5話
作戦当日
俺たちは、ショッピングモール内で持ち場に付き、通信での最終確認を行っていた。
『こちら吹雪、敵は一〇〇〇に此処に突入してくる。
あたしは、全員入ったことを確認した時点で、結界を張り封鎖する。
その後は、あんた等の仕事だ。いいね?』
「了解しました」
今の時刻を確認する。
9時51分
俺は心を落ち着け、腰に刺した刀に意識を向ける。
(いつも道理これを抜いて、いつも道理これを振って、いつも道理これで殺す)
心の中で何度も繰り返しながら時間を潰す。
ガシャーン!!
ガラスの割れる音が俺の思考完全に切り替える。
(さあ、いつも道理の仕事だ)
side吹雪
『了解しました』
(問題あるようには見えないんだけどね...)
新しくうちに来た、加藤をカメラ越しに見ながらそう思う。
そう思うのも当然、うちの隊には実力はあっても性格に問題のある奴しか来ない。
こいつだって、前隊では命令違反を繰り返て、うちに来たんだ。
「だけど、そうじゃなさそうなんだよな~」
目を閉じて、落ち着いた様子の加藤の様子にそんなことを呟く。
しっかり返事はするし、自分に否があれば素直に謝るし、何より入室にノックをする。
こんな真面目な奴がこの隊に来るなんて、考えもしなかった。
金剛のバカとは大違いだ。
ガシャーン!!
そんなこと考えていると、入口が破壊される。
画面を操作し、破壊された場所を調べる。
(正面2に裏1か)
あたしは、三つの画面をそれぞれ確認しながら結界を張る為にエネルギーを溜める。
「ん?」
入口の一つを写しいる、画面の中のテロリスト共が何やら同様している。
気になったあたしは、その画面を別視点に切り替える。
「何やってんだい、あいつ!!!」
そこには、テロリストに斬りかかっている加藤の姿があった。
あたしはすぐに通信機を手に取る。
「おい加藤!!まだ封鎖が済んでないんだよ!!」
加藤の意識が通信機に向く。
「今かでもいいから、下がりな。
そうすりゃ、そいつらを引っ張っていける!」
『うるさい』
その一言ともに加藤は無線の電源を切った。
「何がうるさいだ!この馬鹿!!」
あたしは取り合えず、モールの外周も囲む様に結界を張る。
少し強度が落ちるが仕方ない。
「あのバカの援護に行かないと」
元々、一か所に集まった所を一網打尽にする予定だったんだ。
それを、あいつが突っ込んだせいで、あいつが挟撃される可能性が出てきた。
自業自得とはいえ、見捨てるわけにはいかない。
「たっく、まともそうとか思った、あたしを殴ってやりたいよ」
side加藤
視線の先に居る、ゴミとの距離を詰め、鯉口を切り、そのまま居合で切り裂く。
それに驚く別のゴミに目を向けると同時に、首を斬る。
我に返って、今更ながら銃口を向けてくるゴミの懐に入り、心臓を一突き。
背後から銃剣を向けてくるゴミには、居合の要領で引き抜いた刀を振り下ろす。
「ふぅ」
そこで一息つき、刀を振り血糊を落とす。
周りのゴミどもは、俺を警戒しているのか銃口を向けるだけで向かってこない。
(ざっと三十、かっ!)
残っているゴミの数を数えながら、一番近いゴミに接近する。
「いたぞ!!」
その時、後ろから大きな声と多数の足音が聞こえた。
(また、ゴミがぞろぞろと)
俺はどちらから片付けようか考えながら構える。
ダン!
突然、銃声が聞こえたと思ったら、戦闘を走っていたゴミが体勢を崩し倒れる。
音源を確認するとそこには、吹雪中尉がスナイパーライフルを構えて立っていた。
「中尉は管理室で待機でありませんでしたか?」
「あんたの援護に来たんだよ!!この命令違反者!!!」
俺の質問が癪に触ったのか、吹雪中尉は喚きだす。
「俺の任務は敵の殲滅です。なので、俺の行動は命令違反ではないと思われますが?」
「あたしが結界を張ってからって、言ったよな!!
それに背いてんだから、立派な命令違反だよ!!」
ヒステリックに喚き散らす中尉に少し呆れながらも、反論しようとするが、視線の端に銃口が見えたので、それに斬りかかる。
「取り敢えず話は後にしましょう。今はゴミ掃除が先です」
「どの口が言ってんだ!!この猪が!!」
中尉はまだ叫んでいるが、それでも正確に太腿や脹脛を打ちぬいている。
(殺さないんなんて、中尉は優しいな)
そんな中尉から意識を隊列を組んでこちらに銃を向けるゴミ共に移す。
「そろそろ、面倒になってきたな」
多数のアサルトライフルが一斉に火を噴き、鉛玉が飛び出す。
それらは、真っ直ぐ跳んでいき、俺の体に着弾する。
「ぐああぁあ!!!」
瞬間、ベクトルが反転し勢いそのままに、奴らの方に返っていく。
ゴミ共は何が起こったのか分からず、ただ、呻くことしか出来ていない。
「さて、残りも片付けるか」
俺は射線から運よく外れていたゴミの首をすぐに切り捨てる。
そのまま、中尉が相手するゴミにも返す刀で跳びかかり、殺し尽くす。
「これで任務完了ですね、中尉」
そう言って中尉の方に向き直ると、頭に衝撃が走る。
「なに一件落着みたいに言ってんだい!!あんた自分のやった事、分かってんのか!!」
中尉はライフルを振り下ろした姿勢のまま、怒号をあげる。
「先ほども言いましたが、俺は任務を遂行したまでです。
なので、なにも問題はないと思われますが?」
「もういい!!この事は雪風に報告する!あたしはもう疲れた!!」
吹雪中尉はそう言いながら、無線を取り出す。
「こちら吹雪。金剛、そっちの首尾はどうだ?」
『・・・・・・こちら金剛だ。こっちは既に制圧済みだ』
「そうかい、異能者は居たかい?」
『いや、居なかったな。残念な事だ』
「なるほど、じゃあ全員、本拠地に残ったとみるべきか・・・
了解、あたしが雪風に報告しとくから、あんたは正面の出入口に来な」
『了解した』
中尉は少尉との通信を切り、周波数を切り替える。
「こちら吹雪。雪風、いま大丈夫かい?」
『・・・ああ、問題ない。何かあったか?』
「何かなんてもんじゃないよ!新入りが勝手に突撃かましたせいで、あたしまで前線に出る羽目になったよ!」
『・・・・・・・そうか、加藤には後で何かしらの罰を考えておこう』
「是非ともそうしてくれ!!!」
俺は何故か罰を受けるらしい。
なんとも、理不尽な話だ。後で抗議をしよう。
「あと、こっちには異能者は来なかったから、一応気を付けなよ」
『なに?異能者がそっちにいないだと?』
上の方から気配を感じる。
「嗚呼、でもそっちには茜がいるし大丈夫でしょ」
それは、どんどん接近して来る。
『いや、そうではなくてな、
天井に罅が入る。
こちらには、異能者は2人しかいなかったぞ?』
バコン!!!!
天井が砕け、瓦礫とともに人影が降りてくる。
「さあ、逆襲の時間だ」
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