16.グッドナイトには分からない
闇の森の魔女、アンナ・アンリは壁際で凝固していた。彼女は今、セルフリッジが殺されるかもしれない、という恐怖の為に動けなくなっているのだ。
“駄目。反響して、声でも誰が何処にいるか分からない。動けば、セルフリッジさんが殺される… 殺される…”
心の中で繰り返している。
「撃て!」
そうグッドナイトは兵士に命令した。実質、身動きできない状態の闇の森の魔女を撃とうというのだ。もっとも、捕えるのが目的だから麻酔弾だったが。
ダンっという銃声が鳴り響き、アンナに向かって銃弾が放たれた。しかし、音が響いただけで何も起きない。
「やめろ! 彼女は目が見えないんだ!」
堪らずセルフリッジはそう声を上げる。アンナを思いやる発言をすれば、自分が魔女に操られている事を強調するようなものだったが彼はそれを気にしなかった。
“知ってるよ”
グッドナイトはそう思うと、また命じた。
「撃て」
再び銃声が響く。が、今度も何も起きはしなかった。グッドナイトは首を傾げる。
“こりゃ、なんかおかしいな…”
「撃ちまくれ」
次に彼はそう命じた。兵士達が一斉に銃弾を放つ。しかし、それでも何も起きなかった。闇の森の魔女は平気な様子で立ち尽くしている。
それを見てグッドナイトはこう言った。
「なるほど、分かったぞ。凄いな。これが報告にあった時空を操る魔術の一つか。闇の森の魔女に近付けば近付くほど、その物体は小さくなるという……」
アンナは密かに魔法を使っていた。身体を動かす訳にはいかないが、身体を動かさなくても彼女には魔法が使える。自分の範囲内なら、自由に。そして、この魔法なら、目が見えない事が何も問題にならないし、兵士達を近づけさせないようにもできる。
グッドナイトは次にこう言った。
「抵抗を止めて、大人しくその魔法を解くんだ、闇の森の魔女……」
セルフリッジを人質に取って、闇の森の魔女を脅している事は、周囲に悟られてはいけない。魔女は飽くまで、セルフリッジを利用しているだけの邪悪な存在、という事になっている。セルフリッジを魔女が庇うのなら、その理屈が成立しなくなる。だから脅し文句は使えなかったのだ。グッドナイトは、秘書のピボットに密かに合図を送った。それを受けるとピボットは、魔力を用いない音声発信機で、影からアンナを脅した。
『魔法を解け。さもなくば、セルフリッジを痛めつけるぞ』
アンナはその声にビクッと震える。そして、こう言った。
「魔法を解くためには、地面に手を付けなければいけないわ」
屈んで、手を地面につけようとする、しかし、そこでグッドナイトはそれを止めた。彼の勘が働いたのだ。
「やめろ。なら、動かないでいい」
闇の森の魔女を、動かしてはいけない。そう彼は判断したのだ。実際、アンナは魔法を解く振りをして、地面に手を付ける事で別の魔法を使うつもりでいた。それで、セルフリッジを救えるはずだった。
“思考能力が低下しているって言っても、なかなか油断ならない……。簡単にはいかないか。まぁ、いい。次の手段だ”
グッドナイトは、それから大砲の発射準備を指示した。もっとも、それは単なる脅しの道具に過ぎない。
“心を折れさせて、大砲で脅せば、直ぐ簡単に捕まるだろう”
セルフリッジは、大砲が準備されている事に目を丸くする。
“まさか、彼女を大砲で撃つ気か?”
しかし、そのタイミングでセルフリッジの背後で兵士がこう言う。小さな声で。
「大臣からだ。あの女を裏切れ。“目が覚めた、この邪悪な魔女め。大人しく捕まれ!”と、ここからあの女を罵るんだ。そうすれば、大臣はお前を悪いようにはしないそうだ。このままでは破滅が待っているお前の人生を救ってくださるんだ。悪い取引ではないはずだろう?」
グッドナイトは、セルフリッジに取引の内容が伝えられた様子を確認すると、にやりと口の端を歪めて笑った。
“……セルビアからの重要情報の一つ。あの闇の森の魔女が、一度だけ簡単に捕まった事がある。自分がセルフリッジの迷惑になっていると告げられただけで、魔女は酷く落ち込み、局に反抗しているロスト達の組織に簡単に捕まってしまったのだとか。
なら、あの魔女がそのセルフリッジに裏切られ、見放されたらどうなる? 抵抗の意志をなくし、簡単に捕まるはずだ。
さぁ、その女を裏切れ! オリバー・セルフリッジ! そうすれば、お前は助かるぞ。そして闇の森の魔女は僕のものだ!”
が、次の瞬間だった。
「アンナさん! 逃げてください!」
そう、セルフリッジは叫んだのだ。
“な?”と、グッドナイトは思う。セルフリッジは続けた。
「僕の事さえ気にしなければ、あなたなら簡単にその場から逃げられるはずです! 僕なら心配はいりません! 殺されるような事はないはずです!」
グッドナイトはそのセルフリッジの言葉に混乱する。
“なんだ? 兵士はまだ取引を持ちかけていないのか?
いや、兵士も驚いた顔をしている。取引内容は伝わっている。なら、それを聞いた上で無視したって事か? しかも、即答で? 馬鹿か、こいつは?”
「黙れ」
周囲にいた兵士は、驚きの表情のままセルフリッジに剣を突き出した。彼の喉に、鋭利で冷たいそれが触れる。しかし、それでもセルフリッジは止まらなかった。
「アンナさん! お願いです! このままでは、あなたがどんな酷い目に遭うかも分からない! 逃げてください!」
兵士達は、そのセルフリッジの行動に驚いていた。この男は、殺されるのが怖くないのか?
遠くには、その光景を微笑みながら見つめるセルビア・クリムソンの姿があった。彼女はこう思う。
“何をやったかは、大体、分かるわ。驚いているわね、ゼン・グッドナイト。あなたが相手にしている、その男は、馬鹿みたいに、お人好しなのよ。それは、もう、呆れるくらいに……。私ですら、それを確信するのには時間がかかった。あなたに彼を理解するのは、無理でしょうよ…。さて、この読み違い、どう影響してくるかしらね。あなたの策略に……”
セルフリッジの訴えに、アンナはこう返した。
「嫌です! セルフリッジさんの言う事なんて信じられません!」
その発言にグッドナイトは内心で焦る。セルフリッジを利用しているだけの邪悪な魔女、という設定に矛盾が生じるからだ。
「だから、普段からの信頼関係が大事なんだよ」
しかし、それを隠すように、近くに来たピボットにグッドナイトはそう言っておどけてみせた。ピボットは軽くため息を漏らす。“やっぱり、面倒な事になった”と彼は思う。アンナはこう続けた。
「だって、セルフリッジさんは、わたしを助ける為なら平気で嘘をつくじゃないですか! 自分を簡単に犠牲にするじゃありませんか! セルフリッジさんが無事で済むなんて信じられません!」
セルフリッジはこう返す。
「大丈夫です! 本当に大丈夫ですから! 僕に構わず逃げてください!」
「嫌です! セルフリッジさんこそ、どうしてわたしを見放してくれないんですか? そうすれば、助かるかもしれないのに!
このままでは、あなたまで悪者になってしまう!」
「冗談じゃありません! あなたを見放すなんて事ができますか! お願いです! お願いだから、逃げてください!」
「嫌です」と、そうアンナは返す。目に涙を浮かべ始めた。
“これは…”と、その言い合いを受けて、グッドナイトは思う。
“互いを庇い合っている?”
それから、ピボットに向けてこう言った。
「いやぁ、我々は大変に美しいものを見ているのかもしれないな、ピボット君」
ピボットはその発言に呆れる。
「そうかもしれませんが、我々の立場で言う事じゃないでしょう? と言うか、おどけている場合じゃありません。これを放置するのは危険です。周囲の目が……」
セルフリッジがそのタイミングで叫んだ。
「これは命令です! 逃げてください、アンナさん!」
アンナは涙を流しながら返した。
「嫌ですぅ! セルフリッジさんが殺されるかもしれないのに、逃げるなんて絶対に嫌ですぅ!」
ドォンッ!
彼女がそう言い終える瞬間、大砲の砲撃音が鳴った。アンナの直ぐ近く、背後の石の壁にヒビが入る。ゼン・グッドナイトが大砲による砲撃を命じたのだ。アンナはそれに驚いて言葉を止めた。
これはセルビアの報告による一つの推論。闇の森の魔女、アンナ・アンリの魔法技術の秘密。彼女は強力な魔法を瞬時に成立させてしまっている。これを可能しているのは、闇の森の魔女が何処かに、その為の呪文を蓄積しているからではないか? だが、彼女の皮膚にはそんなものは見当たらない。ならば、残る可能性は体内しかない。内臓を含めた身体の中に、闇の森の魔女は呪文を高密度で集積している。……もし、この推論が正しいのなら、魔女の体内に何かを撃ち込み、呪文を攪乱すれば、もう自由に魔法を使えないはずだ。
グッドナイトは思う。
“今日、用意したのは、呪文攪乱の為に造らせた特別な弾だ。魔法で小さくなっても、大砲なら体内に届く。威力は充分…… もう、別に殺してしまってもいい。死体でも役に立つだろう。撃った後で、回収してやる。
が、当たらなかったのは想定外だな。かなりの実力の狙撃主を用意したはずだが。弾が小さくなる所為で、狙いが外れたか?”
「次、また撃て」
と、グッドナイトはまた大砲で魔女を撃つ事を命じた。狙撃主は緩慢な動作で狙いを定めると大砲を放つ。が、それも魔女には当たらなかった。
「お願いです! アンナさん! 逃げてください!」
またセルフリッジが叫んだ。しかし、アンナは動かない。
「次だ」
グッドナイトがそう命じ、また大砲が放たれる。しかし、やはり当たらない。そこでグッドナイトは初めて狙撃主をじっくりと眺めてみた。様子がおかしい事に気付く。青ざめている。
“……ん? なんだ、ありゃ? 魔女の呪いかなんかか? いや、違うか。そんな事ができるのなら、真っ先に僕がやられている。……まさかあいつ、魔女を大砲で撃つ事ができないでいるのか? ま、見た目はか弱い女にしか見えないしな。わざと外していたか。チッ… 使えない”
そこでピボットが彼に忠告した。
「グッドナイト大臣…… まずいです。人々が反感を抱き始めています。無抵抗なか弱い女性を、強力な近代兵器で虐待しているようにしか見えません。それに、先ほどの互いを庇い合う発言もある」
グッドナイトはそれに澄ました顔で応える。
「ま、半分以上はその通りだしな。か弱い無抵抗な女性を虐めているんだよ、我々は。
しかし、安心したまえピボット君。多少、反感を抱かれたところで、既に権力は我々の手中にあるんだ。どうせ、何もできんさ。国民なんぞに……」
――が、その時、オリバー・セルフリッジはその光景に全く逆の感想を持っていた。彼も人々の反感の目が、ゼン・グッドナイトに向けられている事に気付いていたのだ。
“これは……、良し! これなら、いけるぞ! この人々の力さえあれば、ゼン・グッドナイトを打倒できる!”
更に、会場を観察する彼の目に、目立つ人影の姿が入った。赤を基調とした服をまとったやや長身の女性、セピア・ローニー。
“よし!”
彼は気合を入れると、こう叫んだ。
「アンナさん! 今です! あの例の魔法を使ってください! あれを発動させれば全てがうまくいきます!」
その声にグッドナイトは反応する。
“――んん?”
アンナは首を横に振った。
「駄目です。できません。セルフリッジさんが殺されてしまうかもしれない」
「お願いです! 信じてください!」
「嫌です!」
それを聞いて、グッドナイトは何か悪い予感を覚えた。
“例の魔法? 奴らの奥の手か? なんだか知らんが防いでおいた方が無難だな”
「あなたが魔法を使ってくれなければ、僕は、今すぐにここで舌を噛み切って死にます!」
そのセルフリッジの必死な様子に、グッドナイトは急激に危機感を覚えた。
“まずい、黙らせなくては!”
「おい! 兵士ども! 何をボサッとしている? 叩きのめすなり何なりして、さっさとそいつの口を塞げ!」
グッドナイトはそう叫ぶ。しかし、その命を受けて、兵士の一人が剣の柄でセルフリッジの後頭部を殴打しようとした時だった。セルフリッジを押さえていた兵士達が、四方八方に弾き飛ばされてしまったのだ。
間。
鉄の棍がヒュンと音を発てて回転し、トンと地面を軽く突く。そこには、不敵な顔で笑うセピア・ローニーの姿があった。
「軽いね、こいつら」
と、セピアはそう言う。グッドナイトはその姿を認め、彼女がセルフリッジを守ったのを理解すると、こう言った。
「お前は、確か千人殺しの魔人か? もう少し頭の良い奴だと思っていたがな。こんな場所に出て来てそんな事をして、無事で済むはずがないのは分かっているな?」
セピアは「はっ」と笑って、こう返す。
「いや、もちろんアタシも、こんな場所に出てくる気なんざなかったんだけどよ。この男を守る契約を結ばされているもんでさ。直接この男を攻撃されると、勝手に身体が反応しちまうんだよ。
だが、ま、なんつーか、頭では馬鹿だと分かっていてもさ。出ない方が、利口だって分かっていてもさ。気分的には、こっちの方が遥かに楽だ。恨み重なる闇の森の魔女を助ける事になるのは癪だが、それでも、てめーの方が百万倍むかつくぜ。ゼン・グッドナイト!」
それから彼女はセルフリッジを見ると、こう言った。
「よぉ セルフリッジ。不本意だが、アタシがあんたを守ってやるよ。ありがたく思いな。しかし、あれだ、さっきのあの何もかもうまくいくって発言は、アタシの存在を見抜いた上でだったのか?」
その質問にセルフリッジが答える前に、近くの兵士達が一斉に、彼女へと襲いかかっていった。グッドナイトが言う。
「この場では、魔法は満足に使えんぞ、千人殺し!」
セピアは言う。
「まぁ、どっちでも良いか!」
そして、棍を握り直すと、高速でそれを回転させて近づいて来る兵士達を跳ね飛ばしていった。上、下、揺さぶり、フェイント、3、2、1の回転で終わる。それから、再び棍を回転させて構えると、セピアはグッドナイトに向けてこう返した。
「ハッ!お前は、馬鹿か? アタシが、魔法の力だけに頼って千人殺しと呼ばれるようになったとでも思っているのか? 魔法なんざ使えなくても、こんな奴ら物の数じゃねぇんだよ! これだけ群れてれば、同士討ちを警戒して銃も使えないだろうしなぁ!」
それから顔をアンナの方に向けると、セピアはこう叫んだ。
「おい! 闇の森の魔女! 聞こえているか? この男は、アタシが守ってやる。だから、お前は、さっさとその“例の魔法”とやらを使っちまえ!」
それを聞くなり、グッドナイトは大砲に向かって走り出した。そして、狙撃主を突き飛ばすと、自らが大砲を操作する。
“魔法を使われる前に、あの魔女を仕留めてやる!”
「なにっ? まさかっ!」
グッドナイトの行動にセピアは慌てる。そして、セルフリッジを片手で持つと大砲に向かって走り出した。だが、兵士達に阻まれた所為で少し遅れる。その間を利用して、グッドナイトはアンナに向けて、大砲を放った。
“死ね! 闇の森の魔女! 魔法なんぞ、使わせてたまるか!”
ドォンッ!
という、砲撃音が鳴り響く。アンナの腹部に大砲は命中した。アンナは腹を押さえて、前屈みに倒れ込む。グッドナイトは、そのアンナを更に撃とうと大砲を構えた。
「アンナさん!」と、セルフリッジはそれを見て叫ぶ。悲壮な顔。
「てめぇ! こっちには、アタシがいるって事を忘れるな!」
そう言ってセピアは走りを加速させた。が、グッドナイトはそれに反応する。大砲の口を、回転させると迫ってくるセピアに向けた。
「なにっ!?」
セピアは慌てる。まさかこんな場所で、と思う。セピアの周りには、彼の部下の兵士達もいるのだ。しかしグッドナイトは、躊躇なく大砲を放った。
「気でも狂ってるのか? てめぇは!」
そう叫ぶとセピアは、セルフリッジを放り投げ、自らは身をかわした。直撃は避けられたが、近くにいた兵士達と一緒に、衝撃で弾き飛ばされる。その場にうずくまった彼女は「ウウ」と呻き、動かなくなった。意識はあるようだが、身体は満足に機能しないようだ。
グッドナイトは間髪入れずに、今度はアンナに向けて大砲を向けた。しかし、そこで異変が。
黒い何かが彼女の体内から放たれたかと思うと、その次の瞬間には、その黒の中から樹木が急速な速度で盛り上がり、辺りに拡散していったのだ。
“なんだこれは?”
グッドナイトは、目を剥いてそれを凝視する。頭が混乱した。
“まさか、これが例の魔法とやらなのか?”
しかし、そこで彼はセルフリッジの様子を見てそれを否定した。セルフリッジは投げ飛ばされたもののほぼ無傷で近くに転がっていたのだが、その彼も驚愕の表情でその光景を見つめていたのだ。「アンナさん……」と、そう呟いたのが分かった。
“いや、奴も驚いている。すると、これは大砲の弾を、闇の森の魔女の体内に撃ち込んだ事で、魔女の魔術が暴走でもしたのか……”
アンナのいた周囲は、まるで森のようになっていた。樹木が茂り、アンナの存在を隠している。
“これでは、大砲は使えないな……
まさか、この森は、闇の森の魔女の防衛魔法か何かなのか? ま、いずれにしろ、魔女が危機に陥っている可能性は高い。つまり、体内に撃ち込んだあの呪文を攪乱する弾が効果を発揮しているという事。もう魔女は、魔法を自在には扱えないはずだ。例の魔法とやらも使えないだろう……”
グッドナイトはそう思い安心しかけた。しかし、そこでまた異変があった。遠く離れた空の下で、何かが光ったかと思うと、それが光の筋となり空に向かっていったのだ。
“なんだ?”
と、再びグッドナイトは不安を感じる。
空に届いた光の筋は、それから四方八方に伸びていった。まるで、国中を覆うかのように散らばっていく。
“まさか、これが、オリバー・セルフリッジの奥の手か? あいつの言っていた魔法? だが、これから何が起こる?”
その間に、投げ出されていたセルフリッジは、その光の筋を少しだけ気にするような素振りを見せたが、急いで立ち上がると「アンナさん」とまた呟いた後で、アンナが創り出した森の中へと入っていった。恐らく、撃たれた彼女の身を心配しているのだろう。グッドナイトは、最早、そんな事は気にしてはいられない。緊張しながら、次に何が起こるのかを警戒していた。
reCall!
やがて、空に大きくそんな文字が描かれる。グッドナイトの頭は混乱する。
“reCallだと? 解散請求?”
やがてその文字の下に、何かの数がカウントアップされていく。一億三千百二十一万九十二まで急速にそれは上昇すると、こんな声が響いた。
『得票が、過半数を超えた為、政府の解散が決定されました……』
グッドナイトは再び混乱する。
“なんだ? なんだ、これは?”