髪
目にかかる髪を薬指と中指でかき上げる。
目をつむり唇を差し出す。
普段つけている度が強い眼鏡を外して、瞼の裏には思い出が映る。
そんな彼女を優しく包むようにあの日のわたしは彼女を抱きしめ、唇を交わした。
降りしきる外の雪がコンクリートの建物に溶け込んでいく。
たゆむ白い髪。
彼女の顔には白い紙が覆いかぶさる。
寝台の上に横たわる生涯唯一人の想い人
覆いをめくって彼女の顔を覗く。
穏やかに微笑むその深い顔立ちに視界が滲む。
覆いをそのままに私は寝台に寄りかかりながら床に座る。
目を閉じる。
寒さを強く感じて目を開く。
雪は止み光が刺さっていた。夜明けの鳴き声が近く聞こえた。