと話し合いまして……ダメでしたか?」
「そんなわけは無いだろ。とても似合っているよラナ、アイリスも似合っている。お前達は最高だよ」
そう言って俺は二人を抱き寄せて、そのまま寝室に向かい、何度も何度も獣の様に肌を重ねた。
人は死が近付くと、種の保存の為に性欲が増すと言う。戦の前にも俺は性欲が増し、女性を求めたものだ、今回も死の危険を感じているのか、性欲がスキル以上に感じる。
それに応えるアイリスとラナも、そうなのであろうか?二人も、いつにも増して激しく、求めてきたのであった。
そして、気が付くと朝になっていたのであった。
俺は寝室の窓を開けると、まだ朝焼けの空を見つめて、朝風呂に入りたくなったので、寝室をソッと出て露天風呂に行こうとすると、二人が目覚めて呼び止められた。
「御主人様、どちらへ?」
「ラナ起きていたのか……アイリスもか。朝風呂に入りたくてな、来るか?」
『はい!』
そう言って、朝から露天風呂で散々いちゃついた俺達は、装備を整えてラナの発見した祠を目指して、旅立ったのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ラナの先導で祠に到着した俺達は、その祭壇に刻まれていた家紋を見て、やはり柳生だと確信したのである。
「御主人様……やはり」
「そうだアイリス、やはり柳生笠だ……ゲハルトの話では邪龍と言っていた。ならば最悪話が通じなければすぐに逃げるぞ、まぁそれまでに、目的の宝剣を発見したら良いんだがな。
ではラナ、先行して斥候を頼む、もしも邪龍と対峙した時は、他の通路から他のモンスターが来ないか警戒してくれ。邪龍は俺とアイリスが担当する」
「……かしこまりました」
「アイリスは、邪龍の所までは、後方を警戒してくれ。そして、もしも最悪戦う時は、前の様に俺が前衛で後方からの支援を頼む」
「解りましたが、御主人様もけっして無理は、されませんよう御願いします」
「あぁ解っているよ、ではそろそろ行くか!」
『はい!』
そう言って俺達は、祠の奥にある洞窟へと、入って行ったのであった。
洞窟内部は、壁に生えている苔が光り、視界には困らない、しかし先程から気配探知のスキルを使用しているのだが、errorと出ていて使用出来ない状態だ。
これは、もしかして携帯電話みたいに、トンネルに入ったら使用できないとか、そんな事なのだろう。
と言う事は、無事に帰れてもダンジョンでは、このスキルは使用できないと言うことになる。今後はダンジョンに入る時は、ラナに頼らなければならないな。
そんな事を考えながら進んでいると、ラナが戻って来た。
「どうだった?」
「ダメです、一本道で脇道は無く、この先に水色のドラゴンが寝ており、その先に道が見えます。それ以外は、他にモンスターもいない只の洞窟です」
「そうか……寝ている所を通り抜けは、出来そうか?」
「無理ですね、ドラゴンの居場所から先の、通路の入り口の殆どを、ドラゴンが塞ぐ形で寝ています。どうします、攻撃しますか?」
「攻撃は止めておこう、それで仕留められなかった時は、話し合いもへったくれも無い。
それに、予想通りに柳生の者なら、そんな事もお見通しで有ろう」
「そうですね、それが一番だと思います」
アイリスが賛同して、ラナも頷いた。
そして、俺達は各自の武器をもう一度点検し、気を引きしめてドラゴン目指して、先を警戒しながら向かって行ったのだった。
「ここを曲がると、ドラゴンが寝ている開けた場所です」
ラナに教えられた通りに、顔だけチラリと出して確認すると、ビル3階程の天井が高く開けた場所に出て、その下には蛇の様で、東洋の龍の様な水色のドラゴンが、寝ていたのであった。
どちらかと言うと、ドラゴンと言うより龍神様だな……あれか、ラナの言っていた通路は。
さてどうするか、このまま行くのは、さすがに無理だな、起こして移動してもらうしか無さそうだ。
いきなり柳生の名前を出して、同族を強調するか。先ずは、いざ戦う場合に備えて、ステータスの確認だな。
名前:****** 種族:ドラゴン レベル92
職業:龍神 水龍
なんだあれ!完全な化け物クラスじゃねえか……あれ?職業に魔物が出ていない。
と言う事は、倒しても金にはならないし……もしかすると、知性が有れば魔物に、ならないんじゃないかな?知性が有ればだけど。
ここは、覚悟を決めて話し掛けるか?しかし寝起きが悪いと、めんどうだなぁ。
「先程から、チョコチョコと五月蝿いの。どうした、我の姿に怖じけずいて、逃げるか考えておるのか?今の我は、腹が満腹なので、今回は見逃してやる」
あ、起きていたのね。ならば話は早い。
「龍神どの、今回は戦いに来たのでは無い。友人を助ける為に、セブン・スターズと言う宝剣を探しているのです、ご存じですか?」
「ふん……知っても、何故お主に言わねばならぬ?我に殺されぬうちに、早く帰れ!」
コイツ、目を瞑ったままで言ってやがる、完全になめているな。
「相手の顔も見ずに話すのが、柳生の流儀か?柳生の名が廃るぞ!」
そう言った時であった、ドラゴンの両目がカッと開き、俺のすぐ前まで顔が上がって来たのであった。
あれ?失敗したかな?これ違ったら俺、確実に死ぬぞ俺。
「ん?お主その陣羽織の家紋、どこの家紋か知っていて、付けているのか?」
今、家紋と言った。この世界じゃ紋章と言っていたのに今、家紋と言っていた。
もしかすると、ルタイ皇国じゃ家紋と言うのかも知れないが、少なくともこの辺りでは、紋章と言う。
それに、この三つ柏の家紋を知っていると言う事は、俺と同世代か、もしくはその先祖の可能性が高い。
誰だ?ここは直球勝負で行くか!
「これは、我が家紋の三つ柏である。これを知っているとなると、誰だ?宗厳殿が転生したのか?」
「……三つ柏……それは、私の家の家紋でもあります……そなたは、どなたか?」
「某は、島 清興と申す」
「そんな……まさか……」
何だか、動揺しているぞ……俺の名前で動揺するし、そして私の家の家紋?俺の親族か?それに私と言った、女性なのか?
「某の名前を聞いて、そなたは名を名のらんのか?」
「……質問がございます、貴方の息子の名前は?」
話を聞けよ……仕方ない答えるか。
「信勝、友勝、清正だ。信勝は、杭瀬川の戦で討ち取られ、残りの二人は、おそらくは関ヶ原で討たれたのであろう」
「や……やはり、お父上様」
ドラゴンが涙を流すとは、何だか悪い事をやっている気持ちになるな。ん?お父上様?俺の子供?
「……誰だ?」
「私です!解らないのですか?」
いやいや、何処からどう見てもドラゴンです、はい。
「すまんが、人間の姿でないので、解らんのだが」
「そ、そうですよね暫し御待ちを」
そう言うと、ドラゴンの身体から大量の水蒸気が出てきて、視界が全く見えなくなってしまった。
暫くすると、水蒸気の中から一人の女性が、出てきたのであった。
年齢は17、8で綺麗な黒髪の女性だ。
ん?何処かで見たような……珠?いや珠は、京の呉服屋の数馬に預けた時は、確か3歳だった……しかし珠の面影がある。
「まさか……珠?」
「そうです珠です!まさか、こんな場所で父上に会えるとは……泣きそうです」
「いや、なんで龍神なんかに?」
「それが、寿命で死んだら、何やら神様と言うお爺様に、いきなり何も説明されずに土下座されまして、何に生まれ変わりたいと、問われましたので、柳生の里を護る龍神になりたいと言ったら、こんな所に、こんな姿で飛ばされたのです」
あのジジイ、また適当な事を。どうせ土下座は俺の事を詫びているんだろう、そして俺の娘の願いを叶えた所だが、龍神しか合っていないじゃねえか。
俺の娘にこんな仕打ちをして……殺す。
「そうなのか、辛かったで有ろう」
「いいえ、この様な所で父上に会えるとは、まさに御仏の御導きで御座います。
所で父上の後ろの女性は?」
「あぁ、アイリスとラナだ、訳あって俺の家族のような者だ」
「アイリスです、よろしく御願いします」
「ラナです、これからも末永く御願いします」
ん?何かラナの言葉が変だが……まあ良いか。
「父上の……島左近清興の末の娘、珠です。そう言えば父上、先程なにやら友人の為に来たとか、何とか言っておりませんでした?」
わ、忘れていた。
「そうだ、この洞窟にセブン・スターズと言う宝剣は、有るか?」
「さぁ?私を討ちに来た者は、全て殺しましたので……もしかすると、その者の中に持っていた者がいたかも知れませんね。見てみますか?」
「そうだな、案内してくれ」
「では、こちらへ」
そう言って案内された奥の通路の先は、行き止まりになっており。そこには、大量の白骨化した遺体が錯乱していたのであった。
「こ、これは?」
「あぁ、私を殺しに来た者達です、全部返り討ちにしましたけどね。父上が言っていた宝剣ですが、この中に有るのでは?」
「しかし、これは探すのが大変だな、どうするか……」
「それなら、全部持っていけば、宜しいのでは?」
「良いのか?」
「えぇ、私には不要の物ですし。所で父上は、今はどちらに?」
「……まさか、来るのか?」
「御主人様、珠様が来ても良いじゃないですか!」
え?アイリス、そこでフレンドリーファイアかますの?
「そうですよ、せっかく出会えた家族ですよ」
え?ラナも?これが四面楚歌というやつか……目の前で珠もニコニコしているし、これ俺が断れない状況って解って、俺の言葉を待ってやがる。数馬、どういう教育をしやがったんだよ。
しかし、珠が家に来れば、俺のナイトライフが……俺の趣味が……俺の父親としての威厳が。
それに、もしもあのコスプレが珠に見付かったら、母親にエロ本が見付かる以上の破壊力が有るぞ。
しかし、こんな所に放置はまずいし……仕方ない、何とかするか。それに何か、情報を持ってるかもしれんしな……数馬恨むぞ。
「家は、この山に在る。珠、一緒に住むか?」
「はい!父上」
そう言って俺達は、遺体から装備品を全部剥ぎ取り、遺体を埋葬し、我が家に空間転移で、戻って来たのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おぉ、囲炉裏じゃないですか!しかもかなり大きい。さすが父上、こんなに素晴らしい家を作るとは……こちらには露天風呂!こんな世界で、温泉に入れるとは、私ここに来て本当に良かった」
家に入った珠は、感動して言っていた。
まぁ、喜んでいるから良しとするか。こうしてみると、まだまだ子供だな。
前世では3歳迄しか、一緒にいてやれなかったので、今回の人生は長く一緒にいてやれる……あの時の分までな。
しかし、その為には、あの例の物を見られる訳にはいかない。絶対に隠し通さないと、父としての威厳が……。
「そう言えば、以前の御主人様は、どの様な御方だったのですか?
あ、ハーブティーですがどうぞ」
アイリスが珠の前にハーブティーを置いて言った。
「そうです、私も聞きたいなぁ」
ラナよ何故にお前まで食い付く……しかし俺も後世の評価は恐くて調べていなかったな、どうなんだろう?
「私の3歳の頃に父上は戦場で亡くなられましたので、殆ど人から聞いたばかりですが……三成に過ぎたるものが二つあり、島の左近に佐和山の城」
「珠!」
「申し訳ありません!父上のかつての主君を呼び捨てなど……申し訳御座いませんでした」
いくら珠でもあの御方を、揶揄したあの詩を言うのは、許さない。
『主君?』
「……そうです、この三成と言われる御方は、石田 治部少輔 三成と言われる御方で、父上の仕えていた御方です。
そして父上は、その前の筒井家でも両翼と言われ、筒井の右近左近とまで言われた御方でした。
そうそう、戦場では鬼の左近と言われて、最後に戦った黒田の者が戦が終わっても、父上の「かかれぇ!かかれぇ!」の声に脅えていたそうですよ。
いったいどれ程の事をすれば、そんなに脅えさせる事が出来るのか……我が父上ながら恐ろしいお人です。
でも父上は、民を第一に考える、素晴らしい領主と言った一面も有り、民の為なら主君と平気で喧嘩するお人で……まぁそれが原因で、筒井家から出るきっかけになったのですが……
そして、困っている者には、仕官先を探してあげるなど、心優しき、しかし戦場では鬼神のごとき御方であったと、お聞きしております」
何だか誉められなれていないから、ムズムズしてきた。
「そんなお人が、私の御主人様……とても誇らしくおもいます!」
おぉ、何だかアイリスの俺に対する株が、上がったようだ。
「私も!……所で珠様、何で柳生の家紋を祭壇に、付けていたのですか?」
「そうだ、ラナの言う通り俺も気にはなっていた、何故なんだ?」
「それは、私の嫁ぎ先の家紋ですので……」
な、何だと?今、嫁ぎ先と?衝撃過ぎる事が有ると人間声も出せなくなると言うが、今の俺がまさしくその常態であった。
「珠様、結婚されていたのですか?」
ラナ、そこは聞くんじゃない。
「はい、結婚していましたよ。相手は父上のよく知っている人です」
!!!!!!!!!!!!!!!何だと?誰だ!
「だ、だ、だ……」
「あぁ、誰かと言う事ですね。柳生 兵庫助様で御座います」
「何だと!兵庫助って利厳の事か?」
「はい」
「お前、利厳とは、何歳離れていると思っているのだ!」
「確か嫁いだ時の年齢は、私は14歳で、兵庫助様は37歳でしたね」
「あの野郎、せっかく俺が清正殿の所に、紹介してやったのに、その恩義も忘れて、人の娘に手を出すとは……」
「……あぁ、その事ですが、兵庫助様なら加藤家を退転されましたよ。
何でも、一揆鎮圧で手間取っていた長門守様の援軍で、兵庫助様が派遣されて、総攻撃に反対した長門守様を斬り捨て、総攻撃を仕掛けて、見事に鎮圧したのですが、即日加藤家を退転したみたいです」
「あ、あの野郎……人の娘に手を出すばかりか、人が紹介した仕官先で味方を叩き斬って、総攻撃など前代未聞ではないか!」
「えぇ、よく兵庫助様は「左近殿が生きていたら、俺は殺されているな」と言っておりましたよ」
「よく分かっているじゃねえか……そう言えば数馬は?数馬は、結婚を許したのか?」
「西陣のお父様……加藤 数馬様は「こんなにも、めでたい事はない。左近様も生きておられれば、そう言って祝福して下さるだろう」って涙を流して喜び涙を流していました。
そして私は、兵庫助様と一緒に諸国の旅に出たのです」
利厳、数馬の二人は、俺の殺すリストに追加だな。あれ?何か変だな。
「なぁ、諸国を旅にって、利厳は仕官してなかったのか?」
「そうですね、あの時はしてませんでした。
後に、尾張徳川の剣術指南役になり、尾張柳生と言われておりますが、結婚時は浪人でしたね」
数馬も、浪人に人の娘を嫁がせるなよ。
「珠様は、そこまで兵庫助様と言うお人を、愛したのですね!私、珠様を尊敬します!」
おいアイリスよ……何故そこで食い付く?
「私も、そのお話をもっと聞かせて下さい!」
「良いですよ……」
ラナもか……まぁ仲が良いってのは良い事だ、俺はあまり聞きたくは無いが。




