トゥ トラスト 一話 知らない人
♂3女3~♂2女2 20分
須藤 茜(♀)
ガルバ(♂)
歩(♀)
広瀬 敦(♂)ガルバと被り
アルフレード(♂)
ルミナリエ(♀)歩と被り出来ます
須藤茜
元気で勝気で行動力のある馬鹿。時としてその判断が正解を生むこともあり、嫌われたことがない。
高校二年生になったばかり。
現代から幻像世界に飛ばされて、うろたえている。
ガルバ
幻像世界では王位継承者であり、軍人。責任感が強く堅物。本名はガルバ・アルテミス・セルバート。
階級は大佐。王家の重圧に耐えながらも軍人として頑張っているが、それが逆に自分の首を締めていっている。
歩
現代の茜の親友。心優しく茜のすることに振り回されるが楽しんでいる。
広瀬と茜が上手くいくよう願っている。
広瀬敦
茜の好きな人。幻像世界のガルバによく似ている。性格は王子様のように周りにとても優しい。茜のことはクラスメートの一人としか見ておらず、誰かと付き合うことも考えてない。
ガルバと兼任。
アルフレード 幻像世界の基地に駐在している医者で、ガルバとは同期。25歳。女性に優しく男性に厳しい性格元々軟派な性格で、医者家系でなければ教員になりたかったため茜には誰よりも優しい。
ルミナリエ アルフレードの補佐。茜の監視役としてガルバに命令され、茜と共に行動する。茜と年齢が近い。戦場で戦えないことを酷く悩んでいる。自分に厳しく他人には優しい性格から、色々な人に好かれる。
茜「んー、今日もいい天気だなー!!二年生初の教室!!ううん!感慨深いねえ!!」
歩「茜、今日は曇りだけど??それに、いちいちそんなに感慨深くなってどうするのよ。もう、大げさな子なんだから」
茜「関係ないない!!歩と同じクラスなんだもん!恥ずかしい言葉も出ちゃうってもんさー!!」
歩「もう、どうしてそう・・・」
茜「照れるな照れるな!」
歩「呆れてるの!!」
茜「あ、ひーろせー!!」
広瀬「ああ、茜か。おはよう。また同じクラスだね、よろしく」
茜「う、うん!!」
歩「茜、もっと会話しなきゃ!」
広瀬「じゃあね!」
茜「あっ・・・うう、ダメだー」
歩「もー!」
茜「でも、同じクラスになれてラッキー!!」
歩「はあ、もうちょっとアピールしないとダメだと思うけどなあ」
茜「じゃあ、歩が手本を見せてよ!」
歩「えっ?!またそんな無茶を!」
茜「いーじゃんいーじゃん!!」
歩「もー!!絶対に嫌!自分で何とかしなさい!」
茜「ケチー」
歩「知りません」
昼休み
広瀬「茜ー!!」
茜「な、何よ!広瀬!」
広瀬「バレーの助っ人お願いできないかな?運動得意だろ?」
茜「男子と混じって??!ば、馬鹿にしてんの?!」
広瀬「違うって!俺、今日は絶対勝ちたいんだ。茜の力が必要なんだよ!」
茜「・・・うう、わかったわよ。絶対勝つわ!」
広瀬「ありがとう!茜なら勝てる!」
歩「もう。茜ったら・・・女の子らしくすれば広瀬君も意識してくれるってのに・・・」
広瀬「やっぱり茜に頼んで正解だったよ!おかげで勝てたし、本当にありがとう!」
茜「いいんだ!広瀬が、嬉しいんなら何でも・・・」
広瀬「え?」
茜「あ、ううん!何でもないよ!!じゃね!また負けそうなら呼んでよ!」
広瀬「そうそう負けたりしないよ!酷いなー」
茜「あはは!!・・・また、やっちゃったー!!」
放課後
歩「屋上で反省会、何度目よ。考えなしね、本当に」
茜「うう・・・」
歩「ま、茜のいいところはアピールできてるとは思うけど。友達止まりかもね?」
茜「そんなのわかんないじゃん!!」
歩「した、見てみなよ。茜」
茜「えっ??」
歩「また、広瀬に告白してる女子いるし。屋上だと丸分かりよねー、茜ももう少しおとなしくしないと、取られちゃうわよ?」
茜「・・・やだ、な。広瀬が好きなら仕方ないじゃん」
歩「・・・茜は優しすぎだよ」
茜「でも!・・・なんか、取り合いとか広瀬は好まないよ」
歩「はあ、じゃあ反省会は終わりにして、遊ぼっか」
茜「っ!!あ、」
歩「え?・・・茜!!危ない!!」
茜「私は、屋上の柵が壊れているのを知らずに、キスしようとした女子を止めたくて思い切り体を前方に傾けてしまった。そして・・・」
歩「茜ぇえぇえええええ!!」
ガルバ「おい!大丈夫か、起きろ!!」
茜「え?・・・な、に・・・」
ガルバ「ここは戦場だ!隠れるぞ!」
茜「な、何?広瀬、あんた何でコスプレなんか」
ガルバ「何はこちらが聞きたい!!私はガルバ・アルテミス・セルバート大佐だ。混乱しているようだな、いいからこっちに来い!!」
茜「え??」
ガルバ「いいから!!」
茜「話し方は違っても、声も顔も髪型も何もかもが広瀬に似ているガルバなんとか大佐に庇われながら、今の状況を把握するしかなかった。私は、気付いたらここにいただけなんだから」
ガルバ「セルバート国と敵国であるミシュテラン国は戦争中なんだ。セルバートの水源を手に入れたいがために奴らはいきなり攻め込んできた。私たちはそれに対抗するために戦っている!!」
茜「ご、ごめん、あのさ、国がどうとか聞きたいんじゃなくって、私って最初から倒れてたの?」
ガルバ「はあ?こんな状況で何を聞いているのだ!」
茜「え、ごめん。でも、私は日本人だから関係ないって言うか」
ガルバ「ニホン?なんだそれは」
茜「え?ええ??日本は国だよ!私の生まれ育った国!!」
ガルバ「・・・空から落ちてきたと思ったら、頭を打っておかしくなった娘か。仕方ない、検査のためにセルバートの医務室へ連れて行くしかないか」
茜「空から・・・落ちた?・・・あれ?傷は、ない、ないみたいだけど」
ガルバ「・・・私が魔方陣で落ちる速度を落としてやったのだ。そうでもしないと奴らの捕虜かもしれない国民が死んでしまう。私たちの戦う意味がなくなってしまう。しかし、お前は今の今まで異変に気付かなかったというのか?」
茜「魔法・・・?えぇ・・・??」
ガルバ「話はあとだ!今はこの場を凌いで医務室のある基地へ走るぞ!!」
茜「初めて目にする光、景色、空の色。私は、知らない世界に来たのか、頭がおかしいのか判断できなかった」
ガルバ「基地に着いたぞ!何をぼんやりしているんだ!!」
茜「・・・学校、は・・・歩・・・。広瀬・・・」
ガルバ「学校?ニホンとやらのか?顔色が悪いぞ、何かされたのか!」
茜「いや、何も。ていうか、ここが何なのかわからないもん!!でも、何で・・・死ぬんじゃなくて訳わかんないとこにいるんだろ」
ガルバ「おい、正気になれ!!」
茜「死んでる・・・とか?あはは、そうじゃなきゃ、こんな意味わかんない世界に来るわけないっか。死んでる・・・のかあ。あーあ、こんなんなら、告白すればよかったな。未練がましくガルバさんと広瀬を一緒に見なくて済んだのに・・・」
ガルバ「・・・っ、お前」
茜「検査なんて。意味ないよ。ごめんね、ガルバさん」
ガルバ「おい!!どこへ行く気だ!!」
茜「…さあ?」
ガルバ「…すまない、言い方があったな。まだ信じていないが…その、落ち込むな。紛れもなくお前は生きているぞ」
茜「その時のガルバさんは、広瀬に少しだけ近かった気がした」
アル「ああ、君かな?ガルバの通信で言っていた子って。初めまして、疲れてるとこ悪いけど検査しよっか!」
茜「…は?何、この軟派な人…」
ガルバ「アルフレード。医者だ。念の為に怪我がないか調べてもらおう。腕は確かだ。安心しろ、それに万が一があっては困る立場なんでな」
アル「まっかせてー!」
アル「頭は正常だけどね、混乱もないし数値も正常値。でも、この子が別世界から来たことを証明する証拠がないかなぁ」
ルミ「先生…では、やはり。奴等の魔法で」
アル「そうも言えない。魔力の波形に異常がないから」
ガルバ「…はあ。では、ルミナリエ。君にこいつの監視を頼む。むやみやたらと出歩かれては困るからな」
茜「行くとこなんかないから、安心してよ!!」
ルミ「……承知しました」
アル「ガルバ、お前さぁ。まぁ、行っても聞かないか。戻れば?お前の指揮がないと動けない兵士どもばかりだからな」
ガルバ「相変わらずだな、アルフレード」
茜「魔法とか、よくわからないことばっか。元の世界に戻れるかも、今の状況じゃ聞けないし…ルミナリエさんとアルフレードさんの目の届く場所にいないといけない苦痛が、余計に神経をすり減らしていた」
ルミ「私と相部屋になります、女性が少ないので…、って茜さん?聞いてますか?」
茜「うん」
ルミ「…安心してください、私はあくまで貴方を守るためにいるだけです。防衛魔術に関してはトップクラスだからガルバ大佐は私に任せてくださいました」
茜「そう」
ルミ「……徐々に、慣れてください…」
茜「…なんとも言えない…私は元の世界に戻りたいんだから。こんなとこ、絶対に嫌!」
ルミ「茜さん…」
アル「大佐に秘密って、結構きついなぁ」
ガルバ「ほう?」
アル「ゲッ、いらっしゃったのですかー」
ガルバ「何か隠しているように見えたからな。で?何を隠している」
アル「…同期だからって、あまり馴れ馴れしくしないでほしい。秘密にしていたのは、茜ちゃんのためなんだしー」
ガルバ「用件は?」
アル「茜ちゃんにはそもそも、魔力はない」
ガルバ「なん、だと?では、別世界から来たという証拠ではないか!何故秘密にする?」
アル「何となく。勘ってものだよ。あの子が来た理由は必ずある。だから、簡単に帰したくないし。帰り方も見当がつかない」
ガルバ「…厄介が増えた」
アル「茜ちゃんには罪はないと思う。たぶん」
ガルバ「奴等か」
アル「大佐、あの子を国民として生活させたほうがいい」
ガルバ「…何故」
アル「一般人以下の子を戦場に連れ込むなんて、厄介どころじゃない!」
ガルバ「…確かに、アルフレードの言い分は正論だな。だが、何故だろう。そばに置いときたいんだ。ここまで来るのに、全く攻撃を喰らわなかった。運はいいのだろうかと思った。その運を今は欲しい」
アル「正気の沙汰とは思えないね。大体、厄介と言ったのはお前だろ」
ガルバ「…正気ならば、私は国の真ん中でふんぞり返っている」
アル「…悪い、そこに触れるつもりはなかったんだけど。ひとまず、茜ちゃんは預かっておく。その間、絶対に死ぬな」
ガルバ「私は簡単にはくたばらない」
茜「ルミ…えっと」
ルミ「ルミナリエです、ルミでいいですよ!さっきも言いましたが、女性が少ないので茜さんには感謝してます!年齢も同じくらいだし!」
茜「あまり嬉しくないような…」
ルミ「何でですか!」
茜「だって、なんか…貴方の方がしっかりしてるし。私は戦争とかわかんないから、なんていうのかなー差がある感じするわ」
ルミ「…私は戦場に行けません。戦えないんです」
茜「え?」
ルミ「そういう意味では茜さんと一緒。私は防衛魔術に関してはトップですが、戦闘系魔法はからっきしで。だから、アルフレード先生の助手やってたりしてるんです」
茜「そ、そうなんだ。なんかごめん!!」
ルミ「えっ?気にしなくても事実ですから」
茜「だって、ルミは気にしてるじゃない!」
ルミ「…!なんで、わかるんですか?」
茜「何となく、なんだけどね。私、そういうのわかる方だって自負してたりするんだ。空気が読めるっていうか。まあ、バカだから空気壊すのも得意なんだけどー!これでプラマイゼロだよね!」
ルミ「ふ、ふふふ!茜さんが同室で本当に嬉しいです。楽しくなりそうで!」
茜「え??そ、そっかなー?」
ルミ「最近は負け気味で空気が重かったんです。私なんて発言の許可貰わないと言葉すら発せれないから。お友達になりましょう!全力で守ります!」
茜「友達か、いいね!!でも、守るとかそういうのやだなー」
ルミ「どうしてです?」
茜「だって、友達ってお互いを守ってくものじゃない。私、貴方を守れないでしょ?それってなんか…」
ルミ「じゃあ、私の心を守ってください!」
茜「…ルミ…」
ルミ「茜さんじゃないと出来ません!これなら、友達になれますか?」
茜「そうだね、うん!いいよ!」
茜「本音を言うと、帰りたくて仕方ない。でも、ルミを放ってもおけない。私は何故か知らないけど板挟みになっていた」
続く。