アータヴァカ/関口 陽(ひなた)(2)
「拘束するって、どうする気だ?」
あたしは相棒に向かって当然の質問をする。
「とりあえず、こうする」
そう言って、相棒は、四輪バギーのトランクから拳銃を2丁取り出した。
片方は水色、もう片方は暗めの赤に塗装されてるが……それ以外は、クリソツに見える。
ただし、今まで相棒が使ったのを見た覚えが無い種類だ。
「何だ、そりゃ?」
「工房からテストを頼まれてるのが3つ程有ってな」
「また、ロクにテストしてね〜モノを寄越したのか?」
『おい、聞こえてるぞ』
突如、工房の副責任者……通称「港のカフェの副店長」……の声が無線越しに聞こえた。
「低威力の空気銃だ」
相棒が、そう言った途端……。
うん、たしかに消音器無しなのに、音は小せえし、発射光も見えねえ。
「片方は吹き矢型で即効性の麻酔薬を対象の体内に注入。もう片方は、対象に命中すると破裂して、これまた即効性の筋弛緩ガスを放出する弾丸を射出する」
そして……動画配信者2名は、あっと言う間にフニャ〜となって、その場に倒れる。
『同時にやるんじゃねえ。片方づつ使え。あくまでテストだ。一度にやったら、実は、どっちかが効いてなくて……』
「安心しろ。対象2名の片方には吹き矢型を、もう片方にはガス型を使った」
『了解。それで問題なし』
「じゃあ、回収チームを寄越せ」
「ところでさぁ……テスト頼まれてたの、3つって言ってたよな……3つ目は?」
コツコツ……。
相棒は銃身で自分のヘルメットを軽く叩く。
「へ……?」
「正確には、私の頭じゃなくて『鎧』の制御AIだがな……」
「どゆこと?」
『制御AIの新しい追加機能だ。2丁拳銃用の射撃補正』
「誰っすか、そんな中学生が欲しがりそ〜な機能を作ってくれなんて言った奴は?」
『……』
「……誰でもない」
「は?」
「……誰からも頼まれてない」
「おい、ど〜ゆ〜こった?」
「誰にも頼まれてないのに、工房が勝手に作った」
『あ〜、それと……新兵器の運用データ、もう少し欲しいんだけど……』
「意訳すると『こいつらと接触した警官も襲撃しろ』だとさ」
「そりゃいいけどさ……」
「何だ?」
「お前、両手利きだったよな……」
「あ……」
「何で、両手利きの奴に、2丁拳銃用の射撃補正のテスト頼んだんだ?」
『……』
「元から他の奴より、2丁拳銃を上手く使えんじゃね? テストになんの、それって?」
『……』
「『副店長』、ど〜したんすか? さっきから黙りこくって?」
『うるせえよ』
「意訳すると『気の効いた返しを思い付けないんで、少し待ってくれ』だそうだ、あそうだ、新たなテスト要員が自分で名乗り出てくれたぞ。一段落したら、こいつの『水城』の制御AIに、2丁拳銃用射撃補正機能をインストールしろ」