僕は風が嫌いだ
僕は風が嫌いだ
何でも知っているような顔で
知らないふりをするから
黙って一人通り過ぎてゆくから
空を見上げれば月夜
電柱から覗く満月
完璧だ
ほんの少しも欠けてない
僕は満月も嫌いだ
三日月だって
人々は喜ぶだろうから
お皿みたいに欠けたって意味がない
消えてなくなってくれなきゃ
夜の主人公はいつも月のままだ
そのまま
海に落ちてしまえばいいのに
人魚姫みたいに
泡になって溶けてゆけばいいのに
存在しない何かに縋っても
叶うことはない
満月でなくとも
月は明日も明後日も
変わらず昇るだろう
記憶のなかで
僕は誰かに手を振った
バイバイ
さようなら
また逢う日まで
誰かは手を振ることも
また
振り返ることもなく
何処かへ行ってしまって
その隣には
僕の知らない人が笑っていた
誰かのなかで僕は
もう知らない人になっていた
どうでもいい存在になっていた
僕のヒーローは
誰かであったはずなのに
誰かのヒーローは
僕ではなく
僕の知らない人だった
ひゅぅっと
風が通り過ぎる
僕の真横を
知らない顔で
きらりと
満月が辺りを照らす
僕の目の前を
偽善者ぶって
僕の気持ちなんて
ほんの少しも知らないで
僕の知らない人は
今日もきっと
誰かの隣で笑ってるんだろう
ご覧いただきありがとうございました。
知らないふりをする風が嫌いだ
誰かに届きますように。




