05 ステータス
諸事情により、更新が遅れました。
その代わりと言いますか、いつもより長くなってます。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
「それでは、はじめに現在のステータスを見ましょう。自分のステータスを開くことを強く念じてみてください。声に出してもいいですよ」
(開け、ステータス)
そう念じると、目の前に半透明な画面が出てきた。
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《ステータス》
名前:-(白坂 颯)
性別:-
種族:霊魂
年齢:16
称号:死を乗り越えし者・異世界神の祝福・
異世界人
レベル:1
クラス:魔物
ジョブ:-
体力値:90
魔力値:0
筋力値:18
生命力:20
知力値:3
精神力:10
敏捷値:15
器用値:30
潜在力:80
幸運値:35
《スキル》
直感Lv10・料理Lv5・身体制御Lv4・未来視Lv6
死の知らせLv7・苦痛耐性Lv7・精神耐性Lv6・
肉体修復Lv2・気配察知Lv8
《ユニークスキル》
臨機応変・万の才覚【劣】
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「出てきましたね。今はいいですが、ただ開くだけだと他の人からも見えてしまうので、今度からは自分だけに見えるように意識してください」
まじまじと自分のステータスを見ていると、男は苦笑しながら、付け足すように言ってきた。
いや、初めて見たんだから興奮するでしょ。
「わかった。じゃあ、ステータスについて教えてくれ。色々疑問があるんだ」
「わかりました。まず、あなたは死んでいるので、名前がなくなり、霊魂という種族になっています。霊魂には性別がありません。クラスは魔物ですが、魔物と言っても、それら全てが悪というわけではありません。いい魔物もいますよ。ジョブの空欄は職に就いていないということです。残りは、生前のあなたのステータスですね。レベルが1なのは、あちらの世界にレベルが存在しなかったからです」
ふむ、体力値がHP、魔力値がMPだろう。
魔力値が0なのは当たり前だし、知力値が3なのも納得だ。
魔法なんて使えないし。
でも、凄く頭が悪そうだ。
昔から手先は器用だったから、器用値は他よりも少し高い。
幸運値は高いのか低いのか微妙だ。
逆に、潜在力は高い。かなり高い。
これはとても重要だ。
ピンチになると、きっと新たな力が目覚めてくれる。
そして、称号にスキルだ。
この2つは何かと問題になるんだよな。
だけど、称号はそのまんまな気がする。
それでも、彼女から祝福を貰えたのはかなり嬉しい。
問題はスキルの方だ。
普通のスキルも色々あるのに、ユニークスキルが2つもある。
「あなたのステータスはあちらの人によく見られる偏りですね。ですが、スキル構成がかなり歪です。『死の知らせ』なんて、あちらの世界で普通に生きていれば、まず会得できません。耐性スキルは言わずもがなです。『気配察知』も異様にレベルが高く、『料理』も地味に高いですね。あなた、誰かに狙われていたのですか?」
善良な一般市民だった俺になんて言い草だ。
気配察知なんて、自家発電してる奴らは皆高いわ。
「料理は親よりも上手く作れたから作ってただけで、毒殺とか警戒していたわけじゃない。他のスキルはよくわからない。直感で選ぶことが多かったから『直感』が高いのは、何となくわかるけど、高すぎる気もする。狙われていたと言うなら、使徒から狙われていたな。そいつに殺されて、こっちに来たし」
そうだよ、予知夢を見始めてから気配に敏感になってたり、思ったより痛くないな、とか感じたりしてた。
妹の行動が今まで以上に把握できたしな。
「そういえば、予知夢を見ていたと書類に書いてありましたね。『死の知らせ』と『未来視』が合わさって見たのでしょう。『死の知らせ』はレベルが高いほど、長期間、未来の死を使用者に知らせます。どのくらいの期間、夢を見ていましたか?」
「30日ぐらいだな。もし、夢で体験したことがステータスに反映されるなら、あのスキル群も理解できる。30回も殺されたからな」
「その間ずっと見ていたのですか?そうですか。通常はあなたと同じ期間でも数回程度、スキルが発動します。これは死の脅威によります。つまり、あなたにとって、使徒の脅威がそれほど大きかったということです。それと、スキルが見せた夢なので、あなたの魂が引っ張られて、現実に近い状態になっていたならば、現実よりもスキルが会得しやすく、早熟もしやすいと考えられます」
「あー何となくわかったから、次だ、次。俺のユニークスキルはどういうやつなんだ?」
魂云々(うんぬん)は今はいい。
要するに予知夢の中では、スキルが手に入りやすくて、早くスキルレベルが上がるってことだ。
これがわかってたら、もう少し抵抗できたかもな。
「ユニークスキルなので、新しく生まれるものもありますが、大半は既存のものです。あなたの場合、『臨機応変』は新しく生まれたスキルで、『万の才覚』は異世界人がよく持っています。あなたのものには【劣】が付いているので、通常よりも効果が落ちます。このスキルは彼女が授けたと思いますよ」
【劣】を付けた意味を問い質したい。
ささやかな贈り物って、これと称号だよな。
【劣】が付いてなければ、彼女への信仰度もかなり上昇してたのに。
貰えたから、多少は上昇しているけど。
「このスキルは【劣】が付いていても、大して変わりませんよ?まず、スキルの会得制限が肉体的制限まで解除されます。肉体的制限は、例えば尻尾や羽がないのに、それに関するスキルを会得することを制限するものです。つまり、ほぼ全てのスキル適性が付与されます。他に、スキルの会得率上昇や早熟化などがありますが、【劣】の場合、これらが多少減少します。」
そうらしい。
彼女は魂の節約に拘っていた。
だから、こうしたのかもしれない。
また、上昇してしまった。
チョロいぞ、俺。
それよりも、こういったスキルの内容がわからないのは、かなり不便だ。
攻略サイトとかあればすぐにわかるんだけど、そんなものはないし。
鑑定系スキルが欲しいな。
スキルの内容まで分かるやつが欲しい。
「スキルの内容だけでしたら、スキル辞典というものがありますよ?人間が作ったものより正確で膨大な数のスキルが書かれています」
いつの間にか、テーブルの上には持つだけで苦労しそうなほど分厚い本が置いてあった。
だから、どっから出したし。
まず、ペラペラと中を見てみた。
辞典の中は一面にびっしりとスキル名とその内容が書かれていて、読んでいるだけで文字に溺れそうだ。
調べるのには便利だけど、持ち運びが難しい。
知らないスキルを見つけたら、その場でペラペラ探すのは嫌だな。
でも、1冊は欲しい。
無理だろうけど。
〔スキル『臨機応変』が発動します。対象の読み込みを開始しました〕
ん?何か頭に声が響いてきた。
ラノベでよくあるアナウンスだよな。
中性的な声で、どちらかと言うと女性の声だ。
正直、見知らぬ人の声が聞こえてくるのは、かなり不気味。
「あなたのユニークスキルが発動したようです。スキル辞典をコピーしていますね。本当は止めるべきですが、今回はいいでしょう。あと、アナウンスはこちらの世界では一般的なので、慣れるしかありません」
〔読み込みが完了しました。ステータスに反映します〕
〔称号:歩くスキル辞典 を手に入れました〕
〔ユニークスキル:スキル検索 を会得しました〕
読み込み、速いな。
あの分厚い本を数分でコピーしたのか。
とりあえず、『スキル検索』を使ってみよう。
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ユニークスキル:臨機応変
会得者の感情を基に、その場面に相応しい対応を取る。
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『スキル検索』は、かなり便利だ。
ステータスのスキルを見ると、内容が浮き上がってくる。
知らないスキルを頭に思い浮かべると、ちゃんと内容を出してくれる。
一瞬で悩みが解決してしまった。
「先ほども言いましたが、ちゃんと自分だけに見えるようにしてくださいね。気をつけないと、色々大変ですから。では、粗方説明したので、異世界転生特典の話をしましょう。言語理解スキルは必要なし、特典のスキルはおまかせ、でよろしいですね?」
注意されてしまった。
そんなこと言ったって、操作に夢中になちゃうし、使ったことも少ないんだから、仕様がない。
「それでいいんだけど、できれば鑑定系のスキルも欲しい」
「欲張りますね。でも、安心してください。時々、自分では決められない人がいましたから、そんな人の為に、使徒が独自の調査を行い、必要とされるスキルなどを調べ上げました。やはり、鑑定スキルは色々便利ですから、もちろん、その中に入ってます」
「それは良かった。じゃあ、ステータスの値って変えられるのか?」
俺はスキルで無双するより、ステータスの値で無双したい。
だから、スキルはこの世界を知り尽くしいるやつに任せた。
俺が変な思い込みで選ぶより安全だ。
「ステータスの値をは変えられますが、スキルを授かるのと違って、魂の書き換えが起こり、激しい痛みを伴いますよ?値が大きく変わるほど、痛みも大きくなります。筋肉痛みたいなものですから、死ぬことはありませんが」
…無理じゃん。
1桁を5桁にしたら、どんだけ痛いのか。
想像しただけで、痛くなってきた。
いや、でも、ここまで来たんだ。
俺の『苦痛耐性』を信じて、耐えてみせよう。
死なないから大丈夫だ。
そう信じよう。
「それでも、やる。やらなきゃいけない」
やれやれと言いたそうな顔で男は、紙と羽ペンを渡してきた。
まさか、また血がいるのか!
今度は何の記憶が無くなるか…
「紙にあなたのステータスを全て写してください。終わったら、変更する場所に二重線を引いて書き換えてください」
羽ペンの先を見ると、インクが染み出ていた。
良かった。血は必要ないみたいだ。
まず、言われた通り、ステータスを書き写す。
面倒臭いと思っていたら、『臨機応変』が発動して、『速記』を会得した。
少しだけ、書くのが速くなった。
そして、とうとう書き換えのときだ。
変えるのは、ステータスの値だけ。
レベルは1のまま、最強になってやる。
「ステータスの値は1以上の数にしてくださいね。0は基本的に魔力値にしかありません。それ以外は最低でも1はあります。それに魂の容量にも注意してください」
「どれくらいなら、書き換えて大丈夫なんだ?」
「合計値が2万はスキルが入らなくなりますね。空きの容量も必要ですから、1万強ぐらいです」
10項目あるから、1つ1000は変えられる。
でも、体力値と魔力値、潜在力は多い方がいい。
逆に、幸運値は高くなくても大丈夫な気がする。
「幸運値って、何に影響するんだ?」
「運が良くなりますね。ダンジョン内のドロップ率の上昇やレアアイテムが入手しやすくなります。ダンジョン外では、死体はそのままなので、ドロップなどはありませんが、レアな素材が入手しやすくなります」
やっぱり、ダンジョンの中と外じゃ違ってくるのか。
ゲームだと消えるのは当たり前だけど、現実はそうじゃない。
逆に、消えてしまう方が怖いよな。
郷に入っては剛に従え、だし、頭の片隅に置いておこう。
「それだけか?じゃあ、0にすると、どうなるんだ?何もドロップしなくなるとか?」
「基本的に0はないですが、0にすると、完全にランダムになります。何もドロップしなければ、凄いレアなものがドロップするときもあります。しかし、幸運値が1あれば、安定して様々なものがドロップします」
「じゃあ、0でいいや。良縁に恵まれるとかあったら、目一杯上げたのに」
「はー、基本的に0はないことを、お忘れなく」
呆れられてしまった。
でも、ドロップ率とかなら、倒しまくれば大丈夫。
早速、書き換えてみた。
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《ステータス》
名前:-(白坂 颯)
性別:-
種族:霊魂
年齢:16
称号:死を乗り越えし者・異世界神の祝福・
異世界人・歩くスキル辞典
レベル:1
クラス:魔物
ジョブ:-
体力値:2000
魔力値:2000
筋力値:700
生命力:700
知力値:700
精神力:700
敏捷値:600
器用値:600
潜在力:3000
幸運値:0
《スキル》
直感Lv10・料理Lv5・身体制御Lv4・未来視Lv6
死の知らせLv7・苦痛耐性Lv7・精神耐性Lv6・
肉体修復Lv2・気配察知Lv8・速記Lv1
《ユニークスキル》
臨機応変・万の才覚【劣】・スキル検索
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合計11000。
もっと上げたかったけど、元のステータスより断然強いからいいっか。
レベル1でこれだけあれば、レベルが上がると、もっと強くなるしな。
「目一杯上げましたね。かなりかつかつなので、もう上げられません。では、魂の書き換えを始めますね。この紙を飲み込んでください」
「え、飲み込むの?紙を?」
「ええ、あなたは魂ですから、大丈夫ですよ」
そう言われると、否定できない。
紙を小さく小さく握り潰して、一気に飲み込んだ。
ふー、柔らかい紙で助かった。
「飲み込みましたね?魂の書き換えが始まると暴れ出す可能性があるので、イスに固定させてもらいますよ」
そう言われた途端、体が動かなくなった。
ジェットコースターに乗る気分だな。
心臓がかなりドキドキしている。
「それでは、術式を開始します。気を確かに持ってくださいよ」
あー、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
痛みがなくなるくらい痛い。
痛みに叫ぶこともできない。
意識が飛ぶ様子もない。
…ただ、痛いだけ。
『苦痛耐性』のおかげか、何とか考えることができている。
考えてなければ、耐えらそうにない。
身体全体がミキサーに掛けられてるみたいだ。
終わったら、ちゃんと身体残ってるよね?
どれくらい経ったか。
いつの間にか、痛みがなくなった。
途中から、妹のことを思い出していたら、痛みなんて吹っ飛んだ。
嘘です。めっちゃ痛かったです。
「えっと、大丈夫ですか?皆さん、よくできますよね。私は絶対やりたくありませんよ。元々、強いですし」
「はーはーはー、耐えてみせたぜ。はー、何とかなるもんだな。ふー、でも、ステータスがかなり上がったけど、実感が湧かないな」
空気が凄く新鮮に感じる。
身体に新しい空気が巡ってるのがわかる。
何だか、自分の身体じゃないみたいだ。
いや、魂か、俺。
「ちゃんと上がってますよ。まだ、魂に定着させている段階なので、スキルは使えませんし、ステータスは開けません。ですから、確認は転生してからしてください」
「そうなのか。じゃあ、もう転生するのか」
しみじみとした気分になるのは、この男とウマが合ったからかな。
年齢差は凄いけど、こんな友人が欲しかったな。
「そうですね。今は待機中なので大丈夫ですが、さっさとしないと他の人に取られかもしれませんから」
「だったら、早く済ませよう。長々と相手させて悪かったな」
早く転生しなければならない理由ができてしまった。
イスから立つと、男も立ち上がった。
「いえいえ、異世界人は皆、個性的ですから面白いです。では、今から転生させますね」
「色々、ありがとう。あんたが担当で良かった」
とりあえず、手を差し出してみた。
握手は友好的でいい文化だと思う。
「それは何より。楽しい人生を送ってください」
ちゃんと握り返してくれた。
下等生物に触れてたまるか、とか言ってもおかしくない存在なのにな。
もっと敬意を払った方がよかったかもな。
今更だけど。
「じゃあな」
「お元気で」
意識が遠のく。
次に目を覚ますときは、俺は俺でなくなっているはず。
それでも、楽しく生きたと胸を張って妹に言える人生を送ろう。
〔スキル『臨機応変』が発動します〕
読んでいただき、ありがとうございます。