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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第一章  創成編
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甘い生活

 俺達は、囲炉裏の間で、串に刺した魚と、パンとサラダを晩御飯で食べた。

 魚の名前は忘れたが、白身魚で塩焼きにして焼くと、メチャクチャ美味しい、でもこうなると日本人としては、醤油が欲しいところだろう。

 そう言えば、さんざん言われているルタイ皇国って、どんな国なんだろうか?蘭さんを見ていると、日本に近い気がする。

 日本とそっくりならば、醤油や味噌が有るはずだ。

 もしも有るならば是非とも手に入れたい。味噌や醤油は、大豆の他に麹菌が必要な筈なので、簡単に作れない。


 もしも有るとすれば、港町か交易商人が取り扱っている可能性が高いはずだ……ん?交易商人?そうだ!ラナが言っていた、ココナの実を購入した商人!ココナの実を仕入れて来たのなら、もしかすると味噌や醤油を取り扱っているかもしれない。

 取り扱っていなくても、何らかの情報を持っている可能性が有る。ラナに何か言って無いのかな?


「ラナ。そう言えば、ココナの実を購入した商人って、何処かに行くとか言ってなかったか?」


「そう言えば、この後レンヌまで行くと言っていましたよ」


「レンヌか……顔は覚えているか?」


「勿論、覚えています」


「ならばレンヌに行った時に、見かけたら教えてくれ、頼みたい事があるんだ」


「解りました」


 しかし、みんな美味しそうに食べるなぁ。作った甲斐があったよ……塩焼きにした、だけだが。


 みんなが食事を終えて、二人が食器を洗っている隣で俺は、シャンプーの製作に取り掛かった。

 冷水で冷ましていたココナッツオイルを、とりあえずは、瓶に入れて保存出来る様にした。

 ただ出来たココナッツオイルは、思ったより量が少ない。こんなものかなと思いながら、瓶に入れていると、アイリスが話しかけてきた。


「御主人様、何を作っているんですか?」


「俺達の髪の毛や、身体を洗う液体だよ、手伝うか?」


「はい!」


「いぃなぁ、私も手伝いたい」


「じゃあそれが終わったら、一緒にやろう」


「はい!」

 まぁすぐに出来るけどね、ただ本当に出来るかは解らないけど。

 自分自身も、昔インターネットで見た事があるなぁ、って位の感覚でやっているからだ。


 そして俺達は、シャンプー作りに入った。

 先ずは、ボールに残っていたココナッツミルクを入れて、そしてココナッツオイルを入れる。完全に目分量だが、大丈夫であろう。

 そして、ハチミツを少々にオリーブオイルを追加投入、そしてひたすら混ぜる!混ぜる!混ぜる!混ざりきった所で、瓶に入れて完成した。……大丈夫だよな?


「では、そろそろ風呂に入るか」


「風呂?解りました、ではお待ちしております」


「ラナ、何を言っているのですか。御主人様は一緒に入れと言っておられます。

 我が家では、奴隷は御主人様と一緒に食事をして、一緒にお風呂に入り、一緒に寝ます」


「えぇ!そんなのは、奴隷じゃないですよ」


「そうですね、でも御主人様は、私達を、とても大切に思ってらっしゃるから、そう言われているのです。断っては失礼ですよ」


「……解りました」



 そう言って、かなり照れたラナと、俺とアイリスは脱衣場に入ると、アイリスはすぐにあの時の様に、俺の服を脱がし始めた。

「えっ?えっ?えぇぇぇぇ!」


 ラナの混乱した声が響き渡る。それもそのはず、アイリスは俺の正面から着物を脱がせる途中で、俺にキスをしてきたのであった。


「御主人様、嫌でしたか?」


「そんな事思う訳ないだろ」

 そう言って、再びアイリスとキスをすると、完全に二人の世界になってしまった。この場で始めても良かったが、早く風呂に入りたい気持ちもあった。


「ちょっ、ちょっと!私を忘れているでしょ!」

 ラナのその一言で、俺とアイリスは一気に現実に戻されてしまった。


「……チッ、良い所だったのに」

 おい、アイリス……


「アイリスまぁそう言うな、ラナも入れて3人で楽しもう。ほらラナも脱がせてやるよ」


「いやいやいや、大丈夫です、自分で脱げます!それにアイリスみたいに綺麗じゃないし、ダークエルフだから肌も黒いし……」


「そうか?俺はラナも綺麗だと思うぞ。肌も綺麗じゃないか」


「き、きれ……」


「そうですよラナ、もっと自信を持ちなさい!私達は島左近様の奴隷なんですよ。

 御主人様、ラナを2人で脱がせてしまいましょう!」


「良いなそれ」


「ちょっ、待って!待って!」

 そう言って抵抗するラナを、俺とアイリスは無理矢理脱がせていった。

 しかし抵抗されれば、されるほど興奮するのは何故なのか?俺の愚息も暴発しそうになっている。まだだ、お前は以前のお前じゃない!アイリスに鍛えられた時を思い出すんだ!……思い出したら、ダメじゃん。


 俺は、愚息の暴発を我慢し、何とかラナを裸にすると、露天風呂に向かった。

 あの時の光景は、おそらく一生忘れる事の出来ない光景だった、アイリスとラナも同じ感情を抱いていたはずだ。

 俺達が露天風呂の扉を開けると、満月に照らされた美しい桜が、露天風呂のすぐ近くで満開に咲いており、3人とも言葉を失い、ただ立ち尽くしていた。


「……綺麗」

 ボソッと呟いたアイリスの言葉で、俺はハッと我に返った。


「この世の天国だな、こんな光景を見ながら風呂に入るのは、貴族や王族でも無いぞ。今間違いなく俺達3人が、この世で1番の贅沢を味わっているんだ」


「私……御主人様に出会えて、本当に幸せです」


「私も……」


「お前達、これで最後みたいな事を言うなよ、まだまだ楽しむんだからな。先ずはかかり湯だ、この桶で湯船のお湯を汲み取り、身体にかけるのが露天風呂のマナーだ」


 そう言って、浴槽から溢れ出ている、湯船に桶でお湯を汲み取り、俺は身体にかけた。少しぬるめの温泉になったが、何か久々の温泉で気持ちが良い。


 先ずはアイリスを座らせて、頭からお湯をかけてやった。

「ぷはー、気持ちいいですね」


「そうだろう」

 そして俺は、もう一度アイリスにお湯をかけた後、手作りシャンプーを手に取り、アイリスの頭を洗った。

 アイリスやラナもそうなんだが、この世界の人間は髪の毛の痛みが相当酷い。おそらくシャンプーやトリートメント等の物が無いからだろう、この手作りシャンプーで、サラサラの艶やかな髪に戻れば良いのだが。


 アイリスの頭を洗っていると、ラナが暇そうにしていたので俺は、素晴らしい事を思い付いた。

「ラナ。お前は、アイリスの身体を、そのシャンプーで洗ってくれ」


「えっ?」


「はーい、どうすれば良いんです?」


「ちょっ、御主人様?」


「シャンプーを両手につけて、アイリスの全身を撫でる様に、揉む様にしてくれ」


「了解、行くよー、アイリス」

 ラナはそう言うと、アイリスの後ろから抱き付き、アイリスの身体中に両手を這わせた。

 やはりエロい、まるでレ○物のAVを見ている様だ。我ながら天才としか言い様のないこの頭脳、愚息も暴発寸前になっている。


 俺は、この光景を十分に楽しんだ後、アイリスの頭からお湯をかけて流すと、アイリスは凄く顔を赤くして俯きながら、ペチペチと叩いてきた。くそ可愛いし。


 そして、ラナを洗う時もアイリスは仕返しとばかりに、ラナを洗った。

 ……2度目の眼福いただきました。

 お湯をかけて流すと、汚れの落ちたラナの姿を見て、改めて美しいと思った。


「ご、御主人様、どうされましたか?」


「いや……月明かりの桜と、銀髪のラナが、本当に美しいと思ってな。これは。最早芸術だな」

 そう、なんと言うか、絵画のような美しさが、俺の目の前にあった。


「そ、そんなに誉められても……こ、困ります」

 ラナは照れていたが、アイリスは拗ねていた。一方を誉めれば、一方が拗ねる……意外とめんどくさいな。


「アイリスには、太陽の下が似合うよ、それに拗ねた顔も可愛いし」

 そう言ってほっぺにキスをすると、アイリスは照れて、その気持ちは二人に洗われている時に爆発した。

 そして、3人で温泉に浸かりながら、夜桜を見ていると、ふと良いことを思い付いた。

 小さな竹筒の中に蝋燭を入れて、明かりを灯して露天風呂の回りに配置すると、これは幻想的な空間になるんじゃないか?

 そんな事を考えながら俺は、二人を抱きながら、久し振りの風呂に入れる幸せを、噛み締めていた。



 俺達は、十分に暖まった後脱衣所に戻ると、俺は例の物をアイリスに渡した。


「御主人様、これは?」


「俺の国の普段着だ、前にレンヌに行ったら売っていたので、アイリスに買っておいた」


「有難う御座います、でも着る方法が……」


「大丈夫だ、俺が着せてやる」

 そう言って、ピンクの浴衣をアイリスに着せていると、ラナが羨ましそうにしているのが、視界に入ってきた。


「ラナには、明後日に買ってやるからな」


「はい!」


 そして、アイリスに浴衣を着せて改めて見てみると、可愛いだろ!何だこの破壊力は、戦闘力測定不能だ。しかしアイリスにだけって、ラナには悪いな……そうだ!


「えっ?えぇぇ!」

 ラナがパニックになったのも、無理もなく、裸のラナを俺がお姫様抱っこをしたからだ。

 アイリスは、羨ましそうに見ているが、浴衣を着せてあげたので、我慢してもらうしか無いだろ。

 俺はそのままラナを寝室に運び込むと、ベッドの上に優しく寝かせて、優しくキスをした。

 ……あれ?アイリスがいない?まさかアイツ自分もと思って、待っているのか?……しょうがないな。


「アイリスを連れてくる、少し待っててくれ」

 そう言って、ラナにキスをするとラナは、暗くて顔がよく見えなかったが、頷いた。

 そして、脱衣所に戻ってみると……居ました、少し拗ねたアイリスが。


「……ラナばっかり……」

 いやいやいや、アイリスには、浴衣を着せてやったじゃないか……しょうがないな。


「ほら、アイリス行くぞ」

 そう言って、アイリスにお姫様抱っこをすると、アイリスは嬉しそうに、俺の首に腕を回して抱き付いてきた。


「へへへ、やっぱり御主人様はお優しいです」

 アイリスは、ニヤケながらデレている……なんだか、アイリスの行動全てが可愛いな。


「お前達に、だけだ」


「達?」


「その中でも、アイリスは特別だからな」


「有難う御座います、私も御主人様だけいれば良いです」


 そう言って、寝室にアイリスを連れて行き、ラナの隣に優しく寝かせると、その後は俺がビーストモードになり、二人まとめて襲ってやった。

 それも何回か、もう解らない位にスキルをフル活用し、何がなんだか解らない位に襲ってやった。しかし、この場所が山奥で良かった、絶対近所に聞こえるだろう、って位の声だったからな。




 次の日の朝、窓からうっすらと入ってきた、太陽の光で俺は目覚めた。

 俺の両隣には、裸のアイリスとラナがまだ寝ている、まぁ昨日はあんなに激しかったので、無理はないか。

 しかし話によると、ここにはモンスターも誰も来ない、一種の安全地帯の様な場所なので、二人とも安心して眠れるのであろう、しかし二人とも寝顔は可愛いな、キスをしてやりたいが起こすのは可哀想だし。そうだせめて朝食は作ってやるかな、もう昼飯かも知れんが。

 そう思い俺はソッとベッドから出て、縁側に出てみた。もう太陽が、かなり高くなっている、昼前って所かな?何だか、こんなに気持ちが良い朝は、久し振りだ。


 そう思って、背伸びをしていると、後ろから声が聞こえた。

「御主人様、起きてらしゃったんですか」

 ラナがタオルで前を隠しながら、声をかけてきた。


「ラナ、すまん起こしてしまったか?アイリスは?」


「大丈夫ですよ、アイリスはまだ涎を垂らして寝ています」


「ハハハハ、アイリスは可愛いな」


「えぇ、本当に同じ女性でも、嫉妬してしまう位に可愛いですね。……私まだ、夢を見ているみたいです」


「どうして?」


「今まで、こんなに幸せな事は無かったし、御主人様には、奴隷じゃなくて、お姫様みたいに扱ってもらえて、こんなに幸せになって、良いんでしょうか……何もかもが楽しいんです。

 御主人様と、永遠に一緒に居たいって気持ちが、止まらないんです」

 ラナはその言葉を言った瞬間に、ピクリと何かに反応した。


「御主人様、何か変です。今何か、一瞬ですが気配がしました」


「賊か?」


「いえ、殺気は無かった様に思えます、余りにも遠くて、解らないだけかも」


 俺はその言葉を聞いて、気配探知を発動した。表示の隅っこに、赤い点が7つ列になり、山頂の方向に向かって動いている、こんな所に何故だ?

「ラナ……この方向に人が7人、山頂の方向に向かって、列になって移動している、距離はかなり遠いが」


「解りました、すぐに着替えて偵察してきます」


「頼む、決して無理はするなよ、交戦は避けろ、俺に報告が第1だ」


「はい!」

 そう言ってラナは、家の中に急いで入って行った。

 ……さて俺も、寝坊助のアイリスを起こしに行くか。

 そう思いながら寝室に行くと、アイリスは幸せそうに寝ていた。この寝顔、ずっと見ていられるな。

 そう思いながら、ついついアイリスの寝顔に見とれていると、あっ目覚めた。


「ん、んん?御主人様?……えぇぇ!いつから見ていたのですか?」


「おはようアイリス。先程からだが、あまりにも可愛いから、見とれてしまったよ」


「お、おはようございます。もぅ、恥ずかしいから止めてくださいね」

 そう言ってアイリスは、目覚めのキスをしてきた。


「あれ?ラナは?」


「あぁラナなら、山に人の気配がしたので、着替えて偵察に行ったよ」


「なっ!御主人様!そう言う大切な事は、早く言ってください!」

 そう言って、アイリスは飛び起きたのであった。


「結構距離も在るから、まだ時間はかかるよ。それに交戦は避けろと、厳命している。

 まぁ、追われてくる可能性も有るので、戦闘体勢で俺達は、待機しておきたい所だが、ラナが戻って来た時には腹が減っているであろう。飯を作っておいてやるか」


「そうですね、あの子が帰って来たら、朝食にしましょう」

 そう言って俺は、アイリスに甲冑を着るのを手伝ってもらうと、竈に火を入れてスクランブルエッグを作り、ベーコンを炒めて、フランスパンに切れ目を入れていた。

 アイリスは、味付けをするのが下手なだけで、俺の指示通りに作ると、普通に出来ていた……あの時の物体Xは、何を入れたのかは、恐くて聞けなかったが。




 気配探知を発動しながら待機していると、ラナが戻って来た。

 気配探知に反応しないのは、やはり暗殺者のスキルか何かで、反応を消している為か。

 しかしそれならば、ラナの後をつけているのが暗殺者なら、反応が出ない事になる。俺とアイリスは、ラナを家に入れた後、注意深く辺りを確認していた。


「アイリス、そっちは大丈夫か?」


「こちらは、誰もいません」


「こちらもだ……よし、家に戻るぞ」


「はい」



 俺とアイリスが家に入ると、ラナは息を切らせて、囲炉裏の間に倒れこんでいた。

「あーしんどい!追っ手は、いないはずですけど、どうでした?」


「大丈夫だったよ。アイリス、ラナに水をやってくれ」


「かしこまりました」

 そう言って、アイリスがコップに水を入れてラナに渡すと、ラナは水をイッキ飲みし、何処かのオヤジの様に言った。


「ぷはー!生き返る」

 ……仕事終わりのオヤジかよ。


「所でラナ、どうだった?」


「気配の正体は、エルフでした。

 御主人様の言う通り、7人で山の中を、供物の様な捧げ物を担ぎ、山頂の方向に向かって歩いていました。

 しかし、あんなに遠い所のエルフの気配……人数まで、よく解りましたね」


「まぁな。所でエルフ達は、何処に行ったのだ?」


「それが、ちょうどこの家の山の裏手辺りに、祭壇が出来ていて、エルフの奴等は、祭壇の奥の洞窟に入って行きました。

 ただ、洞窟なので後方から誰か来れば、逃げ道も無いと思い、入り口で待っていると、暫くしてエルフの奴等が出てきたのですよ。

 その時には、担いでいた捧げ物が、無かったので、洞窟内に置いてきたのでしょう。

 そしてエルフ奴等は、そのまま山を下りそうだったので、解らない様にその場を立ち去り、戻って来ました」


「ご苦労様。しかし、祭壇か……エルフの神様か、何かかな?」


「さぁ?しかしエルフは、森の民の筈で、固有の信仰など無かったはずですが……そうだ、祭壇に変わった紋章みたいなのが、入ってました」


「紋章?」


「こんな、帽子みたいなのです」

 そう言って囲炉裏の灰に、ラナは棒で絵を書き出すと、その完成した絵を見た時に、俺は思わず、声に出して言ってしまった。


「や、柳生笠」


「柳生笠?何ですかそれは?」

 アイリスが不思議な顔付きで、こちらを見ながら聞いてきたのであった。



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