偽りの死~スパイの元恋人が生きて現れた~
祐一が死んでからもう5年。
私は、祐一とのことを慰めてくれた亮平に思いを告げられ、そのまま流れるように付き合った。
亮平は公務員だった。
祐一と一緒に居た頃の燃え上がるような恋ではないけれど、亮平は好きか嫌いかで言えば好き。
それに私を思ってくれている。
こういう人と一緒に居たら私も幸せになれるのかな?と手探りな感情でもあった。
そんな中、昔の友人から連絡が来て久々に仲間たちと会うことになった。
私は、亮平と一緒に会場のホテル一室に向かった。
本来なら、私はここに祐一と来ていたのかもしれない。
伏し目がちになる私を、祐一の親友の昭が顔をしかめながら見ていた。
そんなに気の毒に思わなくてもと思いながら気にしないようにしていた。
そんな昭が私の前に歩いて来る。
なんだろう……。
私に一言言っておきたいとか?そういう感じ?え?
「祐一は生きてるよ」
「え?何言って?」
「会いたいか?」
「そりゃ、もちろん」
「じゃあ……」と言って昭はホテルの配膳係が入り口に向かうのを肩を押さえて止め、長髪のカツラを取った。
「え?まさか?……その後ろ姿は…」
私は恐る恐る女性だと思っていた男性に近づいた。ゆっくりと顔を覗くとその男性もゆっくりと私を見た。
間違いない!祐一だった。
「どうして?どうして居なくなったの?もう、諦めてたよ……死んでいたらどうしようって思って……」
私の泣きじゃくる顔を見て申し訳なさそうに笑う祐一。
「実は、亮平が愛花のことを好きだったのは付き合ってた頃からわかってたことなんだ。だから、俺はスパイだし愛花を幸せにできるかわからないから。あの事件で居なくなってしまえばきっと2人は付き合って幸せになるだろうと、そう思ったんだ」
亮平は愛花の後方で唇を噛み、悲しそうに笑う。
「私は!結婚は正直したかったけど、でも祐一の居ない時間を過ごしてわかったの!別に籍を入れなくてもいいの!パートナーとしてだっていいの!子どもだって結婚しなくても諦めなくていい!戸籍上だけ私の子供になるだけで2人で育てればいいじゃん!」
「愛花……」と呟く祐一。
亮平は祐一の元にやって来て「今度は手放すなよな」と言い捨ててその部屋を立ち去った。
「亮平…ごめんね」愛花はそう呟くと祐一は愛花を抱きしめる。
「本当はずっと会いたくて今日、顔だけ見て帰ろうとしていたんだ、でも無理だった。また、やり直そう」
祐一の言葉に愛花は「うん!」と溢れる笑顔で抱きついた。




